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鷹取リュウゴ
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生皮鬼 15

15副理事長を暴け  『贄島 益体(にえしま やくたい)』 副理事長の名は賀名生学園のホームページで確認ができた。 ただ、画像は載っていなかったのでどんな顔なのかは分からないままだ。 夏休みや冬休み前の終了式に参列していたかも知れないけど、ハッキリ言って真面目に聞いてなんかいなかったから椅子に座っている人物の中の誰が副理事長なのかなんて俺だけじゃなくて全員把握していない。 「ヤツがいつ学校に来るかなんて分からないだろ? だったらどこに住んでて普段はどこに居るのか、ってのをまず探らないとな」 公園で円陣を組んでチーム『生皮鬼(なまがわき)』を結成した後、軽く、と言っても3時間ほど鬼に変身してセックスを愉しんだ日の深夜、俺たちは再び賀名生学園の前に集まった。 「生駒先生たちとも協力すべきじゃないか?」 との意見も出たが「いや、これ以上人数を増やすと俺たちの動きを読まれる可能性がある。 ついでに言えば先生方と俺たちじゃ立場が違うから色々と制約も出てくるだろう」と、多数決で否定された。 味方を欺いてるような気がして申し訳ない気持ちになったけれど、ある程度きちんと情報が集まってから報告したって遅くは無い、と俺も腹を括る。 まずは贄島副理事長の家の場所を探る事にした。 校長室か理事長室にある役員名簿を見ればすぐに分かる……筈だけど、理由を明かさず「副理事長の名簿を見せてくれ」と言ったって見せてもらえる訳がない。 なので、こうして夜になるのを待って理事長室に忍び込むことになったんだ。  ひとりでに体を包み込む鬼の皮の感触に、俺はとっくに病みつきになっている。 エロい快感にチンポをおっ勃てながら湿り気のある鬼の生皮を着ると、たちまち筋肉がボコボコと膨れ上がって皮膚は赤く染まる。 「ぅあ、んぅ、きもち、イイ……」 つむじから鋭い角がズブブと生え、バッキバキに逞しくなった大胸筋の上にツプンと突き出た立派な乳首にはリングピアスがぶら下がり、臍の周りには黒い淫紋がジワリと浮かんでくる。 こうして紅色の求性鬼、いや、生皮鬼の「カギロイ」に変身した俺は、家々の屋根伝いに跳躍し賀名生学園の前へとやって来た。 カギロイは俺の中で黙ったままだ。なんとなくだけど余計な口出しは控えて、お手並み拝見と言う雰囲気は伝わっている。 ほどなく生皮鬼「アラカネ」と「ムグラ」が現われた。 「全員そろったみたいだな」 「待て待て。俺たちを忘れないでくれよな」 声がした方を振り返ると元邪鬼だった三体の生皮鬼「カイナギ」「サメガイ」「ドロヅミ」――が立っていた。 「いつのまに?」 ムグラの問いにはサメのような頭をしたサメガイが答えた。 「先に来て待っていたんだ。皆で地中に隠れてな」 そう言えばサメガイにはコンクリートのような固体の中でも水中のように潜ったり通り抜ける能力があるんだった。 「そうだったのか。じゃぁ早速理事長室に忍び込んで名簿を――」 「お前らが遅いぇんで副理事長の住所は先にもうゲットしちまったぜ」 「早っ!」 サメガイがメモを拡げて「へへ」、と自慢気に笑った。 「金庫の鍵を開けたのは俺なんだがなぁ」 ドロヅミが腕の先をドロリと液状化させてゆらめかせた。さしずめ金庫の隙間にドロドロにさせたカラダを滑り込ませて内側から解錠したのだろう。 「と言う訳で俺の出番はまったくなかった。ははは!」 カイナギは乾いた笑い声を上げた後、巨大な剛腕をだらりと下げた。 人であれ鬼であれ「向き、不向き」ってのはあるものだ。 ともあれ、書き写したメモを見てみると副理事長「贄島 益体」の住まいは賀名生学園から5キロほど離れた場所だと知れた。 「このまま乗り込んでやろうぜ? その方が敵にとっても不意打ちになるだろ?」 ドロヅミが大胆にも急襲しようと提案してきた。けど、再び邪鬼化した生徒が現れ延期した学園祭が中止になってしまっては後の祭り。 時間制限がある以上、動ける時に動いた方が良い、と俺も他の鬼たちも同意した。 また建物の屋根伝いに移動しようと腰を落としたらカイナギがストップをかけた。 「移動だったら俺に任せてくれ。できるだけ早い方がいいだろう?」 まぁ、そりゃそうだが、と答えると、カイナギは右腕をボコボコ肥大させ巨木の幹のような太さに変えたかと思うと、俺たちのカラダを掴んで思いっきり「ブンッ!」と空に放り投げた! 「どわわぁあああああーーーーーーーーーーーっ!」 とんでもない速さで空中に投げられ、夜空を横切っていく俺。 いくら鬼のカラダが人より遥かに強靭だとしても、こんな飛行機みたいな早さで地面に激突したらただじゃすまないだろ! と思う間もなく視界には障害物というか、一件のビルの壁面が迫って来た。 「うわわわーーーーーーっ! ぶ、ぶつかるーーーーーっ!」 「大丈夫だ! ほいっ! と」 壁面に到達する直前に俺を追い越して飛んで来た何かが俺のカラダをガシっと受け止めストンと地面に下ろした。 「か、カイナギ!?」 「な? 大丈夫だっただろ?」 「何か」とはカイナギだった。 カイナギは俺と同じように投げ飛ばした他の鬼たちをキャッチしては次々と下ろしていく。 「な? 早く到着できただろ?」 激突しそうになったビルこそメモに書かれていた贄島の住所だった。 「は、早いけどなぁ! おま、そう言う風にするんだったら前もって言えよな! どんだけヒヤヒヤしたと思ってんだ!」 「あー、悪ぃ悪ぃ。説明したら嫌がられるかと思ってな」 嫌がると分かってて投げ飛ばしたのかよ! なんてヤツだ! 「ま、まぁ、方法はともかくあっという間に目的地に到着したんだし。結果オーライって事で許してやれ」 ムグラとアラカネが俺の顔を窺ってなだめる。 「つ、次からは先に言えよな。いきなりあんなコトされたら驚くだろ」 「ははは! 赤いカイナギが真っ青な顔してたもんな」 ドロヅミが俺を指して笑うから「ドロヅミだってドロドロのカラダがガッチガチになっていたくせに」と言い返した。 「まぁ、おしゃべりはそれぐらいにしようぜ。ホラ、見てみろよ」 武骨で素っ気ない10階建てのビルは、一見するとごくありふれたオフィスビルに見えるが防犯カメラがそこかしこに設置され、 正面玄関も通用口も電子ロックが施されていた。 「サメガイの力で俺らを引き入れてくれたらいいんじゃね?」 ムグラの問いにサメガイは首を横に振った。 「ダメだな。音や振動に反応するセンサーまで取りつけられている。入った瞬間防犯ベルが鳴り響いて察知されちまう」 「どうしてそんな事まで分かるんだ?」 「俺の親父の会社で作ってる製品だからさ。防犯用品には詳しいんだ」 サメガイの親父さんてそんな会社に勤めていたのか。 「じゃぁ、どうやって侵入すれば……」 「ビル全体をセンサーが覆っているとは限らないだろう? どこかに隙はあるかも知れない」 そう言ったアラカネが冷静な目でビルを眺めていると、ある一点を指さした。 「見てみろ。あそこに通風口がある」 アラカネが壁面の一点を示した。 3階の窓の脇、そこには直径10cm程の丸い穴が開いていた。 「あの穴からドロヅミが侵入し、防犯機能をオフに切り替えられないか?」 建物の内側にまでセンサーが働いているとは考えにくい。もしもセンサーが作動していたら贄島本人も身動きできないだろう。 「やってみよう。カイナギ、お前の腕力であの穴にピンポイントで俺を投げ込めるか?」 ドロヅミの問いにカイナギが自信たっぷりに頷いた。 「簡単だな」 「なら早速頼む」 カイナギがドロヅミの胴体を掴むとドロヅミはギュルルとカラダを変形させドリルみたいな先端を持つ大きな槍の形になった。 形は変わっても重さは変わらない筈なのにカイナギはドロヅミの槍を軽々持ち上げ、狙いを定めて壁面の通風口に向けてヒュンッ、と投げ込んだ! とは言え、どう見ても通風口には収まり切らない太くデカい槍。 だけど不安は一瞬で消えた。 通風口に到達する寸前、ドロヅミは槍の穂先から全体をさらに細めて一本のロープ状に変え、通風孔の穴の中へ音も無くスルリと滑り込んだのだ。 「――第一段階は成功、かな?」 しばらく待ったが警報ベルは鳴らなかった。 そして、ほどなく通風孔からドロドロとドロヅミが再び這い出し壁面伝いに降りて来た。 「警報装置のケーブルの一部を俺のカラダで置き換えてやった。これで監視カメラはフェイク画像しか映らないし、センサーも俺たちには無反応になった筈だ。 だが、中には警備員が4人いたな」 「4人? だったら問題無いんじゃないか? ワンパン殴って眠らせて置けばいいじゃん」 カイナギの発言にムグラも同意した。 「ちょっと待った。殴っただけでそう簡単に済むだろうか? これだけ厳重な警備を施しているくらいなのだ。警備員だって何かまだ裏がありそうな気はするがな」 アラカネは相変わらず慎重で冷静だ。 「ともかく、ドロヅミがセンサーを無効化してくれたってのに外で突っ立っている訳にはいかない。贄島副理事長がどうしてここまで学園の移転にこだわるのか、どうして邪気や邪鬼の存在を知っているのか、そもそも副理事長とは何者なんだ? ってのを 突き止め、反撃の足場を得るための情報を掴むためにここまで来たんだ」 俺の言葉に他の5体の鬼がうなずいた。 「それもそうだ。弱みの一つくらいゲットしないと来た意味がない」      時刻はとっくに午前0時を超えていた。 隠形の結界を張らなくてもいいくらいに通りを歩く人影は無い。 「よし! じゃぁ、乗り込むとしようぜ!」


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