ミーティングルームの空気は、いつもより少しだけ重かった。議題が終盤に差しかかる中、百生吟子は背筋を正して椅子に座っていた。だが、その膝の下で組まれた指はわずかに震え、唇の端はかすかに引きつっている。
――キュルルルル……。
腹の奥から、不快な音が静かに湧き上がった。下から這い上がるような冷や汗が背中を濡らす。
「……っ」
声にならない息を飲み、吟子は背筋をさらに強張らせる。表情は笑顔の仮面で覆っているつもりだったが、額には細かい汗が浮かび、耳の奥で心臓の音がやけに響く。
――ギュルルルル……キュゥゥゥ……ッ。

次の瞬間、波のような痛みが下腹部を直撃した。腰が勝手に前へ折れ、両腕が反射的にお腹を抱きしめる。
(だめ……っ、これ……っ……早く……っ)
議題がひと区切りついた瞬間、吟子は立ち上がった。
「……す、すみません……少し、失礼いたします……」
声は丁寧だが、わずかにかすれ、震えていた。
部屋を出ると同時に、押し殺していた呻きが漏れる。
「……はぁっ……っ……お腹……っ……お願い……間に合って……っ」
顔は青ざめ、額からこめかみを伝う汗が制服の襟元へ落ちていく。
――ズキュゥン……!
鋭い痛みが腸を突き抜け、思わず壁に片手をついた。
足元は急ぐあまりに硬い音を立てる。
――カツ、カツ、カツ……!
お腹の奥では、高音と低音が入り混じる音が途切れず鳴っていた。
――グルルル……キュルキュル……ギュルルル……ッ。
痛みの波に合わせて呼吸は短く詰まり、
「ヒュッ……ッ、ハァッ……」
と、不規則な吐息が漏れた。
ただひたすら、トイレまでの距離を縮める。
その胸中は、羞恥も焦燥もすべて押し流して、
「早く……早く……っ……」
という必死の祈りで埋め尽くされていた。
廊下を半ば駆けるように進む吟子の耳には、自分の靴音と呼吸音しか入ってこなかった。
――カツ、カツ、カツ……!
トイレの青い扉が視界に入る。あと数歩。そう思った瞬間――
――ズキュゥン……ッ!
激しい痛みが下腹部を貫き、足がもつれる。反射的に腰を落とし、両手で腹を押さえ込む。
「……っ、いやっ……だめ……っ……っ……!」
必死に噛み締めた歯の隙間から、短い悲鳴が漏れる。
次の瞬間、堰を切ったように腸の奥から熱く粘り気のあるものが押し出された。
――ビチャッ……ジュブジュブ……ッ。

液状の下痢が下着の中に一気に広がり、タイツの内側で鈍く潰れる感触が走る。
「……あ……あぁ……っ……っ……」
声は震え、視線は足元に落ちる。温かい汚泥は太ももへと伝い、
――ズルルル……ッ
と音を立てながら膝裏へ流れ、黒いタイツの上を伝っていく。
――ポタッ……ポタポタ……。
床に褐色の滴が落ちて、周囲に小さな水溜まりを作った。鼻を刺す匂いが立ち上り、羞恥と絶望が胸を締め付ける。
「……は、恥ずかしい……っ……見ないで……っ」
扉のすぐ手前で振り返った顔は真っ赤に染まり、涙が目尻から溢れた。荒い息が途切れ途切れに漏れ、額の汗が頬を伝う。
トイレは目前。それなのに、もう何も守れなかった――その事実だけが、耳鳴りの中で重く響いていた。
少し画像の掲載方法を変更してみました、どちらが良いでしょうか?