SIDE OF UPDATE〜最期の歌姫篇〜3「真のカウガール」その1
Added 2022-02-18 13:02:49 +0000 UTC1 その街で 頭に被せられたずだ袋により視界を奪われ、かけられた縄により身体の自由を奪われ、林檎ららは引き摺られて無理やり何かに乗せられた。 硬い。けど、冷たくは無い。木?木製の何かに乗せられた。 自分が乗せられたのが何なのかわからないまま、ソレは動き出し、ららを揺らす。ここでようやく、自分が乗せられているのが乗り物であることがわかった。 一体何? 誰が来た? 何があった? 誰がやった? 殺される? 誰に? …様々な憶測がららの頭の中に飛び交い、自分でも驚くほどの汗がダラダラと体中を流れていた。 ドドドッ ドドドッ ドドドッ 外からは、揺れと同時にそんな音が。 …馬車? 異様な緊張感に包まれているせいで眠れるわけもなく何時間か揺られて、ようやく馬車?は止まった。ららは強引に起こされ、外にほっぽり出された。 明らかに木ではない、ジャリッとした砂に頭をぶつける。砂が熱い。日差しが暑い。 暑すぎる。さっきまでいた場所とは大違いのその気候に、このまま袋を被せられていたら暑さで死んでしまうのではないか、という恐ろしい不安がよぎる。 それからまたズルズルと荷物みたいに熱い砂の上を引きずられ、かと思ったらいきなり立たされて後ろから膝を蹴られながら歩かされる。 それから少し段差を登らされ、台の上へ立たされる。ゴトッゴトッという足音と感触からそれが木の板で出来た台だとわかった。 くるりと向きを変えられて、座れ、と言わんばかりにバシバシ肩を叩かれたのでそれに従う。 膝を曲げて座ったら、膝を叩かれたので膝立ちになると、叩かれなくなった。 頭にズダ袋、体にロープ、膝立ち。この後に待ってるのは処刑とかそういうのしか思いつかない。 ららが、自分はこんな風に死ぬのか、なんて思っていると、突如頭のズダ袋が強引に引っ張り取られた。 らら「!?」 何時間ぶりかの陽の光につい目を閉じてしまう。照りつける暑すぎる日差しが、ららの白い肌を襲い、と、同時に新鮮な空気を取り込める喜びに目一杯酸素を取り込んだ。 目が慣れて、視界がハッキリしてくると目の前とその周りに広がっている光景に思わず唖然とした。 灼熱の太陽と乾いた空気に、辺り一面が砂。レンガとか木で出来たバルコニー付きの建物だらけ。その建物のほとんどの正面には色褪せたデッカい看板が掲げられている。 建物と建物に挟まれるように舗装されていない道がずーっと続いていて、その他には馬小屋とか何に使うのかわからない木造の高台とかがある。 今の時代に全く合わない…まるで、西部劇に出てくるような街並みだ。 なに?映画のセット? ここはどこ? いや、いや、いや。違う。ここは知ってる。 ららは半ばパニックになりながらも必死に頭を落ち着かせる。ここはセットじゃない。セットにしては巨大すぎる。 この西部時代みたいな街は…モントレー・タウン。現代においても西武時代の姿のまま街並みが残ってる凄く貴重な街。確か通称ウェスタン・シティ。映画のロケ地にもなってる。 前に、テレビの企画で取り扱ったことがある。 …いや、どうでもいいって。そんなこと。 冷静になろうとしすぎて、冷静になりすぎたららは頭を振ってこの危機的状況へ再び意識を向ける。 ららの隣には、彼女と同じように体を縛られた若い男女が数名…並ばされており、その後ろには何人かの女が古臭い銃を持って立っている。 そして正面。正面にはおそらく、らら達を乗せてきたであろう大きな馬車があり、その荷台にカウボーイハットを被ったダークブラウンのロングヘアをした女がこれまた古臭い…ちゃんと作動するのかどうか不安になるくらい…のピストルを片手に、こちらを見ていた。 「ようこそ。私の街へ。」 つるん。と滑らかな肌をしたそのカウガールはそう言って立ち上がり、荷台をぴょんと飛び降りてらら達の方へ歩いてきた。意外と背が高い。 「遠征して見つけに行った甲斐があったよ。」 「はははっ!!」 「よろしく。馬鹿な"逃亡者"ども。」 「私はエス・エス。コマンド社に属する正義のカウガールだ。」 エス・エスと名乗るカウガールみたいな格好をした自称カウガールは揚々と話し、捉えられているららやその他の男女の顔を見回した。 ららもそれに乗じてチラチラ周りを見てみると、驚いたことにさっきまでららが拷問していた女もそこに膝をつかされていた。 エス「さぁて。あんたらは罪深い。わかるよね。」 「調べたところ、ここにいる全員がアップデートの素質があるのに…受け入れず、逃げて、逃げて、逃げ続けて。」 「だから、施設でアップデートを受ける前にちゃーんとそのねじ曲がった心を治さないと、ね?」 そこから、エス・エスは周りの女どもに命令を出し、捕らわれた何人かの女を別の建物へ連れて行った。その数秒後にその建物からはとてつもなく悲痛な笑い声が響いた。くすぐられているのだ。 やっぱり、こいつらのお仕置きもくすぐりなんだ…そう思うと、ららはゾッとした。 これまで散々くすぐってはきたけど、やっぱりくすぐられるのは苦手だからだ。 次は自分か? そんな風に考えていた時、突然、ららの近くに座らされていた色白の少年が立ち上がった。 「こんなところで捕まってたまるか!!」 少年は叫び、暴れ出した。 それを見た瞬間、ららはすぐ目を逸らし、ぎゅっと瞑った。あぁ、ダメだ。ダメダメ。 そんなことしたら…。 嫌な予感だけがよぎる。 そしてその嫌な予感は、すぐに現実となる。