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夜空さくら
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流刑少女シリーズ短編 ~箱の国・重犯罪者side~ 前編


 フォークリフトのような機械によって運ばれていく箱。

 人間一人が入るにはあまりにも小さいそれの中で、大国の重犯罪者・アルフェリは身体が押しつぶされそうな圧力に必死に耐えていた。

 綺麗に身体を折り畳んでいれば、そこまで苦しくはならなかったであろうが、その状態まで至ったのが、吊り天井に押しつぶされるような形だったため、かなり無理のある姿勢になっていた。

 体勢を整えようにも、降りてきた天井はびくともせず、彼女にはただ耐えることしか出来なかった。

 その状態で運ばれること数分。フォークリフトの機械はアルフェリの入った箱を、壁に空いたダストシュートのような穴に滑り込ませる。

 中は滑り台のように傾斜のついた坂になっており、アルフェリはかすかに見える外の景色が凄い速度で流れていくのを見た。

 やがて傾斜が少なくなって、それに伴って移動速度も減じ始める。数十メートルの距離を移動したのち、アルフェリが詰められた箱はベルトコンベアーに乗せられてさらに移動を続けた。

 今度はクレーンが伸びてきて、アルフェリの入った箱をアームで左右から挟み、持ち上げる。まるで何かの工場の生産ラインに乗せられたかのような、物のような扱いにアルフェリは背筋を震わせた。

 その震えは恐怖から来た物では無く、むしろ逆で、どんな風に扱われてしまうのかという期待から来るものだった。

 彼女は物扱いされているという事実に、興奮していたのだ。住民が一生のうちほとんどを箱の中で過ごすというこの国で、犯罪者としてどんな扱いを受けるのか。彼女は期待に胸を膨らませていた。


 アルフェリは、生まれ育った超大国で『国流し』の判決を受けた重犯罪者――ではない。

 重犯罪者という建前で、色々な国の刑罰を受けることを目的として出国した、度を超した自虐趣味の――有り体にいえば変態だった。

 彼女を乗せて移動する囚人護送車――に偽装した高性能AI搭載バイク・イロゥトを開発した天才科学者でもある。

 ちなみに彼女の行動を他の超大国の者が止めないのは、彼女のお楽しみの邪魔をして、彼女を敵に回したくないという理由であった。

 彼女の行動に実害があるわけではないので、触らぬ神にたたり無し、とばかりに放置しているのである。


 そんな彼女にとって、この『箱の国』は訪れるのを楽しみにしていた国のひとつである。

 住民の全員が箱の中で一生を過ごす国で、どんな刑罰が存在するのか。そもそも国外から来た者にとっては、『狭い箱の中で過ごす』ということ自体が厳しいのに、さらにそこに刑罰としての責めが加えられるとしたら、どれほど厳しく辛いものになるのか。

 普通の流刑囚なら恐怖するところであるが、それを受けるために旅をしている彼女にとっては、大変期待の高まることであったのだ。

 アルフェリが期待に胸を膨らませている間に、彼女が詰められた箱は狭い空間にたどり着いていた。一辺が1メートルもないであろう、極小の空間だった。

 もっとも、アルフェリ自身がもっと小さく狭い箱の中に閉じ込められているので、部屋の狭さは気にならない。

 部屋の明かりは最低限しかなく、透明な箱の壁越しに、薄ぼんやりと壁が見えていた。

 二重の箱の中に閉じ込められたような感覚になっていたアルフェリの元に、スピーカーを通した声が響く。

『これより、囚人番号四九一に対する刑罰の執行を開始する』

 その言葉と同時に、アルフェリの身体を覆っていたラバースーツが解除され、全てが首輪の中に収納された。外せない首輪以外、アルフェリは何も身に付けていない素裸となる。

 直接見られてこそいないものの、何らかの方法で見られていないはずがなく、身体に視線を感じた彼女は羞恥によって頬を赤くした。

 自ら流刑囚としていくつかの国を周り、全裸にされる以上の辱めを受けて来たとしても、彼女の羞恥心は少しも薄れることがない。

 それは国から国への移動中は、ほぼずっとラバースーツを身につけたままであり、肌の露出が著しく低く、さらには視線に晒されることもないことに起因している。

 さらにイロゥトには、高度な医療設備が搭載されていて、薬品などによる過剰な神経異常や、精神に異常を来すような記憶は、移動している間に治療されていた。

 国に入る都度、感覚や記憶をリセットすることで、どの国でも新鮮な被虐体験を味わうことが出来るというわけだ。高度な技術を有する超大国出身だからこそ出来る荒技である。

 なお、記憶の処理については、『起きたことを夢での経験だったかのように朧気にする』というものであるため、完全に消去しているわけではない。

 新鮮な気持ちで箱の国の刑罰に挑むアルフェリ。

 その彼女が詰められた箱の中に、どこからともなくそれまでとは異なる臭いが発生し始めた。思わず息を止めてしまうアルフェリだが、いつかは呼吸をしなければならない。すぐに呼吸を止めておく限界が来て、彼女はその肺に怪しげな空気を吸い込んでしまった。

(う……っ、これは……筋弛緩剤系……かな……)

 そう彼女は判断する。その身体からゆっくりと力が抜けていった。自分の意思で力を抜くよりも力が抜けてしまい、無意識に力の入っている部分の力も抜けていく。狭い空間に押しこめられ、反射的に入っていた身体の力が抜け、窮屈さだけでいえば少し楽になった。

 しかし、楽になっただけで済むわけもなく。

(あっ……だ、だめぇ……っ)

 アルフェリは自分の股間から生暖かい感覚が広がっていくのを感じていた。無意識に力が入って流出を防いでいた尿が零れだしたのだ。それを感じて股間に力を込めようにも、薬のせいで力が込められるわけもない。

 結果、力が抜けてしまうままに漏らし、アルフェリの詰められている箱の底面に漏らした尿が薄く広がっていった。

 アルフェリは下がってきた天井に押しつぶされ、身体を底面にべったりと伏せさせられていた。

 そのため、尿が顔の方にまで広がって来て、自分の尿に顔まで汚されて惨めな気持ちにさせられる。

(うぅ……汚い……)

 体中に力が入らないため、アルフェリは顔をしかめることもできなかった。それほどまでに力を奪われているのに、アルフェリは呼吸や視線移動に関しては問題なく可能だった。身体を動かそうという力だけを奪う薬なのだろう。

 そんな彼女を閉じ込めていた透明な箱が自動的に開き、彼女の身体を解放する。

 数十センチの空間から、一メートル弱ほどの空間に広がり、身体を動かす余裕が生まれたが、アルフェリの身体は麻痺しているので動けない。

 手足を力なく投げ出しているアルフェリに向かって、四方の壁から大量の水が吹き付けられた。

「ッ、ぷ、あっ!」

 瞼を閉じることはできたアルフェリだったが、口は力なく開いたままであり、その中にも水は飛び込んできた。飲んでいいものかわからず、必死に吐き出そうとするが、身体に力が入らないアルフェリにはそれも難しい。

 幸い、すぐに水は止まったため、溺れることはなかったが、一瞬で全身ずぶ濡れにされていた。

「け、ほっ……う……あ……」

 普通に呼吸する程度ならともかく、咳き込む力は上手く入らなかった。なんとか口の中に入ってきた水を吐き出すことには成功したが。

 その彼女に向かって、今度は水ではなく熱風が吹き付けられる。全裸に等しい状態の彼女に、その乾燥した熱風は容赦なく叩きつけられ、濡れた身体を急速に乾かしていく。

 濡れ鼠のままでいるよりは良かったかもしれないが、開きっぱなしの口までもがどんどん乾いていっていた。

「く……あ……はっ……!」

 苦しげに呻く彼女。口内に熱風が入り込んで、溢れかけていた涎もすべて乾かしていってしまっていた。

 幸い、熱風の時間はさほど長くはなく、口内の粘液が乾ききる前に止まる。

 安堵し、落ち着いて息をするアルフェリ。その彼女に身体に向け、壁から金属製のアームが伸びた。

 その金属のアームはまるで人間の手のような繊細な動きで、アルフェリの手足を取り、脱力した彼女の手足の姿勢を整えさせた。

「いぎっ、がっ、ああっ」

 背中に回された手は、捻り上げた上で両の手のひらを合わせるように固定させ、足は逆海老反りに折り畳まれ、膝が頭の後ろに来るようにされた。背中で捻り上げられ、合わさった手のひらを膝で挟み込むような体勢だ。

 普通の人間なら足の付け根の関節か、どこかに無理が来て折れるか千切れるかしてしまうところだが、いまのアルフェリの身体は筋弛緩剤系の硬化で極限まで脱力しており、軟体の曲芸もかくやというような体勢が取れるようになっているのだ。

 結果として、彼女は箱の中から出されているにも関わらず、極めて四角形に近い形にさせられていた。首を含めた頭の部分だけが突出している状態だ。

 その状態の彼女を固定化するように、金属の輪がアルフェリの胴体を手足ごと締め上げていく。

 奇妙な体勢で固定されたアルフェリは、苦痛に身体を震わせることしかできなかった。薬の効果が薄れていくのと同時に、勝手に身体に力が入り、拘束具を軋ませて苦しみがふくれあがっていく。

「あがっ、いだっ、いぎぃっ!」

 そんな彼女の呻き声を無視するように、再び透明な板がどこからともなく現れ、彼女の底面と左右、そして上面を連結して塞ぐ。結果として、彼女は四角柱の筒の中に詰められたような状態になった。

 まだ前と後ろ、つまりは頭側と股間側は開いているので、箱に詰められているわけではないが、それこそがこの国における囚人の基本体勢であった。

 箱に詰められることに慣れているこの国の人間でも、四肢を極限まで折りたたみ、一部も隙も無く固められたその状態は非常に辛いものとなる。薬の補助がなければ取れない姿勢は、薬の補助が切れた時、絶望的なまでに苦しい姿勢と変貌する。

 痛みや苦しみに慣れているアルフェリでも、その姿勢は厳しかった。身体が正常な機能を発揮することが彼女に痛みを与える結果になっているからだ。

「あぎっ、ぎぃあ! ああああ!」

 苦しみから逃れようと悶えれば悶えるほど、彼女の苦しみは増していく。その両目からはぼろぼろと大量の涙が流れ、涎や鼻水を垂れ流してしまっていた。

 すでに一杯一杯の状態の彼女だが、まだ終わりではない。

 いまの彼女からは決して見えない方向――股間側に面した壁から、複数のアームが出現していた。

 アルフェリの前に、小さな画面が用意される。そこには、おかしな方向に足が折り畳まれた人間の股間が映っていた。

 それが自分の股間を映した映像だと、アルフェリは察する。その場所にあるふたつの穴はいずれもひくひくと痙攣し、無様な様相を成していた。

『囚人番号四九一。これより股間部の処理を行う。よく見ておくように』

 その言葉と同時に、映像の中にもアームが映り込んだ。そのアームが誘導している物に気付いたアルフェリが、目を見開く。

 それらのアームは彼女の穴に差し込むであろう、巨大なプラグを保持していたのである。

 明らかに直径が太く、アルフェリの窄まった状態の穴にはとても入りそうにない。

 だが、機械のアームは容赦なく、その先端を彼女の穴へと近づけていった。

「む、無理無理無理! 入るわけな――ぎゃあッ!」

 アルフェリが何を言おうと関係ない、とばかりにアームはプラグを穴に押し込んでいった。それも二穴同時である。超文明の国出身であるアルフェリだが、その身体の構造は普通の人間と特に変わりが無い。ふたつの穴を締めたり緩めたりする筋肉は前後で繋がっている。

 つまり、両方を同時に広げようとすればどうなるか。

 当然、想像を絶する激痛が走った。身体がその部分から裂けてしまうような激痛に、アルフェリは言葉もなく絶叫した。もし傍で彼女の悲鳴を聞いていた者がいたならば、断末魔であると勘違いしていただろう。女性らしい悲鳴とはほど遠い、喉の奥から絞り出すような悲鳴が轟いた。

 喉が潰れなかったのは、ひとえに丈夫な身体のおかげであったが、それゆえに彼女はその後も苦しみ続けなければならなかった。

 プラグはある程度差し込んだところで細くなっており、太い部分が通過してしまえば、容易なことでは抜けなくなる。ただ、それは彼女の括約筋が無事であればの話だ。

 彼女の股間からは鮮血こそ流れていなかったものの、筋肉自体は断絶していてもおかしくなかった。

 それを見越してなのか、尻穴の方に差し込まれたプラグは、中に入ってからさらに直径を太くしていた。彼女自身にくわえ込ませるのではなく、物理的に抜ける余裕をなくしてしまっている。

「はー……はー……はー……」

 激痛の波に翻弄され、荒い呼吸しかできないアルフェリ。そんな彼女の腹の中で、冷たい感触がし始めた。差し込まれたプラグの先端から、肛門には浣腸液が、膣内には潤滑油が流し込まれたためだ。

「はぅっ、ああっ!」

 ただでさえ小さく固められている身体の内部から苦しくなり、膣内側は異様な感触がし始める。膣内に入り込んだプラグが潤滑油を噴き出しながら回転し始めると、彼女は目を白黒させて悶絶する羽目になった。

 与えられる刺激は普通の性交では決してあり得ないものであり、彼女にはそれが気持ちいい感覚として受け取ればいいのか、内臓を掻き回される苦しい感覚として受け取ればいいのかわからなかったからだ。彼女の神経は混乱させられ、苦しいと同時に気持ちいいという感覚が沸き上がって弾ける。

 二つの穴を徹底的に抉られている彼女の、股間側を塞ぐ透明な板が出現した。板には差し込まれた二本のプラグを固定するための穴があり、それによって二本のプラグを飲み込んだまま、彼女は頭側を除いた五方向を透明な板によって塞がれる。

 彼女の左右から吸盤のついたアームが飛び出し、側面に張り付き、そして持ち上げた。

 頭が上になるように向きを変えられ、再び下ろされる。細長い透明な四角柱の上に、頭部が乗っかっているような状態だ。身体の向きを変えられ、重力や体重によってかかる力の向きが変わることで生じた新たな苦しみに、彼女は息も絶え絶えになっていた。

 散々暴れ、体力を消耗したはずの彼女だったが、その意識は不自然に冴え渡り、体力も全く衰えることを知らなかった。

 その異常な状態に、アルフェリは何をされているのか悟る。

(栄養剤、か、なにかを……お尻に、注がれてる、の……?)

 予測は極めて正確だった。彼女の体内に注ぎ込まれているものは、この国で特別に調合された栄養剤兼気付け剤のようなもので、本来それは口から摂取するべきものだった。

 それを直接腸に大量に注がれているのだから、効果は絶大に現れている。気絶したくても出来ず、力尽きたくても力尽きれない。

 そんな無間地獄のような状態にアルフェリはされていた。

「あぅ……あぁ……っ」

 ギシギシという音は箱や金属の輪からではなく、アルフェリの身体から響いていた。

 不自由な姿勢で悶え苦しむ彼女の首を挟み込むように、左右から最後の面を封じる板が合わせられた。半円ずつ空いた板が合わさることで、ちょうどアルフェリの首の太さ分の穴が開くようになっており、アルフェリは首だけを箱の外に出したような状態にされる。

 透明な箱の上に首が乗っているような状態であり、首から下の身体は箱の中でぎゅうぎゅうに圧迫されているのが見て取れる。むき出しの乳房が箱の壁に押し付けられて潰れており、卑猥なオブジェとしかいいようのない外見になっていた。

『首から下への処理完了。最終処理を開始する』

 身体のほとんどが箱の中に封じられた彼女に、最後に処理を施され得る場所はひとつしかない。


 唯一箱から出ているアルフェリの頭部に――数多の器具を持ったアームが殺到した。


後編につづく

(2018年12月13日 更新予定)


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