【5,140字】超巨大物理おばさん
Added 2022-09-20 15:00:00 +0000 UTC※このお話には残酷な表現が含まれています。 [newpage] 「ふぅ…今日もたくさん買っちゃった。有意義な週末だったわぁ。」 とある国、とある日の、とある大都市。 両手に大量の紙袋を引っ提げて、一人の女性がコツコツとヒールを鳴らしながら歩いていた。 「…なーんて。荷物を半分持ってくれる人も居なければ、腕を組んでくれる相手も居ない。はぁ…私の人生設計、どこで間違えたのかしら…」 先日45歳の誕生日を迎えたばかりの彼女は、仕事一筋で生きてきたこともあってか、配偶者や恋人も居ない独り身だった。 周囲にひしめく大勢のカップルをジト目で眺めつつ、背筋だけはピンと伸ばして少し遠い駅まで歩いている。 「今さら婚活しても私みたいなおばさんなんて…きゃっ!?」 いつものように声の大きな独り言で愚痴を呟いていると、突然轟音が響き渡って周囲がグラグラと揺れ始める。 悲鳴を上げたのはもちろん彼女一人ではなく、周囲の人々もみな一斉にその音の出所へと視線を向けていた。 「うそ…なに、あれ…」 そんな彼ら彼女らの感想はほぼ同じだったに違いない。 なぜなら、高層ビル群が立ち並ぶそこから、幾人もの少女たちの巨大な顔が抜け出していたのだから。 『すごーい!ホントに来れちゃったー!!』 『あははっ!見てよこれ!!小人の街、めっちゃ小さいね!』 『巨人になった気分だよ~♪ほらほら、壊しちゃうよー!』 どこからともなく現れた、お揃いのセーラー服を纏った、人間の100倍という圧倒的な巨体を誇る巨大な少女たち。 言葉こそ同じものを使っている彼女たちだったが、小人のことなどなんとも思っていないのか、何の躊躇いもなく周囲のビル群を踏み壊し始める。 「きゃああああ!!」 「に、逃げろっ!殺されるっ!!」 「う、うそ…あっちにも巨人が…!」 突然の事態にパニック状態に陥った群衆が右往左往している間に、また別の巨人たちが現れて街を壊して遊び始める。 総勢数十人もの巨人たちによって周囲を取り囲まれてしまった人々は、成すすべもなくそのローファーで踏み潰され、崩壊する建物に飲み込まれていく。 「私の人生、こんなところで終わっちゃうの…こんなことなら、もっと恋だってしておけばっ…」 彼女もまたこの状況に絶望し、今日の戦利品である紙袋を放り出して立ちすくんでいた。 瓦礫とともに砂埃が舞い、人々の悲鳴と巨人たちの黄色い笑い声が響き渡るなか、そんな彼女の元にぼんやりとした光が近づいていく。 『…見つけた!貴女しか居ないわっ!』 「へ…?誰?私に言った?」 『ええ、そうよ!』 その薄ぼんやりとした淡い光が彼女の顔の近くに浮き上がると、輪郭がクッキリし始めて翼と尻尾を持った美少女の姿になる。 突然現れた10分の1サイズの妖精のような存在に彼女が茫然としていると、その妖精からは続けざまに耳を疑うような発言が飛び出した。 『ねぇ、貴女。わたしと契約して、魔法少女になってくれない?』 [newpage] 「…うん、話はだいたいわかったわ。ちょっと整理させてね。」 『それはいいけどあんまり時間がないから手短にね~』 ディアと名乗るその妖精から一通りの説明を受けた彼女は、混乱する頭を懸命に回転させて話をまとめ始める。 仮にも仕事一筋でここまでやってきた彼女にとってはそれほど難解な話ではなかったが、未だに信じられないという要素が大きかった。 「あの大きな女の子たちは異世界からの侵略者で、倒してこっちの世界の平和を守らないといけない。」 『倒してもこっちの世界での肉体が滅びるだけで、元の世界ではピンピンしてるんだけどね。』 「私たち人類の兵器では巨人に対抗できないから、貴女のような存在に力を借りて戦う魔法少女が必要。」 『人類が勝てるようになるには最低でもあと500年はかかるだろうね~。その前に滅ぶのが早そう。』 「今この辺りで適性者を探していた貴女は、飛びぬけて素質が高い私を見つけ出し、契約交渉しているところ。」 『契約してくれないと死んじゃうんだし、選択の余地はないと思うケドな~。」 「…っ!で、でも…魔法”少女”なんでしょ?私、自分で言うのも嫌だけど、もうとっくに少女っていう歳じゃないっていうか…」 『大丈夫。少女としての条件は満たしてるから、声をかけたんだよっ♪』 「…思い当たる節が…あるけどっ!!プライバシーってものはないわけっ!?」 『それって人類の命運より重要なことかな?』 「はぁ…」 学生時代は勉強に、就職してからは仕事に専念して生きてきた彼女の身体は、正真正銘未だに”少女”のままなのだった。 曰く、魔法少女としての適性値は加齢とともに爆発的に向上するものらしく、彼女のような逸材はこの国はおろか世界中を探しても滅多に見つからないレベルらしい。 『あの辺まだ壊し甲斐ありそうだよ。』 『あ、ホントだ。小人もうじゃうじゃ居るじゃん。』 「…っ!?きょ、巨人がこっちに…」 長いようで短い数分の時を経て、遂には彼女がいる場所へ向かって巨人たちが歩いてくる。 到底逃げ切れるはずもない人々がその足元で次々と踏み躙られていき、彼女にとってもそのときはすぐそこまで迫っていた。 『どうする?』 「…わ、わかったわ!契約!契約します!魔法少女でも魔法おばさんでも、なんでもなってあげるわよっ!」 『ふふっ。契約成立だねっ♪』 「っ!」 [newpage] ディアがニコリと微笑むのと同時にほっぺに軽く口づけすると、乙女のような頬を染めた彼女の身体が眩く光るとともにグングンと大きくなっていく。 普通のおばさんが急に巨大化し始めたことに驚愕した周囲の人々は、逃げる間もなく彼女の素足パンプスの靴底の下へと消えてしまう。 「え、ちょっ、なにこれっ!?どうして私まで巨人になってるの!?」 『さぁ?戦うためじゃない?』 「そこでディアが首傾げるのはおかしいでしょーっ!?」 彼女が当然の不満を叫んだところで身体の変化が止まる気配はなく、大きくなり続ける素足パンプスが逃げ惑う群衆を磨り潰し、立ち並ぶビル群を押し倒していく。 驚いているのは異世界から来た少女たちも同じで、突然現れた巨大おばさんから距離をとるように反転して走り始める。 『ちょちょちょ!!なんなのあのおばさん!?』 『こんな巨人が居るなんて聞いてないし!!っていうかヤバくないっ!?』 『に、にに、逃げなきゃっ…』 『こ、腰が抜け…た、助け…』 『死にたくない死にたくないよぉ!!ママぁ!!』 既に数万を超える人間の命を奪っている侵略者とはいえ、ただの少女に過ぎない彼女たちは一瞬にして足元の人間と同じ様相を呈することになる。 動けなくなったが最後、彼女たちの巨体を凌駕するほどまでに大きくなっていく素足パンプスがゴリゴリと街並みを削っていき、少女たちの身体もまたそこに飲み込まれてしまうのだった。 「やだ、何か踏んじゃった…」 『人間とか建物踏んでも何も感じないだろうし、侵略者を倒したんじゃない?やったね!』 「ちょっと!戦うってもっとこう、魔法的なものでじゃないの?巨人になるなんて聞いてないわよ!」 『戦う武器はその人の個性によって勝手に決まるからわたしだってわかんないんだよ。でも強いし楽だし良いんじゃない?』 「…こんなの、魔法少女でも魔法おばさんでもない。ただの物理おばさんじゃない…」 悲嘆にくれる彼女の巨大化が停止したのは、彼女が人間の約1万倍という途方もない巨体になった頃だった。 23.5cmだったパンプスはその靴底の下に街の数ブロックを消滅させ、5cmピンヒールでさえ高さ500mという、この地方で並ぶもののない超高層建築物としての威容を誇っている。 『変身が完了したみたいだね。さぁ!この世界を守るため、侵略者を倒しちゃって!』 「えぇ…まだ残ってたの?どこかしら…もう歳だし足元の砂粒なんて見分けが…」 『変身だけで27体倒したみたいだけど、あともう31体残ってるね。ほら、右足の前のほうとか。』 「この辺り…?」 彼女が半歩分だけ右足を踏み出して地面に下ろすと、ダルそうに靴底を着けたまま足をズザザザザーと引きずった。 未だほとんど被害が出ていなかったその隣街では、事態の行く末を見守っていた大勢の人々が、逃げる間もなく彼女の素足パンプスによって跡形もなくなるほどに磨り潰されてしまう。 『お、良いね。あと14体だよ。でも残りはけっこう散らばっちゃってるかも。左足側とかに~…』 「…放置じゃダメなのよね?」 『貴女からみたらもう小っちゃな砂粒かもだけど、人間から見たら街を蹂躙する巨人なんだよ?放っておいたらこの国なんてあっと言う間に滅ぼされちゃうけどいいの?』 「はぁ…そうよね…あ、そうだ。面倒だし、もうこうやっちゃえば…」 そう言って左足を高々と掲げるように持ち上げた彼女は、思いっきり勢いをつけてその足を踏み下ろす。 右足による惨劇を目の当たりにして逃げ始めていた人々にとって、彼女によるその行為はありとあらゆる抵抗が無意味だと宣告するものだった。 「どうかしら?これで一網打尽じゃない?」 『おお、凄い凄い!侵略者は全滅したよ!人間の街もいくつかまるごと消し飛んじゃったけど。』 「それは…仕方ないでしょ。こんなに大きいんだもの。」 ピンヒール部分が半分ほど地中まで埋まってしまうほどのその踏み下ろしによって、直撃を受けた足元だけではなく、同心円状に広がった衝撃波が十数kmに渡り地上のあらゆるものを洗い流してしまっていた。 同時に発生した強い揺れは地震となってさらに遠くまで伝播し、彼女の姿が目に入る地域すべてで被害が出ているといっても過言ではない。 『さて、初めてのお仕事お疲れ様。ご感想は?』 「…肉体的にってよりも、精神的に疲れたわね…これどうやったら戻れるの?」 『3分経てば自動的に戻れるよ!だから安全な場所に居るように心がけてね。』 「わかったわ。それじゃ平らそうな場所に…やだ、靴が刺さって抜けな…きゃっ。」 『あらら。脱げちゃったね。そうそう、戻るときに身に着けていないものは、一緒には戻らないから…」 「え、ちょっと待って。もう一度履くから…あ、ダメ、待って!戻らないでぇ!!」 [newpage] 『こちらが現場に残されたパンプスです。政府発表によりますと、衛星画像からの測定で、こちらのサイズはおよそ2.3kmであると判明。このことから、先日の超大型巨人の身長は推定16kmにのぼるとのことです。なお、こちらのパンプスの処分方法については検討中とのことですが、専門家によりますと国内最大の重機を1万台用意しても…』 数日後、自宅でテレワーク勤務中の彼女は、連日世間を賑わせているニュースを白い眼で眺めていた。 その隣には当たり前のようにディアがおり、まるでペットが餌づけでもされるかのようにお菓子を与えられ満足そうにモグモグしている。 「はぁ…ホントもう最悪よ…」 『何がそんなに不満なの?一躍有名人じゃない。』 「ほら、ここ!『死者・行方不明者の総数は50万にものぼると見られる。なお、そのおよそ9割は後から現れた超大型巨人によるものと推測され…』って!完全に私のせいってなってるじゃない!!」 『ん~。でも事実じゃない?』 「そ、うだけどっ…!もっと酷いのなんて…ほら!!」 『えーっとなになに…「欲求不満おばさんのストレス発散で街壊滅とかわろえない」「犯人特定されてるけど報復が怖くて警察も手が出せないらしい怖すぎ」「誰かあのおばさん満足させてやってくれよ世界のためにさ」ふむふむ…で、これが?』 「酷いでしょ!?私、好きであんなことしたんじゃないのに!」 『でも実はちょっとスッキリしたでしょ?』 「うっ…それは…」 『最後にえっちしたのは?』 「わかってて聞いてるでしょ!!」 『あはっ♪当たってるじゃん~♪』 「はぁ…私の人生、どうなっちゃうのかしら…」 ひょんなことから超巨大物理おばさんとしての命運を託された彼女。 その新しい生活は、まだ始まったばかりなのだった。 完
Comments
ありがとうございます。 うちの近くじゃないことを祈りながらお伝えしておきますねー!
もんてすきゅー
2022-10-08 10:08:05 +0000 UTCなるほど、45年間誰のものにもならず守り通してたんですね。 別のアレには30まで守り通すと魔法使いになれるなんて話もありますが45歳女性となるとその素養は凄まじいものになっていると! 悪の巨大娘たちの無慈悲残虐ぶりはやっぱり壮観ですね~。 そんな悪の巨大娘たちをいとも簡単に踏みつぶし遥かに甚大な被害を巻き起こしてるのが最高ですねw 45年間の素養の積み重ねは伊達じゃない♪ 穿いてたパンプスさえもビルよりデカいとかその途轍もない巨大さ! 重機を無数に導入してもビクともしない圧倒的存在感! 巨大おばさまの凄まじさをヒシヒシ感じます♪ 実際欲求不満のようですし続編でもっと暴れてくれてもいいんですけどね~(チラッ
穂村
2022-09-22 16:46:25 +0000 UTC