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メス牡蠣
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通学路で

もうプロットとかかなぐり捨ててこういう場面が見てえという強い気持ちだけで書きました。性癖の煮凝りです。

通学路で

遅刻寸前で食パンを咥えながら登校、なんて漫画みたいなことを、まさか自分がやる羽目になるとは思ってもみなかった。そしてその後、曲がり角で誰かとぶつかるなんてことも。

となれば、目の前にいるのはイケメンの転校生……なんてこともなく、そこに居たのは中年のおじさんで、失礼だとは思うがかなりがっかりしてしまった。


「あ~クソッ!前見て歩けよ!」

「す、すみませんっ! ……あ、あれ?」


身体を起こして乱れた制服を整えようとするのだが、あれほど強く衝突したというのに私の身体は立ったまま――それどころか、どういうわけかふわふわと宙を漂うようにして浮き上がってしまっていた。


「うおっ!?なんだこりゃ、一体どうなって……」


どうやら私とぶつかったおじさんも同じだったらしく素っ頓狂な声を上げていて、どこか不透明に透き通った状態の彼の下には、仰向けで地面に転がるもう一人の『おじさん』の姿があった。それを見てもちろん驚いたのだが、どこか納得したような気持ちもあって……下に視線を向けると案の定もう一人の『私』の身体があり、どうやら私たちは幽体離脱をしてしまっているようだった。


「な、なんだこりゃ!お、俺!?も、もしかして俺、死んじまったのか!?」

「あの……お、落ち着いてください。私たち多分、幽体離脱をしてしまったんじゃないのかと……。も、元の身体に入ってみたら生き返るんじゃないでしょうか、多分ですけど……」

「あ?そうなのか?焦って損したぜ。それじゃあ……」


私の言葉に納得したのか、おじさんは自分の身体に戻ろうと、ゆっくり近づいていく。しかし、何を思ったのかピタリと動きを止め、同じく元の身体に戻ろうとする私の方に視線を移した。


「え、えと……何か……?」


ジロジロと舐め回すような視線を感じ、つい私も動きを止めてしまう。一体何が気になるのか、彼は自分の身体と私の身体を交互に見ている。


「いや、別に大したことじゃ……お、おい!?嬢ちゃん、後ろに誰かいるぞ!?」

「えっ!?」


おじさんの声に驚き慌てて振り向いたが――始業間近の通学路には当然誰もおらず、ただいつも通りの風景が広がっているだけだった。


「だ、誰もいないじゃないですか……えっ!?ちょ、ちょっと、何してるんですか!?」


視線を戻すと、目の前には半透明のおじさんがいて……そのおじさんが、私の身体の中に頭からずぶずぶと沈み込んでいた。


「そ、それは私の身体で……痛っ!?」


慌ててその行為を制止しようとするが、止めようとした手が、静電気のような痛みと共に弾かれてしまう。そうこうしている間にもおじさんはどんどん私の身体の中へと入り込んでしまい――ずぷんと、足先までその全身が入りきったところで、ピクッと私の身体が震えた。


「えっ……?」


やがて私の身体は目を開け、身体を起こし……ニタァっと、私がしたこともないような下品な表情を浮かべたかと思うと、今度は自分の身体の胸を乱暴に揉み始めた。


「……ヒヒッ!でっけえ胸に、この女みてえな声!成功だよな? ……はは、やっぱりだ、俺があの女子高生の身体に入れたんだ!!」


私の身体はガサゴソと鞄を探るとその中から手鏡を見つけ出し……鏡に映った自分の顔を見て、手を当てながら嬉しそうな声を上げて笑っていた。


「や、やだ!変なことしないで……きゃあっ!?い、痛い……」


恐らく、私の身体にはあのおじさんが入ってしまっているのだろう。なんとかして身体を取り戻せないかと私の身体に触れてみるが、さっきと変わらず、まるで身体に拒絶されているかのように弾かれてしまう。


「えーと、なになに? へえ、こいつあの女子高に通ってんのか。……つーことは、これからは俺があそこに通うことになるんだよなぁ?ぐへへっ」


どうやら幽霊になっている私は見えていないのか、私になったおじさんは気にもしていない様子で荷物を漁る。ついには見つけ出した学生証から私が通ってる高校までも暴き出して……どうやらこの人は本気で、私なりすまして、私として生きていくつもりのようだった。


「こほんっ。えー……アタシは佐々木優花!17歳の女子高生でーすっ!……ってな!ははっ、俺の演技も悪くないんじゃねぇか? さて、こいつの学校に行ってもいいがその前に……ぐへへっ、どっかでこの身体をじっくり堪能しないとだよなぁ……♡」

「あっ、ちょっと……!?ぐうっ……ど、どうしよう……」


私の身体は地面に落ちた鞄を乱暴にひったくると、乱れた制服のままどこかへ歩き始める。止めようとしてもやはり、私の身体から弾かれてしまい……どうしようと焦っている中、視界の端に映るあるものの存在に気づいた。


「そ、そうだ……私が1回この身体に入れば……で、でも……」


目の前に倒れている、空っぽになったおじさんの身体をじっと見つめる。

汚れたシャツに包まれたお腹は脂肪でパンパンに膨らんでいて、そこから伸びる手も足も、ブクブクと太っている上に縮れた毛で覆われていて……私だってスリムな方じゃないけど、それでもとても同じ人間とは思えないほど、元の私の身体とはかけ離れたものだった。

この身体に入って私の身体を引き留められたとしても……その後、もし元に戻れなかったら?私、ずっとこのおじさんとして生きていかなくちゃいけないの?幽霊になって無いはずの心臓が、ぎゅうっと締め付けられるような感じがする。どうしよう、と悩んでいたが……ふと視線を上げると、私の身体は随分と遠くまで離れてしまっていた。


「ああ、もう……! え、えいっ!」


意を決して、一息におじさんの身体に飛び込んでいく。


「(うぐっ……!?な、なにこれ、気持ち悪い……!)」


どこか生暖かい、ヘドロのようなものに沈み込むような感覚がして……やがて全身がそれに包まれたかと思うと、今度は体中がどろっと溶けるような感じがしてきた。溶けてしまったそれは私の意識のようなものだったようで、やがてそれが、新しく知覚できてしまった新しい身体に染み渡ったと思えば――


「……う、うぅ……。わ、私、おじさんの身体に入れたんだよね……?」


誰に向けてでもなくそう問いかけるが、もはや答えは不要なほどに、私の五感はそれが間違いではないと伝えてくる。伝えてきてしまう。

全身から感じる、むわっとした暑さと重苦しさ。呟いた声はどこか弱弱しくも、野太く低い男の人の声で……確認しようと視界に入れた自分の手は、それが自分のものだとは思いたくないくらいに太く毛だらけだった。


「うぅ……ぐすっ……。 な、泣いてる場合じゃないよね、急いで私の身体に追いつかなきゃ……!」


そう自分に言いかけるように口に出すと、慣れない身体を起こし、私の身体に入ったおじさんの元へ急いで駆けだした。しかし、でっぷりと太ったこの身体は想像以上に動かしにくく……ようやく私の身体の元へ着いた時には、汗だくで息もできないくらいになっていた。


「ぜぇっ……はぁっ……ぜぇっ……はぁっ…………。ま、待ってください……」

「あぁ?なんか用……って、俺!? いや、もしかして……へぇ?お前、あの嬢ちゃんか?」

「げほっげほっ……はぁ……そ、そうです!わ、私の身体、返してください……!」


人通りの多いところに出てしまったようで、何事かと、私たちを見ている人達のざわつきが聞こえてくる。しかし、もはやなりふりかまってなんていられなかった。なんとか息を整えつつ、私の身体になったおじさんに訴えかける。


「あはっ♡何言ってるんですかぁ?身体を返せだなんて……おじさん、頭おかしいんじゃないですかぁ?」


私の身体になったおじさんはしばらくニヤついた目で私のことを見ていたが……チラリと、横目で通行人の姿を見ると、体をくねらせながら甘ったるいような声を出してみせた。


「なっ……何を……ぜぇっ……言ってるんですか……!お、おじさんはあなたじゃないですか……!ぜぇっ……」

「ふふ、何のことだかわかんないです♡用がないならどっか行ってもらっていいですかぁ?アタシはこれからぁ……エッチなことをたくさんするっていう、だーいじな用事があるので♡」


私の身体になったおじさんは、猫なで声でそう言いながら……あろうことか、人が見ている前で私の身体の胸を揉んでみせた。まるで私自身が辱めを受けているような気分になり……カァっと頭が熱くなって、気づけば私の身体の肩を思い切り掴んでいた。


「ふ、ふざけないでくださいっ!私の身体、返してくださいよぉっ!!」

「キャーー!誰か、助けてくださぁい!」

「ちょっと……!?な、何をして……」


私の身体になったおじさんはいきなり叫び出して……ふと、前方から警官が走り寄ってくるのが見えた。それを知ってか知らずか、私の身体になったおじさんもニィっと不敵な笑みを私に向けて――もしかしてこれ、私が女の子を襲ってるように……見られてる……?


「な、何考えてるんですか!?こ、これはあなたの身体なんですよ!?」

「へへっ、元は、だろ?もうこの女子高生の身体は俺のモノで……その汚いおっさんの身体はお前のモノなんだよ。……一生な」


私にしか聞こえないような声で、耳元に囁きかけてくる。


「っと……それじゃあアタシはこれから女子高生の佐々木優花として生きていくので、おじさんもその身体で頑張ってくださいね?……まあ、まずは警察のお世話になりそうですけど、ね♡」


呆然とする私を置いて、私の身体は警官の方へと駆け寄っていく。その日を最後に、私が私の身体と再会することは二度となかった。


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