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メリッサの館 〜side:リオ〜①

リオ 「潜入成功っと。さてと、お宝はどこかしら?」  彼女はリオ。スタイル抜群の美女だが、職業は泥棒である。そして今まさに、とある屋敷へ忍び込み金目の物を盗み出そうと計画中である。  身のこなしをとにかく優先している彼女の格好は、着丈の短いノースリーブベストに革手袋、タイトなミニスカートにショートブーツという、彼女の強気な性格を表したかのような露出の多い物であり、その抜群のプロポーションを見せつける大胆な服装である。  リオは今までに数々の屋敷や別荘に忍び込んでは、誰にも見つからずに宝石や金品を盗み出してきた手練れであり、その強気な性格を裏付ける実力の持ち主だ。 リオ 「ん〜、この部屋が怪しいわね。」  日頃の経験が生んだ第六感で察知したリオは、そこに金目の物があると予想しその部屋の扉に手を掛けようとしたのだが── リオ 「……!!?」 ??? 「ひゃっ!?」  背後で人の気配を感じ取ったリオが振り向くと、そこにはリオよりも背が低く幼さの残る顔立ちの割に、ふくよかな胸を持つ女性が立っていた。  彼女の名はエイミー。この屋敷の使用人として入ったばかりの新人で、まだまだ半人前で間抜けな所が目立つ、所謂ポンコツ女性だ。  そんなエイミーは侵入者であるリオを気絶させ捕まえる為に、手に持っていたスタンガンを向けていたのだが、突然リオが振り向いた事に驚き慌てふためいてしまっていたのだ。彼女のその反応でリオもすぐにエイミーを間抜けでトロそうな女性だと見抜いた。 リオ (チャンス……!!)  エイミーの焦る姿を見逃さなかったリオは、瞬時にその場を離れ逃走する。リオのその行動にようやく自分の目的を思い出したエイミーは、リオを必死に追いかける。とはいえ、ワンテンポ反応が遅れてしまった事で、素早く逃げたリオをあっさりと見失ってしまった。 エイミー 「し、侵入者、逃走中ですー!おっ、応援、お願いしますー!」 リオ (スタンガン持ってそれを私に向けてたって事は、私がここに潜入した事がバレてるって事?)  本来なら人が寝静まる真夜中。そんな時間帯に背後からスタンガンを持って近づき自分にそれを向けていた。この行動から連想出来る事はただ1つ。リオがこの屋敷に潜入した事が筒抜けになっているという事に他ならない。 リオ 「廊下の照明が点いた…?」 (これって、私を捕まえやすくする為よね。理由は分からないけど、やっぱり私のが潜入した事が最初からバレてるみたいね。仕方ない…!さっさとここから脱出しないと…!)  いち早く逃げた事でエイミーから振り切る事は出来たものの、屋敷に潜入している事がバレている時点で、盗みを働く余裕などない。リオはこのまま屋敷からの脱出を試みるが、自分が潜入した場所はさっきエイミーがいた方向。その反対方向へ逃げているという事は、潜入場所から遠ざかっているという事であり、別の場所を探して脱出するしかないのだ。  どこから脱出すれば良いのか?これから更に増えるであろう追手から逃げ切れるのか?そんな不安を抱かずにはいられないが、捕まる訳にはいかない。だからリオは先の事は考えずに走り続けた。しかし── 使用人の女性達 「見つけました!こっちです!!」 リオ 「こっちもダメか…!」  逃げた先にも複数人の女性と鉢合わせてしまい、リオは更に別の道へ逃げていく。 リオ 「ったく…!何なのよ、この屋敷は……!まるで迷路じゃない!」  この大きな屋敷は、メリッサと言うこの国のトップクラスとも呼ばれる程のセレブの別荘で、迷路の様に入り組んだ廊下をリオは駆け回っていた。廊下に窓は無く、脱出手段があるとすればどこかの部屋へ入り窓から外へ出る以外に無さそうだが、追手から逃げながらひたすらドアノブに手を掛けてみるも全ての部屋に鍵が掛かっており、ただひたすら走り逃げ続ける事しかできなかった。 リオ 「このままじゃ流石にマズいわね……。一体どこに行けば脱出できるのよ……!」  このまま逃げ続けていても埒が明かない。何とか脱出する方法は無いか。そう思いながら逃げていたが、リオの目の前にまた新たな追手が現れた。 ??? 「そこまでだ。止まれ。」 リオ 「くっ……!!」  新たに現れたこの女性はケイ。新人でトロいエイミーとは違い、抜群のスタイルと出で立ち、その強気な口調は、いかにもエリートな雰囲気を醸し出した女性だ。そしてその見た目通り、優秀な使用人である。その凛々しく堂々とした立ち振舞いで、リオもすぐにその女性が只者ではないと悟った。 リオ (やっぱり私の潜入がバレてる!しかもこの女、絶対やり手だわ。)  来た道を戻ったとして、誰にも会わずに脱出できる保証はない。対峙するならさっきのトロそうな女性だが、きっと応援が駆け付けているだろう。複数人を相手にする方が分が悪い…。リオは瞬時にそう考え、目の前にいるエリート使用人、ケイと対峙する覚悟を決めた。 ケイ 「さあ、大人しく捕まって貰おうか。」  ケイがその言葉と共に一気に間合いを詰めて走り出した瞬間、リオはベルトに装着していたアイテムを手に取りケイに投げつける。そしてすぐにリオはケイに背を向けて走り出した。 ケイ 「成程、煙幕か。その程度で──」  リオの行動にすぐにそのアイテムが煙幕を張るタイプの物だと理解したケイ。当然侵入者の行動を熟知していたケイは、煙幕による攻撃も想定済みだった。すぐにゴーグルの様な物を装着すると、そのフレームに付けられたスイッチに手を掛ける。おそらく煙や暗闇でも対象を見失わない様にする機能だろうか。それでリオの攻撃の対策をするが、逃げならがケイの行動を見ていたリオは、ニヤリと笑いながらそのアイテムの起動スイッチを押した。 ケイ 「なっ……!?」  そのリオの不敵な笑みにケイは大きな違和感を覚えたが、時すでに遅し。リオが投げたアイテムが起爆すると、煙幕の発生と共に眩く光り輝き、甲高い大きな音が鳴り響いたのだ。それはスタングレネードという閃光弾で、そこに更に煙幕を張る特殊なアイテムだったのだ。ケイが装着したゴーグルではその一瞬の閃光と音は防げず、ケイは怯んでしまった。  だがケイも耳が聞こえない状況でも、煙の中でリオの動きを探ろうと努めた。ケイが考える、煙幕を張った人間の行動は、逃走するか、その煙の中で敵の正面まで迫り攻撃してくるか、その二択だった。だから後者の可能性を考え隙を見せないようにリオの動きを見逃さない様にした。 ケイ 「くっ……!」  ケイは一瞬の閃光で目もかなりダメージを受け、しっかりとその目を見開く事はできなかった。しかし、それでも全く見えなくなる程のダメージを受けなかったのは、その煙幕の中でも人の動きを見る事ができるゴーグルが、多少なりとも閃光を緩和させていたからだ。しかし、そのゴーグルを使っていても、ケイにはリオの姿を確認する事はできなかった。  そしてその隙にリオは攻撃を仕掛けたのだ。 ケイ 「んあぁ……!!」  眩く光り輝いた瞬間、リオは手首に装着していたワイヤーを天井に突き刺し、ケイの真上に移動していたのだ。そしてケイが怯んだ一瞬の隙を見逃さず、リオはケイの頭上に飛び降り蹴り飛ばしたのだ。 リオ 「ふぅ……、何とか上手くいったわね。じゃ、失礼するわ。」 ケイ 「くっ…!ま、待て……!」  頭を抑えながらリオを静止させようとするが、軽い脳震盪を起こしていたケイにリオを追う事は出来なかった。 リオ 「さっきの女、相当やり手だっただろうけど、何とか逃げれたわね。でも、問題はここからよね。どこから脱出しようかしら。」 エイミー 「あっ!いたー!!」 リオ 「あ、あんたはさっきの。」  ケイから何とか逃げて来た先には、リオを背後からスタンガンで攻撃しようとしていたトロそうな女性、エイミーが立っていた。 リオ 「あんたが私の前にいるって事は、そっちに行けば私がこの屋敷に潜入した時の部屋に戻れるって事よね。」 エイミー 「そ、それは……。」  明らかに図星の様な表情で、目を泳がせながら言葉を濁すエイミー。そして侵入者であるリオを捕まえに行く事なく、とある部屋の前に立ち尽くしていた。 リオ (そういう事ね。)  本来なら真っ先にリオ自身を捕まえに来る筈の使用人だが、その場から動こうとはせずどこか焦っている様子。見るからに新人のトロそうな隙だらけの女。その時点でリオは悟ったのだ。  この女の背後にある部屋、そこが自分が屋敷に潜入した時の部屋、もしくは脱出できる部屋で、そこが施錠できず立ち往生していた時に自分と鉢合わせた、のだと。 リオ (正直この屋敷、迷路みたいだからそこが私の入ってきた部屋か分からないけど、この無能そうな女がこんな露骨に部屋を守る様に立ってるのは、そこに私が入られたら困るって事よね。) 「ねぇあんた。私を捕まえたいんじゃないの?あんたが動かないなら、私はさっさと来た道を戻って逃げるわよ?」 エイミー 「だ、大丈夫です!そっちには、私達使用人の中でも一番のエリートであるケイ先輩がいますから…!!」 リオ 「ケイ…?あぁ、あのやり手っぽい女?あいつなら私が蹴り飛ばしてやったからしばらくは動けないわよ。」 エイミー 「えっ!?ケイ先輩が……、やられたって言うんですか!?」 リオ 「そうよ?だからあんたが私を捕まえないと、このまま逃げちゃうわよ〜?」 エイミー 「にっ、逃がしません……!今度こそ私が捕まえて……、あっ……!あぁ……、えっと、………………つ、捕まえます!!」 リオ 「だったらさっさとかかってきなさい。」 エイミー 「そ、それは………。」 リオ 「全く……。そんなんじゃ、その部屋が脱出できる部屋だって自分から言ってる様なもんじゃない。」 エイミー 「んぁ!?そ、そんな訳…、ないじゃないですか……!!」 リオ 「そう?……なら、私を捕まえてみなさいよ。」 エイミー 「うぅ……!…………、も、勿論、やってやります……!!」  リオの分かりやすい挑発に乗り、エイミーはスタンガンを持ってリオに向かって走っていった。やはりこのトロい女はバカで単純だと、自分の挑発にいとも簡単に乗ってくれた事にニヤリと笑みを浮かべるリオ。 エイミー 「えぇい!!」  ぎこちない気迫で迫りくるエイミーの、スタンガンをサッと軽くかわし、足を引っ掛けてエイミーを転ばすリオ。 エイミー 「いたっ……!!」 リオ 「やっぱり思った通りトロいわねあんた。それじゃ、失礼するわ。」 エイミー 「あっ!ま、待って!その部屋は──」  エイミーの言葉など気にも止めず、リオはエイミーによって守られていた部屋のドアノブに手を掛けた。  リオの予想通り、その部屋は施錠されてはいなかった。何も盗めなかったのは失敗だったが、捕まらず無事に脱出できる事に安堵する。そして未だ床に転ばされ悔しがるエイミーを強気に見下しながらその部屋へと入って行くのだった。 リオ 「な、何なのこの部屋?」  その部屋は使用人のプライベート空間の部屋とは似つかない、研究所の様な部屋だった。窓も無く、とても外へと脱出できる様な部屋ではなかった。脱出できないなら意味が無いと思い、リオはすぐに部屋を出ようとしたのだが── リオ 「はぁ…!?ちょ、ドアが開かない!」  いくらドアノブをガチャガチャと動かしても、全くその扉は動かない。解錠するレバーなども見当たらず、完全にオートロックされてしまったのだ。 リオ 「まさかあのトロい女にハメられた…!?」  自分が見下していた無能そうな女の罠にまんまと引っ掛かってしまった事に屈辱を受けるが、今はそんな事を考えている場合ではなかった。突如部屋に設置された機械が起動し、何やら音を立てていた。 リオ 「やっぱり罠だったのね……!急がないと…!」  様々な機械が設置された部屋へ閉じ込められ、その直後に部屋の機械が作動したという事は、何かしらの罠が作動するという事であり、一刻も早くこの部屋を脱出するか、その機械を停止させなくてはならないのだ。 リオ 「ん…?何…?」  部屋の中央の天井に設置された箱型の機械、それが起動し音を立てていると気付いたリオ。そのタイミングで、箱型機械の下部、つまり床に向いた面から、人の手のひらよりも僅かに小さな穴が2つ開いた。それは見るからに何かが降り注いで出てくるだろうと、すぐに予想できた。 リオ 「なっ……!!あれは……、ガス!?」  その穴から、白く濁った気体がシューっと音を立てながら少しずつ出ていたのだ。 リオ 「催眠ガスの様な物で眠らせるつもりか、あるいは命の危険に関わるものかも知れない……!」  とにかくガスの噴射を止めようと、リオはその機械の下へ急いだ。 リオ (……!?)  まだリオは、至近距離で大量にそのガスを吸い込んだ訳でもなければ、部屋中に充満している訳でもない。だがリオは、そのガスの影響により一瞬だがめまいの様な症状を感じ倒れそうになってしまった。 リオ (このガス、やっぱり催眠の類か…!)  幸い、すぐに鼻や口を手で塞いだ事で体内に入ったガスは少量で済んだお陰で、すぐに体調は戻ったが、この状態のまま部屋を調べて機械を止めるには時間が掛かり過ぎてしまう。それまで息を止めるのは不可能だ。  そこでリオが考えたのは、機械からガスを出している穴を直接塞ぐ事だった。天井に設置された機械だが、その真下は少し高台になっており、手を伸ばせばギリギリ穴に届く距離で、両手で塞げばガスの排出をとりあえずは凌げるという訳だ。  リオは息を止めながら機械の真下まで素早く移動し、両腕を上げ手のひらでそれぞれの穴を塞ぐ事に成功した。だがまだその周辺はガスが漂っている。しばらく部屋中に拡散されるまで息を止めじっと堪えていた。 リオ 「…………………………………っはぁ……!っはぁ、っはぁ、っはぁ……。」  しばらく耐えてはいたが、やはり限界が来てしまいリオは慌てて呼吸する。だが部屋にある程度ガスが拡散された事で、呼吸してもガスの影響を受けずに済んだ。 リオ 「ふぅ……、何とかガスの噴出は防げたけど、早くこれを止める方法を見つけないと。」  背伸びをする程ではなかったものの、両腕を目一杯上げていないとしっかりと穴を塞ぐ事ができない。長時間腕を上げ続けるという行為は困難を極め、このままではいつか疲れ果てガスの餌食となってしまう。だからリオがピンチの状況は変わっておらず、急いで機械を止めなくてはならないのだ。 リオ 「この機械には……、スイッチみたいな物は無いか……。」  機械の真下から、停止スイッチなどを探してみるが、少なくとも穴のある面には何も無い。穴を塞ぐのでギリギリの高さでは、仮に横面にスイッチがあったとしても届かない。 リオ 「やっぱりこの機械を動かしてる大元がどこかに……っひあ!?」  部屋中を見回しそれらしい機械を探していると、突然リオの足元から鎖に繋がれた金属の枷が2つ飛び出し、それぞれがリオの両足首に装着され、リオはその場で足を拘束されてしまったのだ。 リオ 「なっ……!まさかこれも罠……!?」 (私がここに立って手で穴を塞ぐのも計算の内って訳ね……。)  これでいよいよこの場で穴を塞ぎ続ける以外の選択肢がなくなってしまったリオ。だがこうなってしまっては、助かる手段がなくなってしまったとも言える。 リオ 「これは、かなりマズいわね……。」 ??? 「なら、私とゲームしましょうか❤」 リオ 「だ、誰!?」  1人密室に閉じ込められた筈だったが、突如女性の声が聞こえ慌てるリオ。その声の方へ顔を向けると、部屋の唯一の扉の前に女性が立っていた。  彼女の名前はメリッサ。メリッサはこの世界トップクラスのセレブ、つまりお嬢様であり、この屋敷は彼女の別荘なのだ。リオもここがメリッサというセレブの屋敷だと承知で侵入したのだ。つまり、泥棒に狙われるぐらい有名なセレブで、それだけのお宝を所持しているという事だ。  メリッサはカメラでこの状況を見ており、リオの足を拘束した事で逃げれない状況を作った事で、堂々と部屋の鍵を開けて入ってきたのだ。 メリッサ 「それはこっちのセリフですわよ?ここは私の屋敷で、人の敷地に勝手に踏み入れてるのはあなたですのよ?」 リオ 「って事は、あんたがメリッサお嬢様ね?それより、お嬢様が何て格好してるのよ。」  お嬢様の服装と言えば、丈の長いワンピースドレスなどをイメージするが、彼女が着ていたのは、露出度の高いレザーの服に同じくレザー生地のショートパンツであり、まるで女スパイかの様なその見た目はとてもお嬢様とは思えない服装だった。 メリッサ 「これは私の正装ですのよ?つまり、あなたとゲームをするにあたり、私自身のテンションを高める為の服装なのですわ❤」 リオ 「ゲーム……?そういえば、さっきもそんな事言ってたわね。」 メリッサ 「えぇ。あなたがこのゲームに勝ったら、そこから解放して差し上げますわ。何なら、あなたの好きな宝石をお持ち帰り頂いて結構ですのよ?」 リオ 「随分と気前が良いじゃない。」 メリッサ 「そうでしょう?私はただあなたと楽しくゲームがしたいだけですので❤」 リオ 「ふん…!どうせ卑怯で理不尽なゲームなんでしょ?それに私が勝ったとして、ホントに解放してくれるのかしら?そんな保証も無いじゃない。」 メリッサ 「確かに保証はありませんし、信用できないのも仕方ありませんわよねぇ。ですが例えそれが嘘で、更にこのゲームが卑劣なものであろうとも、あなたに拒否権がありまして?」 リオ 「くっ……!」  両手を頭上に上げたバンザイの姿勢を強いられ、両足は鎖に繋がれ拘束されているという、極めて不自由な状況だ。何よりどちらにしろ大ピンチのリオにとって、このゲームが罠であろうと受けるしかないのである。 リオ 「……そうね、どうせここから動けない訳だし、いつか疲れ果ててガスにやられるだけだし?良いわ、折角だから付き合ってあげるわ。」 メリッサ 「随分強気ですわね。でもお陰で益々楽しめそうですわ❤ではルールを説明致します。」  そう言いながら小さなリモコンを手に取り、リオの方へ向けそのスイッチを押した。 リオ 「なっ、何……?」  初めは自分に向けられた事で焦り声を上げたリオだったが、すぐにそれがリオの真上にあるガスを出す機械へ向けられたものだと理解した。というのも、メリッサがリモコンのスイッチを押した瞬間、その機械がリモコンに反応し、ピッと音を立てたからだ。 メリッサ 「今タイマーを30分に設定しましたわ。30分後にその機械はガスの生成、排出を止め、それに連動しあなたの足枷が外れますわ。」 リオ 「成程ね。つまり、その間こうして穴を塞ぎ続ける事ができれば私の勝ちって訳ね?」 メリッサ 「とてもシンプルでしょう?どうか頑張って下さいな❤」 リオ (ルールはシンプルだけど、このゲームがそんなに甘い訳がない。)  30分もの間腕を上げ続けるのは勿論簡単な事ではないが、リオが思ったのはそういう意味ではない。自分にエールを送りながらゆっくりと近づいてくるメリッサ。それを見てリオは確信した。 リオ (この体勢のまま身動きできない私を、好き放題責めて妨害して、腕を強引に下ろさせようって訳ね……!)  ただリオが腕を上げ続けるだけのゲームが、メリッサにとって楽しい訳がない。つまり身動きできないリオを一方的に責め、メリッサはそれを楽しみながらリオに耐えさせ、最終的にこのゲームに敗北させようとしているのだ。 リオ 「あんたの考えてる事ぐらいお見通しよ?どうせ私をいたぶって強引に腕を下ろさせるつもりなんでしょ?」 メリッサ 「ふふふ……、よくお分かりな様で嬉しいですわ❤私に何をされても……、しっかり耐えて貰いますわよ?でなければ面白くありませんので❤」  そう言いながら、いよいよリオが登った台の目の前まで近づいて来たメリッサ。それに対し、リオはメリッサに脅しをかける。 リオ 「悪趣味なお嬢様ね。でも良いの?この距離でもし私が腕を下ろしたら、私と一緒にあんたもガスを吸う事になるわよ?」 メリッサ 「それなら問題ありませんわ。そのガスの成分を中和するワクチンを私達は接種していますので、お気になさらず。」 リオ 「あっそ……。」  リオが腕を下ろせば部屋中にガスが充満する。ならばメリッサもそのガスの被害に会う筈だと考えたが、メリッサはゲームを楽しむ為の準備を怠ってはいなかった。メリッサの仕掛けたゲームは、相手が不利になるルールと対策も万全だった。  いよいよ身動きできないリオの背後にまでやってきたメリッサ。タイマーを起動させてからまだ2分、これからリオにとって地獄のゲームが始まるのだ。 リオ 「わざわざ私の後ろに立って……、一体何する気よ……?」 メリッサ 「うっふふ……❤私はただあなたの身体を堪能したいだけですのよ?」  リオの身体を舐め回すようにジロジロと見つめるメリッサ。肌の露出が多いリオのその素肌を観察され、リオは思わず恥ずかしさを覚え頬を紅潮させる。 メリッサ 「っふふ、良いですわねぇ。堪りませんわ❤」 リオ 「なっ、何なのよ……!そんなジロジロ見ないで……!」 メリッサ 「そんなに声を荒らげないで下さいな。もっと楽しく笑顔になりましょう?」 リオ 「何が楽しくよ。こんな状況で笑える訳ないじゃない……!」 メリッサ 「そうかしら?きっと笑えると思いますわよ?」 リオ 「はぁ…!?さっきから何を言って──ひぅ……!!」  メリッサの訳の分からない発言に戸惑っていたリオだが、突然何かに驚いたような声をあげた。その理由は、メリッサが不意にリオの腹部を指先で触れたからだ。 リオ 「くっ……!何、してるのよ……!」  着丈の短い服を着ている上に両腕を真っ直ぐ頭上に上げている事で、服が引っ張られる形となりリオの引き締まった腹部が露わとなっている。まるでそういう行為を求め誘っているかのように晒されたそのくびれや腰回りを、メリッサは誘惑に応えるようにサワサワと撫で上げた。 メリッサ 「素敵な肌触りですわぁ❤こんな肌を露出して私の目の前で晒しているんですから、触られても仕方ありませんわよね?」  その淫らな手付きに嫌悪感を覚え、リオはその手を払い除けたいと思っているのだが、穴を塞いでいる両手を離す訳にはいかない。だから自らそれを受け入れるように耐え続けなければならないのだ。 リオ 「んっく……!どんな理屈よ……!大体、っくぅ……、あんたの方が、露出してんじゃない!」 メリッサ 「私はそれを目的としていますが、あなたの場合は不本意な結果でしょう?そこにまたエロさを求めてしまうんですのよ❤」 リオ 「結局……、んんっ…!ただの、変態って訳ね……!」 メリッサ 「まあ間違ってはいませんわ❤うっふふふ、ここも魅力的ですわねぇ。お腹の露出と言えば、ここは大事なポイントですわよね。この縦長の綺麗なおへそ❤」 リオ 「んんっ……!!そんなトコ…、触ら、ないで…!」  リオの露出した腹部を指先でなぞるように優しく撫でていたメリッサは、今度はリオの縦長の美しいへそを、ツンツンと人差し指で突っついたのだ。 メリッサ 「どうかしら?先程よりも楽しくなってきましたでしょう❤」 リオ 「これが、っく……!……楽、しい訳、んんっ………!!ない、でしょ……!」  腹部を撫でられながら、へそを突っつくというセクハラのような責めに翻弄されながらも、リオは必死にそれを耐えていた。 リオ (こいつが何をしたいのか分からないけど、これぐらいなら耐えられる……。でも絶対こんな甘い妨害じゃ終わらない。こいつの手の動きに集中して次の刺激に備えないと……。)  腕を上に上げ続けるというルールのゲームにおいて、ただ腹部を触るだけの妨害などあり得ない。もっと性的な行為を行うか、鞭打ちや殴打と言った強い痛みを与える拷問まがいな事が、最大級の妨害だと考えていたリオは、そういった攻撃を不意に受けないように、メリッサの手の動きを意識していた。 メリッサ 「このお腹やおへそも素敵ですけど……、ここの魅力には勝てませんわよね❤」 リオ (今度はどこを責めるつもり……?)  メリッサの手の動きを見て、それがどこへ移動していくのか、次に自分はどこをどう責められるのか、そんな事を思い次の刺激に備えたリオ。それでも何をされるか、どこを責められるか分からない不安と緊張感がリオを襲う。でもそれに負け目を逸らせばこの穴を塞ぐ両腕を下ろしてしまうかも知れない。だからその手の動きを嫌でも気にしなければならないのだ。 メリッサ 「ものすごく綺麗でついつい見惚れてしまいますわぁ……❤」 リオ 「ひあぁ……!?」  メリッサの手の動きを注視する事で次に責められる場所を判断しようとしていたリオだったが、その手はリオの腹部を相変わらず撫でており、代わりにメリッサの顔がリオの左ワキに接近していたのだ。  頭上にある機械の穴を塞ぐという行為は、両腕を真っ直ぐ上げるという事で、ノースリーブの服を着ているリオがその体勢になれば、必然的にワキが晒される事となる。  ムダ毛や黒ずみなど一切ない綺麗なリオのワキ。そんな素肌のワキにメリッサの唇が触れそうな程に近づいており、その吐息がワキに触れた事に驚き、リオは声を上げてしまったのだ。 メリッサ 「うふふふ……❤そんなに驚いてしまいましたか?随分と可愛らしい反応ですわねぇ❤」 リオ 「ちょ、ちょっと……!んんっ……!!っく、やめ、なさい…!そんなに顔……、近づけて、喋らないで…!んっく…、息、かかってるからぁ……!」  超至近距離までリオのワキにメリッサの顔が近づいており、そこでメリッサが喋る度に、リオのワキに吐息がかかりその都度リオはビクッと反応してしまう。 メリッサ 「あら?顔にかかってしまいましたか?ですが、ちゃんとブレスケアはしていますから、そんなに悪い匂いはしないと思いますが❤」 リオ 「んっ!違うっ、うっく……!息がかかってるの、顔じゃない……!」 メリッサ 「では、どこにかかっているとおっしゃいますの?」 リオ (こいつ…!)  リオの左ワキに息がかかるように喋るメリッサは、あえてその場所をリオに言わせようとしていた。リオもメリッサのその意図を汲み取ったが、自分からビクッと反応してしまう場所を敵に言うのは抵抗があった。 リオ 「い、いいからっ!んんっく…!うぅ……!それ、やめて!」 メリッサ (なるほど、やはりそういう事ですか❤)  あえて言葉にしなかったリオに対し、メリッサは自分の中のある考えを確信に変え、喜びに満ちていた。だからあえてその事には触れずに責めを続けた。 メリッサ 「うっふふ、そんなに吐息がかかるのが嫌ですの?」 リオ 「んっ…!だっ、誰だって、嫌よ……!」 メリッサ 「ふぅ〜〜❤」 リオ 「ひあぁああ……!?」  妨害手段がワキへの攻撃だと理解して警戒していたリオだが、そのワキに息を吹きかけられた事で、リオは思わずそのワキを庇うために腕を下ろしてしまったのだ。 リオ 「くぅ……!!」  それにより塞がっていた穴が開放され、機械内に溜まっていたガスがリオに降りかかる。そのガスを少量吸い込んでしまったリオは、めまいを誘発し倒れそうになるのを必死に我慢し、息を止めながら再び穴を塞ぐため両腕を上げた。 メリッサ 「よく耐えましたわね❤でももう少し息を止めていないと、まだこの辺りにガスが残ってますわよ?」  そんな事は言われなくても分かってる…!と思いながら、リオは息を止めながらメリッサを睨みつける。両腕を上げなければならない上に息まで止めておかなくてはならいリオに対し、メリッサは更に責め立てる。 メリッサ 「ふっ……❤ふぅ〜〜❤」 リオ 「んんーー!んっく……!んふぅ……!!」  再びワキに息を吹きかけられ、リオは思わず声を上げそうになるが、息を吹きかけられると分かっていればまだ我慢はできる。その攻撃も必死に耐えたが、メリッサの責めはまだ終わらない。 メリッサ 「良いですわね〜。その調子でもっと頑張って耐えて下さいまし❤」  息を吹きかける攻撃に耐えたリオに対し、寧ろ喜びを感じたメリッサは、今度は右手をスッと上の方へ移動させ、人差し指でツンっとリオの右ワキに触れたのだ。 リオ 「んひあぁああぁぁ!!?」  ずっと左ワキに感じる吐息と戦っていた中で、急に右ワキに指先が触れた事で、口を閉じ息を止めていたリオが吹き出してしまった。そしてそれと同時に今度は右ワキを庇うように腕を下ろしてしまったのだ。 リオ 「うっ……!このっ……!!」  今度は腕を離してしまった瞬間に、ガスの噴出を止める事をすぐに思い出し、すぐにまた両腕を上げ穴を塞いだ。それにより漏れ出たガスはすぐに抑えられ、息を止める時間も一瞬で済んだ。 リオ 「…………っはぁ、はぁ、はぁ、はぁ……。」  必死に酸素を求め呼吸しながら、リオはまたメリッサを睨みつけた。それは自分を苦しめた事による怒りよりも、辱められた事への屈辱感を表していた。 メリッサ 「そんなに怖い顔をしないで下さいまし。さっきも言いましたでしょ?もっと楽しく笑顔になって頂きたいのですわよ❤」 リオ 「……!!」  しつこく“笑顔”という言葉を使いゲームを楽しもうとするメリッサ。そしてさっきまでリオが受けてきた妨害。それらによってリオはメリッサの言う“笑顔”の意味に気付き始めた。そしてそれと同時にリオの脳裏には嫌な予感が過ってしまった。 リオ 「なるほど、笑顔ってそういう意味ね……。想像以上に悪趣味なゲームじゃない……!」  メリッサが楽しむゲームの本質を理解してしまったリオ。でもだからと言って許しを請う訳にはいかない。だから悪態をついて強気な言葉で返したのだ。 メリッサ 「っふふ❤そうでしょう?これからたぁ〜っぷり責めてあげますから、覚悟しておきなさい❤」  そう言ってメリッサは、リオの両ワキに手を移動させる。本格的にリオのワキを責めようと、その両手をワキワキさせてこれからしようとしている事をリオにアピールする。その指の動きは、リオに再び大きな緊張感を与える。  自分が受ける妨害を理解した上で強気に返したリオだったが、それは弱気になったら耐えられないと自覚していたからだ。その行為を苦手としているからこそ、脳裏に過ったのは嫌な予感だったのだ。 リオ 「んんっ……!!くっ、……ふふふ!」  メリッサはあえて人差し指だけをピンと立てると、それをリオの両ワキに添えたのだ。人差し指がワキに触れただけでまたしてもビクッと反応してしまうリオ。だがメリッサの攻撃はまだ終わっていない。そのワキに触れられた人差し指を、ゆっくりと上下に動かしなぞり始めたのだ。その指先の動きに、リオは笑いを堪えるように我慢していた。  リオが笑いそうになるのも無理はない。メリッサの指先がワキに触れればどういう感覚を受けるのか、それは一目瞭然である。 リオ (ヤバい……、くすぐったい……!)  無防備に晒されたワキ。そこに触れ上下になぞるように動く人差し指。普通の人間にとってそれはくすぐったいと感じる刺激であり、リオも例外ではない。くすぐったければ、人はついつい笑ってしまう。つまり、メリッサがリオに求めていた笑顔とは、“くすぐり”による笑いなのである。 メリッサ 「辛いのでしたら、腕を下ろしても良いんですわよ?それとも、触られたいのでしょうか❤」 リオ 「うる、さい……!そんな……、っくく、訳ないでしょ……!っふふふふ、んんっくくく…!」  一定のリズムで淡々とリオのワキを上下に移動するメリッサの人差し指。ただそれだけなのに、リオにとってはこれ以上ない程の妨害効果を発揮する“くすぐったい”という感覚。だがこれは身動き出来ない状況であれば、子供のお遊びという概念を覆す立派な拷問だが、リオにとっては何よりもくすぐられている場所が問題だった。 リオ 「くぅぅっ……、っくくく、んんっ…!んっ、ふふふふふ……!」 (いつまでそこをくすぐるつもり……?)  人並みにくすぐったがりなリオだが、その中でもワキは特にくすぐりに弱いという自覚があった。そんなワキを自ら晒し続けた状態で、くすぐったさに耐えなければならず、リオにとってこれ程辛い事はなく、まさに悪趣味なゲームと言わざるを得ない。 リオ 「きっひひひひひ、んんっふふふふふ…!」 (いい加減、ワキ以外の所をくすぐりなさいよ……!)  腹部を責めていた時は、より効果的に効く“弱点”を探すかの様に、くすぐる場所を変えていたメリッサ。つまり、逆にリオからしてみれば、ワキをくすぐられていてもそこが弱点ではないと思わせる事が出来れば、別の場所をくすぐろうとメリッサの指が移動するのでは、と考えていたのだ。だが、そんなリオの願いに反し、メリッサの指は中々移動せず、執拗にワキばかり責めていた。 メリッサ 「どうですか?くすぐったくて、笑いたいんじゃありませんの?」 リオ 「くっふふふ、調子に……、乗らないで。っくくくく、こんなの、………くすぐったくなんか、ないわよ……!!」  どれだけくすぐったくても、腕を下ろしてワキを庇う事も、メリッサの手を払い除けワキを守る事も、メリッサのくすぐりから逃げる事もできない。寧ろ「どうぞ好きなだけくすぐって下さい」と自らワキをメリッサに差し出さなければならない。だからせめて口では強気な言葉を発し、負けないという気持ちを持ち続けていないと耐えられないのだ。 メリッサ 「そうですの?私にはくすぐったさに必死に耐えながら強がりを言っているようにしか見えませんけど❤」 リオ 「くぅ……!っふふふ……!!」  自分の状況をズバリと当てられ何も言い返せないリオ。強気な発言も裏を返せばただの強がりで、それを指摘されたのもまた屈辱で堪らず、メリッサへの怒りと何もできない自分へのもどかしさばかりが募ってしまう。 メリッサ 「あなたの口と違って身体は正直ですわよぉ?必死に私から逃れようと身体を捩ってますから、ね❤」 リオ 「うっさい…、わよ……!んっく、んふふふふ…。これぐらい、………ふふふふふ、へっ、平気よ…!」  ワキをくすぐられ続けて、リオが平気な訳がない。メリッサの言う通り、くすぐったさに耐えきれず、本能的に身体が左右に動いてしまっていた。腕を下ろせという脳の命令に必死に逆らい、自らワキを晒し続けるのも相当辛い状況だ。それでも、くすぐったくて余裕がない事をメリッサに悟られる訳にはいかない。こんな子供のじゃれ合いに負けたくない。そんな気持ちだけがリオを頑張らせていた。 メリッサ 「またそんな強がりを。私は分かっているんですのよ?」 リオ 「くっ、ふふふふ…!なっ、何が……?んっふふふふ…!一体……、何の…、話し…?」  メリッサの言葉の意味が理解できなかったリオ。そんなリオに対し、メリッサはリオの耳元に顔を近づけその言葉の意味を囁いた。 メリッサ 「ここ、弱いのでしょう?」 リオ 「んぁっ……!?」  その言葉を聞いた瞬間、リオは動揺を隠せず驚きの声を上げてしまったが、それも無理はない。ワキが弱点である事を必死に隠し我慢していたのに、それがメリッサには筒抜けだったのだ。 リオ 「なっ、何を……!?あっ、ひひひひひ、んんっくっくっくっくっくっ…!」  しかしそれを素直に認められず、リオは必死に強がり誤魔化す事を選んだ。弱点がバレてしまえば、永遠にそこをくすぐられてしまうと理解していたからだ。 メリッサ 「ですからぁ、このワキが、あなたの弱点なのでしょ❤」 リオ 「んぐぅぅっ……、ふふふふふふ、いっひひひひひひひ……!!そんな、訳……、ないじゃない……!!」  改めて「ワキが弱点だ」と言葉にされた事で、もうリオの強がりなど全く意味を持たない。だがメリッサにその事実を悟られていても、素直に認められないリオは意地でも惚け強がり続けるしかなかった。 メリッサ 「まだお認めになりませんか。では、とっておきのアイテムを使わせて頂きますわ❤」 リオ 「なっ、何を……っふふふ、くっふふ、するつもり……!?」  メリッサが取り出したのは、チューブ型の容器に入ったボディクリームだ。  その容器の蓋を開け、まずは右手の人差し指に少量のクリームを出すと、容器を持ち替え今度は左手の人差し指にもクリームを出す。それをリオのワキ全体に広がるように塗り始めたのだ。 リオ 「ちょっ……!っひひひひひ、んんっふっふっふっふっふっ……!!やめ、なさい…!っくくくくくくく!」  ワキの表面に広がるクリームは、肌の滑りを良くし、ワキ全体を人差し指で撫でられる事で強いくすぐったさを与えてくる。そのくすぐったさに徐々に耐えきれなくなり、僅かに手が穴から離れてしまう。それによりガスが漏れ出し、リオは慌てて穴を塞いでは笑い声を出さないようにしながら、呼吸を止めてくすぐったさと戦いながらガスが散漫するのを待つ。 リオ 「んんっふふふふふ…!きっひひひひひひひひひ、くっくっくっくっくっ……!!」  そんな事を繰り返している最中、リオはずっと考えていた。「どれ程の時間が経ったのだろうか。あと何分このくすぐったさの中、腕を上げてワキを晒し続けなければならないのか。」と。嫌でもそう思ってしまう程に、リオに余裕がなくなっており、もうこれ以上は耐えられない、とつい弱気な感情が溢れ出てしまう。 リオ 「んひひひひ、んんんっふふふふふふふ…!あひひひひひひひひひ……、まだ……、なの……?くっ、ふっふっふっふっふっ、いつまで、続くのよぉ……!」  そんな弱気な感情で埋め尽くされたリオは、無意識の内に残りの時間を教えろとメリッサに訴えていた。このセリフは自分がもう耐えられないと宣言しているようなもので、それをメリッサに悟られた時点でもう勝負はついていた。 メリッサ 「あらあら、もう限界みたいですわね❤」 リオ 「きっひっひっひっひっ…!いいからぁ…、っふふふふふふ、教えなさいよぉ……!っふふふふふ、いひひひひひひひひ……!!」 メリッサ 「残念ですけど、まだ10分しか経っておりませんわ。」 リオ 「なっ…!?っあひひひひひひ、まだ……、10分……!?」  それは絶望を告げる言葉だった。これだけ長い事腕を上げ続け、くすぐったさと戦い続けていたのに、まだ半分以上も残っていると告げられては、強気になど振る舞える訳もなく、その精神的ダメージは半端なものではない。その上、肉体的にも限界を迎えていたリオに、あと20分も耐えられる気力など無かった。 リオ 「もう、っひひひひひひ無理ぃいいいっひひひひひひひひ!!」  ワキを執拗に責めるメリッサの人差し指に耐えられず、そのワキを庇う為リオは両腕を下ろしその場にしゃがみ込んでしまった。するとガスが穴からどんどん排出されリオに降りかかる。  息を止めて耐えなくてはと思いながらも、くすぐられ続けた事による疲労がそれを許さず、寧ろ酸素を求め呼吸が荒くなる。その結果、多量のガスを吸ってしまいリオはその場で気を失い倒れてしまった。 メリッサ 「よく頑張りましたわね❤本当はあと5分だったのですけれど、少し意地悪してしまいましたわね❤」  メリッサは聞こえていないリオに向かって真実を打ち明ける。実際、リモコンには5分と表示されており、これは弱気になったリオに対し絶望を与える為の嘘だったのだ。つまり、リオが強気に振る舞い続けていれば、あるいは本当に解放して貰えたのかも知れないが、どちらにしろリオに耐える体力など残されてはいなかっただろう。 メリッサ 「敗者には罰を与えなくてはなりませんわね。どうぞ楽しんでいって下さいまし。くすぐり地獄を、ね❤」  数分後、リオはメリッサの使用人達に担がれ、地下の拷問部屋へと運ばれてしまうのだった。


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