SamSuka
Jin(鬼頭ジン)
Jin(鬼頭ジン)

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ファンタジーワールドへようこそ!

「あ」 「あ」 「おや」 それは本当に偶然だった。 今日、俺は会社の休みに息子にねだられ新しくできた遊園地『メルヘンランド』にやってきていた。 俺の名前は宇佐義晴。会社員だ。 「パパどうしたのー?」 「いやなんでもないよ。ちょっとここで待ってな」 「うん」 車を約2時間乗り回し受付を済ませ遊園地の門を今くぐろうとしたその時だった。同じ会社の先輩と上司の二人が子連れでやってきていたのだ。そして俺はそこで偶然鉢合わせたというわけだった。 「まさか宇佐君と須野君もここに来ていたとはねえ 「そうですね」 上司と今話しているのが同僚の須野利和。丁度同じ時期に入社していて俺と仲が良い。よく相談にも乗ってくれている。 「息子と遊んでやれと妻がうるさくて。それに僕も遊んでやれていなかったので……秋彦さんもそうなんですか?」 「私は孫が久しぶりにこっちに来ていたものでね。最近できたらしい遊園地に来ようかと思ってね。遊園地なんて私には似合わないだろうけどね」 「そうなんですか」 こっちが上司の阿部秋彦さん。40過ぎのベテランで、温和だが厳しくそれでも俺たちの面倒を良く見てくれている。 せっかく家族水入らずなのだ。このまま三人で行動するというのも何なので、俺たちは少し話すとそれぞれ息子達を連れて別れた。こういうこともあるものなのだな。と少し驚いたが気を取り直して息子と遊園地を楽しむことにした。   ◆ その後義晴は息子の樹と遊園地のアトラクションを楽しんだ。仕事勤めで樹との交流が最近は皆無に等しかった義晴はその日子供のように楽しんだ。息子もそんな義晴を見て嬉しかったのか終始無邪気な笑顔を見せていた。 そして夕方。一通りアトラクションも楽しみ終わった二人は遊園地を後にしようとしていた。 「楽しかったねー!」 「そうだな。そろそろ帰るか」 「ちょっとまって! 僕行きたいところがあるんだ!」 そう言って樹がパンフレットの地図を指差した。そこには“ファンタジーワールド”と書かれていた。どうやら遊園地のアトラクションらしいのだが。 パンフレットによるとファンタジー世界の住民になりきってその世界を旅する。という内容らしい。よくある体験型アトラクションなのだろうと義晴は思った。 「行きたいのか?」 「うん!」 もうこんな時間であるから閉まっているのでは。これ以上長居すると夜遅くなってしまうのではないか。義晴はそうも思ったのだが、樹としばらく何もしてやれなかった罪滅ぼしも兼ねて今日くらいはいう事を聞いてやることにした。それに、近くには宿泊施設もあったはずだ。遅くなるのならそこに泊まるのもありだろう。そうも思ったからだ。 「よし、行くか!」 「やったー!」 義晴は、ファンタジーワールドへ向かうことにした。そこは巨大な城を象った建物で、中には扉が二人を待ち構えていた。   ◆ 「ここか」 「ねぇ、パパ早く行こう!」 「ああ……あれ?」 扉に向かった義晴はそこで足を止めた。そこにある扉は小さく子供ひとりがやっと入れそうという大きさであった。義晴はその瞬間子供専用なのか? と思ったが、その隣に大きな扉があるのに気がついた。よく見ると看板に“子供用”・“大人用”の文字が。 (なんだこれ? 大人と子供で違うアトラクションがあるのか? それとも後で合流するのか?) 義晴は疑問に思ったが樹がそわそわしていたのでとりあえず「よし、樹はこっち。パパはこっちに入るから後でまた会おうな」と言った。樹は笑顔で了承し待ってましたと言わんばかりに一目散に扉を開けて中に入っていった。 「さて、俺も行くか。あまり樹を一人にしておきたくないからな」 義晴も、樹に続き大きな扉へ入って行った。義晴は入ってすぐまるで本当にファンタジーの世界に入ってしまったかのような感覚に見舞われることになる。 まず扉をくぐると、そこは不思議な木が生い茂る森の中になっていた。木に囲まれた一本道がありそこをまっすぐ通ればいいとすぐに分かった。 そのまま道をまっすぐ進んでいく。抜けるような青空に不思議な植物たち。空にはシャボン玉やカラフルなボールまで浮いており最近の技術も凄いものなのだなと義晴は感心した。 そのままずっと進んでいくと、またもう一つの扉を発見した。パステルカラーで構成された不思議な模様の扉は二十歳後半の義晴の目に刺激を与えた。 「ずっと見てると目がチカチカしそうだな……樹も待ってるはずだし行かなきゃな」 義晴は急いで扉を開ける。するとぎぎいっ――とメルヘンチックな扉には似ても似つかない物々しい音が鳴った。義晴はその音に少し違和感をおぼえた。だがそれを感じた時にはもう遅かった。 「うわっ!」 扉からは白い光が溢れてくる。義晴はその眩しさについ目を瞑る。その光は義晴の身体を包み込むように発せられ義晴は光に吸い込まれるように次の部屋に入っていった。   ◇ 「ん……」 光がなくなり目を開けられるようになった義晴は少しずつその閉じた目を開いていく。 そこに映ったのは目を疑うような光景だった。 「な、なんだここ!?」 そこには絵本やアニメの中にいるような小さな動物たちが無数に存在した。まるで本当に別世界へやってきたようにも錯覚されるがそれだけではない異様な光景がそこにはあった。 その動物達は、作り物でも着ぐるみでも何でもなく本当に生きているのだ。しかもリアルな動物ではなく可愛らしくデフォルメされたマスコットのような姿形をしている。 そのすぐ近くにはもう一つ扉がありそこには“ファンタジーワールド”と書かれていた。 「は? ここは、ファンタジーワールドじゃない? っていうか何だこの動物……まるで本当に生きてるみたいな……」 「まるでじゃなくてぼくたちはほんとに生きてるんだよ。人間さん」 可愛らしい声がした。それは間違いなく自分に話しかけていて、下を見ると小さな犬がちょこんと立っていた。首にはスカイブルーの首輪が巻かれている。 「しゃ、喋ってる!?」 「ぼくはワンダー! ファンタジーワールドの住人さ。よろしくね人間さん」 ワンダーと名乗ったその犬は義晴に向かってその小さな手を突き出した。どうやら握手を求めているらしい。 「はあ、どうも」 義晴は困惑しつつも握手を交わす。柔らかな毛と肉球の感触がした。ぬいぐるみでも握っているかのようにふわふわだ。 「でもざんねんだな。ここは子供だけの世界なんだよね。人間さんでしかも大人さんのきみじゃここにはいられないんだ」 ワンダーは困った顔でそう言う。そういう設定なのだろうか。でもそれなら何故入り口には“大人用”などという看板があったのだろうか。その矛盾に義晴は心の中で首を傾げた。 「そうなのか? じゃ、じゃあ出なくちゃダメってことか? でも……」 樹を置いていけないし――そう口にしようとした義晴を遮ってまたワンダーが言葉を発する。しかしそれは、義晴の想像を超える不気味な発言だった。 「でもこの世界に入ったら、出られないよ? 人間さんがこんなところに迷い込むのなんてあまりないことだし……」 「……は?」 わけがわからなかった。 ワンダーが今口にしたその台詞。それが本当ならばもう自分は出られないということだ。それにここに迷い込むとはどういうことなのか。ここは遊園地のアトラクションではなかったのか。 「あ、そうか分かった。これは遊園地の演出だろう。きっとそう……」 「エンシュツ? ってなーに? ここはファンタジーワールド。人間さんのいる世界とは違う世界のはずなんだけど?  ……あー! それに最近は人間さんが何人も迷い込んでくるからなんなんだろうと思ってたんだけど、もしかしてその“ユーエンチ”ってところに繋がっちゃってるのかもね! それならいそがしくなるなぁ……」 自分で首を傾げ勝手に自己解決しているワンダー。もし彼が言っていることが本当ならば、アトラクションなどはじめから存在していなくて、何らかの形で遊園地とこの世界が繋がってしまったということになる。そんな不可思議なことはあり得ないはずだ。架空の世界の話じゃないんだから。義晴は頭の中が滅茶苦茶になりそうだった。 それに、最近は人間が何人も迷い込んでいるという。自分達と同じくアトラクションと勘違いして来た人間がいたということなのだろうか。それともう一つ疑問が存在した。 ワンダーが口にした『忙しくなる』という言葉の意味とは――? 「とりあえずきみもここの住人になるんだ。ぼくたちにはその力がある!」 「ここの……住人、に?」 ここの住人になるとはどういう意味なのか。もしここが本当にファンタジーワールドという名の別の世界ならば、これから起こることは――考えれば考えるほどわけがわからなくなっていく。そんな義晴を尻目にワンダーは呪文を唱え始めた。 「えらにに・たおぶな・すねぐんいん!」 ワンダーが呪文を唱えると両手から虹色の光が飛び出し義晴に向かって飛んでいく。まるで魔法でも見ているかのよう――いや、間違いなくこれは魔法であった。 光は義晴を包み込む。義晴は身体中が光に溶かされていくような感覚に苛まれた。目の前と頭の中が真っ白に塗りつぶされていく。 光の中。義晴の身体に異変が起きていた。 体が縮み出し人間としての大きさを失ってゆく。それだけではない。大きさどころか姿形まで人間らしさを失っていったのだ。 手指は長さをなくし小さな腕となる。先にはとても小さな指が存在したが手の平とほぼ一体化しておりそれは人のものだったとはとても言えない可愛らしいものになっていた。 足は小さく細長く伸びていき最終的には縦に長くなった。まるで動物の足のようにも見える。いやまさしくそれは動物の足と言うに相応しいものであった。 奇妙な音をたてながら頭部そのものが変形していく。耳は縦に長く伸びながらその位置を上へ上へと移していき最終的には頭頂部にふたつの大きなアンテナのような耳がそびえ立った。 髪が、眉がその役目を終えたかのように力を失くしはらはらと抜け落ちてゆく。それらは光の中に吸い込まれて消えていった。その代わりと言わんばかりに白く柔らかな毛が義晴の身体中を覆っていきいつしか義晴は純白の小さな生き物となっていた。 「ふあっ、あっ、あぁぁあっ!」 義晴は、自らを襲う不思議な感覚にふいに声をあげた。その変声期を終えた野太い声が段々と高くなっていく。義晴が叫びを終えた頃には可愛らしい少年のような声が義晴の口から発せられていた。 その声を発していた口やそれらのパーツも、もはや彼としての原型を留めてはいない。赤く大きなくりくりとした愛らしい目に黒い鼻。出っ歯が特徴のその顔は、まさにウサギと称するに値するそれであった。 いや、顔だけではない。 体も姿形も何もかもまで、宇佐義晴は名実ともにウサギとなっていたのである。義晴を包み込んだ光が収束するとそれは紺のタキシードとなって義晴の小さな上半身を覆った。 「な、なんだこれぇ……」 人ならざる姿に変貌してしまった義晴は甲高い声で柔らかな草にぺたりと座り込んでしまう。ふと近くを見ても体の大部分が見えている。やはりそれはワンダーに似た動物のような肉体であり自由に自らの意思で動かせることから、それが確かに自分自身のものであることは真実で、義晴はそれを認識し受け入れざるを得なかった。 「これからよろしくね! きみの名前は?」 「う……宇佐、義晴……」 「ウサヨシハル? 長い名前だね。呼びにくいなあ……」 ワンダーは手を顎に当て考えこむと何か閃いたかのように顔をあげた。 「そうだ。きみは人間さんだからぼくたちと考えがちがうんだったね。それならいい方法があるよ!」 「えっ?」 ワンダーは笑顔でそう言うと義晴に近づいていく。ほぼ同じ等身になったワンダーは、義晴から見れば未知の存在だった。先程まで片手で抱けるほどに小さかったそれが自分の目と鼻の先に居るのだ。恐怖さえ覚えてもそれは仕方のないことだった。 ワンダーは徐に義晴の肉体に手を近づける。タキシードの覆われていない下半身に手を近づけると股ぐらの辺りをちょんと突くとそのまま手をめり込ませた。音もせず股間にワンダーの手が入り込んでいく。 「ひゃっ!?」 「じっとしててね。きみは初めてなんだから」 「いったい何を……あぁっ!」 ワンダーは義晴の股の中の“なにか”を探し出しそのまま外へ引き抜いた。するとそのワンダーの手にはピンク色の長い棒のようなものが握られていた。義晴の股に繋がっており細長い形をしている。 「これはぼくたちがきもちよくなるためのものなんだけど……きみ、初めてだよね?」 それは生物で云うところの、所謂“陰茎”であった。ぬいぐるみのようなマスコットのようなファンシーな外見の生物であるはずの彼らにも、“そういったもの”が存在していたのか。義晴はそう思った。しかし義晴の股に飛び出ているそれはグロテスクな“それ”とは違い全体的に丸くピンク色の可愛らしいものであった。 ワンダーがその陰茎らしきものをほんの少しだけ握る。すると綿を握ったかのようにふんわりと手の形を象るように凹む。その瞬間義晴の頭の中に快感が走った。といっても電流などといった刺激のあるものではない。香水を嗅いだ時のようなふわりとしたつかみどころのない感覚だった。 その感覚についぼーっとしていた義晴は「ねえ、どうだった?」というワンダーの声で我に返った。無意識に口元を拭うとその手は濡れていた。 「き、気持ちいい……」 「でしょう? でも、ぼくらにさわられるよりきみ自身がさわるほうがきもちいいんだよ。やってみて」 「俺が……?」 ワンダーの言葉に甘えるかのようにゆらりと小さな手をピンクの棒に近づけていく。が、我に返る。返ろうとする。ここで触ってはいけない。快楽を感じてはいけない。そう本能が警告していたからだ。 「この世界は平和でやさしい世界なんだ。きみのいた“ヒューマンワールド”はどうかはしらないけれど……きっとこうかいなんてしないはずさ」 そう言ったワンダーの顔は屈託のない笑顔だった。まるで悪意など感じない無邪気で愛らしい笑顔。それが今の義晴には不気味にも感じていた。 「あ、あ……」 少しづつ距離を縮めていたピンク色の欲望に手が触れた瞬間、義晴の思考は白く濁っていた。気がつくと彼は手に白い液体をくっつけて惚けていた。 目の前にあるのは白い水たまり。こんな姿になっても一人前に出るらしい。精液というものは。 「俺は……」 しかし、意識を戻した彼は自らのことを覚えていた。欲望に負け欲望を吐き出した時と何も変わってはいない。 「俺の名前はビット……だ」 ただ一つのことを除いて。 「そう、ビットっていうんだね。今日からきみはビットだ。ぼくはワンダー! よろしくね!」 「ああ……」   ◇ 「これからきみはこの世界に慣れるうち“けがれ”をなくしていくと思う。よくわからないんだけどぼくたちにはなくて人間さんにはあるものだって本に書いてあったんだ。  人間さんは「きもちよくなる」ことで“けがれ”をとることができるらしいんだ。だから、さっきぼくが手伝ってあげたんだよ!」 ワンダーは笑顔でビットの手を取る。案内するかのように手を引き扉へ歩いていく。 ビットはその扉に入ればもう帰ってこれない。そんな予感がしたがそれ以上に大切なことを思い出した。 「ぼくがこの世界をあんないしてあげるよ! いろいろあるから、きみもすぐ慣れると思う……って、あ!」 ビットはワンダーの手をはね除けると一目散に扉へと走っていった。目的はたったひとつ。大事な一人息子の樹に会うため。二人でこの世界から脱出するため。 ほぼ無理だと分かっていたとしても、一人の親として息子を置いては行けなかった。それこそ人間としての何かをなくしてしまいそうな気がしたから。 「困ったなあ。まよっちゃったらどうしよう……」 ワンダーもビットを後を追い扉へと向かっていった。   ◇ ビットは広大なパステルカラーの世界を旅していた。何人かこの世界の住人に声をかけられたがそんな暇はなかったうえあくまで自分にとっては別の世界の者であることには変わりなかったからだ。彼の目的は息子の樹ただ一人しかいない。 どれだけ走っただろう。ビットは湖へと到着していた。 常に虹が架かり橋になっているそこでビットはその赤い瞳でしっかりとそれを見つけた。 子供。それは間違いなく人間の子供であった。 「樹!」 喜び勇んで子供の下へ向かったビット。しかし…… 「誰? ウサギさん?」 「……違う。樹じゃない」 「樹? 僕、理だよ!」 理と名乗ったその少年は、樹と同じく父親と遊園地へとやってきていたがはぐれてしまったと言うのだ。自分と同じ状況の父親を思うと他人事ではいられなかった。 「そうか。それは災難だったね。じゃあ俺と……」 「大丈夫だよ。レイルスくんと一緒だから」 「え、それって……」 その時、ビットの後ろで声がした。 「おーい理! 誰と話してるんだ!」 後ろを向くと手を振りながら理を呼ぶ者がいた。それは緑色のマフラーをした栗色のリスだった。やはりワンダーやビット同様デフォルメされたぬいぐるみのような外見をしていた。 「ビットというのか。僕はレイルス。君と同じこの世界に迷い込んだ元人間……情けない話なんだけどね」 「息子さんだったんですか。苗字はなんというんですか?」 「それが、息子も僕も忘れてしまってね。この子が僕の息子だということは覚えてるんだけど、恥ずかしながら僕が本当の名前を忘れてしまったんだ。  息子に訊いたら分かると思ったんですが、この世界のせいなのか理もど忘れしていまして……情けない限りです」 どうやらそのリスもビットと同じ世界の住人にさせられた人間であり、レイルスは同じくここへ迷い込んだ息子と合流し行動を共にしているというのだ。 「エイガーと名乗るトラにこんな姿にされて、気がついたら人間だった頃の名前もレイルスというこの世界での名前に変えられて昔の名前も覚えてなくて……」 「はい、俺も……ワンダーというイヌにチ……体を触られ頭の中が真っ白になったと思ったらこの名前にされていたんです」 その言葉で察したのかレイルスも赤くなり口を小さく開け話し出す。 「あ……ビットもか? 僕もなんだ。恥ずかしいんだけど……チンチンを触られて気持ちよくてつい……触ってしまったんだ」 やはり同じ。ビットはそう確信する。 陰茎を触られ果て気がつけば名前がすり替わっていた。ビットに起こったことと全くもって同じだった。 「となると……やはり……そういうこと……」 「自慰をし射精した時ってことに……なりますね」 二人は湖で遊んでいる理に聞かれないよう小声で話し出す。それ以外に羞恥の感情もあったのだろう。 「じゃあ僕はそろそろ行くよ。一緒に行ってもいいけど君も子供を探してるんだろう? 僕達に構わず行きなよ」 「だけどせっかく会えた同じ元人間と別れるのはなぁ……」 「大丈夫だよ。脱出してなきゃまたきっと会えるから。まあその場合会えない方がいいのかもしれないけどさ」 あっけらかんとした笑顔でリスのレイルスは去って行った。彼は息子と脱出できるのだろうか。いや、してほしい。ビットはそう願い息子をまた探すことにした。   ◇ 「はぁ……はぁ……」 ビットは疲れ果てていた。 一日中走り続けその体力は限界に近づいていた。空を見上げれば満天の星空がビットを見つめている。都会では到底見られないような幻想的な光景にビットは感動すら憶えた。 が、こんなに暗くなったというのに未だに樹が見つかっていない。どころかこの世界に迷っているまま。その事実にビットは不安感を抱いた。 「くそっ……はぁっ、はっ、ダメだ……今日は寝るしかない……あぁ……目が……目……うぅ」 草のベッドに跪き顔を突っ伏す。そのまま倒れこむように眠りに落ちた。   ◇ その後もビットは樹を探し続けた。 しかし一日、二日、一週間、一ヶ月経っても樹を探し出すことはできずにいた。 さらにこのファンタジーワールドの空気を吸い続ける度頭の中がモヤに包まれるような感覚がしてくるのだ。段々と冷静な判断力がなくなっていくようでビットは内心恐怖でいっぱいだった。 ビットがあの時から再び精子をぶち撒けたのは扉をくぐってから五日目のことだった。休憩中陽気に当てられついうとうとしておりいけないと首を振ったその時にはビットは無意識に自慰を終えていた。 次にビットが失ったものは会社の記憶だった。そもそも会社に入社したことすら覚えていないのだ。さらに息子がいたことは覚えている。のだが、結婚した妻のことは忘れてしまっていた。 思い出せるのは高校に卒業した頃の記憶までで、何故高校生である俺に子供がいたのだろうと頭を傾げたが、一緒に迷い込んだ大切な人間だからだろう。そう思うことにした。 二週間が過ぎる頃、ビットは変身してから三回目の射精をした。中学を卒業した頃ぐらいまでの記憶はかろうじて残っていたのだがそれ以降の事はすっかり頭から抜け落ちていた。いや、まるではじめからそんな記憶はなかったかのように認識していた。 それでも唯一覚えている樹という名の少年をビットは探し続けた。もう自分の息子であったことも覚えていないにも関わらずビットは樹を助けて共にここから出るために本能で動き続けていたのだ。 「俺……もうやりたくねえよ。いつまでこんなことしなくちゃなんねーの? でも……樹は俺にとって大事なヤツなんだ。探さねーと……」 とぼとぼとファンタジーワールドを歩き続けるビット。その目の前に映ったのは、大きな木造の家だった。 そこには【ベアンの家】と書かれており、中に誰かいることが伺えた。看板の通りベアンという人がいるのだろうか。 「ここ……こんなとこにいるとは思えねえけど……一応」 ご丁寧に備え付けてあるピンポンを鳴らすとドアを開けて出てきたそれは、小さなオレンジのクマだった。右腕に銀の腕輪を填めている。 「やあ、きみもきもちよくなりにきたの? ちょうどぼくの友達もいるんだ。入りなよ」 クマは満面の笑顔でそう言うとビットを家へと手招きした。言われるまま部屋に入ったビットの目に最初に入ったのは、ビットが今までずっと探し続けていた者であった。 「樹!」 「誰? ウサギさん?」 樹。ビットが一ヶ月かけて探していた子供だ。辿り着くまでに色々大切なものを失ってしまったが。やっと出会えたという事実を目の当たりにしたビットの目からは涙が零れていた。 「どうしたの?」 「なんでもねえよ。心配かけさせんな」 「この子は二週間前くらいかな。ここに来たからすまわせてあげたんだよ。自己紹介がまだだったね。ぼくはベアンだよ」 どうやらこのベアンと名乗るクマが家の主であり看板に書かれていた名の持ち主であるらしかった。 ビットは一言「ありがとう」と言うと樹を連れて家を後にした。いや、するはずだった。と言うべきなのだろうか。 「ちょっとまってよ。せっかく来たんだからきもちいいことしよ?」 「は?」 ベアンのその一言がビットの人生を変えることになった。ビットの望まぬ形で。 「紹介するよ。ぼくの家族のアート」 「アートです!」 アートと名乗った黄色のクマはベアンに一回り小さいものの瓜二つだった。ベアンとは違い左腕に金色の腕輪が填められている。 「ぼくたち、ここにやってきたのは一ヶ月前くらいなんだけどね。まだまだ新入りの初心者さんだけど、楽しくやってるよ」 「そうそう。ぼくらきもちいいのがだーい好きなんだー!」 ベアンとアートが続けざまに言う。この住人にも新入りやそうでないのがいるのか。ビットはそう思った。が、もう一つあることに気がついた。 「一ヶ月前?」 「どうしたの? ウサギさん?」 一ヶ月前といえば、自分がここへやって来たのも一ヶ月くらい前だ。これが意味すること。それは中学生にまで退行したビットの頭でもすぐ理解することができた。 「もしかして、お前ら人間か?」 ビットは、その仮説が確かならば、彼らも自分達やレイルス同様ここに迷い込んだ元人間となるはず。同じぐらいの時間にやって来たのならばなおさら――そう思ったのだが―― 「違うよ?」 「え?」 その返答は予想と違うものだった。 「ぼくらは最初からこの世界の住民だよねー」 「ねー!」 ベアンとアートは口を揃えてそう言う。この時点で考えられる可能性はふたつだった。 ひとつは本当に一ヶ月前ここで誕生したただのファンタジーワールドの住民である可能性。 そしてもうひとつは…… 「あぁ! もうガマンできないよ!」 「ぼくも! ベアン、お願いお尻にいれてー!」 「わかった今いれてやるからな!」 質問を終えた後急にクマ二人が抱き合いはじめた。どうやら「きもちいいこと」をしたいらしい。アートは四つん這いになるとベアンの前に笑顔で尻を突き出す。まるでそれを待っているかのよう――いや、間違いなく待っているのだ。 ベアンは舌を出しながら股間に手を突っ込む。そのままビットと全く同じ形のピンク色の棒を取り出した。それをゆらゆら振りながらアートの臀部にそれを持っていく…… 「いれるよ!」 「やったー!」 「えい!」 そしてそのままそれを尻の中に挿れてしまった。綿に固い棒が刺し込まれるかのようにずぼりと尻穴にマスコットペニスがめり込んでいく。 「あぁ! あん!」 アートは甘い喘ぎをあげながら同じく股間に手を入れると同じようにペニスを取り出した。 「あぁ!」 「んああん!」 その後は汁が次々と放出されるだけだった。ベアンのペニスが前後される度にお互いのペニスからは大量の精液が溢れ出し部屋の中を汁まみれにした。 その様子をビットは驚愕して見ているだけだった。しかし樹はそれをいつも見ているかのように平然としている。 違う。ようにではない。本当にいつも見ているのだろう。おそらく二週間はベアンとセイカツを共にしていたのだから。 「今日も出したねぇ」 「うん。やっぱりがまんするのはよくないよね。ぼくいそがしくていつもがまんしてきたんだ。今でも思い出すよ……ここにきてはじめて出した日のこと。きもちよかったなあ……」 精液にまみれそれでも無邪気な笑顔を絶やさないクマ二人。まるで二人は兄弟か親子のようにも思えた。が、どちらなのかはこのそっくりな見た目では皆目見当もつかなかった。 「ビットくん。きみもするでしょう?」 「お、俺は……やんねーよ」 前を向きながらそれでも動作は後ろになっているビット。彼の残されたわずかな人間の名残がそうさせているのだ。しかし彼も少なくとも半分はこの世界に馴染んでしまっている。その証拠に、口では否定している彼の顔は紅潮し蕩けていたのだから。 「!」 ビットは息を呑んだ。ガバッと自分の小さな体を覆うのはベアンの体。ベアンがビットを押し倒し今にも襲いかかろうとしている。しかしその表情は純真無垢な少年のそれであった。 「がまんはどくだよ。ためこんでると何もできないんだよ。ぼくはそれを学んだよ。オトナになんかなったって何もきもちよくなれないんだって」 「それ、どういう意味だよ……」 「この世界はみんなこどもだから、がまんなんてしなくていいしみんな仲よく笑ってる。こんなに楽しいことはないだろ? だから、がまんせずに楽しんじゃえばいいんだよ!」 ベアンは笑顔でそう言うと無理矢理ビットの股間に手を埋めはじめた。そのままペニスを引き抜き露出させる。 目を瞑ったベアンはそのまま静かにビットの唇を奪った。小さな水音が鳴りビットの顔はさらに赤みを増していく。 ビットの表情が驚きから切なさに変わっていったのをベアンは見逃しはしない。そのまま両手を顔に当て長い耳を舐めはじめた。 「おおっ! そこ、やめろ!」 「そこ、きもちいいの? じゃあもっとしてあげる……」 耳を舐めていたベアンは耳の裏を甘噛みし息を吹きかける。その度ビットの顔は情けなく蕩け涎が溢れ出す。ビットの心の中では気持ちいい。だけど屈したくないという葛藤に苛まれていた。それを見透かすや否やベアンは「きもちいい? それとも、もっとしちゃう?」と息をかけながら小さく囁きかける。 「でもやっぱりきみはおちんちんを自分でさわることをおぼえなくちゃ」 いつしかベアンはマウントを解除し臀部を腕で持ち上げちんぐり返しの状態にする。ビットの目と鼻の先には、自分自身の柔らかなペニスが鎮座していた。 「ほら、口でもいいし手でもいいから。さわってごらん。きみはがまんしてるんだ。そんなことしなくていいんだよ。きみはもう、この世界の住人なんだから……」 持ち上げられた体を倒そうにもベアンの力は予想以上に強く無理な体勢もあって体を戻すことはできずにいた。 しかし触ってしまえば今度こそ自分が消えてしまうかもしれない。それに近くにいる樹に醜態を晒すことになってしまう。それはプライドが許さなかった。 「ちくしょう……嫌だ……俺は人間だ!」 「人間? そうか。きみは人間さんなんだね。じゃあ、なおさら出さなくちゃ。もうきみは、人間さんの世界には戻れないし人間さんにも戻れないんだから」 ちくしょう。ちくしょう。ちくしょう――どうして俺がこんな目に―― そんな幼稚な感情しか浮かんでこなかった。無理もない。今の彼は14歳の少年なのだ。理性を遣い抑える術は彼にはまだ難しい。 股間を近づけるほどペニスから漂う匂いがビットの鼻腔を刺激する。その度脳に甘い疼きがビットの身体を襲う。特別甘い砂糖でも舐めたかのように脳が蕩けていく。 ビットの理性は、プライドは、甘く切ない誘惑により溶かされていきそしてついには―― 「あ……あ……」 ふにゅ。くにゅ。むにゅ。 スポンジを揉んでいるかのような柔らかな感触。それを感じる程にビットの精神は解れ離れて飛んでゆく。 自らの小さな小さな可愛らしい手で揉みほぐされていく度に真っ直ぐ伸びたペニスは柔らかく形を変え反発しその度にそれを快楽としてビットの脳に送っていく。 快楽がビットの脳すべてに行き渡ると脳に残っていた“それ”をひとつ残らず白くどろどろに溶かしていく。そのまま“それ”は身体中を巡り巡って最終的にピンク色の先端に向かうと―― 快楽の結晶としてビットの顔面をどろどろに汚した。 「あは……あははは……  楽しいやあ……俺……ぼく……ぼくは……」   ◇ 「はあっ! はあっ!」 「気持ちいいよ、ビットくん! これなんていうの!?」 「「きもちいいこと」だよ。きもちいいからぼく達はそれをするんだ。樹くん」 それからビットは自分のやりたいことをするようになった。 険しかった表情は常に明るく元気なものになり皆にも元気を振りまいた。 今は樹と「きもちいいこと」をするにまで至った。 ベアンの家にいた頃は見るだけだったが今日はじめて「きもちいいこと」を共に始めるまでになったのだ。 「樹くんは人間さんだよね? この世界は人間さんがいるとおかしいんだ。だからきみもぼくらになってもらう。きみは子供だからすぐに慣れるよ。きっとね」 「そう? じゃあお願い、ビットくん」 「わかったよ。じゃあいくね!」 「えらにに・たおぶな・すねぐんいん!」   ◇ 「ようビット! 今日もぼくと遊ぼうぜ!」 「こんにちは……!」 「よーし! ラビィ、行くぞ!」 「うん!」 今日もファンタジーワールドは平和であった。たまにヒューマンワールドから人間がやってくることはあるのだが、その人間達もこの世界の仲間にすることで受け入れた。 ウサギのビットは、同じくウサギのラビィと一緒に友人のレイルスと外に遊びに行くところだった。 リスのレイルスはお調子者だが頼りになる兄貴分である。近くにいるのは同じくリスのイークス。レイルスとは違って引っ込み思案で大人しい性格だ。 「遊び終わったら「きもちいいこと」しような!」 「うん! それならベアンくんも誘おう!」 「よっしゃー! 楽しくなってきたぜー!」 四人は虹の橋の湖へ向かうことにした。ここは四人のお気に入りの場所で何故かは分からないがとても気に入っている場所なのだ。 「ビット。今日も出かけるの?」 「あっ、ワンダー!」 「次はぼくも誘ってよ!」 「わかった! じゃあまたね!」 最初に知り合った友達のワンダーとも挨拶を交わしビットはベアンの家へと向かう。その顔は何のしがらみもない屈託のない無邪気な笑顔であった。   ◆ 『次のニュースです。○○市近辺で行方不明者が多発しているとの情報が入りました。行方不明者は遠方からの旅行客も数人いるとのことです。  行方不明の情報ですが、宇佐義晴さん(24)、宇佐樹くん(9)、須野利和さん(26)、須野理くん(7)、阿部秋彦さん(46)、阿部藍斗くん(6)……』 「おいおい○○市ってここじゃないか?」 「怖いですね」 「誘拐事件って噂もあるらしいけど、神隠しか何かって説もあるらしいぞ」 「ははは、まさか」 「そろそろ仕事に戻るぞ」 「はい!」 「メルヘンランドの目玉になる予定だからな。気合いを入れて取り掛かるぞ!」 「“ファンタジーワールド”でしたっけ? そろそろ完成ですもんね」 「ああ……建物自体は完成してるんだがあとは内装だけなんだとよ……」


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