売れない俳優Ⅲ
Added 2023-01-15 03:00:00 +0000 UTC部屋の床に寝かされた俺と彼女。 スタッフが準備している大きなヤカンで、何の拷問が始まるのか、ある程度想像はできた。 それは水責め。 鼻に小さな呼吸穴しかないので、水を掛けられればむせかえるのは火を見るより明らかだ。 そして、心の準備もろくにできないまま、「よーい、スタート!」の声が掛かった。 「さあ、拷問を始めよう!」 塩谷のセリフ。 「まずは水責めだ!」 そのセリフを合図に俺も彼女も仰向けに寝かさられる。 体を押さえつけられ、頭を振って必死に抵抗を見せるが俺の頭を塩谷の部下が押さえ、顔に直接、水が掛けられる。 水が掛けられるタイミングで大きく呼吸をしようとしたが、マイクロホールマスクでは空気はそれほど入って来なかった。 それなのに、水は入ってくる。 想像していた通り、派手にむせ返す。 むせ返すと俺を押さえつけていた手は離れた。 体を横に向けて、しばらくむせ返す。 俺の次は彼女。 彼女もまた俺と同じようにむせ返り、苦しそうな声を上げていた。 そして、続け様に俺はまた押さえ付けられて、また水を顔に掛けられた。 1度目もそうだったが、水を掛けられている時はいろんな角度から撮影される。 それは彼女も同じだった。 2回の水責めの後、「カット」がかかり、スタッフが俺と彼女の元に駆け寄りタオルで顔を拭きながら、「大丈夫ですか?」と声を掛けてくれた。 俺は大きく頷いて大丈夫と意思表示をしたが、実際ラバーマスクの中ではむせ返った事で鼻水が出て大変な事になっていた。 俺と彼女がスタッフに介抱されている間も、塩谷は俺たちに水責めをしている演技を続けていた。 さまざまな角度の撮影はこの為だったのかと気付かされる。 次のシーンは蝋燭責め。 まずは俺と彼女の体は水浸しにされる。 今しがた、顔への水責めが終わったように見せるため。 蝋燭は和蝋燭を使用すると聞いている。 和蝋燭は融点が低く、火傷するほど熱いわけではない。 蝋は冷えるのも速いために、高い位置から落とせば落下中に冷えて熱さはセーブできる。 垂らす場所を一点に集中することでそこの部分に蝋の層ができ、熱さを和らげてくれる。 さらには、ラバースーツに水を掛けておく事で蝋が冷えるのはさらに速くなるので、実際は熱くないが熱さに耐えている演技が求められた。 「よーい、スタート!」 の声と共に塩谷のセリフが始まる。 「よく水責めに耐えたな、褒めてやろう、次は蝋燭責めだ、冷えた体にはちょうどいいだろ、ハッハッハァ」 大声で笑う塩谷に釣られて、数人の部下も笑う。 「今度はお前からだ、女!」 彼女の体の上に赤い蝋燭が垂らされる。 「うぅぅ!」 彼女は呻き声を上げて、体を捩る。 だが、縛られた体では逃げる事もできない。 捩ったところへ蝋燭が降り注ぐ。 「いいぞ、逃げろ逃げろ、ホラッ、ホラッ!」 塩谷は楽しむように、蝋を垂らし続ける。 彼女は呻き声を上げながら蝋燭から逃れようと体を捩り続けたのだが、ついには呻き声も上げず、動けなくなり蝋燭を垂らし続けられ上半身が真っ赤に染まった。 「喋らない口はいらねぇ、縛っておけ!」 塩谷の命令に緊縛師 縄元が返事をして、彼女の口を少し開いた感じで何度か赤いロープをグルグルっと頭に巻きつけて猿轡にした。 彼女は呻き声を上げていたが、すぐに大人しくなった。 「次は男、お前だ!」 塩谷は今度は俺に蝋燭責めを開始する。 高い位置から蝋燭を垂らし、ラバースーツに水を塗してくれているお陰もあり、ほとんど熱さを感じない。 火傷はしないが、時折熱を感じると呻き声を上げて、蝋燭責めから逃れる演技をした。 俺の上半身は彼女と同じように真っ赤な蝋で埋め尽くされていく。 蝋の層ができたところは、蝋を垂らされるとほんのり温かくなる程度だが熱さに耐えられないといった演技を続ける。 「そうか、お前も喋らないのなら口はいらねぇよな」 塩谷がそう言って、縄元さんに指図すると俺の口にも彼女同様の猿轡がなされた。 「熱かっただろう、今度は少し風当たりをよくして冷ましてやるよ」 塩谷がそう言って合図すると、縄元さんが彼女に縄を掛けて吊し上げる。 流石は緊縛師、あまりの鮮やかさに見惚れていると、俺もあっというまに吊し上げられた。 俺も彼女も吊るし上げられた状態で放置される。 「1時間もしたら話したくなるだろう」 塩谷がそう言って部屋を出ていく。 部下たちも塩谷に続いて部屋を出て行った。 ここからはなんとか縄を解いて脱出すべく、吊り上げられたまま、なんとかしようとする演技を始める。 吊るし上げられた俺たちの下には分厚いマットが準備され、もしも落下しても怪我をしない処置が施されている。 脱出を試みる演技が終わると今度は吊られたままの演技が続く。 当然だが10分程度で、すぐに塩谷たちが戻ってくる。 部下たちは飯が美味かったなどと話しながら戻ってくる。 当然、演技だ。 「そろそろ1時間か、吐く気になったか?」 塩谷は俺たちを見上げて演技を始めた。 俺たちは微動だにせず、塩谷から顔を背ける。 「まだ、吐く気にはならないみたいだな」 塩谷が手の平を上にして部下の前に手を出すと、部下は鞭を塩谷に手渡した。 吊るされたままの鞭責めが始まる。 塩谷が手にしたのはバラ鞭。 いい音はするものの、音ほどの痛みはない。 早速、俺に鞭が入った。 『バチっ!』 痛々しい音とともに俺の体に痛みが走る、とはいっても耐えられないほどの痛みではないが、激しく体を揺らして痛がる演技をする。 俺に何度も何度も鞭が入り、上半身の赤い蝋が割れて床に飛び散る。 鞭が一旦止まると、塩谷が彼女に向かって言う。 「鞭は痛いぞ、そろそろ吐く気になったか?」 彼女は吊るされたまま塩谷から顔を背ける。 「お前もか、じゃあ、俺の鞭を味わえ!」 『バチっ、バチっ、バチっ!』 彼女にも激しく鞭が打たれる。 蝋が床に飛び散るまでは、同じだが塩谷の鞭は止まらない。 しかし、塩谷が鞭を打っているのは蝋が赤い垂らされたマット。 カメラは床に飛び散る蝋だけを撮影していた。 「カット!」の声とともに鞭責めの撮影が終わり、俺も彼女も縄が緩められて下ろされた。