忍びの秘伝書を元にした講談師の語り
火攻めと鑿入りで敵方の船団を攻め立て凡そ四半刻ばかり。忍び達の小早の矢弾は尽き始め、幾たびかの鑿入り働きに、くノ一達も憔悴し果てております。戦の始めこそは泡を食っていた敵方も、勢威を整えてようやっと盛り返して参りました。忍びの頭領は、もはや充分の戦働きをなしたとみて、引き上げを命じます。ところがいち早く立ち直り兵と水夫を満載した敵方の小早が一艘、逃げる忍び達の小早へと鉄砲を撃ちかけながら追いすがってきました。ところがどうしたことか、真っ直ぐに追ってきた敵の舟足は、海底の何者かに掴まれたかのように急に衰え、忍び達の小早は虎口を脱したのです。そう、まさに追いつかれんとする小早の船縁から、そっと潜ったくノ一が、忍びの技をもって敵方に足止めを食わせたのです。しかしこの技を仕掛けたくノ一は、最早味方の舟に泳ぎ戻れそうにはありません。なんと非情なる下知でありましょうか…