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幸福に満つる甘い毒

大学によくいそうな女の子が同じく大学によくいそうな男の子に身体を入れ替えられちゃう話です。

ダークではないけどメリーバッドエンドなのかなぁって感じのアレなので、そういうもにゃっとしたやつが読みたいときに読んでいただけるとアレです。

幸福に満つる甘い毒

とある日の夕刻。徐々に人通りが多くなり始めた駅前広場の中に、スマホを片手に佇む女性の姿があった。

彼女の名前は吉田玲奈(よしだ れな)。肩ほどまで伸ばしたダークブラウンのミディアムヘアと、やや童顔だが整った容姿が印象的な女性だ。服装は白のトップスに紺色のロングスカートというシンプルな出立ちで、足元には少し大人びた雰囲気を感じさせる黒いヒールを履いている。


玲奈が待ち合わせ場所として指定したその駅は最寄りから1時間ほどかかる距離だったが、わざわざそこを選んだ理由はこれから会う相手にあった。――彼女はパパ活をしているのだ。

大学に通っている間の生活費や学費は親からの仕送りによって賄われているのだが、大学生ともなれば当然交際費などもかさんでくる上に、ついつい買いすぎてしまう洋服代も馬鹿にはならず、貯金は目減りしていく一方だった。

そこで思いついたのがパパ活だった。幸いにも玲奈は自分のルックスに自信を持っており、それを武器にすれば簡単に稼げるだろうと考えたのだ。そして実際にその目論見は上手くいき、月に数十万ものお金を稼ぐようになった今はもはや普通のアルバイトをするなど考えられなかった。


とはいえ、そのことが知り合いにバレるのは流石にマズいと思った玲奈は、アプリで知り合った男性と合う際にこうして大学から離れた場所を選ぶように注意していたのだが――そんな彼女に近寄ってくる人影があった。


「へ、へへ……。こんなところで会うなんて奇遇だね、玲奈ちゃん」

「えっ……!? あ、なんだ中村くんかぁ」


不意に話しかけられ、アプリで使っているハンドルネームではなく自分の本名で呼ばれたことに驚いたものの、すぐに相手が知り合い……それも取るに足らない相手だと気づき安堵する玲奈。

彼女に話しかけてきたのは、大学で同じゼミに所属している男子学生、中村達也(なかむら たつや)だった。中肉中背で見た目もパッとせず、さらには性格も明るいわけではない、端的に言えば"陰キャ"というレッテルを貼られてしまうような男である。そして玲奈に対してあからさまに好意を抱いており、彼女は達也のそんな想いにつけこんで課題を肩代わりしてもらったりと、都合よく利用してきた相手だった。


「びっくりしたよー、急に声かけてくるんだもん。 てっきりナンパか何かだと思っちゃった」

「…………」

「中村くん?どうかしたの?」


達也はどういうわけか玲奈の言葉に反応することもなく、ニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべながらスマホを弄っている。そんな彼のことを内心では気持ち悪いと思いつつも、それを顔に出さず笑顔を浮かべる玲奈だったが、おもむろに差し出されたスマホの画面を目にした瞬間、その表情は凍り付いた。


「えっ……」

「これ、玲奈ちゃんだよね? まさかこんなことしてたなんて、驚いたよぉ」


勝ち誇ったように笑う達也の手の中にあるスマホには、玲奈が登録しているアプリのプロフィールが表示されていた。当然バレないように顔は隠していたのだが、彼の様子を見るにそこに映っている写真が玲奈だと確信しているのだろう。玲奈はその笑みを引き攣らせながらもなんとか言葉を絞り出した。


「な、何の話か分かんないや。 ……ごめん、私もう行くね」

「あれ、ここから離れていいの?もうすぐ"パパ"と会うつもりなんでしょ?」

「っ……!だから、私はそんなこと知らないって……」


踵を返してその場から離れようとした瞬間――彼女が持っていたスマホから通知音が鳴り響く。それはこれから会う予定の相手からのメッセージだったのだが、『逃げない方がいいんじゃない、玲奈ちゃん?』という文面が表示されていた。慌てて達也の方に振り返ると、彼は相変わらずニヤついた笑みを浮かべたまま玲奈のことを見つめており、その手の中には玲奈が開いているものと同じトーク画面が表示されていた。


「あははっ、やっぱり玲奈ちゃんだったんだ! スタイルも似てるし、写真の服も前に1回だけ着てるのを見たからもしかしてって思ったんだけど……いやあ、まさか本当だったなんてねぇ」


会う予定だった相手が達也だったことを知り、玲奈はこれ以上ないほどに焦っていた。というのも、今までのやり取りの中で、知り合いが見れば自分だと分かってしまうような写真を送っていたからだ。その中には下着だけの姿で撮影したものも混じっており、もしそれが知人の目に触れれば言い訳などできない状況になってしまう。


「お、お願いだから誰にも言わないで……!」

「うーん……まあ、玲奈ちゃんの態度次第では黙っててあげてもいいよ。僕だって人の秘密を言いふらす趣味はないしね。……ただ、そうだなぁ」


突然言葉を切り、わざとらしく顎に手を当てて考え込むような素振りを見せる達也に、玲奈は嫌な予感を覚える。


「そうだ。せっかくこんなところまで来たんだしさ、これからする予定だったことをしようよ。 玲奈ちゃんだって元々そのつもりだったろうし、問題ないでしょ?」

「それって、つまり……」

「うん、そういうことだよ。 別に断ってくれてもいいんだよ?そしたらこのことをゼミのグループトークにでもうっかり書いちゃうかもしれないけど」


そう言って再び勝ち誇ったような笑みを浮かべる達也に、玲奈は苦虫を噛み潰したかのような表情を浮かべながらも口を開いた。


「……分かった、それでいいから。でも、このことは絶対に秘密にしておいてね。それと今までの写真も……」

「ああ、ちゃんと消してあげるから心配しないでいいよ。 それじゃあ行こうか……ふへへっ、玲奈ちゃんとデートしてるみたいでなんかいいなぁ♪」


軽快な足取りで歩き出す達也の後に続きながら、玲奈は己の迂闊さを呪っていた。だが今更後悔したところでどうにもならないことも理解しており、憂鬱そうな表情で彼の背中を見つめることしかできなかった。




***




「ふへっ、お待たせ。まさか初セックスを玲奈ちゃんとできるなんて夢にも思ってなかったよぉ」

「…………」


ラブホテルの一室。シャワーを浴び終え、ヘラヘラと上機嫌で話しかけてくる達也とは対照的に、玲奈は無言のまま俯いていた。


「どうしたの?さっきからずっと黙っちゃって。 あ、もしかして緊張してるのかな?」


下着だけになった自分の全身を舐め回すように眺める視線を感じ、背筋に気色の悪い悪寒が走る。

玲奈にとって、達也との性交に及ぶことは屈辱でしかなかった。これまでもパパ活で男に身体を許すことはあったが、それらはすべて金銭という対価があってのもの。さらに主導権はすべて玲奈が握っていたということも相まって、今回のように脅される形で事に及ぶというのは耐え難いものだった。


「……本当に黙っておいてくれるんだよね?」

「大丈夫だってば。ほら、玲奈ちゃんも早く脱いでよ」

「はぁ……。分かった、さっさと済ませちゃおうか。 私がリードするけど、いいでしょ?」

「もっ、もちろんだよ!」


とうとう覚悟を決めた玲奈はゆっくりと顔を上げ、諦めたように溜息をつく。そして達也の方に向き直ると、慣れた手つきでショーツを脱ぎ捨て、ブラジャーのホックを外していく。大きな胸がぷるんっと揺れ、その様子を達也は股間を勃起させつつ食い入るように見つめていた。


「うへへ、まさか玲奈ちゃんの裸が見れるなんて……えっろぉ……♡」

「っ……は、恥ずかしいからあんまりそういうことは言わないでほしいかな。 それで、何かしてほしいこととかある?」


「気持ち悪いから」と口に出しかけた言葉を飲み込み、達也に問いかける玲奈。

なるべく彼の望みを叶えてやればこの苦痛に満ちた時間がすぐに終わるのだ。そう自分に言い聞かせることで、玲奈は必死に平静を保っていた。

そんな彼女の心情を知ってか知らずか、達也は鼻の下を伸ばしたまま思案していたのだが……ふと、何かを思い出したように手を叩くと、リュックサックから赤い錠剤のようなものを取り出した。


「危ない、忘れるところだった……。 そ、それじゃあこれを飲んでもらおうかな」

「え……なにそれ。何か変なドラッグとかじゃないよね?」

「だ、大丈夫だって、た、ただの精力剤だから!ほ、ほら、んぐっ……。 僕も飲んだからさ、これなら安心できるでしょ?ね?」

「いや、でも……」


得体のしれない薬を飲むこともそうだったが、それ以上に急に必死な様相を見せた達也に怪しいものを感じた玲奈は躊躇うような素振りを見せる。


「べ、別に飲んでくれなくてもいいんだよ?それなら玲奈ちゃんの秘密をバラしちゃうかもだけど……」

「分かった、分かったから! ……これでいいんでしょ?」


達也の脅迫に玲奈は渋々といった様子で応じると、受け取った錠剤をゴクリと飲み込んだ。


「ふへへっ、ありがとね。 それじゃあ早速始めようか、えっと……」

「中村くん、これが初めてだって言ってたよね? さっきも言ったけど私がリードするから……黙って仰向けになっててくれると楽かな」

「う、うん」


玲奈の言葉に従い、達也はベッドの上に横になる。玲奈は彼の上に跨り、慣れた手つきでコンドームを装着するとそこにローションを垂らし、既に勃起しているペニスにそれを纏わせていく。


「それじゃあ挿れるね……んっ……!」

「あぁっ、す、すご……っ♡」


玲奈は騎乗位の体勢で腰を落とし、達也のモノを受け入れていった。荒い呼吸と共に嬉しそうに声をあげている達也を無視して、作業のように腰を動かし続ける。


「はぁっ、はぁ……♡ れ、玲奈ちゃんとセックスできるなんて、最高だよぉっ♡♡ ふへへ、そっちも気持ちよくなってくれてるみたいで嬉しいなぁ♡」

(そんなわけないでしょ、気色悪いこと言わないでよ…………あ、あれっ?)


心の中で悪態を吐きながらも淡々と行為を続けていた玲奈だったが、不意に違和感を覚える。早く射精させて満足させようと、前戯もなしにローションで無理やり挿入させたにも関わらず、徐々に快感を感じ始めている自分がいたのだ。自慰をしている時や心を許した相手との性交の時と比べても遜色のない快楽を覚え、それはどんどん強まっていくようだった。


(身体が、熱いっ……♡ こ、こんなやつ相手なのになんでこんな……そういえば精力剤がどうとか言ってたけど、もしかしてアレのせいで……?)


気が付けば嫌々やっていたということすら忘れ、自らも無意識のうちに激しく腰を振っていた。その動きに合わせて乳房が激しく揺れ、煽情的な光景が達也の興奮をさらに高めていく。奇妙なことに、彼の興奮に連動するかのようにして、玲奈自身も耐え難いほどの劣情に駆られ、いつしか玲奈の口から漏れるのは熱い吐息だけになっていた。


「はぁっ♡はあっ♡ くぅっ……んんっ♡♡なに、これぇっ♡♡絶対おかしいのに……はぁんっ♡♡」


絶えず襲い来る快感の中、彼女は奇妙な感覚を覚えていた。まるで、自分が2人いるような感覚。挿入されているのは自分のはずなのに、同時に自分の股間が温かく柔らかい何かに包まれているというあり得るはずもない錯覚と、次第に強まっていく未知の快感が伝わってくる。ふと、ダブった視界に『自分の姿』が一瞬映ったような気がして――本能的な危機感を覚えた玲奈は、咄嗟に達也から身を離そうとする。


「えっ……な、なんで私が押し倒されて……あぁっ♡♡ど、どうなってるのぉっ♡♡」

「あはぁっ♡♡これが女の子の……玲奈ちゃんの快感なんだねっ♡♡」


しかし、次の瞬間玲奈はニタァと下卑た笑みを浮かべると、再び腰の動きを早めていった。一方で達也は突然困惑した様子を見せたものの、すぐに性交の快感に流されてしまう。


「ふへへっ♡♡チンコの感覚も無くなってきたし……そろそろ完全に入れ替われるんだっ♡♡ ほらほら、さっさとイって僕になっちゃえっ♡♡」

「わ、私!?どうして……んぁあっ♡♡だ、だめっ♡♡なんか出ちゃう……あうぅぅぅっ!?♡♡♡♡」

「あぁぁっ♡♡♡僕もこれ、イっ、イクっ♡♡♡♡玲奈ちゃんのカラダでぇっ♡♡♡♡」


一際大きな喘ぎ声をあげた2人はビクンッと全身を震わせると、身体を重ねたままぐったりとベッドの上に崩れ落ちてしまった。




***




「うぅ……」


しばらくして、玲奈は目を覚ました。まだ少し意識がぼんやりとするものの、先ほどまでの異常な昂りは嘘のように消え去っている。

ふと、達也がいないことに気づいた彼女はその姿を探そうと辺りを確認していたのだが、視界に入ったその"女性"の姿に思わず絶句した。


「う、嘘……なんで私が……!?」


そこには見慣れた衣服に身を包んだスタイルの良い女性が……毎日鏡で目にしている自分と瓜二つの人間の姿があった。

と、目の前にいるもう一人の自分を指さして口をパクパクとさせていることに気づいたのか、もう一人の玲奈がニヤついた笑みを浮かべながらゆっくりと近づいてくる。


「あ、あなたは誰……なんですか?」

「誰って、知ってるでしょ?あたしは玲奈だよ、吉田玲奈。 あなたがずっと片思いしてた、可愛い可愛い女の子だよ?た・つ・や・くん♡」

「えっ…………」


もう一人の玲奈が差し出した手鏡には、呆然とした表情で目を丸くさせている達也の顔が映っていた。確かめるようにペタペタと頬に触れてみると、鏡に映る達也もまったく同じ動作を取って見せる。同時に、手のひらにはざらついた髭の感触が伝わってきた。


「これ、中村くん…………えっ!?な、なんでっ!?どうなってるの!?」

「僕の声でそんな騒がないでよ、みっともないなぁ」

「僕って……も、もしかして、あなたが中村くんなの……!?」

「お、察しが良いねぇ。 その通り、僕は中村達也だよ。……って言っても今は玲奈ちゃんが僕で、僕が玲奈ちゃんなんだけどね。僕たちの身体が入れ替わったんだよ、あははっ」

「噓でしょ……」


自慢でもあった豊満なバストも、すらりと伸びた脚も、男好きするボディラインも……すべてが失われ、代わりに縮れたムダ毛に覆われた貧相な体躯がそこにあった。おまけに股間には男性器としか言いようがないモノがぶら下がっている。呆けたままの『達也』は確かめるようにそれに手を伸ばし、"それ"が自分のものであるという感覚を脳で感じると共に、自分の身に起きていることが紛れもない現実であるということを自覚させられてしまっていた。


「ひっ!? な、なんで、これ、男のっ!?どうしてっ!?」

「だから言ったでしょ、身体が入れ替わってるんだってば。 そのチンコもこれから先ずーっと使っていくことになるんだから、早く慣れておいた方がいいと思うよ?」

「ふ、ふざけないで!こんなの嫌っ、早く元に戻してよ!」


焦りのままに、玲奈の足元へすがりつく達也。そんな姿を愉快そうに見下ろしたかと思うと、玲奈はニタニタとした笑みを浮かべながら彼を振り払った。


「きゃっ!?」

「もう、あたしのことが好きで好きで仕方ないのは分かるけど、あんまり強引すぎると嫌われちゃうわよ?達也くん♡」

「っ……!私の真似して変なこと言わないでよ、気持ち悪い! 早く私の身体を返してってば!」

「うーん、残念だけど返せない……っていうか、どうやったって今すぐには元に戻らないらしいんだよねぇ」

「は……?ど、どういうこと……?」

「さっき渡した薬があったでしょ?アレは飲んだ人同士でセックスをしたら身体が入れ替わるって代物なんだよ。まさか本当に玲奈ちゃんになれるとは思わなかったけど……ふふっ♡ 説明書きには6ヶ月経てば効果が切れるって書いてあったから……少なくともあと半年くらいはこのままってことになるんじゃないかな?」

「何それ……ふ、ふざけないで!!」


達也は怒りに身を任せ、玲奈の胸ぐらを掴み上げる。しかし、玲奈はどこ吹く風といった様子だった。


「へぇ、玲奈ちゃんって怒るとそんな感じなんだね。それともそれが素だったりするのかなぁ? ま、僕の顔ですごまれても全然平気なんだけどさ、あははっ」

「このっ……!」

「別に殴ってくれてもいいけど、大事なことを忘れてないかな。 今の僕は玲奈ちゃんなんだよ?その気になれば君のフリをして大学を自主退学なんかもできるし……ああ、なんならその辺で全裸になって君の人生を終わらせちゃったりするのもいいかもね」

「えっ……ま、待って、それだけはやめて!」


玲奈が"自分自身"を人質にした脅しを口にすると、達也は途端に顔を青ざめさせて彼女から手を離した。


「もちろん、僕だってそんなことをするつもりはないよ?けど……君が言うことを聞いてくれないんだったら、うっかり変なことをしちゃったりするかもなぁ♡」

「っ……!」

「ま、そういうことだから。 これからは僕が……いや、玲奈ちゃんになったんだから『僕』は変か。 これからはあ・た・し・が♡吉田玲奈をやってあげるから、玲奈ちゃんは代わりに僕をやってよ。いいよね?」


優越感に満ちた顔でそう言ってのける玲奈に対して、達也は何も言い返せなかった。悔しそうに歯噛みしながら睨む達也を見て満足げに微笑むと、玲奈はベッドの上に悠然と腰掛けながら言葉を続ける。


「あはは、そう怒らないで。半年もすれば元に戻れるんだよ?せっかくだし僕としての……男としての生活を楽しんじゃったりしたほうがいいんじゃないかな♪」

「勝手なこと言わないでよ!あなたのせいでこうなってるのに……!」

「だからぁ、怒らないでってば。 どうせすぐには元に戻れないんだから、仲良くしておいたほうがお互いのためになると思わない? それに君だって、僕の機嫌を損ねたくはないでしょ?」

「うっ……」

「というわけだからさ、入れ替わってる間は仲良くやっていこうよ。 ……ふへへっ、玲奈ちゃんとこんな関係になれるなんて、夢みたいだなぁ♡」


玲奈は可愛らしい声でそう言うと、その端正な顔を下卑た笑みで歪めてみせる。自分がするはずもないような下品な表情を浮かべる"元"自分の姿を、達也は黙って見ていることしかできなかった。




***




「ん~っ♡玲奈ちゃんのベッド、いい匂いがするっ♡♡これからは毎晩ここで寝れるんだよなぁ……ふへへっ♡」

「……ねえ、やっぱり住む場所まで交換するのはやめない?」


ラブホテルを後にした2人は達也の案内で、玲奈が住むマンションの一室へと移動していた。部屋につくなりベッドに飛び込んで布団に鼻を擦り付ける玲奈の痴態を前にして、達也は不安そうな視線を向ける。


「まだそんなこと言ってるの?身体に合った生活をしないと周りに怪しまれるからって、さっきは納得してたじゃないか」

「そうだけど、でも……」


入れ替わった2人は話し合いの末……というよりは玲奈による一方的な提案のもと、元の身体に戻るまでの間はお互いの生活を交換することに決めていた。住居だけでなく社会的な立場も交換し、軽んじていた男子として大学生活を送ることを約束させられてしまったのだ。

上機嫌で室内を探索する玲奈をなるべく刺激しないようにしつつも、達也は部屋についての軽い説明や最低限のボディケアなどを伝えていく。


「――とりあえず、これで大体かな。 それじゃあ中村くんの部屋に行ってくるけど……私の身体であんまり勝手なことしないでね、お願いだから……」

「勝手なことって、例えばオナニーとか?あははっ、そんなのするに決まってるでしょ♡」

「なっ……!?」


達也の懇願を笑い飛ばすと、玲奈は自らの乳房見せつけるようにぐにぐにと揉みしだき始めた。服の中に窮屈そうに押し込まれている柔らかい乳肉が形を変えていき、紅い唇の隙間からは甘い吐息が漏れ出す。


「だって、せっかく玲奈ちゃんの身体が僕のモノになってるんだよ?ずっとずっと見たいと思ってた裸を見れるどころか好きなだけ触れるし、玲奈ちゃんとしての感覚まで味わえるんだから……ふひっ♡ そんな夢みたいな状況で我慢できるわけないじゃないか♡」

「……最っ低…………!」

「そんな睨まないでよぉ。 半年も入れ替わったままでいるんだから、そういうことをいちいち気にしてたらきりがないと思うよ? それに……ふへへっ♡ある意味お互い様でもあるんじゃないかなぁ♡」

「何バカなこと言って……ひぅっ!?」


玲奈は達也に顔を近づけると、彼の股間を指先でつーっとなぞり上げる。ズボンの下の肉棒はいつの間にか熱を帯びて勃起しており、玲奈の細い指が触れたことでビクンッと跳ね上がった。


「玲奈ちゃんだって好きにしていいんだよ?僕のモノだったこのチンコでいくらでもシコってくれてかまわないし……そうだ、なんだったら手伝ってあげようか♡」

「ちょ、ちょっと、何してるの!?やめてよ……!」


玲奈は達也の背後に回ると、慣れた手つきでベルトを外していく。彼女が何をしようとしているのか察した達也は抵抗しようとしたのだが……どういうわけか、意志に反して身体は動けずにいた。なすがままにパンツまで下ろされてしまい、そそり勃った男性器がぶるんと揺れ動く。


「気づいてなかったみたいだけど、僕がおっぱいを揉んでたあたりからずうっとビンビンになってたんだよ? 自分のエッチな姿を見て興奮しちゃうだなんて……玲奈ちゃんって変態だったんだねぇ♡」

「こ、興奮なんてしてるわけないでしょ!これは勝手にこうなってて……」

「言い訳しなくていいのになぁ。エロい気分にでもならないとチンコはこうならないんだよ? つまりぃ……ふへへっ♡玲奈ちゃんは『男』として、僕のカラダに興奮してたってことになるんだよねぇ♡」

「っ……ふざけたこと、言わないで……んあぁっ!?♡」


達也は反論しようとするも、不意に襲ってきた快感によって言葉を中断させられる。見れば玲奈は達也の男性器を握りしめており、そのまま上下にしごいていた。


「ほ~ら、こうしてあげると気持ち良いでしょ♡」

「うあっ♡ああぁぁぁっ♡♡」

「僕の声で喘がれるのはちょっと気持ち悪いけど……ふへへっ♡中身が玲奈ちゃんだと思うとなんだか可愛く思えてくるなぁ♡ ほらほら、男の身体も案外悪いものじゃないでしょ?」

「や、やめっ……あぁっ♡あうぅっ♡」


耳元で紡がれる鈴のような甘い声が。背中に押し付けられている柔らかな乳房の感触が。女性のしなやかな指で男性器をしごかれているという今までにない快感が。『達也』にとってはこれ以上ないほどの悦びであるその数々が、彼の肉体が持つ感性を通して玲奈の精神へと流れ込んでいく。

もはや抵抗の意志などは完全に刈り取られ、達也はされるがままの状態で快楽に溺れていた。だが――


「うっ……くぅぅっ……♡ ちょ、ちょっと、出させたいんならさっきみたいにやってよ! なんでいきなりこんなゆっくりに……んぅぅ……っ♡」


達也が興奮に身を委ね始めたあたりで、玲奈による手淫の動きは緩慢で焦らすような動きへと変化していた。

絶頂を迎えるには至らないものの、それでも射精欲は高まっていく。そんな状態で延々と責め続けられる生殺しのような状態が続き――やがてその動きをピタリと止めると、ねっとりとした口調と甘い声で玲奈は囁いた。


「うーん、出させてあげてもいいけど、ちょっとしたお願いがあるんだよねぇ」

「そ、そんなの後にしてよ!いいから早く――」

「大人しく聞いてくれないと、最後までやってあげないよ?」

「うっ……」


すっかり男性の本能に支配されてしまった達也は、玲奈の言葉に逆らえずに口をつぐんでしまう。


「ふふっ、いい子だね、玲奈ちゃん♡ それでお願いなんだけど……入れ替わってる間は僕のサポートをしてくれないかな?」

「ど、どういうこと?」

「ほら、このまま大学に行ったら、もしかしたら怪しまれちゃうかもしれないだろ?そうならないために交友関係とか教えてもらったり、ピンチな時はフォローしてもらったりとか……ああ、あと化粧とか生理とか?そういう女の子のこともよくわかんないからさ、そういうのも教えてほしいんだよね」

「だ、誰がそんなこと――」

「もちろんタダでとは言わないよ?」

「はぐぅっ!?♡♡」


玲奈は再び達也の肉棒に手を添えると、射精には至らない程度の力加減でギュッと握った。突然の刺激に達也が悶える中、彼女は亀頭を優しく撫でながら続ける。


「"お礼"と言っちゃなんだけど、協力してくれるならそのカラダでいっぱい気持ちよくしてあげるからさ♡」

「うぅっ♡ひぅぅっ♡♡」

「どうする?嫌なら別に無理強いはしないけど……」

「わ、わかった!言う通りにするからぁっ♡♡早くイかせてっ♡♡もう限界なのぉっ♡♡」


我慢の限界に達した達也は、なりふり構わず懇願してしまう。そんな彼の声を聞いた玲奈は満足げに微笑むと、肉棒を扱く手の動きを一気に早めていった。


「あははっ、玲奈ちゃんが素直になってくれて嬉しいなぁ♡それじゃあ約束通り、思いっきり出させてあげるね♡」

「ひゃうっ♡♡あぁっ♡あぁぁぁぁぁっ♡♡♡」


瞬間、達也は全身を痙攣させながら大量の精液をぶち撒ける。あまりの快感によって腰が抜けてしまい、彼はその場にへたり込んだ。


「たくさん出してくれたねぇ。どうだった?男としての初射精はさ♡」

「はぁっ……♡はぁっ……♡」

「……聞くまでもない感じかな?ふへへっ、玲奈ちゃんも僕のカラダを気に入ってくれたみたいで何よりだよぉ♡」


玲奈の軽口にも反応できず、達也はただ荒い呼吸を繰り返すことしかできないでいた。自分が女だった時には経験しようもなかった、射精を伴う男としての快感。加えて達也の肉体は憧れの『吉田玲奈』に奉仕されるという幸福感に包まれており、そんな彼の脳が分泌し続ける脳内麻薬によって、玲奈の精神も途方もない幸福感を味わうことになっていたのだ。


「というわけで……今日からよろしくね?玲奈ちゃん♡」

「あっ……う、うん……」


そんな『達也』の状態を知ってか知らずか、玲奈は彼に優しく微笑みかけながら手を差し伸べる。思わず彼女の手を取った瞬間に感じた胸の高鳴りの正体を、この時の達也はまだ気づけないでいた。




***




「あ、いたいた。 ねえ玲奈、今ちょっと話せる?」


数日後、大学の講義を終えた玲奈の元に、一人の女性が話しかけてきた。反応に困ったように「えーと……」と口ごもる玲奈だったが、隣にいた達也が彼女に耳打ちをすると、すぐに表情を和らげて返事をする。


「う、うん。大丈夫だよ、楓ちゃん。 どうかしたの?」

「んーん、別に大した用事じゃないよ。今日のサークル飲み、玲奈も行くんでしょ?だから、軽く作戦会議でもって思ってたんだけど……」


楓と呼ばれた女性は達也を一瞥すると、怪訝そうな顔を浮かべて言葉を続けた。


「確か、中村くん……だっけ?なーんか最近2人とも一緒にいるよね、もしかして付き合ってたりすんの?」

「……あははっ、バレちゃったなら仕方ないなぁ。 楓ちゃんの言う通り、あたしね、達也くんとラブラブなんだぁ♡」

「えっ!?」


玲奈の返答を前に、楓と達也はほぼ同時に驚きの声を上げる。


「冗談のつもりで言ったんだけど……え、マジ?」

「本当だよ。ね、達也くん♡」


玲奈は達也の腕にしがみついて甘えた声を出す。突然のスキンシップに達也が顔を赤くして硬直している一方で、楓はどこか納得いかないような様子で玲奈と達也を交互に見つめる。


「そ、そうなんだ。なんというか……玲奈、男の趣味だいぶ変わったんだね」


それから一言二言交わした後、楓はその場を離れて行った。その背中を見送った後、達也は小声で玲奈に詰め寄る。


「ちょ、ちょっと、今のどういうつもりなの!? 楓ちゃんの前であんな、あんなこと……」

「あんなことって、玲奈ちゃんのことを彼氏だって言ったこと? ふふっ、本当のことなんだから隠す必要なんてないでしょ?」

「ほ、本当のことって……」


玲奈は悪びれもせずそう言い放つ。そんな彼女に苦言を呈する達也だったが、心なしかその表情は嬉しさが見え隠れしているようだった。

そんな彼の内心に気づきつつも、玲奈はあえてそれに言及せず会話を続ける。


「冗談はさておき、僕たちが最近ずっと一緒なのは事実なわけだろ? それならいっそ、嘘でも付き合ってることにしちゃえば楽だと思ったんだよ。話しかけられるたびにいちいちごまかすのも面倒だしね」

「あ……そ、そっか。冗談なんだよね、うん……」


玲奈の言葉を聞いて、達也は少し残念そうな顔を見せる。そんな彼の表情を前にした玲奈は、悪戯っぽい笑みと共に口を開いた。


「それにしても、今日って飲み会あったんだね。忘れてたなぁ。 ……ねえ、今日の"お礼"なんだけどさ、もう大学でしちゃわない?」

「えっ……!?」

「ほら、帰りがいつになるか分からないでしょ? だから今のうちにシてあげようと思ってさぁ♡」


玲奈はわざとらしく上目遣いをしながら達也に迫る。達也はその視線から逃れるように目を逸らすが、玲奈は彼の腕を掴んだまま離そうとしない。


「もしかして嫌だった……?」

「べ、別に、私は嫌じゃない……けど……」

「そう?よかった♡それじゃあすぐに済ませちゃおっか♡」


玲奈は達也の手を引っ張り、講義室の外へと連れ出す。そしてそのまま人気のない多目的トイレに移動すると、もはや慣れ切ったような手際で達也のズボンとパンツを下ろし、屹立する肉棒の前にしゃがみ込んだ。


「えっ……手でしてくれるんじゃ、ないの……?」

「ふーん、玲奈ちゃんはそんなに手コキしてほしかったんだ?」

「い、いやっ、そういうわけじゃないけど……」

「安心してよ、ちゃんと気持ちよくしてあげるから。 なんなら手コキより気に入っちゃうかもね♡」

「へっ――お゛ぉっ!?♡♡♡♡」


玲奈は自身の胸元をはだけさせると、両手を使って肉棒を挟み込んだ。彼女の豊満な乳房の柔らかさと温もりがダイレクトに伝わり、それだけで達也は情けない喘ぎ声を上げてしまう。


「興奮するでしょ?僕のおっぱいでしてあげるパ・イ・ズ・リ♡ 今日はずっとおっぱいばっかり見てたもんねぇ♡」

「あぁっ♡すごっ♡これぇっ♡♡」


達也は無意識のうちに腰を前後に動かしており、玲奈の胸に擦りつけるようにして快楽を得ようとしていた。そんな彼の痴態を見た玲奈は妖艶な笑みを浮かべながら、興奮をさらに促すように胸を動かす速度を徐々に上げていく。

どちゅっ♡ばちゅんっ♡と淫らな音を立てながら激しく揺れる乳房に擦りあげられて、達也はあっという間に限界を迎えようとしていた。


「ひあぁぁっ!?♡♡ ま、待って♡♡もう出ちゃうかも……あうぅぅぅっっ♡♡♡♡」


ビクンッと達也が身を震わせたかと思うと、玲奈の谷間から噴水のように噴き出した精液が勢い余って彼女に降りかかる。彼女はそれを指先で掬うと、舌を出してぺろりと舐め取った。


「あははっ、早いなぁ。せっかく口で受け止めてあげようと思ってたのに、どろどろになっちゃったよ♡僕のパイズリ、そんなに気持ちよかった?」


玲奈がからかうように笑うが、射精直後の達也には反応できる余裕などあるはずもなく、ただ荒く呼吸を繰り返すだけだった。

トイレットペーパーで顔や服についてしまった精液をぬぐいとる玲奈だったが、すんすんと鼻を鳴らしたかと思うと呆れたような表情を浮かべる。


「あちゃあ、においが染みついちゃってる。流石に着替えないとかな。 ……それじゃあ僕はもう行くから、また明日ね。玲奈ちゃん♡」

「う、うん…………」


愉しそうにそう笑うと、玲奈は個室から出て行ってしまった。残された達也はというと、呆けた顔のままトイレの便座に独り座り込む。


(……おっぱいでしてもらうのって、あんなに気持ちよかったんだ……)


先ほどまでの出来事を思い返しながら、達也はぼーっと虚空を見つめていた。

自分が『玲奈』だった時に何度か"する側"として経験したことはあったが、その時には味わえなかった感覚を脳内でひたすらに、噛みしめるように反芻していく。少しずつ『達也』としての感性に染まり、もはや女性の身体の感覚を忘れつつある玲奈の精神にとって、男としての快感は至上ものとして感じられていた。


(私の身体の……中村くんのおっぱい、柔らかかったな……。それに精液が顔にかかってたのもエロくて……って、こんなこと考えてちゃおかしいのに、でもっ……♡)


達也は自分の右手が自然と股間に向かって伸びていることに気が付いていた。だが彼はそれを止めることができず、そのままゆっくりと手を動かし始める。


(うぅっ♡中村くんっ……中村くんっ……♡♡)


もはや歯止めが利かなくなり、達也はついに自らの意志で自慰を始めてしまう。興奮材料として想像しているのは先ほどまで自分を相手にしていた女性……つまりは、元の自分の姿である。そのことに違和感を抱くこともなく、達也は独り自らを慰めるのだった。




***




「――っていう感じかな。 一応全部伝えられたと思うけど……あっ、で、でも困ったことがあればいつでも連絡してね?」


2人が入れ替わってからおよそ一月が経過した頃、達也は玲奈の部屋に招かれていた。というのも、来週から始まる夏季休暇の間に玲奈が帰省することになり、そのために地元での交友関係などを共有していたのだ。

家族や友達について、さらには初恋の相手や初めての性体験すらも、他人には決して教えたくないであろう情報を達也は嬉々として伝えていく。

――玲奈にただならぬ好意を寄せている『達也』の肉体に入っておよそ1ヶ月。その内にある玲奈の魂はすっかりと肉体の影響を受けてしまい、自らも気づかないうちに『玲奈』への恋心を抱いてしまっていた。


「ふふっ、ありがと。ほんと、玲奈ちゃんにはいつも助けられてばっかりだね」

「そ、そんな、お礼なんていいよ! 私は達也くんの役に立てるだけで十分だから、えへへ……」


優しく語り掛ける玲奈を前にして、達也は顔を赤らめながら照れ笑いする。その姿からは彼が玲奈だったという面影も、身体を入れ替えた相手に対する敵意すらも感じられなかった。しばらくはそのままもじもじとしていたのだが、やがて沈黙が耐えられなくなったように達也はおもむろに口を開いた。


「それで……た、達也くん。 今日も私のこと、教えてあげたでしょ?だから、その…………」

「ああ、もしかして"ご褒美"が欲しいのかな?」


玲奈の言葉に、達也は恥ずかしそうな表情を見せながらもこくりと小さく頷く。玲奈はその様子を見て満足げな微笑みを浮かべると、ゆっくりと口を開いた。


「それなんだけど……ねえ、玲奈ちゃん。そういうの、もう止めにしない?」

「えっ……!?」


玲奈から告げられた突然の宣告に、達也は思わず驚愕と絶望が入り混じったような声を上げる。そして、予想通りの反応を返す達也を前に表情が崩れてしまいそうになるのをこらえつつ、玲奈は言葉を続けた。


「最初のころは玲奈ちゃんに色々フォローしてもらって、そのお礼にそういうことをしてあげたりしてたけど……最近はそれも無くなってきたでしょ?メイクとかだって、なんなら今はあたしの方が上手くなってきたし……。 だからね、ちょっと言い方が悪くなっちゃうけど、玲奈ちゃんがいなくてももうあんまり困らないんだ」

「えっ、あっ……」

「それに、玲奈ちゃんだってそうなった方がいいんじゃない?ずっとあたしに付き添ってもらってたせいで自由な時間が全然なかっただろうし。 ……だからさ、元の身体に戻るまでの残りの時間はお互い干渉せずに、好きにやっていこうよ。ね?」

「あぅ……。で、でも……」

「"でも"、どうしたの? ……もしかして、あたしにえっちなことしてほしかったりするのかなぁ♡」

「っ……♡」


玲奈が意地の悪い笑みを浮かべながら問いかける。達也は顔を真っ赤にさせて口ごもってしまったのだが――彼の返答を聞く前に、玲奈は明るい声を上げた。


「――なーんて、冗談だよ。玲奈ちゃんは元々女の子だったんだから、わざわざそんなことしてほしいわけないもんね。でしょ?」

「えっ……う、うん。もちろん……」

「だよね?分かってもらえてよかったぁ♡ ……今までありがとね、玲奈ちゃん。これから元に戻るまでの間もしっかりあたしが『吉田玲奈』をやってあげるから、安心して?」

「う、うん……」


玲奈の言葉に、達也は明らかに落胆の色を見せる。その理由を見透かしているのか、玲奈は愉し気な様子で彼を見つめていた。




***




「――んあぁぁっ♡達也くんっ、達也くんっ……♡♡」


玲奈の部屋を後にしてからほどなくして、達也は自宅に戻るなりトイレに籠り、ひたすらに自らの肉棒を扱き続けていた。その脳裏に浮かぶのは先ほどまで話をしていた女性――玲奈の姿であり、元は自分であったはずの彼女に奉仕されてきた光景や感覚を思い出しながら自慰に没頭する。

しかし、どれだけ行為を続けても彼が達することはなく、その顔には興奮と焦燥感の入り混じった表情が浮かんでいた。


「うぅっ……、やっぱり自分でやっても全然気持ちよくなれない……。達也くんにやってもらわないと、でも……」


自らのごつごつとした手を見つめながら、達也はぽつりと呟く。元の自分との歪な関係に慣れ切ってしまった彼の身体はもはや、玲奈にしてもらうことでしか射精に至ることができないまでに彼女に依存しきっていたのだ。

そのことをうっすらと自覚しつつ、それでも股間を必死に上下させる達也だったが、興奮と射精欲が蓄積されていくだけでむしろ逆効果だった。


「い、行かなきゃ……」


達也は興奮が収まらない様子のまま自宅を出ると、ふらふらとした足取りで夜道を進んでいく。誘蛾灯に誘われるようにたどり着いた先は玲奈の部屋だった。達也は震える手でインターホンを押し、玲奈が出てくるのを待つ。やがてドアが開かれ、中からはパジャマ姿の玲奈が現れた。


「どうしたの、玲奈ちゃん?何か忘れ物でもあった?」

「っ……うぁ……♡」


先ほどまで風呂にでも入っていたのか頬は上気し、うっすらと湿った髪からトリートメントの甘い香りが立ち込めている。わずかに開いた胸元から彼女の豊満な谷間が覗いており――既に興奮し切っていた達也はその光景を前にして理性を失いかけていた。

達也の様子は明らかに異常なものだったが、そんな彼を見てクスリと笑うと、玲奈は優しい口調で語り掛けた。


「……なんだかすごく辛そうだね。 とりあえず上がりなよ」

「あっ……う、うん……」


玲奈の言葉に達也はハッとした表情を浮かべると、こくりと小さく首肯して部屋に上がり込む。ベッドに腰掛けた玲奈に促されるままに、彼もまた隣へ座った。


「それで、一体どうしたの?連絡もなしに来るなんて珍しいよね」

「あっ、ご、ごめんね? ……じ、実は、その……」

「ふふっ、当ててあげよっか。 玲奈ちゃんはきっと、"ご褒美"が欲しいんでしょ?」

「っ……♡」


達也の股間に手を這わせながら、玲奈は妖艶な笑みとともに囁いた。その言葉を達也は何も返さなかったが、顔を真っ赤にさせながらコクリと、肯定の意を示すように小さく首を縦に振る。


「ふーん?やっぱりそうなんだ♡ ……うーん、でもなぁ。どうしよっかなぁ♪」

「お願いだから……も、もう限界なの! さ、さっきはしてほしくないなんて言っちゃったけど、でも、やっぱり達也くんにしてもらわないとダメで……!」

「あははっ、ごめんごめん。 玲奈ちゃんが可愛いからつい意地悪しちゃった♡ 玲奈ちゃんがそのつもりなら、これからもずっと相手シてあげるよ?」

「ほ、ほんとっ!?」

「もちろん♪ ……でも、1つだけ条件があるかなぁ」


玲奈はそう言うと、机から2つの青い錠剤を取り出した。そのうちの片方をゴクリと飲み込んでしまうと、残った方を達也の手にぎゅっと握らせる。


「えっ?あ、あの、これって……」

「あたしたちの身体を入れ替えた薬があったでしょ?アレが売ってた店で最近買ったものなんだけど、これを飲んだままセックスをすれば魂が固定されるんだって」

「そ、それってどういうこと?」

「うーん、あたしもよく分かってないんだけど、入れ替わってるままだと魂?が不安定になってるみたいなんだよね。この薬はそれを解消するもので……まあ平たく言えば、これを飲んですると二度と元の身体に戻らなくなるんだってさ」

「えっ…………」

「つまり、これからもあたしは玲奈ちゃんの身体で、玲奈ちゃんはその身体のままでいられるってわけ。 これを飲んでくれたらいつもみたいに射精させてあげ……ううん、今日は特別にセックスさせてあげる♡」

「せ、セックス!?達也くんと……で、でも……」


ほとんど性欲で頭が満たされてしまっている達也だったが、それでも彼女の提案にすぐ頷くことはできなかった。玲奈の提案を飲むということは元の身体に戻るのを永遠に諦めることを意味しており、彼の内に宿る『玲奈』としての精神が、その一線だけは超えてはいけないと必死に堪えていたのだ。

しかし、そんな彼の葛藤を見透かすようにして、『玲奈』の身体の新しい持ち主はその未練を断ち切るべく言葉を紡いでいく。


「うん、悩むのも無理ないよね。 それじゃあこういうのはどうかな。もし玲奈ちゃんが薬を飲んでくれたらぁ……ふふっ、君をずっと、あたしの彼氏にしてあげるよ?」

「えっ!?わ、私を……!?」

「もちろん今までみたいな見せかけだけじゃなくて……正真正銘、本当の恋人同士になってあげる♡ どう、悪い話じゃないでしょ?」

「えっ、あっ、けど……も、元々は私の身体で……」

「君の意思で、好きな方を選ばせてあげるよ。 この薬を飲まないで何もしないで部屋を出ていくか……それともこれを飲んで、入れ替わったままでいるのか♡ ほら、玲奈ちゃんの好きにしていいんだよ?」

「あ、うあぁっ……♡」


玲奈は達也の耳元へ唇を寄せると、甘く蕩けるような声で囁きかける。それは彼が『玲奈』として再び生きる最期のチャンスだったのだが――もはや達也にまともな思考力は残されておらず、誘惑のままに錠剤を飲み込んでいた。


「……ずっと入れ替わったままでいいって、そう受け取ってもいいのかな?」

「あっ……わ、私は、その……」

「ふふっ、何も言わないでいいよ。 君の気持ちはあたしが一番分かってるつもりだから」


玲奈はそう言って優しく微笑むと、パジャマのボタンに手をかけていく。少し遅れて、達也も自らの衣服を脱ぎ始め――やがて2人は一糸纏わぬ姿で向き合っていた。しばらく黙ったまま見つめあう2人だったが、おもむろに玲奈が口を開く。


「どうしたの、玲奈ちゃん?今日は前みたいにリードしてくれないのかな?」

「あっ、ご、ごめんね!?ずっと達也くんにしてもらってたから、その……」

「あははっ!ごめんごめん、意地悪言っちゃったね。 心配しなくても大丈夫だよ、ちゃんとあたしが気持ちよくしてあげるから……♡」


玲奈は妖艶な笑みを浮かべると、ゆっくりと達也を押し倒していく。そのまま達也の肉棒を掴むと、自分の秘所へと押し当ててゆっくりと腰を落としていき――既に準備万端となっていた互いの性器は、何の抵抗もなく結合を果たしていった。


「んっ、あぁぁっ♡♡ これがおちんちんが入ってくる感覚、セックスの快感っ♡♡ やっぱり女の子って気持ちいいよぉっ♡♡」

「あひっ♡♡♡ま、待ってっ♡♡♡そんなに激しくされたら……あぁっ♡♡♡♡」

「ふふっ、出してくれていいんだよ♡♡ 今日だけは……ううん、これからもずっと、あたしは君だけのモノなんだから♡♡」

「っ……た、達也くんっ♡♡ あうぅっ♡♡」


もはや欲望に抗おうという意思は完全に消え失せ、肉体が、そして心が求めるままに一心不乱に腰を振り続ける達也。そんな彼を愛おし気に見下ろしながら、玲奈もまた快楽の渦の中に溺れ続けていた。

それは2人にとって永遠とも言えるほどの幸福に満ちた時間であったが――既に我慢の限界にあった達也によって、それは終わりを迎えようとしていた。


「ご、ごめんっ♡♡♡ 私、もうっ……♡♡♡♡」

「いいよ、射精してっ、イかせてっ♡♡♡♡ 玲奈ちゃんのカラダも心も、全部あたしにちょうだいっ♡♡♡♡」

「あ゛っ♡♡そ、それだめぇっ!?♡♡イクっ♡♡♡イっ……あぁぁぁっ!!♡♡♡♡」


ぎゅっ、と玲奈は両腕両足を使って達也の身体を強く抱きしめる。まるで絶対に逃さない、離すまいとしているかのように。それが最後の引き金となり、限界まで溜められていた精液は勢い良く膣内へ解き放たれていく。同時に玲奈も絶頂を迎えたようで、ビクビクと身体を震わせながらその余韻を味わっていた。




***




「――あ、あの、今ちょっといいかな……?」


とある大学の講義室。講義が終わった直後で人がざわつく中、席に座っていた女性に挙動不審な男が話しかけていた。

一方はどこかおどおどとした様子が見受けられる地味な青年、もう一方は整った顔立ちに抜群のプロポーションを持った美女と……一見して接点がなさそうな2人だったが、女性は男の方を振り返ると満面の笑みを向けた。


「なんだ、達也くんかぁ。 どうしたの?改まって」

「その……ほら、昨日ゼミの課題渡されたでしょ? い、一応玲奈ちゃんの分もやっておいたから、渡しておこうかなって……」

「えっ? ……それはありがたいけどさ。この量を2人分って、大変だったでしょ。なんかごめんね」

「き、気にしなくていいよ! 僕が勝手にやってることなんだから……ふへへ……」

「……とか何とか言って、本当はあたしとえっちしたいからやってくれたんじゃないの?」

「えっ!?あっ、いや、その……」


玲奈の指摘に図星だったのか、顔を真っ赤にして慌てる達也。その反応を見てクスリと笑ったかと思うと、玲奈は少し呆れながらも口を開いた。


「そんなことしてくれなくても、いつでもシてあげるって言ってるでしょ?だって……ふふっ、達也くんはあたしの彼氏なんだから♡」

「っ……♡」


耳元で甘く囁かれたその言葉にゾクリと背筋を震わせる達也と、そんな彼を満足気に眺める玲奈。やがて2人はどちらからともなく手を取り合うと、仲睦まじく講義室を後にするのだった。

Comments

読んでいただきありがとうございます! 恐らく、以前の私のツイートを引用していただいているものだと存じますが、そちらについては現時点では全く書く予定はないですね~

メス牡蠣

面白く見ました 後から『本物』がやってきて、友人だった子たちに「無事でよかった」と心配されながら囲まれてる元自分の姿を『少女になりすまそうとしていた不審者の中年男』という立場になって見ることしかできないとかもめちゃくちゃエッチだと思います も会いたいです!!

toky930501


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