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メス牡蠣
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偏狂者の愛

短めエロ無し、ストーカーの話です、ストーカー大好き。

偏狂者の愛

「おい、美雪!」


振り返ると、いけ好かない顔をした男が必死な表情でこちらを見ていた。

今日は金曜日。勤務時間が終わり、明日から連休ということもあって弾むような気持ちでいたのに、どうしてこんな奴の顔なんて見なければいけないのだろうか。


「ちょっ……待てって!」

「チッ……」


無視して進もうとしたが、走ってきた男に腕を掴まれてしまった。

こいつは……名前は忘れたけど、あたしの彼氏だった男だ。別れ話を切り出した後もやたらとしつこく連絡を取ってきたので連絡先をブロックしていたのだが、まだ付きまとって来るつもりらしい。


「手、離してくれないかな。あたしの前に姿を現さないでって言ったよね?」

「あんなこといきなり言われて納得できるわけないだろ……!お前、一体どうしちゃったんだよ。千尋さんたちからの連絡も全部無視してるみたいだし……」

「キャアァー!!た、助けてくださいっ!!変な人に付きまとわれてるんです!!」

「は!?」


相手をするのも面倒だったので、思い切り叫び声をあげてやる。すると、駅前で人通りが多かったということもあってか、何人かの男共がこちらに向かって駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか!?」

「助けてください……あの人、ストーカーなんです!ずっと付きまとってきて……」


泣きそうな顔を作りながら訴えかけると、男共はすぐにあたしの言葉を信じてくれたようで、付きまとって来る男をあたしから引き剥がしてくれた。


「はぁ!?くそっ、離せって!俺はあいつの彼氏なんだよ!!」

「まあまあ。お兄さん、落ち着いてくださいよ。あの子、嫌がってるじゃないですか」


暴れる男を宥めてくれている男共の姿を見届け、早足でその場を離れる。駅のホームに着いた頃には乗る予定だった電車は既に行ってしまっていて、せっかくの楽しい週末の出鼻をくじかれてしまった気分だ。

気分を落ち着けるために、カバンに入れておいた手鏡を取り出す。そこに映るのはもちろん、あたしの顔だ。ぱっちりとした瞳に、長いまつ毛。少しだけ茶色に染まっている髪はサラリとしている、天使のように可愛らしいあたしの顔だ。


(それにしても……さっきの男共、すごかったなあ。まあこんなに可愛い子が困ってたら、必死になって助けるのも当然だよね)


あたしがふふっと笑うと、当然のように鏡の中のあたしも天使のような笑みを返してくれる。むっとしても、少し変顔をしてみても、全部あたしの、大島美雪の可愛らしい顔をこの鏡は映し出してくれるのだ。それが嬉しくて楽しくて、しばらく鏡を見ているうちに、次の電車はすぐに来てしまった。




***




「ただいま、孝弘くん♡」


美雪の、あたしの部屋に帰り、まっさきにあたしの一番大切な人のところへ向かう。話しかけても返事はしてくれないけど、それが照れ隠しだということをあたしは知っているから傷ついたりはしない。


「ほら孝弘くん、たーだーいーま♡おかえりなさいのチュー、して?」

「やっ……やめて……!もうやめて……あ、あたしのフリなんてしないで……お願いだから、あたしの身体返してよぉ……!」

「きゃっ!」


いつもみたいにキスをしようとしたところで振り払われてしまった。最近は治ってきたと思ってたけど、今日はあまり調子が良くないらしい。仕方ないので、いつも持ち歩いている物、彼の首輪から電流を流すボタンを3回ほど押してあげることにした。


「ぎっ……あ゛あ゛あぁぁぁぁ!!?」

「もう、孝弘くんってばまた変なこと言ってる。返しても何も、あたしの身体はあたしのものだよ?」


彼は少し前からこんな調子で、「元に戻して」とか「身体を返せ」だとか、おかしなことを言うようになってしまった。彼女のあたしに向かって暴力をふるおうとしてきたことだってある。だからこうして、あたしのことが大好きだった元の彼に戻るように看病をしてあげているのだ。暴れないように縛り付けて、おかしなことを言った時には今みたいに、通販で買ったペットのしつけ用の首輪でしっかり注意をしてあげるようにしている。


「うぅ……」

「おさらいしよっか。自分の名前、分かるよね?言ってみて?」

「あ……た、孝弘……です」

「そうだよね?で、あたしの名前は?」

「……美雪、です……」

「あははっ!そうそう、ちゃんと分かってるじゃん!あ~、よかった。孝弘くんがまたおかしくなっちゃったんじゃないかって、心配したんだよ?」


あたしの献身的な看病のかいもあってか、孝弘くんは少しずつ、あたしたちの関係を思い出してくれているみたいだ。あたしが美雪で、彼女。彼が孝弘くんで、あたしの彼氏。最近はえっちをする時なんかもあんまり抵抗しなくなってきたし、この調子なら手錠を外してあげられる日も近いのかもしれない。


「それじゃあはい、チュー♡……あれ、嬉しすぎて泣いちゃった?ふふっ、あたしも嬉しいなあ♡ すぐにご飯作ってくるから、いい子で待っててね?」


大好きな彼をぎゅっと抱きしめて、部屋を後にする。ほんの少し前までは、こんなに幸せになれるなんて思ってもいなかった。やっぱり、あたしが美雪になって正解だったと思う。こんな風に何もかも上手くいって、大好きな人とずっと一緒にいることができるようになったんだから。

明日からの連休、彼と何をしようか。今から楽しみで仕方がない。


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