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毒の聖女

 聖女。その力は女神から授けられたものであり、魔王軍により傷ついた者たちを癒すために使われていた。  その聖女は、特に毒を癒す力に長けており、日に何十人もを癒し続けている。  その治療を一度受けた者たちは、毒に蝕まれることだけは避けるようになったと言われている。     ◇ 「大丈夫です。すぐに治してあげますから」  全身に毒が回り、その苦痛からか暴れ出す男の手を優しく握る。  聖女になにかあってはいけないと、周囲の者たちは手足を押さえつけ、男が身動きを取れないようにした。 「怖がらなくていいんですよ。すぐに治りますから」  そう言いながら、聖女はスカートをたくし上げると、金色の毛がわずかに生えたワレメがあらわになった。  下着は穿いていないらしく、少女の美しい秘部は何も知らない者が見れば、釘付けになるだろう。 「それでは、聖水を与えます」  男は知っていた。  聖女がどのようにして毒を治療するのか。  聖水と呼ばれるものの正体を。  それが、毒以上の苦しみを己に与えるということも。  チョロ…………  川のせせらぎのような音。  それは、やけに鮮明に男の耳に届いた。 「ふぅ……きもちいい……」  ジョボボボボボボボ…………  その音が、すぐに下品なものへと変わっていくと同時に、そのワレメから濁流のような黄金の水を放出する。  押さえつけられて身動きが取れないどころか、口まで無理やり開かされた男は、その黄金水が口内に侵入するのを見ていることしかできなかった。 「ううううぅぅうぅ~~!!!」  男は、毒で衰弱した体を無理やり動かそうと、必死の抵抗を見せる。  その様子を見て、聖女は慈愛に満ちた微笑みで、男の頭を優しくなでた。 「大丈夫ですよ。その毒は、私の聖水でしっかりと癒して差し上げますから」  ジョボボボボボボ……  しかし、下半身からは絶え間なく聖水と呼んでいるおしっこが排泄され続けている。  それは当然、抵抗できない男の口の中へと吸い込まれていく。  吐き出そうにも次から次へと勢いよく小便が注がれるため、男の意志とは無関係に聖女のおしっこが胃に収められていく。 「がああぁあ!!」  そのおしっこは、たしかに一般女性がするものとは違っていた。  最初に感じるのはその悪臭。長年掃除されていないトイレのように、凝縮されたアンモニア臭は涙が出るほどに臭い。  次にその色。まるでペットボトルに入れて数年放置したような、黄色を通り越した茶色の尿は、どれほどの雑菌がいるのか想像したくもない。  最後にその味。当然、おしっこなど飲むのは初の体験だ。しかし、どんな女性だって、こんなにも吐き気を催す濃い味の小便などしないだろう。  もはや、毒を飲まされているのと変わらない。  毒に犯されてたこの体を、聖女のおしっこという別の毒が新たに犯そうとしているだけだ。  結果的には、ここにくるまでに自分の体を蝕んでいた毒は消え去るだろう。  しかし、それは聖女のおしっこというより強い、より凶悪な毒に淘汰されたというだけだ。  シュイイイイイイ……! 「あ……いっぱい出てます。よかったですね。これなら、絶対にあなたの毒は治りますよ」  もうそんなことはどうでもいい。  頼むから、自分の体から毒を追い出さないでくれ。  男はそれだけを願い続けた。  治療という名の拷問が始まってから、すでに自分はジョッキ数杯分の小便を飲まされた。  それだけの毒をあおったら、普通ならとっくに死んでもおかしくない。  しかし、いくら毒より凶悪とはいえ、聖水を自称するだけはあり、男は死ぬことさえできずに苦しみ続ける。 「死に……た……い」 「だめです! そんなふうに諦めてはいけません! 必ず治しますから、がんばって耐えてください!」  耐えろというのか。  この猛毒を飲まされ続ける悪魔のような所業を。  ただの水であったとしても、これほどの量を一気に飲まされるのは苦痛だ。  現に男の腹は、徐々に妊婦のように膨らみ始めている。  もう飲めない。もう飲みたくない。だというのに、聖女の放尿は終わってくれない。 「そろそろ毒が体から消え去ったようですね」  無限に続いたかのように感じた苦行。  しかし、それはようやく終わったのだと、聖女の言葉で知ることになった。  耐え切った。自分でもうそのようだ。何度死にたいと思ったかわからないが、とにかくこれであの悪夢のような出来事は終わる。  そう思っていた男の耳に、地獄に突き落とすような言葉が届いた。 「でも、おしっこ、じゃありませんでしたね。えっと、聖水はまだ出し切っていないので、もう少しつきあってくださいね?」 「そ、そんな! 話がちがああっっ!!」  ジョボボボボボボ…………  抗議する声をかき消すかのように、男の口に再び小便が流し込まれる。  治療は終わったと確かに言っていた。  なのに、ただの生理的欲求を満たすために、自分が小便を飲まされる必要はあるのか。 「ふ~……やっぱり、聖水の量は日に日に増していますね。これも女神様の加護なのでしょうか?」  すでに何リットルものおしっこを飲んだというのに、聖女のワレメから流れてくる小便の勢いは変わらない。  それは、この行為がまだまだ続くということを想起させてしまい、男は再び狂ったように暴れようとする。 「だめですよ。大人しくしてください」  しかし、聖女のその一言で、男の体は自分のものでないかのように、動きを止めてしまった。  気がつくと、最初に自分を押さえつけていた者たちはすでにいない。  まるで、自分が聖女の言葉を従順に聞くようになるということが、わかっていたかのようだ。 「口をもっと大きく開いて、聖水を一滴も漏らさずに飲んでくださいね」 「い、嫌だ……聖水は嫌っ!!」  ジョロロロロロロロッ…………  言葉を発することさえも許されない。  聖女のおしっこが再開された途端に、自分の口は言葉を放つことよりも、目の前の汚液を飲むことを優先してしまった。  なにが聖水だ。こんなの腐りきったドブ川よりもおぞましい。  あまりのも濃い塩辛くて苦い味が舌を痺れさせる。腐敗した体液が体の中から悪臭を鼻に伝える。  だというのに、自分は聖女の命令に逆らえずに、意思とは反して体がおしっこを飲み干そうと動き続ける。 「いい子になってくれたようで嬉しいです」  優しく頭をなでながら、下半身からは拷問のための体液が注入され続けている。  恐ろしい。いっそ、自分を殺そうとするぶん魔王軍のほうがまだ理解可能だ。  目の前の聖女は、たしかに自分をいつくしみ、救うべき存在だと本気で思ってくれている。  だというのに、その仕打ちのなんとおぞましいことか。 「さあ、聖水のお代わりです。心配しないでくださいね? 私、聖水はすぐに溜まるので、あなたが飲み干しても全然問題ありませんから」  問題があるとすれば、それはその聖水とやらが、どんな毒よりも凶悪ということだろう。  そして、それを飲んでも死ねない。死にたくなるほどの苦痛を味わい続けながらも、死によって解放されることはない。 「そろそろ、奥の方のおしっこ……聖水が入ってきますよ。味も濃いので、きっと楽しんでいただけると思います」  その言葉は正しかったようで、男の口にはこれまで以上の苦みが走り抜けた。  一体どれほどの雑菌を凝縮すれば、このような味になってしまうのか。  こんなものを飲まされるくらいなら、毒と混ざった一般女性の小便を飲んだ方がずっとましだ。  シュイイイイイイ…… 「あ、だめ。我慢できない!」  ジョロロロロロロロッ!!!  聖女の股間から力が抜ける。  聖女は、これでも加減をしながら小便をしていた。  しかし、放尿による快感に抗うことができなくなり、つい股から力がぬけてしまったのだ。 「むうううぅっっ!!!!」  男はその滝のようなおしっこを、自分から進んですべて飲み干そうとかぶりついた。  しかし、その勢いも味も毒素も、加減をしていたものとは比較にならず、男は舌の感覚を失った。  次いで、毛細血管が破れたのか、鼻からは大量の血があふれ出した。  目も充血したかと思うと、すぐに涙のように血が流れてくる。 「あ……飲んでくれるのですね。すばらしい信仰心です。では、私も遠慮せずに、いっぱいおしっこしちゃいますね!」  聖女はもはや自身の小便を聖水と取り繕うこともせずに、男の口の上に座って本格的に放尿を開始した。  聖水を飲まされた者の副作用として、自分の命令に逆らえなくなったためだなんて聖女は考えもしない。  聖水を与え続けることで、最初は拒絶していた者たちも心を改めてくれたのだと、勘違いしたままにその奉仕を甘受する。  これは、敬虔な信徒になってくれた男が、自分に尽くしてくれている。  だから、自分ももう我慢する必要はない。好きなだけ男の口の中におしっこを出してしまえばいい。 「受け止めてください。飲み干してください。あなたなら、それができると信じています」  ちょっとだけ、量が多すぎるかな? そう思っての発言だった。  しかし、聖女の聖水に犯された男にとって、聖女の命令こそ絶対のものであり、遵守しなければならないもの。  どれだけこころが嫌だと叫んでも、男の体は聖女の猛毒を摂取するだけの道具へとなり下がった。 「すごいです。ここまで飲み干せる方はいませんでした。私のおしっこ、ちょっとだけ量が多いもので……」  ちょっとなんていうものではない。  腹が裂けそうなほどの量の水を飲まされる。それだけでも恐ろしい拷問だ。  それが、どんな毒よりも、どんな汚物よりもおぞましいのであれば、男の心を殺すのには十分だろう。  ジョボボボボボボ……チョロロロッ………… 「あ、出し切りましたね。お疲れさまでした。もうあなたの体には毒はありませんよ」  その言葉に嘘はない。  代わりに、男の体の隅から隅までに、聖女の尿が入ってしまったというだけだ。  体のすべてを聖女の小便に犯され、支配され、唯一自由であった心は死んだ。  毒の治療が終わった男は、村に戻ってから廃人のようになってしまうのだった。     ◇  男の治療は終わった。だけど、のんびりはしていられない。  なぜなら、自分には治すべき者たちがまだまだいるのだから。 「さあ、次はあなたの番です」 「嫌だ! 嫌だあ! 聖水は嫌だ!!」  信徒たちに連れられてやってきたのは、まだ年端も行かない少年だった。  顔色が青いのは、この子供が毒に犯されているからだけではなく、彼の兄が先ほどまで聖女の小便で拷問されていたためだ。  恐ろしい責め苦を受ける兄を見て、少年は兄の安否よりもこの後自分に訪れる運命に恐怖していた。 「怖くないですよ。ほら、そんなに暴れないで」 「嫌だ! 近寄らないで!」 「聖水を飲んでもらうだけです。怖いことなんてなにもありません」 「こないで!!」  どれだけ優しく話しかけても、少年は一向に落ち着く様子がない。  聖女もさすがにこれには困ってしまった。  先ほどの男性と違い、この子はまだ幼い子供。  信徒たちに指示をして、無理やり体を押さえつけるのもかわいそうだ。 「では、しかたありませんね……」  なので、駄々をこねる少年を前に、聖女のほうが折れることとなる。  少年は、聖水という名の劇毒を飲まずにすんだことに安堵した。  もっとも、その考えはすぐに覆されることとなるが……。 「聖水は、やめておきましょう。この聖水はこのまま体内に貯めておいて、次の方に飲んでいただくこととします」 「じゃ、じゃあ……僕は帰ります……」 「いけません。あなたの体も毒に蝕まれているのですよ?」  逃げるようにその場を立ち去ろうとした少年の小さな体を、聖女は優しく包み込むように抱きしめた。  少年の身体が恐怖で震える。  しかし、聖女はあの猛毒を自分に飲ませる気はないと言っていた。  その言葉を信じることで、少年はなんとか踏みとどまることができた。 「聖水よりも効力は薄いのですが、そこまで嫌がるのであればしかたありませんね」  身長差から、聖女が少年を抱きとめると、少年の顔は聖女の腹部へと押しつけられる。  その腹部から、魔物の唸り声を想起させる異様な音が響くのが聞こえてしまった。 「浄めの香で、体内の毒素を退治してあげましょう」  言葉の意味はわからないが、嫌な予感しかしない。  少年は逃げようとするも、その小さな体は聖女にしっかりと抱き止められていて、離れることはできなかった。 「さあ、器具を取り付けてください」  女性とは思えない力で、がっしりと少年の身体が固定される。  そんな少年の顔に、長い管をつけた顔全体を覆うマスクが装着されてしまった。  次いで、聖女がなにかを自身にも取り付けているらしく、少年を押さえつける手は片手のみとなる。  その瞬間を見逃さず、少年は必死に逃げ出した。  このタイミングを逃したら、自分も兄のような目に遭うことが想像できたからだ。  少年は、見事に聖女から離れることに成功する。  あとはこのまま走り去るだけ、だというのに、少年の身体ががくんと崩れ落ちる。 「な……なに……?」 「よかった。それだけ元気なら、浄めの香を長時間嗅いでも平気そうですね」  体に力が入らない。  そのことに困惑する少年の鼻の中に、腐った肉のような匂いが侵入した。 「―――!!!!!!」 「そうです。そうやって横になったほうが楽ですよ。いいですね。仰向けのほうが、私も浄めの香を出しやすいです」  倒れた少年の胸部に、ずしっと重みを感じる。  すぐにそれが聖女が自分にまたがったためだとわかったが、少年はそのことよりも聖女の下腹部に続いている管が気になった。  自分が装着させられたマスク。その管が、なぜあんな場所に伸びているのか。  少年の視線を感じたのか、聖女はその疑問に答えてくれた。 「これですか? 素敵でしょう。浄めの香をあなただけに送るための装備品です。私の不浄の穴につながったその管は、密閉されたそのマスクに送り込まれます。決して外に漏れることなく、あなたの鼻や口に送られるのです」  不浄の穴……。それは、どう見ても聖女の肛門だ。  自分の顔周りの空気が、すべてあの肛門につなげられ、刻一刻と汚染されている。  少年は、自分の残り時間がわずかであることを知り、発狂しそうなほどに慌てだす。 「ああ、もう。本当に元気なんですから」  ブズゥゥッ……ブジュウウゥゥゥッ!!!  しかし、少し動かしただけで、聖女の不浄の穴――肛門から下品極まりない音とともに、体験したことのない悪臭が送り込まれた。  それだけで、少年の体が一時的に麻痺してしまう。あまりの臭さに体が言うことを聞かない。 「さあ、どんどんいきますよ。なんせ浄めの香は、聖水よりも効果が薄いですから、何時間も何時間も体内に巡らせて、体の中の毒を殺さなければいけないのです」  その発言は、少年を絶望させるには十分すぎた。  わずかに嗅いだだけで体の自由を奪い、それでも意識だけははっきりあるせいで、死にたくなるほどの悪臭。  何か月も放置された獣の死体の中で寝る方が、まだましだと思えるほどの腐敗臭。  それを、何時間も嗅がせると、聖女は言ったのだ。 「い、いや」  フシュウウゥゥウウウ…… 「あれ? もしかして、口に入りました? 口からのほうがいいんですね。珍しい子です」  拒絶の意志を叫ぼうとした瞬間、開いた口の大量の毒ガスが殺到する。  形のないそれは、たしかに少年の体内の奥深くを目指して進んでいき、少年は言葉を出すこともできない。  そして、最悪なことに口は大きく開いたまま、固まってしまった。 「どうせ飲むことになるのなら、聖水のほうが飲みやすいと思うんですけどね……変わった子です」  ムッスウウウゥゥゥゥ…………ブビィッッ! ブシュッ! ブスウウゥゥウゥゥッ!!!  不思議そうに首をかしげながらも、聖女は気にせずに浄めの香と呼ぶ放屁を続けた。  少年にとっての不幸は、聖女が重度の便秘症だったことだ。  聖女の腸内どころか、肛門付近までもが、排泄しそこないカチカチに固まった大便で埋め尽くされている。  ただでさえ、聖女の体内で凝縮された腐臭は、それらの大便を舐めまわすように通過して、聖女の新鮮な糞便の匂いをふんだんに取り込んでいく。 「おしっこ……じゃありませんでした。聖水の味よりも、うんち……ではなく、浄めの香の味が好みなんて、倒錯的な子ですね」  無論そんなつもりはなかった。  あの毒液から逃れたい一心での拒絶が、まさかよりえげつなく汚いものを招くなんて、少年は考えてもいなかったのだ。  それでも、もはや少年にできることはなにもない。  動かない体の中に絶え間なく注がれる聖女のおなら。それを鼻と口から取り込み続けることしかできない。 「それにしても、これだけ出しても、うんちは出ないんですよね……。あなたも大変ですね。私が便秘でなければ、もっと薄い香りだったのに。あれ? でも、浄めの香を自ら志願したのであれば、濃い香りのほうがいいということでしょうか」  ならば、同情も手加減も必要ない。  聖女はそう思い直すと、体内に溜まったガスも、新たに生成されたガスも、すべて少年に注入する勢いで放屁を続ける。  ブッヂュウウウウウウウ!!!  さすがに聖水のときと違って、放屁ではそう簡単に毒素を殺しきれない。  だから、聖女は長時間をかけて、少年の身体ごと蒸らすように、ゆっくりゆっくりと少年の体内をオナラ漬けにしていった。  それだけの長時間ともなれば、少年はともかく聖女の口数も減っていく。  ブズウウウゥゥッッッ!!  言葉を発する者もなく。  その部屋にはただただ、汚らわしい放屁の音だけが響き渡る。  もはや出会った頃の慈愛のようなものはなく、聖女は淡々と機械的に少年の体内を汚し続けることに集中していた。  残してはいけない。わずかな毒素でも残っていたら、治療が完了しない。  聖女は、そんな思いから、真剣に少年の体内すべてを自身の穢れた香りで塗りつぶす。  ブジュッ! ブビイイイィィィッッ! スウウゥゥゥ…………  体内に侵入した毒素を己の屁で殺しつくす。  そんなバカげたおぞましい行為だが、聖女は本当にそれを成し遂げるだけの力があった。  地獄に落とされたかのような苦しみを味わい続ける少年は、恐ろしいことに徐々に確実に毒が消えていくのだった。 「さあ、これであなたの毒も死に絶えました」 「ぁ……ぁ……」  夜になり、治療と称した毒ガス処刑がようやく終わる。  少年は目がうつろになり、倒れたまま動くことはない。  無理もない。聖女のオナラ責めを何十時間も受け続けたのだから、瀕死になるのもうなずける。  そして、少年が苦しんでいるのは、単に悪臭にさいなまれたためというだけでもない。  体内の毒素をすべて殺しつくすほどの聖女のオナラ。  それは、聖女にも器用にコントロールできるものではなかった。  毒素だけを殺すなどということはできず、少年の体内に存在していた微生物たちさえも皆殺しにしてしまったのだ。  免疫の低下。栄養素の消滅。消化機能の不良。そして、精神の汚染。  たしかに毒の治療は完璧にこなした。  しかし、その副作用はあまりにも無残なもので、少年には別の治療が必要なのは明白だった。 「だめですね。やっぱり、浄めの香による治療では、毒を殺すことはできても、体調が悪くなってしまうみたいです」  少年の様子を一瞥し、聖女は残念そうにそう言った。  これまでも、聖水を拒み、浄めの香での治療を望んだ者はいた。  だけど、みなことごとく少年のように、別の症状に苦しむこととなる。 「はあ……やっぱり私は毒の治療だけが得意みたいです。この子は、別の聖女に治療してもらいましょう」  毒を殺すことは完璧なので、その他の症状は、それぞれ別の得意分野の聖女に任せる。  それももはや手慣れたものだ。  倒れた少年を信徒に運ばせると、聖女は次の患者を迎え入れるのだった。 「お待たせしました。毒の治療は得意ですので、ご安心ください」  毒の聖女。  それは、毒の治療を得意としており、自らの毒こそがこの世で最も凶悪ということに気づいていない少女の異名。  彼女は、今日も人々のために毒を殺し、己の毒で体の中を犯し、塗りつぶすのだった……。


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