【小説サンプル】露出アプリの使い方
Added 2018-04-26 10:05:37 +0000 UTCその満員電車には、今日も息苦しいほどのたくさんの人が乗っていた。 ほとんど自由のない、ぎゅうぎゅうとすし詰めになっている車内では、出勤途中の中年男性や、学校にいく途中の学生たちが、窮屈な思いをしながらその時をやり過ごそうと様々な工夫を凝らしていた。 特に多いのが、ほんのわずかな隙間を利用し、携帯電話を弄ることだ。手を周りの人の顔付近にまであげて、メールやネットに集中している人が多い。背後や横から見ればその画面が丸見えになっている人もいて、携帯電話を弄っていない人の中には、他人の携帯電話の画面を暇つぶしに眺めている人もいた。無論、他人に自分の携帯の画面を見られたくないという人は一定数存在するため、そういう人は画面に覗き込み防止の、半透明のフィルムのようなものを張り付けている人もいる。 その日、いつものように満員電車に乗ったくたびれたスーツの男性は、目の前に乗ってきた女子学生に、訝しげな思いを抱いていた。女性専用車両が整備されている昨今、その女子学生がすし詰めの車内に乗ってきたことが意外だったからだ。 (痴漢に間違えられたらたまらないからな) ちょうど人が押し合い、女子学生は男性に背中を向ける体勢になっている。男性は万が一のことを考え、両手で吊革に掴まっておくことにした。そうしておけば痴漢に間違えられて難癖をつけられる心配はないからだ。 女子学生は肩に鞄をかけており、片手はその鞄を抱え込むように、もう片手には携帯電話を握っていた。背後にいる男性には普通なら画面が見えるところだったが、女子学生は覗きこみ防止のフィルムを画面に貼っているようで、その画面の中身はうかがえなかった。 (見えないか……ちょっと残念) 男性はそう思っていた。男性はたまにそうやって人の画面を見ることがあり、時々自分が想像もつかないようなものを見ている人がいて、非常に知的好奇心がくすぐられるのだ。別にその内容を誰かに話すつもりはないし、無理に見るつもりもない。見られればラッキーという類の話だ。 しかし、もし男性がその画面の内容を見ていたら……話は全く違う形になっていたことだろう。 残念ながら男性はそのことに最後まで気づかなかった。 満員電車に乗る。お楽しみの時間が始まろうとしていた。 学校の友達は満員電車をこれでもかというくらいに嫌っているけど、私にとってはこの満員電車のひと時はある意味で日常のどんなことよりも楽しみな時間だった。 私は一応背後を気にして、自分の携帯の画面を覗きこめるような人がいないかどうか確認しつつ、携帯電話のアプリを起動させた。 いくつかのファイルを選ぶ画面が表示されたので、私はその中の「自分」と表示されたファイルを選択する。すると、画面には人の体をかなり簡略化した、棒人間のようなものが表示された。 私はその棒人間の体の、腰のあたりをダブルクリックする。すると、驚くほどリアルな人間の腰の映像が表示された。それは学校の制服を身に着けた腰の部分で、だいたいおへそから太ももの上くらいまでを表示している。 その映像を見て、私は高鳴る心臓を抑えていた。これは別に私が腰フェチだとかそういう特殊な興奮の仕方をしているというわけじゃなく、これからしようとしていることへの期待感からだ。 ひとつ深呼吸をして、私は自分の周りを再度確認する。私よりも大柄な男の人ばかりが周りにはいて、皆痴漢に間違えられたくないからか、体は私に背を向けているし、顔も背け気味だった。背後にいる人だけは私の方を見ていたようだけど、ちょっと目線を向けると、ゆっくりと顔を逸らす。私が目線を向けるまで私の方を見ていたことはバレバレだった。 (けど……こういう人なら平気ね) 少なくともこちらの視線に反応して顔を逸らすだけの観察力はある。なら、こっちが警戒していることを示すだけで、何もしてくることはないはず。 私は満員電車のぎゅうぎゅうっぷりを味わいつつ、スマホの画面に表示された腰の映像に指を添えた。 そして、軽くスカートをめくるように、フリックする。 すると画面の中で指によって、その映像の腰が身に着けていたスカートが、大きくめくれ上がった。 そして同時に。私は自分の腰のあたりで、スカートがめくれ上がる感触を覚えた。もちろん誰かがスカートをめくったというわけでも、他の人の動きに押されているうちにめくれあがってしまったというわけでもない。 これが、私の持つアプリの機能。この画面に映し出されている腰は私の腰で、そこに対して画面上で何かをすると、それが現実の私にも反映される。本来は「痴漢アプリ」という名前のそれを、私は「露出アプリ」として趣味のために活用しているのだった。 このアプリのすごいところは、ただその場にあるものに触れられるだけじゃない。私は画面の端に表示されていたツールアイコンのうち、「脱」という感じがポップな感じで示されたものに振れる。アクティブな状態にしておいてから、もう一度画面に表示されているスカートに指で触れた。 すると、画面上からスカートが忽然と消え、同時に現実の私の腰からもスカートが消えた。画面上には白いショーツを身に着けた腰の部分が写っていて、きっといまの私の腰もまったく同じ状態になってしまっている。ただ、満員電車特有の密集具合によって、腰の下までは誰にも見られない。 私はこのアプリを使って、公然と露出を楽しむのが趣味だった。 スカートがなくなったショーツ丸出しの状態で、私はさらにスマホの画面を弄る。 軽く横にスワイプさせると、画面上の腰がくるりと回転して、体の前面を映していた画面が、お尻の方を映すようになる。そのお尻を私は指でぐりぐりと撫でまわした。 (んっ……これこれっ) 私のお尻が、不可思議な力でぐにぐにと揉まれる。まるで本当に痴漢されているかのような感じ。これがくせになってしまっていて、家でのオナニーの刺激なんかじゃもう全然満足できなくなっていた。 本当に痴漢されているのだと勘違いされて、誰かが助けてくれようとしても困るので、なるべく顔には出さないようにしながら、私はアプリを操作していた。 指でショーツをずりさげる。お尻が露わになっているのを、画面上と体の感覚で理解する。ほとんど脱げかかった状態で、さらにお尻をこねくり回していると、いよいよきもちよくなってきた。 (んんっ、んあっ、これ、やっぱりくせになるぅ……っ) ぴくぴく、と腰が動いてしまう。密集しているから気づかれていないだけで、もし少しでも隙間が生まれて、誰かが下を見れば見られてしまうというのに、私はドキドキと心臓を高鳴らせてむしろそれを期待していた。 (ああ……もう我慢できない、かも……っ) 私は周囲に自分より背の高い人しかいないことを確かめ、その人たちが横や背中を向けていることを再度確認する。 アプリの表示を切り替えて、自分の全身を映し出す。スカートがなくなってショーツ丸出しになっている、痴女の姿。 私はアプリのサブメニューを表示し、『下着のみを消す』を選択した。ぶるっと携帯が震え、そしてその時には私の体からショーツもブラも消えていた。真っ白なブラウスだけになった上半身はきっと日の当たるところでみたらすごく透けてしまうことだろう。 さらにアプリの機能は他にもある。私はステータス画面に切り替え、『発情』レベルを少し上げた。あまりあげすぎるとそれこそ理性が飛んでしまうから気をつけないといけない。以前家でためしに『発情』レベルを最大まで引き上げたら、携帯の電池が切れてアプリが強制終了されるまで、延々とオナニーをし続けて死にかけたからだ。こんな外でやったらどうなるか……あまり考えたくはない。 少し発情レベルが上昇した私の体は、少しだけだったのにすごく熱くなって、心臓が早鐘を打ち続ける。じっとりと汗が滲んで来て、ブラウスがどんどん透けていくのがわかった。前側にこちらを見ている人はいないからわからないだろうけど、いまの私の上半身はすごく破廉恥なことになっているはずだった。 (ああ……っ、これ、これなのよ……この感覚がたまらないの……っ) 満員電車の中、周囲に人がたくさんいる状況で、私はブラウス一枚の、裸同然の姿をしている。さっきから、ちらちらとした視線が私の顔や肩あたりに向けられているのをはっきりと感じていた。具合が悪いのかと心配しているのかもしれないし、あるいはエッチなことを考えてみているのかも……。 そう思うと、気づかれていないはずなのに、ドキドキがもっと激しくなってしまう。あそこが疼いて仕方ない。いますぐ両手を使ってあそこを弄りたい気持ちになる。 (でも……我慢……我慢……) そんなことをしたら、見つかった時言い訳ができなくなる。 だから、アプリを使う。このアプリはなんと道具を呼び出して使うことまでできるのだから。 手持ちのバイブを選択して、それを自分の体……秘部に近づける。その先端を穴に合わせて、ずぶりと押し込んだ。途端に、脳髄まで痺れるような激しい衝撃が体の中心線を貫いた。 「ひぅ、っ……」 なんとか声を堪えられたのは奇跡に近い。 私は自分の膣が押し広げられる感触を覚えていた。でも、実際にそこに何かが突き刺さったというわけじゃない。あくまでこれは私の感覚の中だけのことで、実際の体には何の影響も出ていない。それどころか、処女膜さえ破れていない。バイブは深く深く子宮の入り口近くまで刺さっているのに、実際の私の体にはまったく影響が出ていない。 設定次第では物理的に押し広げたりすることもできるみたいだけど、私はそこまでやる気はなかった。だから、私は処女のまま、体の感覚だけは奥の奥まで開発されているという奇妙なことになっている。それもまたこのアプリを持っているからこそだ。 バイブのスイッチをオンにして、体の奥から湧き上がる激しい快感を享受し続ける。もう私のあそこはすっかりドロドロで、太ももを溢れだした愛液が伝っていくのを感じていた。 こんな場所で、人が周りにたくさんいる状況で、激しいオナニーに興じる。こんなに刺激的で、楽しくて、気持ちのいいことは、他に知らない。 私はひたすら快感を味わい続けていた。 けれど電車はいつか目的地についてしまう。 私は最高のオナニーの終わりを知り、少し寂しく思った。そこで、私は最後にひとつ悪戯をすることにする。 (タイミングをしっかり計らないと……) 私は携帯電話を握りしめながらそのタイミングを待つ。人がたくさん降りる駅に、電車が滑り込んで、ゆっくりと電車が止まる。 (いまっ!) 私は私の体を覆う、最後のブラウスを「脱」で消してしまう。 その瞬間、私は肩にかけていたカバンの紐がむき出しの肌に食い込むのを感じた。すぐ後ろにいた男の人が、息を呑む気配が伝わってくる。私はあえて自分の体に目は向けず、スマホに集中していますよ、という体でスマホの画面だけを注視し続ける。 ドアが開いて、人の波が外に溢れだす。そうなれば当然、いままで私を守っていた人垣もなくなるわけで。周囲の人がざわめくのを耳と視界の端で確認した。 見られている。 体のいたるところに、人の視線が集中するのを感じる。それだけで逝ってしまいそうになった。私は電車の外に降りて、むわっとした車内から一変して爽やかな外の風が自分の体を撫でまわすのを感じた。もう色んな意味で絶頂が押し寄せて来て、そこで倒れてしまいそうになる。 最高の、絶頂だった。 (け、ど……! 捕まるわけにはいかないから……っ) 意識の端に残した冷静な部分を総動員して理性を保っていた。 「ちょっ、と! きみ……」 私の姿に気づいた誰かが、声をあげかける。 私はその瞬間、アプリの「リセット」ボタンを押した。 瞬間的に体に衣服の感触が戻り、『発情』レベルも普通に戻る。急速に熱が冷めていくような、感覚。私はその声をかけてきた人の方を見た。いまのいままで全裸だったはずの私が、急に普通の姿になっていることに、その人は驚いていた。 「なにか?」 白々しくそう問いかけると、その人は慌てた様子で首を横に振る。 「あ、ああ。いや、なんでもない。すまない」 顔を赤くして首を傾げながら、その人はそそくさと逃げていく。私もまた、その場に留まるようなことはせずに急いで改札へと向かった。下手に残っていたら、同じものを見た人同士が結託してしまうかもしれないからだ。 人ごみに紛れて駅を出て、誰もついてきていないことを確認する。 私はそこでようやく溜め込んでいた息を吐き、気を緩めた。 (はーっ、楽しかった。でも、最後のはあんまりやりすぎると顔を覚えられちゃうよね) あんまり調子に乗りすぎて、このアプリの存在を人に知られてしまうのは避けたい。 私しかこのアプリのことを知らないからこそ、存分に楽しめているのだし。 (痴漢に使われてたらやばかったよね……私が手に入れてよかった) 脱衣まで可能なこのアプリは、使いようによっては非常に強力な脅しの武器になる。 その点、私は自分にしかこのアプリを使う気がないから、安心だ。 (……ん? でも、そっか……もしかしてこのアプリを使えば……いやいや、そういうのはよくないよね) 私は思わず浮かんで来た悪魔の考えを振り払う。 このアプリを使えば自分の仲間を、露出に取りつかれてしまう仲間を増やせるんじゃないかと一瞬考えてしまったけど、それはよくないことだ。 (私が楽しめれば、それで十分!) そう私は私を納得させて、アプリを使って次はどう楽しむかを考えた。 けれど、一度浮かんだ悪魔の考えは、そう簡単に消えてくれず、後々まで私を悩ませることになったのだった。 ~露出アプリのつかいかた 終わり~