まず初めに抱いた印象は、肥満という意味ではなく――なんというか丸っこい……だった。
大よそ犯罪に関わらなかった子供というのは、こういうどこか弛緩とした顔つきにはなるものなのかと、妙な関心を覚える。
「事前にお渡した資料の通り、私はアイゼンフリトという国の軍に所属にしており、階級は大尉です」
おーっという感嘆の声が半分。もう半分は大尉ってすげーのという疑問と……私と同じ階級の漫画やアニメのキャラクターであろう名前が、ぽつりぽつり浮かび上がっている。
「すごいのか、すごくないかと問われれば、個人的な見解ではありますが……謙遜抜きにしてすごくはありません。あなた方の国やアメリカなどの大国では、それなりの地位ではあるのでしょうが……我々のような小国では、軍の福祉などはあまり充実しておらず常に慢性的な人手不足に患っており、とりあえず厳かな役職という自尊心を与え、少しでも長く居座らせようという上層の腹芸もあって、とくかく出世は早いです」
他国の軍属者と話す場合、31という年齢で大尉という立場は大抵の場合驚かれるので、この手の説明は慣れたものだった。
「まぁ……あれです、役職は上がったのに給料は全然上がらないという、あなた方のお母さんがお父さんに述べる愚痴のような感じですね」
昨日一晩考えたブラックジョーク。
それは、見事に撃沈する形となり、冷え切った空気が教室中に充満する……。
伊藤教諭の社交辞令の乾いた笑い声だけが響く現状が、非常に痛々しい。
お前は頭も切れるし体力も馬鹿みたいにあるが、ユーモアと愛嬌が欠如してる……と上官には散々と言われたが、より精進が必要なようだ。
「少し話がずれましたね……」
気まずさを振り払うよう咳払いをすると、私は資料のページをめくり上げる。
そこへ大々と太字フォントで書かれるのは、私が今この教壇に立つ理由――
『紛争地域における、女性兵士たちに対する性的暴力について』……だ。
――小学生の子たちになんてことを……また保護者たちからクレームが……
そう頭を抱えていた伊藤教諭のことを思いだしながらも、目の前の子供たちの瞳には、好奇の光が強くなっているのを感じざるにはいられない。
工夫もなくただ子供に話を聞けと強制するのは、思考放棄な大人たちの怠慢。
そう言い捨てていた丸岡氏の言葉の意を肌身で感じながら、あの人のこういうところは本当に上手いなと関心を覚え話を続けていく。
「私の国……アイゼンフリトでは、男女問わず建国時から徴兵制というものがあり、13歳から18歳までの五年間、兵役が義務付けられています。その五年間を得て、ようやくシャバに……社会に解き放たれるという、皆さんの国でいうところのギムキョーイクという制度に近いでしょうか」
う゛え゛~という嫌そうな声が辺りから聞こえている。
しかし少額だが国から給与も貰え、貧富の格差なく若者の懐と経験の潤った状態で社会に放り出されるので、個人的には悪くはない制度だとは思うのだが……お国柄の違いということで、触れないことにしておく。
「当然、そのまま軍に身を置く若者の少なからずおり、自分もその中の一人でした」
当時の色褪せかかった記憶。
そこに降り積もる埃を払うよう、話を続けていく。
「語学が得意だった自分が配属されたのは、皇族者の外交の補助と護衛を主としたエスピリド部隊という中々に特質したところです」
エスピリドはアイゼンフリト語の古い言葉の精霊という意味であり、皇族が生誕した暁には民の赤子の肉体……器にその精霊を宿し、一生涯をかけて
皇族の守護者として使役させていたことが由来なのだが……
語るにはあまりにも時間が足りず、子供たちにも飽きられそうなので――
「あなた方の国で言うところの……お殿様に仕えるニンジャ、みたいなものですね」
と、極めて端的に説明しておく。
「自分はそこで十年以上、様々な国の人々や文化に触れ、通常の業務ではありえないほど様々な経験をさせて貰い、今もこうして軍務に就いている所存です」
護衛、外交――
その端的な言葉の中に敷き詰められた、数々の珍事、苦境、歓喜――
干ばつが蔓延する農村に井戸を建設した苦労話などは、計り知れない達成感があったのだが――
丸岡氏が私に講義を依頼した意図と反するので、ぐっと堪える。
冷徹な言い方をすれば、今はどうにか興味を引き留めている若者……子供たちが兵士の私に求めるめるものは、どこにあるかも知らない飢餓から救われた農村の美談話などではなく、よりセンセーショナルかつグロテスクなものだ。
「そんな自分がエスピリド部隊に配属となり9年目、選任者の退役でチームリーダーを引き継いだ一年目……今までにない大規模かつ特殊な任務を通達されます」
当時受けた見えない古傷が疼き出し、全身に鳥肌が沸き立つが……顔と語気には表さず、淡々と話を続けていく。
「端的に言えば……建国から代々続く、高官たちと麻薬カルテルの蜜月な関係の断絶、自国の洗浄という試みです」
物語の起承転結でいうところの「転」……なのだが……
「麻薬」という単語を聞いても、子供たちはあまりピンと来てない様子だ。
自国ではおつかい感覚で、親が子供に運び屋などをさせているのだが……さすが自動販売機が路上に置いてある国といったところなのか。
「お恥ずかしい話なのですが……我々の国、先祖は麻薬製造と人身売買で得た財で生き抜いてきた……という側面も多々あります。ですが、今ではあなた方日本国も出資してくださる海流発電が多大な利潤を上げ、「麻薬」「奴隷」などは死語と、リスクに共合わぬリターンと、古き悪しき商いという風潮となっています」
実際は数十世紀と続いている商いが、早々に簡単と無益無害になることなど有り得はしないのだが……一応私も外交という立場もあるので、自国にクリーンなイメージを抱かせるリップサービスもしておく。
「ですが『もう大丈夫だから汚い商売はやめてね』といったところで、簡単に止めてくれるならば戦争は起こりません。理解したく話なのですが……高官の中にはそういった商いに誇りすら持っている者も少なからずおず『誰の血族たちがここまでこの国を大きくした、この恩知らずが』と歪んだ自尊心を突きつけ、まともに取り合ってはくれません。もちろん……口に出して直接言われたことはありませんが」
結局何一つと無駄だった、あの皇族や我々軍人を見下した老害たちへの説得。
まだ猫などに好みのキャットフードや魚を聞き出す方が有意義だったであろう徒労に思わず愚痴が零れそうになるも、先ほどの伊藤教諭を思いだし踏み止まる。
「そして当時の皇帝、ジオムング・アーシャラフ陛下が下した決断は、CND(麻薬委員会)の協力を仰いでの自国洗浄。早い話が、身内だけで行えば角が立つので、他国の麻薬対策組織に国の膿を取り出してもらおう……といった話です」
当時、老年であらせられるシグムンド・アーシャラフ皇帝陛下の皇位継承が差し迫っており、陛下はまだ幼いビブランド殿下が魑魅魍魎な高官たちの傀儡政治に使われることを大変危惧しており――
CNDに至っても、中々手が届かず痒い思いをしていた地域への介入をできる良い機会と乗り気だったので、事は想像よりも遥か迅速に進められたが……
麻薬取締捜査のノウハウなど我々の隊にあるはずもなく、足を引っ張らぬよう、当初は本当に死に物狂いの必死さだった。
しかし――
「元々自国で誰にも咎められずやりたい放題だったためでしょう……隠匿は大変おざなりで、ことのほか順調に『掃除』は進みました。CND職員からは『雑魚過ぎて腕が鈍る』という軽口を毎日聞かされたほどです。だから……正直油断もあったのでしょう――」
じわりと滲み出る手汗を隠すよう拳を握り締め、深く息を吸い込む。
「私は五日間、正確には救出部隊が到着するまでの123時間51分28秒間……麻薬カルテルの下請け、村規模で麻薬栽培を営む部族に拉致され、性的拷問を受け続けました」
シン……と、ひそひそ聞こえていた少女たちの内緒話がぴたりと止み、張りつめた空気が辺りに充満していく。
「五分――」
数泊の静寂の後、私の開口にビクつくあどけない少年少女たちを見渡しながら、事前に丸岡氏と取り決めたことを話していく。
「これから五分間の休息を挟むので、自分の体験談を聞くのか聞かないのかの判断を各自で決めてください。もちろん話の途中で退席は自由ですが、気分が悪くなる頃には完全なトラウマになっている……そういった恐れがあるほど、軍人の自分から見ても相当グロテスク表現が含まれる……というのを覚悟してください」
息を呑む声がどこかしらから聞こえ、今まで弛緩と漂っていた空気が、緊張一色と塗り替えられていく。
しかしながら、退席者は一人もいなかった。
「五分経ちましたね。退席者は……誰もいませんか?」
やはり幼くても男の子なのだろう。
私の脅しめいた注意勧告に怯んだところを、 少年たちは女児たちがいる手前必死とひた隠し、浮き立ちそうな腰を椅子へしがみ付かせるように踏み止まっている。
少女たちも便乗できる退席者がいないかと、あたりをきょろきょろ見渡しながら
も、結局互いを譲り合うような形で退席のタイミングを逃してしまっていた。
「分かりました、では話を進めていきます」
まぁ……外部の同調圧力など、それを含め自分で決めたことなので、これ以上の念は押さないでおく。
下世話な好奇心、空虚な虚勢。
透明な綺麗ごとではない、捨てたくても捨てられないものも背負わされ決めるということが、人生の選択肢なのだろう。
「やはりこういった仕事に就いていると、聞きたくなくとも、そういう血なまぐさい話は耳に入ってくるもので……。個人的な見解もありますが……大部分の共通点は『女として生まれたことを後悔させられる』……それと『まともな女でなくなるまで壊される』の二点です。具体的には……乳首をナイフで切られたり、性器に焼きごてを押し付けられたり、子を成している場合などは目の前で強姦させられた後、自身も犯されたり……。新兵の頃は、身体が綺麗な内に愛する人をつくり結婚をしたほうがいい……と、同性の上官たちから再三と助言をいただきました」
――退出しておけばよかった……。
早くもそんな後悔の念滲み出る、青ざめた顔の生徒たち。
しかし、この程度で音を上げていては話にならぬほど、本番はまだこれから先だった。
「結論を先に言えば、自分はそういった類の血なまぐさい暴行は一切受けていません。御覧の通り五体満足です」
服の中はさすがに見せられませんが……というジョークを用意したが、恐らく先ほどの二の舞になるので自重しておく。
「具体的な理由としては、その村特有の宗教が関連していたからです」
赤道付近に数多の島を抱えるその島嶼国では、島の数だけ信仰が存在すると言われている。
後々分かったことだが……私が捕らわれた村島では、女性たちは彼らが祀る女神の血の一滴から生まれ落ちたとされており――
女人の肌身を傷つけることは何よりの禁忌とされている。
男衆がそれを破れば、石打の処刑という……なんともアルカイックな厳罰が待っているのだとか……。
「ひどいことをされないところで、まだ運がよかった……。恐らく皆さんが思っているとおり、自分も初めは……そう思ってました」
私の言葉に、ほっと弛緩した空気が漂い始める。
しかし――
だから捕まって怖かったけど、何もされなくてよかったです……というオチでは、丸岡氏が私をわざわざ呼び立てた道理はない。
「けれど残念ながら、直接的な暴力でなくとも、人間を追い詰め、精神を壊す拷問というのは昔から数多と存在しています。これは東西南北問わずジュネーブ条約や人間の技術向上に伴い、より研鑽とされていく傾向が強いですね」
――刑務所でも学校でも、傷という物的証拠がなければ、言い逃れのハードルは格段に下がりますので。
そんな皮肉交じりのかいつまんだ説明を付け加えておく。
「人が人の形を保ったまま壊れていく……。それは直接的な血みどろの拷問とはまた別種のおぞましさがあると思います。少しでも触れた身としては、どちらのほうがより地獄か……そのようなことを考えるのが馬鹿らしくなってくるほどには」
己の昔話に呼び起され――
「その人を内部から崩壊させる責め苦……私が受けた拷問なのですが、具体的に言うと――」
当時の……自分の知らなかった弱さまで剝き出しとさせられた惨状が顔を出し始めるよう、背中や腋に、じんわりと汗が滲み始める。
「くすぐり拷問です」
静まり返っていた教室に、さざ波のよう困惑の声が所々に広がり、次第と大きくなり始める。
聞き間違い? 言い間違え? と目で訴えかけてくる少年少女たちを前に、私はもう一度、よりはっきりと言った。
「くすぐり、という責めを私は受けました」
――えぇ……くすぐりって……ねぇ?
当人はこっそり隣のクラスメイトは囁いたようだが……臨時で新兵の訓練教官も行っている経験から、そういったものには耳ざとく目ざとい。
私は教壇から離れると、つかつか一歩一歩踏みしめるように、そのセリフを言った者の席の前へ立つ。
「渡瀬理香(わたせりか)さん」
「……は、はい」
いきなりフルネームで呼ばれ、目に見えて怖がり怯えてはいるが……普段は気が強く利発そうな、目鼻立ちが整った少女。
「私の話に、どこか不可解な点はありましたか?」
「えー……だって……ねぇ?」
――くすぐりって……。
不意打ちの驚きから徐々に落ち着きを取り戻し始め、どこか小馬鹿と反抗的な態度で隣の席の友人に同意を促している渡瀬女史。
なんというか……ここがアメリカのハイスクールなら、チアリーダーをやりながら、アメフトのクォーターバックと付き合っていという――
華やかな女子グループのリーダー格でありそうな雰囲気の少女だ。
「申し訳ありません、別に咎めているわけではありません」
どこか剣呑した雰囲気が立ち込めてきたので、私はできるだけ柔らかい笑みを心掛けながら、訂正を始めていく。
これが新兵と教官の立場なら、また違った対応があるのだろうが……ここは暴力禁制な知を探求する学び舎だ。
「そういった疑念を表に出してくれるほうが、自分としても逆に有難いです。ただ私が一方的に話すのではあれば、昨今ネットのリモート会話で事は足りるので。なので渡瀬さんの疑問は、とても有意義なものだと思っています」
そう述べると、渡瀬女史の固かった表情はみるみる赤面の照れたものへと変わっていく。
なんというか……日本の子供たちは、大人に対する見定めの正否が死活問題になるケースが非常に少ないためか、その辺りは危なっかしくはあるが……非常に素直で可愛らしい。
「くすぐりという責め苦は、拷問として受け取れませんか?」
「だってそんな子供みたいな……わたしそういうの全然平気だし……ねぇ」
またも、渡瀬女史は周囲に同調の促しに、取り巻きであろう子たちのバラバラとした頷きの相槌を返している。
渡瀬女史のクラスでの立場、性格など、このクラスの中で1、2を争う適材適所な人物の名乗り上げ。
大変にありがたいことだが……ここまで丸岡氏の手中の上……台本通りに事が運ぶことに若干の怖気さを覚える。
彼が新興宗教などに興味抱かぬことを、心の底から願うばかりだ。
「そうですね……これに関しては、言葉で語り尽しても、所詮は水掛け論にしかなり得ませんから――」
「え……えっ?」
「ついでなので、ご協力願います」
目を白黒とさせる渡瀬女史を席から立たせ、教室の後ろのスペースに連れ出すと――
「舌だけは噛まぬよう、気を付けてください」
「あっ――」
膝裏に爪先を軽く押し当て身体を倒し、うつ伏せに組み伏せると――
「では失礼して――」
「なっ……ちょっ……はっっうひゃぁああああああああああぁあッ!?!?」
腰のあたりを両指でまさぐり始めた。
「きゃあああああああああああぁああッ!? んきゃあぁあああああああああぁあああッ!?!?」
「効かないと言っていたわりに、なかなかの敏感さですね」
というよりは、薄紙以下と言うべき耐性の無さ。
コーヒーが苦手と拒む者に、本物を飲んだことがないと推し進める輩のよう、私のくすぐり責めはより本格的なものになっていく。
「うきゃぁあああああああぁあああッ!! あ゛っっあ゛あぁああああぁああははははははははははははははははははははははッ!!」
この年代特有の脂肪の薄い身体に、揉み込む系のくすぐりは大変天敵と有効なのか。
笑いのツボを指先で押し込むたび、教室中に響き渡る甲高く盛大な笑い声。
渡瀬女史の小さな身体は、まるで陸に打ち上げられた魚の如く、ビクビクと大仰な跳ね上がりを見せている。
しかし――
「ぎゃひひひひひひひひいいいいぃいいいいぃいいッ!! ぴゃっっぴあ゛ぁ゛あ゛ああぁあぁあああはははははははははははははははははッ!!」
全生命力を絞り出すような必死の大暴れも、私のホールドにヒビ一つ入れることは適わない。
大人と子供の身長、体重、そして絶望的な筋力差。
私を振り払おうとする力も、まるで要領を得ておらず分散しており、ナイフや銃の所持もなければ、この状況から逃れるられる道理などあるはずもない。
「くびゃあぁああぁ゛ははははははははははははははははははははははッ!!! ぶぴゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃああぁあぁああああああああッ!!」
せいぜい臀部を私の下腹部に擦りつけるよう身を捩らせ、こちらのスカートをずり上げさせることしか適わない渡瀬女児は、早くも涙で真っ赤な頬を濡らし、唾液を床に垂らし始めたところで、一旦手を止め――
「ぐっ……ひぃぃいいいいぃっ! ひゃあぁああっ………んあ゛ぁああぁあっ……わ゛はっっ!! ぷわ゛っっはははははははははははははははははははははははッ!!!
数十秒の偽りの休息を与え、完全に油断と弛緩した瞬間をつけ狙い、より一段凶悪に強めた脇腹へのくすぐり責めを施していく。
「びゃぎゃははははははははははははははははははははははははッ!!! ん゛みゃああぁあああぁああひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃひゃぁあああああああぁああッ!!!」
上着がずり上がり白い腹が丸見えになったのを良いことに、左右の五指を全て駆使し、腰や脇腹に角度、強弱を変えた悶絶のツボ押しのくすぐり責めを刻み込んでいく。
その頃にはもう、勝気と自尊心の高いクラスの中心人物などではなく――
「ぎゃひぃいいいいいいいいいいいぃいぃいいいいッ!!! ん゛きゃああああああああぁああああぁあああッ!!!」
自慢でだったであろう、綺麗にブリーチとセットされたセミロングの髪をボサボサに乱れさせ、クラスの前で涎塗れの下品な爆笑を叫び上げる、悪魔の刺激に呑まれた一人の少女しかいない。
「へっひゃ………ひひっ……ひぃぃ……っ」
「3分――」
腕時計にセットしていたアラームを止め、遠巻きに唖然と見守っていた子供たちを見回す。
「3分で……このような状況になりました」
「ん゛ぇっ……へっ……へえぇぇ……」
勝気と吊り上がっていた眉毛は完全に垂れさがり、瞳孔は危うげと錯乱し、真っ赤に染まった弛緩の笑顔からは、濛々と汗の湯気が立ち昇っている。
「くへっ……ひひ……ぅぅうっ」
衣服はまるでレイプされた後のよう乱れに乱れ――
柔らかそうな白い腹や可愛らしい綿地のショーツが露わとなっており、股間にはまだ生乾きと新しい、半失禁状態な黄色い濡れ染みが出来てしまっていた。
「渡瀬さん一人ではまだ信用できない……そう遠慮なく言っていただければ――」
渡瀬女児の完全と捲れ上がったスカートを元に戻しながら、自身の見苦しくずり上がったタイトスカートにも気づき、さっと戻しながら立ち上がる。
「何度でも、同じよう、ご協力いたしましょう」
そう言い終えたとき、偶然視線の合った女子生徒が、ぶんぶんと首が捥げるほどに否定を露わとさせている。
「あ゛ひゃっ……あ゛あぁあぁっ……ごめなひゃっ……ごめんなひゃぃぃ……っ」
「落ち着いて、呼吸がしやすいよう、少し身体の向きを少し横にずらすだけですよ」
すっかりくすぐりの恐怖刻み込まれた渡瀬女史を、しばらくの介抱し落ち着かせ後、再び教壇前へと戻る。
……何か先ほどよりも男子生徒たちの瞳に、より生命力が濃厚と宿っているようにも見えるのだが……惨劇の序章を垣間見、負けじと勇ましく、大和魂と己を奮い立たせているのだろうか。
まぁとにかく――
「不幸自慢をするわけではないのですが……先ほど受けた渡瀬女児の苦悶が爪先程度に感じるほど、私はこの責め苦を五日間受け続けました。私のくすぐりなど足元にも及ばない、人を笑い狂わすことを何十…何百…何千回……生活の一部として行ってきた部族たちにです」
ひっ――か細い悲鳴を上げ、両腕をぎゅっと抱き抱える渡瀬女児を一瞥しながら、
私はあの苦悶に苦悶を塗り重ねた発狂の数日間を、訥々と語り始めていく。