SamSuka
夜空さくら
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流刑少女 壱の国 2

 囚人番号491の首輪から垂らされた鎖を引いて、関所の外へと歩み出る。  その時ちょうど後輩が戻ってきた。囚人の鎖を少し引かせてやろうと思ったが、後輩はなにやら上層部から直接仕事を言いつけられたらしく、断られた。  普段なら上司の俺を超えて、上から仕事を受けるなんて許されざることだが、今日に限ってはよしとしよう。なにせこれで上層部に引き渡すまでの間、俺が囚人の管理を独占できるのだから。  それに、いくら同じ管理員で、対象が囚人とはいえ、女性の前で女を虐めるのは少々抵抗があったことだし。 「おら、ぐずぐずしてんじゃねえぞ!」  後輩が去った後、俺はもう一度囚人の鎖を強く引き、メインストリートを歩き始める。  ここから中央管理塔までは、バギーで数分。徒歩なら数十分といったところか。歩けない距離ではない。俺たちにはよくわからない技術の強化スーツも着ていることだし。  そのスーツのおかげなのか、元からなのかは知らないが、大国から預けられる囚人達は病気や怪我に負けない強靱な身体を有しているのだ。  この程度の距離を歩く程度は難なくこなしてしまうことだろう。 「……さて、いくか」  進み始めてほどなくして、街道に人が見え始めた。  人に言えた義理ではないが、物見高い連中が囚人の様子をみようと集まって来ている。  ざわざわと喧噪が聞こえてくる。囚人を指さしてひそひそと話している者もいた。好色な視線もあれば、蔑むような視線もある。その視線一つ一つが女の身体に突き刺さり、さぞかし羞恥心を煽られるのだろう。  なまじ全身をスーツに覆われているだけに、乳首が飛び出しているのは余計に恥ずかしいはずだ。意識しないように努めようとしても、鈴が鳴ってしまうので意識せざるを得ない。人々の視線もそこに誘導される。  無様に歪められている豚鼻に関しては俯けばなんとかなるかもしれないが、乳首の方はどうしようもならない。  囚人は俺の背後にぴたりと付き、なるべく視線を遮ろうとしていたが、そうはさせない。 「おい、前に立って歩け」 「……ウゥ……ッ!」  女は泣きそうな顔をして必死に被りを振る。許しを請うているのか、涙を浮かべた目で上目遣いに俺を見ていた。これがプレイ中の恋人が相手だったとしたら、思わずその涙に絆されて甘やかしていたかもしれない。  だが、俺は管理官で、こいつは囚人なのだ。  甘やかす道理も理由も、そしてそのつもりもなかった。 「抵抗する気か、囚人の分際で!」  俺は腰に下げていた警棒を素早く抜き放ち、その先端を器用に使って女の乳房を横向きに打ち据えた。吊された鈴が激しく揺さぶられて音を立てる。 「ヒギッ!!」  女の急所を無造作に打ち据えたのだ。ダメージはかなり大きいはず。  案の定、囚人は足をふらつかせて倒れそうになる。それでもかろうじて踏みとどまったあたり、根性があるのか、それとも単に着ているスーツの恩恵か。  まあ、どちらでも構わないのだが。 「さっさと前を歩いて、その無様な姿を皆さんに見ていただくんだな」  言いながら俺は囚人の鎖を引き、場所を入れ替わった。  囚人は若干ふらつく足取りながら、俺より前に立って歩き始める。痛みからか涙と鼻水を垂れ流していて、口枷を咥えていることもあって、元は美人だからこそ無様さが際立つ。  往生際悪く背中を丸め、顔を俯けようとしやがるので、俺は後ろから鎖を引いて囚人を仰け反らせる。 「おい、もっと背筋を伸ばせ。顔も俯けるな。しっかり正面を向け」 「ウゥ……ッ」  囚人は顔を真っ赤にしながらも、俺の命令に従って背筋を伸ばす。そうすることで、街道に集まった人々も女の状態をばっちり見ることが出来た。 「なんだあの顔、グチャグチャじゃねえか!」 「おっぱいでけーな」 「綺麗な色の乳首してやがるぜ」 「うわっ、美人もああなっちゃ台無しよね……」 「生きてて恥ずかしくないのかしら。私だったら舌噛んで死ぬわね」  集まった人々は容赦なく囚人を言葉で責め立てる。  囚人はそんな蔑みの言葉と視線の嵐の中、一歩一歩進んでいる。早く歩こうとしているようだが、極端に高い踵のブーツがそれを許さない。いくら慣れていたとしても、そもそも走れるような構造ではないのだ。  それでも可能な限り急ごうとしている健気な様子を眺めつつ、俺はこっそりとポケットの中に入れたスイッチに指をかけた。  秘所にいれた多数のローターが、ここで効果を発揮する。  俺が無造作にスイッチを入れると、囚人は急に腰を砕けさせ、たたらを踏んで転びそうになるのを必死に抑えていた。 「おら、どうしたどうした! さっさと歩け!」  警棒の先端で女の柔らかい臀部を突っついてやる。女は涙目になりながら俺を振り返り、許しを請うような視線を向けて来たが、無視。  明らかに腰が引けている状態でありながら、俺の命令に逆らうという選択肢は囚人にはない。  いつその場に倒れてもおかしくないほど、膝を笑わせながら、一歩一歩前進していた。それがまた滑稽なほど笑える動きで、見物人たちからも失笑が溢れた。  しばらくそうやって歩かせていると、だんだん囚人の様子が変化してきた。羞恥に耐えているのは変わらないのだが、その顔に確かな快楽に浸っているような気配が滲み始めたのだ。 (この状況に感じてやがるのか……?)  まさか、とは思ったが、どう見てもそんな気配がある。絶望から逃れるための逃避行動かもしれないが、なんともまあ浅ましいことだ。  道端に集まっている人の数は増え続けていて、いまやちょっとした人垣ができているほどだった。  この状況に快感を覚えているとしたら、相当なマゾだ。 「おい、なんかあいつ感じてないか?」  見物人の一人からそんな言葉が飛び出した。俺の気のせい、ということもこれでなくなったわけだ。  囚人はびくりと肩を震わせ、消え入りたそうな様子で体を丸めるが、それを許すわけもない。軽く警棒で背中を突いてやると、慌てて背筋を伸ばした。  そうすることで、見物人からも女の表情がよく見えるようになる。 「ほんとだ。気持ち良さそうな顔してやがるぜ!」 「こんな状況でまさかそんな」 「ありえないよなぁ」 「そうだとしたらやばすぎるでしょ……同じ女と……いえ、人間とは思えないわね」  見物人たちは密やかなつもりなのだろうが、こっちにはっきりと聴こえてくる程度には大きな声で話していた。 「おい、確かめてみろよ」  そんな風に言われては、俺としてもやるしかなくなる。 「護送中なんですがねぇ……まあ、国民の皆様に求められちゃ、応えないわけにもいきませんねぇ」  我ながらわざとらしいもの言いだ。  囚人の女が恐怖でか震えるのがわかったが、それでやめられるわけもなく。 「動くなよ。そのまま真っ直ぐ立っていろ」  軽く命じてやるだけで、女の反抗は封じられる。俺は鎖を手に巻き取りつつ、テンションをかけて女の首を軽く締めて反抗する気を無くす。  そして、警棒を一旦しまって、空けた手を使って囚人の股間に手を伸ばした。  そこに走るジッパーを引き下げ、女の秘所を露わにする。湿った空気が滲み出て、それだけで指先が湿りそうだった。  確かめるまでもなく、愛液がだらだらと滲み出しており、そこに直接触れられた女は、明らかにいままでとは違う意味の呻き声を発した。 「これはこれは……いや、ここまでとは思っていませんでしたね! ご覧ください皆さん! この囚人は浅ましくも皆さんに見られて感じてしまっているようですな!」  ざわめきと嘲笑の声が広がる。  俺が女の感じている証拠に、指先で糸を引く様子を見せつけると、歓声と嘲笑が湧いた。 「とんでもねえ女だ!」 「頭おかしい」 「淫乱罪ででも捕まったのかー?」  好き勝手に言葉を浴びせかける見物人たち。  囚人は激しく恥じ入っているようだが、下の口からもダラダラ涎を垂らしていては説得力もない。悦んでいると思われても仕方ないだろう。  まあ、ここに至るまでローターによって直接刺激を与えられ続けているのだ。こうならない方がおかしいのだが、それはもちろん言わない。落ちてきそうになったローターを再度押し込みつつ、素早くジッパーを締めておいた。  短い時間で、この囚人は完全に淫乱女という認識が見物人たちの間に行き渡り、もはや囚人を女として見ているものはいなかった。  ただ、浅ましくも見られる快感に浸る女として、好色と蔑みの視線を向けられるのみだ。  半分以上はただの無駄だが、この引き回しにはそういう意図もある。この女が同情すべき人間ではなく、無様で虐げられるべき罪人であるという認識にするのだ。  間違っても彼女を助けようなんて思われては困るのだから。我が国は平和で基本的なモラルが高い国なので、そういう手順も必要なのである。本当にモラルが高いのかどうかは知らないが。  ともあれ、仕込みは上々と言えるだろう。  その後の道のりではひたすら女が罵倒されたり、嘲笑されたりしていた。  この女に自尊心というものがあるかは知らないが、あったとしたら粉々に砕かれたことだろう。可哀想だが、それは罪人に堕ちるような自分のせいである。精々悔いて反省してもらうとしよう。  そうしてさらにしばらく歩き、ついに中央管理塔にたどり着いた。その塔の前の広場では、すでに衛兵たちと、上層部の連中が待っていた。  まるで他国の要人を迎えるかのような出迎えっぷりだが、こいつらも要は物見高く見物しにきたというのが、本心だろう。  俺は助平な重鎮どもに呆れつつ、目の前まで囚人を連行し、敬礼する。 「特別案件の囚人を護送いたしました!」  俺の言葉に、もっともらしい様子で、上司が頷く。 「ご苦労さまです。囚人を受け取りましょう」  澄ました顔をしてやがるが、ニヤついた本性が隠しきれてねぇぞ。  とはいえ、指摘して要らぬ怒りを買うのも馬鹿らしい。俺は素直に上司に囚人の鎖を手渡す。  上司は満足げに頷くと、集まった見物人に向かって声を張った。 「みなさん! 我が国でこちらの囚人を預かることになりました! つきましては我らで最低限必要な教育を施したのち、懲罰に関しては皆さんのお手をお借りすることもあるかと思います! その際にはまた国内放送をいたしますので、お手隙の方はご協力のほど、よろしくお願いいたします!」  見物人たちから歓声があがる。上司は明言しなかったが、どんな協力を求めるから自明のことだ。きっとさぞかし愉快なことになるのだろう。  ともあれ、俺の役割はここで一旦終わりである。残念だが俺にも仕事があるしな。  上司に鎖を引かれ、中央管理塔に引きずり込まれていく囚人を見送りつつ、俺は自分のことは棚に上げて、女に同情した。  俺なんかは優しいもんだ。あの鬼畜上司は俺なんかよりよっぽど恐ろしいのだから。  ため息を吐きつつ、俺は関所に戻るべく歩き出す。 (しかしーー)  戻りながら、俺はふと思った。 (五日後に出国するってこと、国民に伝えなくて良かったのか?)  いつまでもいるわけではないので、混乱を避けるためにも、大抵は最初に説明しておくものなのだが。  放送でも出国のことは言っていなかったような気がするし、いまも言わなかった。 (まさかとは思うが、あいつが伝え忘れたんじゃなかろうな……あとで怒られるのは俺なんだぞ……勘弁してくれよ)  俺はそんな風に考え、もしそうだとしたら後輩の奴に全部責任を押し付けようと思った。  結果としてーーそんな心配はする必要もなかったわけだが。 つづく


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