1同期の二人 「んぐぅぅっ! ぐ、かはっ! ぐお、おおおっ!」 月明かりだけの暗い部屋の中、男は全裸で呻いていた。 「ごあ゛! ダ、ダメ、だ! か、らだ、が、ぁあぐぅっ! お、俺のを゛っ! んんんっ! カラダがあぁ゛! んぉぉぉおお゛っ!」 地底から湧き上がるマグマのような熱い力が体の奥からほとばしり、ドクドクと全身に行き渡り駆け巡る脈動。 ボコボコッ! ゴボォッ! と筋肉がのたうち、有り得ないスピードで肥大し始めた。 「ぐふぅぅぅっ! はひぃ! あぐ! そ、んな!? ぐあ! あああっ! ま、また! カラダが! ぼ、勃起するっ! 勃起しちまうっ!」 ひしめき、せめぎ合う筋肉どもが行き場を求めるように皮膚を押し上げボリュームを増して行く。 最初は意志も持たずランダムに蠢いているようにも見えたが、徐々にその成長には一つの方向性が現れてくる。 「んぐ! ぐひぃぃっ! 俺のぉっ! 筋肉がっ! 筋肉が勃起して! ンンン゛ッッ! んああああっ! イイッ! ギモヂ! イイ゛! 超! ギボヂィ゛イ゛ィィィィーーーーッ」 両脚と両腕を拡げ大の字になって快感に耐える。 男の姿カタチが数分前のモノとはまるで異なるマッチョボディになっている。 股間のペニスは激しく怒張し、ビクンビクンと陰茎を上下に振り乱す不随意運動を行いながらより一層内圧を高めて限界が来る時を待っている。 「ぐお゛ぁ! イグッ! イグイグ! イグゥッ! 俺のセーエキ! ザーメンが! 出る! もう! 射精る゛っ! ィ、イグゥゥーーーーーッ!」 限界を超え極まった快感がペニスの先端から白い体液として放出され始めた! 粘り気が強く固まりかけのゼリーに似た濃厚な性なる体液が凄まじい勢いで吐き出される。 また、精液を吐き出すたびに陰茎はサイズを大きくし、筋肉と同様の成長を遂げて行く。 「んふぅぅ! 出てるっ! ザーメンが! まだ射精るぅっ! はふぅっ! チンポが! スッゲェキモチィッ! はぁぁ゛っ! キモチィィーーーーッ!」 呼吸するかのように一度止まってはまた噴き上がり、そしてまた止まっては噴出、を繰り返す。 快感に喘ぐ男の唇が「マジ、最高だ……」と言葉を漏らしては両手で大きく張り出した大胸筋や腹筋をまさぐり自身の新しい「カタチ」を確かめながらビリビリ感じる興奮に酔い痴れる。 そうして、全身の「勃起した」筋肉と同様に、目を見張るほど巨大に成長した陰茎と睾丸を舐るように両手でねっとりと愛撫し続け次のオーガズムを導くのだ。 ◇ 社員の中から『セルフマネジメントセミナー』を受けたのは「牧野 要」と「坂井 浩平」と言う同期の若手二人だ。 同期で部署も同じだったため何かと周囲から比較されるのは仕方のない事。 しかしながら仕事への向き合い方、進め方が真逆だったため比較はすぐに意味のない物として誰もしなくなっていった。 もう少し具体的に言おう。 牧野は何事も前向きに捉え、受講したセミナーなども仕事に活かして目標を達成してやろうと意気込むタイプだ。 性格も社交的で男女問わず人気が高い。 坂井は逆に、セミナーなど業務に直結しない行動を好まず、人間関係の構築も最小限度で済ませようとする消極的な性格で、 一人で黙々とデスクワークをこなしている姿だけが周りのイメージに残るタイプの人間だ。 当然ながら二人の違いは業績にも如実に現われ、牧野の方が常に上位、優秀だった。 だが、『セルフマネジメントセミナー』を受講した一か月後、業績を大幅に上向かせていたのは「坂井」の方であった。 上司や他の社員たちは「坂井もセミナーを受けてようやく心を入れ替え本気を出すようになった」のだと評価を改めたのだが、 同期で入社し、セミナーのみならず職場でも席を並べて働き、五年にもわたって坂井の「人となり」を見ていた牧野には他の理由があるのではないか? と訝しく受け止めていた。 「お前の方が先に今月の目標に到達するなんて初めてじゃないか? マジで驚きだぜ。先月のセミナーがよほど役に立ったのか?」 会社からの帰りに面倒臭がる坂井を何とか居酒屋まで引っ張り込んだ牧野がジョッキを傾けて咽喉を鳴らした後、ストレートに疑問をぶつけていた。 遠慮なく聞くのは牧野の性格もあるが同期の気安さもあってのことだ。 「セミナー? って、なんの?」 「ちょ、一緒に受けただろう? 先月、『セルフマネジメントセミナー』ってのを。汐留でさ」 「ああ、そんなのあったな」 ツマミの枝豆をぱくりと口にしながら坂井は答えていた。 「そんなのあったな、って今まで忘れてたってことかよ? まったく、坂井は相変わらずなだなぁ」 「て言うか、うちの会社は研修が多すぎだろう? 何かと言えば研修、研修って」 「ありがたいじゃん」 「ああ言うのは本気で頑張りたいお前みたいな奴だけが受けてりゃいいんだよ。俺はひたすら面倒臭い」 「ああん? それは俺へのあてつけかぁ? 本気で頑張った結果、今月はお前に負けてるってのによ」 牧野は少しいまいまし気にスティックきゅうりをぼりぼりと齧った。 「たまたまだろう?」 「たまたま、で社内一位? 俺以外の本気の連中が聞いたら怒りまくるぞ?」 「怒らせときゃいいのさ。……あれ? もしかして牧野、お前もそうなの?」 小鉢の枝豆を一人で食べ尽くした坂井が今度は子持ちシシャモをターゲットにした。 「俺は……別に。怒ってはいないが何か裏があるんじゃないか? とは思っている。最近のお前の仕事ぶりにしたってがむしゃらに頑張ってる感じは全然しなかったしな」 「なんだ? つまりは嫉妬か? みっともないぞ?」 「俺だって嫉妬くらいするっての。日頃、人一倍頑張っているって自負もあるしな」 「なるほど。それで強引に俺を居酒屋に連れ込んで探りを入れに来た、と?」 「その通りさ。で? あるんだろ? 裏が、とっておきの秘密がさ」 秘密にしてくれと言うなら誰にも言わないから、と牧野はさらに坂井に迫った。 ジョッキを空にした坂井がビールと枝豆のお代わりをカウンターの奥へ注文して牧野に向き直った。 「……ま、そこまで知りたいんだったら教えてやらなくもないが……」 「やっぱ裏があんのかよ」 「教えてやらなくもないが、どうしたもんかな……」 「おいおい、ここまで来てもったいつけるなよ。それともなんだ? 俺にまた巻き返されるのを怖がってるのか?」 「ちがうって。牧野って彼女がいただろ? だから、教えちゃっていいのかな、って」 牧野には交際二年目の彼女が居た。現在は互いに「この人と結婚するのかも知れない」、と予感しながら口に出すタイミングを計っているような状態であった。 「アイツがどうだってんだよ? 仕事のコツを教えてもらうのと関係があるのか?」 全然気にしないから是非教えて欲しい! と牧野に懇願された坂井は結局その願いを受け入れた。 「マジで後になって苦情とかナシだからな?」 この場ですぐに「答え」を聞けるものと目を輝かせた牧野だったが坂井から思わぬ「お預け」をくらう事となった。 「まぁ待て。逃げも隠れもしねぇから。明日、明日になったら渡してやるよ」 「渡す、って事は啓発用の資料か?」 「啓発、っていうか開発っていうか、まぁ、ともかくちゃんとお前にだけは渡すから安心しろ」 翌日、出社した牧野は坂井からラベルの無い一本のペットボトルを渡された。 「エナジードリンク?」 「ま、似たようなモンだ。おっと、すぐには飲むなよ? 飲むのは家に帰って一人だけになってから、だ」 「そ、それほど効果が強いのか?」 「まぁ、な。効果は無茶苦茶ある」 「具体的には?」 「ここで具体的に口にするのは憚られるんだよな。強いて言や色々とみなぎって来る、って感じだ」 「ふうん……」 「あと、スッキリもする」 「心身をリフレッシュする、みたいな?」 「リフレッシュなんて生易しいもんじゃない」 「は?」 「いや、とにかく牧野自身が飲んで実感してもらわないと説明しづらいのさ。ただ、飲むときは一人で、家にいる時に限る。 これは絶対に、だ」 「わ、分かったよ。そんな睨まなくたってちゃんと飲むタイミングは言われた通りにするって」