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夜空さくら
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状態変化スーツ歴史館 液体化スーツ

■ その世界のあらゆるところで活用されている「状態変化スーツ」。人体を圧縮し、コンパクトなサイズになることで、この時代の人間たちはあらゆる恩恵を受けていた。そんな状態変化スーツがすっかり一般にも浸透した時代。とある五人の少女たちは、学びの一環でスーツを取り扱う歴史館を訪れ、そのスーツの歴史を学んでいく。

■ 液体化というかスライム化というかーw-; 一足飛びに技術が進化していっている感ある(そもそも平面化の時点でオーバーテクノロジーですが)


■ この作品には状態変化・圧縮などの描写が含まれます。苦手な人は回避をお願いします。

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 次に五人が案内された展示室は、それまでの展示室とはかなり趣が異なっていた。

 壁に掲示されている歴史などの説明文は、それまでと同様のものだ。

 大きく異なるのは、展示室の中央に大きな水槽のような物が――水は張られていなかったが――置かれている、という点だ。

 そしてその水槽の中には、黒い不定形の何かが蠢いていた。

「これは……タコ?」

 気弱巨乳少女のひかるが、その姿から受け取ったイメージそのまま呟く。

「そんなわけがないでしょう。……と言いたいところですが、私にもその類の生き物であるかのように見えますね……」

 真面目な委員長タイプの奈那ですら、そうとしか思えない存在だったのだから無理もない。

 状態変化スーツの歴史館なのだから、当然その不定形の生き物に見える何かも、状態変化スーツの一種を身に着けている人間であるという予想は出来た。

 しかし、その見た目の姿は、あまりにも彼女たちの知る状態変化スーツを着用した姿とは違いすぎるのも、事実なのである。

「液体化スーツ、だったか。確かに全身が液体と化しているように見えるが……」

「変化したまま、自由に動けるのすごいよねぇ。……ちょっと気持ち悪いけど」

 ボーイッシュで古風な喋り方をする幸世が感心して呟くのに対し、貧乳でお調子者な葵は少し引き気味だった。

 思い思いの感想を抱きつつ、五人が観察していると、職員が説明を始める。

「皆様のご想像の通り、あれは液体化スーツを身に着けて液体化しているスタッフです。液体化スーツは自力で動くことの出来る珍しい状態変化スーツのひとつですね。ただ、液体化スーツは基本試作品しか存在せず、一般にスーツが出回ることはほとんどなかったようです」

 なぜなら、と職員は続ける。

「昔はいまほど状態変化スーツに対するセキュリティ対策がされておらず、液体化スーツを用いて本気で侵入や潜入を試みると、重要な施設のセキュリティですらあってないようなものになってしまっていたためです。スーツを悪用しようとすれば、いくらでも出来てしまったのですね」

「許可がない場所に入っても、アラートが鳴ったりしなかったのですか?」

 大和撫子なおかっぱ少女のゆかりがそう尋ねると、職員は頷いて肯定した。

「はい。いまでは変化した状態で許可のない場所に入ろうとすると強制的にアラートが鳴ってしまいますが、昔はそういう機能はありませんでした。プライベート空間を区切る扉や窓の隙間から侵入し、住民に狼藉を働くことも出来てしまっていたくらいです」

 現在ではそれに加え、全てのスーツのデータを国が管理しており、誰がどのスーツをどこで何の目的で使用したかどうか、全て記録されている。

 不法侵入を目的にスーツを使うことは出来ないし、万が一出来たとしてもすぐに犯人は特定されてしまう。

 スーツを直接犯罪に使わなかったとしても、全ての記録はデータとして残っているため、不自然な動きや行動の空白が生まれれば、それを手掛かりにすぐに怪しい人物が浮かび上がるという訳だ。

 実際、その機能があるおかげで、いまの時代では突発的なものを除き、犯罪自体がほとんど成り立たなくなっていた。

 ひと昔前は指紋や現場に残された遺留物などから犯人を絞り込んで特定していたものだが、いまの時代はより簡単に犯罪を食い止めることが出来るようになっているのだ。

「……そういえば、うちの学校に不思議な怪談が伝わってるじゃん。ぺらぺらの化け物が夜な夜な生徒を襲いに来る……みたいな。あれって、もしかして液体化スーツみたいな特殊なスーツが使われた、とかだったりするのかなぁ?」

「世の中の全ての怪談がそうであるというわけではないと思いますが……そういうこともあるのかもしれませんね」

「そういう時代に生まれなくてよかったな……ゆかりが誰かに狼藉を働かれることがあったかもしれないと思うと……私は、とても平静ではいられなかっただろう」

「あらまあ♡ 幸世ちゃんってば♡ わたしも同じ気持ちですよ♡」

「はいはいバカップルバカップル」

 話が盛り上がる一同。

 職員もだいぶこの五人のノリに慣れてきたのか、特に動じることもなく、水槽の前に立つように促す。

「液体化スーツは、今申し上げたような問題もありましたが、それでも自在に体を動かすことが出来るようになったことで、スーツの可能性はさらに広がったと言えます。その自由度の高さを御覧いただきましょう」

 職員は水槽の壁に取り付けられていたマイクを手に取り、箱の中に向かって指示を出す。

「球形に丸まってください」

 そう職員が呼びかけると同時に、水槽の中の不定形の何か――液体化スーツを着たスタッフがくるりと丸まり、綺麗な円形になって転がった。

 五人がどよめく。

「うわぁ……なにあれすごい……」

「驚きですね……」

「……あれ? わざわざマイクで声かけてるってことは……もしかして、この箱って密閉されてる?」

「お気づきになられましたか。その通りです。実はこの中は現状密閉空間となっています。生身の人間が入れば、遅かれ早かれ酸欠になってしまうことでしょうね」

「それは……中にいるスタッフの方は大丈夫なのか、ですか?」

「ええ。スーツ全般がそうなのですが、基本変化している状態では呼吸などは必要とされなくなります。液体化スーツもその基本は同様です。動ける分、あまりにも激しい動きをしたら気を失うことはありますが、その場合も休眠状態のようなものなので命に別状はありません」

「なるほど…………ん? しかしあえて密閉空間にする必要はないのではないのか?」

「その答えはいまからお見せします。――次は床に広がってみてください」

 職員がそう呼びかけると、水槽の中央で丸まっていたスタッフが溶けるようにして床に広がっていった。

 文字通り水が広がっていくときのように滑らかに、かつ際限なく広がっていく。

 驚く五人の前で、液体化したスタッフは水槽の底一面に薄く広がった。ラバーのような素材で出来た表面は、鈍くテカテカと輝き、異様な光景にも見える。

 それを見た奈那は、ぽん、と掌を打った。

「ここまで滑らかに広がれる……いえ、広がってしまうのが問題なのですね?」

「ご明察です。液体化スーツの欠点の一つに、その制御に関しては個人の素養……才能が大きく関わってくる、ということがあげられます」

 体が液体になるということは、平べったくなったり立体化したりするよりも自分の体の輪郭を見失いやすくなることで、完璧に制御するのは難しいことだった。

 液体化した体を動かすためには、それなりの才能か、あるいはある程度の練習が必要だったのである。

「いま液体化しているスタッフは比較的変化の得意な人ですが、苦手な人だと先ほどのように綺麗に丸まることも出来ません。いまのように単に液体として広がるだけでも、自分の体を自分でどう動かしているかわからず混乱してしまい、最終的には液体化を強制解除しなければならないこともありました」

「……それは……かなり危険ですね」

「ええ。ですので、基本的に外部に出ることの出来ない、密閉した展示空間が必要だったわけです」

 言いつつ、出入りのために準備されていると思われる水槽の扉を開いた。

「いまご説明した理由から、皆さんに液体化スーツを体験していただくのは難しいのですが、その感触がどのようなものなのか、体感していただくことはできます。液体化スーツに触れてみたい方はどうぞ」

「私は……いい」

「わたしも今回はご遠慮します♡ さっき堪能させていただきましたから♡」

 幸世とゆかりは先ほど立体化スーツのところで状態変化を行っているため、すぐさま辞退した。

 残る三人のうち、知的好奇心を刺激されたらしいひかるが控え目に手を挙げる。

「あの、あたし、体験してみても、いい、ですか?」

「もちろんです」

「アタシはいいかなぁ……ああいうの、ちょっと苦手……」

「葵さんは活動的な性格の割りに、生き物全般は苦手ですよね」

 奈那も辞退したため、ひかるが一人で水槽の中に入ることになった。



 水槽の中に入る前に、あたしは身に付けている状態変化スーツを操作して、脚を覆っている部分を解除し、裸足になった。

 状態変化スーツは表面に汚れなどが付着しないようになっていて、下手をすれば素足よりも綺麗なのだけど、人の家に上がるときなどは最低でも靴部分の構築は解除するのがマナーだ。

(土足が汚いものだった頃の感覚が原因だから、いまの時代にはそぐわない、不合理的なマナーだとは思うけど……)

 マナーはマナー。若者の中には古い時代のマナーに従うのをとにかく嫌う人もいるけれど、そういう存在と同じにはなりたくないものだった。

 まあ今回に関しては、土足禁止のマナーを遵守した、というより、素足で感触を確かめてみたいということが大きい。

 水槽の扉は、少し敷居が高くなっている。さっき案内のお姉さんから説明があった通り、液体化した人が流れ出すのを防ぐためだろう。

 敷居に躓かないように注意しながら、私は恐る恐る水槽の内側に脚を差し込んでいった。

 水槽の底部分には、液体化した人が広がっている。

 ラバーコーティングされているかのような見た目だけど、果たして感触はどんな感じなのか――緊張というか、期待で少しドキドキする。

 ゆっくりと下ろしていく足の裏が、水槽の底に、液体化して広がっている人に、触れる。

 その感触は、思っていたよりも不思議な感触だった。

 想像していたのは、ラバーマットのような、滑りが悪くて抵抗感があって、弾力がある感じだ。

 けれど実際に触れてみると、ラバーの感触は感触なんだけど、想像以上につるっとしているし、弾力はあるけどラバーよりもっと柔らかく、そして触れた感じが温かい。

 そして何より、そのラバーという皮を一枚隔てたその向こうで、液体化した人の身体が対流しているのを感じる。

 ぞわぞわ、と不快ではないけど何とも形容しがたい感覚が背筋を走った。

「んひゅ、ぅ……っ」

 思わず変な声が出てしまう。

 別にくすぐる意図はないと思うけれど、足裏をくすぐられているような、そんな変な感覚だった。

「ひかるさん、大丈夫ですか?」

 そんなあたしの反応を見て心配してくれたのか、イワナちゃんが声をかけてくれる。

「んっ……だい、じょうぶ……ちょっとくすぐったいだけだよ、イワナちゃん……」

「私の名前は岩神音奈那です」

 彼女といつものやりとりを挟んで、少し落ち着いた。

 あたしはもう片方の脚も水槽の中に入れ、完全に水槽の中に立つ。

「扉は開けっぱなしにしておきますから、呼吸の心配は不要ですよ」

 案内のお姉さんがそう声をかけてくれた。

 万が一、酸欠になったらすぐに状態変化スーツが展開されて休眠状態にしてくれるから、心配はしていなかったけれど。

 スーツがハイテクに成り過ぎたことで、人は危険に対する反応が鈍くなったと言われている。実際私も、案内のお姉さんに言われるまで水槽の中に入ったときの呼吸に関しては特に気にしていなかった。

「それは、ひかるにとってはいいことだが……液体化している人は大丈夫なのか?」

「ええ。ご安心ください。いま液体化しているスタッフは液体化に秀でたスタッフですし、そう滅多なことではトラブルになりません。元々密閉空間にしているのも、万が一を想定してのことですので、ご心配は無用です」

 案内のお姉さんは言わなかったけれど、たぶん液体化スーツを体験することもできるのだと思う。慣れていない人が流れ出したりしないようにするための密閉空間なのだろう。

 あたしたちに説明しないのは、学校行事で来ているあたしたちを必要以上に危険な目に遭わせないために液体化そのものを体験することはできないあたしたちを気遣ってのことだろう。

(液体化が体験できたら、ぜひやってみたかったなぁ……)

 学校行事としてではなく、プライベートで来たら体験することができるのだろうか。

 あとでお姉さんに確認しておこうと思う。

(それは、まあ、一端おいといて……ん……これは……本当にこそばゆい……)

 水槽の中心まで少し歩いてみる。

――ぎゅむ、むぎゅ、ぎゅむ……

 一歩踏み出すごとに、足の裏と液体化スーツが触れあって音を立てた。

 液体化した人の身体は常に対流しているので、実に不思議な感触だ。

 海の上を歩いたらこんな感触なのかもしれない。

(くすぐったいけど……気持ちいい……)

 感触をもっと堪能するべく、あたしはその場にしゃがみ込んで、手のひらで触れてみた。

――ムギュッ、ギュム、ムニュッ……

 足の裏で触れるよりも遙かに細かく、感触が伝わってくる。

 改めて実感したけれど、ラバーの触感なのに温かく感じるのは、液体化している人の体温の影響のようだった。

 握手しているときのように、相手の体温がはっきりと伝わってくる。

(本当に……不思議な、感触だなぁ……)

 あたしがそうやって暫く触っていると、ぴくぴくと液体化している人が痙攣して、手から離れていってしまった。手のひらが固い水槽の底に直接触れる。

 摩られてくすぐったかったのかもしれない。避けられてしまった。

 追いかけてもう一度触れにいく。

 その様子を見て不思議に思ったのか、シャチエちゃんがお姉さんに尋ねていた。

「液体化している側は、どんな風な感覚になっているんだ?」

 質問に対して、お姉さんは困ったように首を傾げる。

「うーん……それが、私には説明できないんですよ……先ほどお伝えした通り、液体化スーツには、それを動かす才能が必要ですから……強いてそうする必要があるとき以外は、元からそういう才能を持っている人たちが持ち回りで装着していますので……私は適性を見るための一度しか使っていません」

 お姉さんには液体化スーツを使う才能はなかったようだ。

「そのときの感覚はなんと言いますか……自分の体がドロドロに溶けて、何もかも曖昧になってしまって、私には耐えられないものでした。早々に意識を失ってしまって、緊急解除したくらいですから……」

 予想以上に液体化スーツは適性に左右されるもののようだ。

「ただ、才能のある人たちに聞いた話ですと、どこに触れられても全身に触れられているような感触になって、またそれを制御できれば、通常の状態変化スーツの何十倍も気持ちいい感覚を得ることができるのだそうです」

 人によっては、とお姉さんは補足する。

「スーツという薄皮で区切られているとはいえ、自分と世界が渾然一体と化した全能感を得られる……とのことでした。それはそれは心地のいい感覚なのだとも」

 昔なら薬物中毒か何かの台詞と勘違いされそうなことをいうお姉さん。

 外で皆が盛り上がっている間に、あたしは改めて液体化した人に近づいていた。

 さっきと違って床一面に広がっているのではなく、床と液体化スーツの境界線が見えている。

 液体化スーツは一センチあるかないかの薄さになっていた。

 ふと思いついたあたしは、掌を上に向け、床と液体化スーツの境界線に掌を挿し込むような形で、液体化した人の体を掬い上げてみた。

 水飴か何かが伸びるように、その液体化した人体はあたしの手の上から零れることなく、床に広がった物とつながったまま伸びてくる。

(相当柔軟に伸びるなぁ……ガム、っぽいけど……ガムほど元に戻ろうとする力は働いてないし……)

 なんて表現すればいいのか悩む感触だった。

「液体化スーツの伸縮に制限などはないのでしょうか?」

 アユカリちゃんがちょうどあたしの聞きたかったことを、お姉さんに尋ねてくれていた。

 あたしたちが着ている最新型の状態変化スーツも多少は伸縮するけれど、こんなに平べったく広がることは出来ないし、そもそも人型は維持しないといけない。

「基本的にはない、ですが才能次第、といったところですね……才能がある人の話ですが、最高で百メートル近い紐状になれた人もいるらしいですよ」

 とんでもない話だった。

 液体化スーツによって、人の可能性は大きく広がったという話は、何も誇張されていないことかもしれない。

 そんなことを考えながら、掌に載せた液体化した人の体を引き延ばしていたら、不意にその掌に載せていた部分がぐにゅっと歪んで、気付いたら人の手のようなものと握手していた。

「え?」

 驚きのあまり変な声が出てしまう。

 握手している手を辿っていくと、いつの間にか人型が目の前に座っていた。

 全身真っ黒でのっぺりとしたラバースーツに包まれたその人。液体化を解いたわけではなく、ただ液体の状態で人型を形作っているだけのようだったけど、確かにそれは人だった。

 全身のっぺらぼうで個人の特徴らしいものは一切見えなかったけれど、口元あたりが裂けるようにして笑みの形を作る。

 若干ホラーのような光景に、体が硬直した――のと、あたしの手と握手していたその人の手が、どろりと再び液体化して広がったのはほぼ同時だった。

 そしてその広がる先は、さっきのような床ではなく、あたしの体に対してだ。

 握手していた手の先から、液体に包み込まれるように、ラバーの薄皮があたしの腕を覆っていく。

「ひゃ……っ! く、くすぐった……!」

 まるでイソギンチャクに飲み込まれる魚のような感覚だった。

 握手の形のまま、開いた状態だった手を思わず握り締め――むにゅ、と弾力のある感触が掌から返って来た。

 アオイカワちゃんだと馴染みがない感覚だったかもしれないけれど、あたしは馴染みのある感触だったので、その正体はすぐにわかった。

(こ、これって……おっぱいの感触!?)

 大きなお胸を鷲掴みにした時の感触が、掌から返ってきていた。

 状態変化スーツ以外の服を着るときは、自分で乳房の位置をちゃんと調整しないといけない。

 だからすぐ掌の中にあるものがおっぱいのようなものだということはわかったのだけど、わざわざあたしの掌の中に乳房を形成したということになる。

 液体化スーツは全身が液体化しているのだから、そういう芸当も出来るのだろう。本当にすごいスーツだ。

 そう思っている間に、あたしの腕を覆っていっていた液体化した人は、ラバーセーラー服の袖の中まで入ってきた。

 あたしたちの着ているラバーセーラー服には、インナーがちゃんと存在している。

 その上からとはいえ、自分で動く液体が体を覆っていく感触が広がっていくのは、異様な感覚だった。

「んひゃあああっ! ――ひゃぅんっ!?♡」

 体を覆っていく液体が、あたしの胸に到達する。

 自慢じゃないけど大きなあたしの胸を、ラバーインナーの上から液体が覆ったかと思えば、いきなり胸を揉まれた。

 思わず抵抗しようとしたあたしのもう片方の腕も、素早く液体が覆ってしまい、動かせなくなる。

「ひゃんっ!♡ ちょ、ちょっとまっ――ふぐぅっ!?」

 口元に液体ラバーが上がって来て、口が塞がれた。鼻の穴は塞がれなかったから呼吸は出来たけど、声があげられない。

 液体化した人はさらにあたしの腰や足まで覆い始め――瞬く間に、あたしの全身はその液体化した人の体で覆われていた。

「んぅ~~っ……んぅぅっ!?♡」

 ラバーコーティングされたような状態のあたしの体。

 その至るところでラバーが細かく動き始めた。胸を揉まれたかと思うと、鎖骨を撫でていく感触が走り、股間に振動が来たかと思うと、手足を撫で摩られる。

 特にあたしの大きな胸には執拗に刺激が与えられ、頭が痺れるほどの快感を与えて来た。

「ふにゅぅうううっっ♡♡♡」

 執拗な刺激を受け、快感が頭の中で弾ける。

 脱力した体が倒れかけたけれど、コーティングしてくれている人が支えてくれているのか、倒れることも出来なかった。

 あたしをさらに気持ちよくさせようと、液体化した人が動き出し――

「あっ、こら西園寺さん! 悪戯しちゃダメでしょ!」

 案内のお姉さんの鋭い叱責に、びくんと液体化している人――西園寺さんというらしい――が、反応して、慌ててあたしから離れていった。

 倒れ込みそうになったけれど、西園寺さんがそっとあたしの体を支えてくれたので、その場にへたり込むだけで済んだ。

 あたしから離れた西園寺さんは、水槽の隅の方に固まり、ぷるぷると哀れに震え始める。

 水槽の中に案内のお姉さんが入ってくる。

「全くもう……可愛い子だと思うとすぐそういうことをするんだから……申し訳ありません。彼女は少々その……悪戯好きでして」

「あ……いえ……ふぁいじょうふ、ふぇす……」

 そうお姉さんに言いはしたものの、気持ちよすぎて腰が抜けていた。

 すぐには立てなかったので、お姉さんの肩を借りて、あたしは水槽の外に運び出されたのだった。



 水槽から運び出されたひかるを、他の四人が迎える。

「ひかるさん、大丈夫ですか?」

「ぴかっち、しっかり! 傷は浅いよ!」

「いや、ケガしてるわけではないだろう……?」

「ふふふ。幸世ちゃんってば♡ いまのはお約束の台詞、という奴ですよ♡」

 さほど連続で逝かされたわけでもないため、ひかるはすぐに復活して、立てるようになった。

「だい、じょうぶ……ちょっと、腰が抜けてただけ……」

「ひかるさんが一瞬で腰砕けになるとは……液体化スーツ、おそるべしですね」

「あの人の技量がすごいのではないか?」

「さっきの話でいうと、そんな感じするよねー」

 わいわいと姦しく話す五人。

 案内役の職員は水槽の扉を閉めた後、五人に向けて深く頭を下げた。

「うちのスタッフが暴走してしまい、誠に申し訳ありません」

「ちょっと、びっくりした、だけだから……」

 そうひかるは答えたものの、奈那の後ろに隠れてしまっていた。

 職員はそんなひかるの様子を見て、何かを決断したようだ。

「お詫びと言ってはなんですが、特別展示室のご案内をさせていただきます」

「特別展示室、ですか?」

 おうむ返しに尋ねた奈那に対し、職員は頷く。

「はい。本来は順路に入っていないのですが……きっと皆さまに楽しんでいただける内容だと思います」

 戸惑っている様子の五人に対し、職員は言う。

「特別展示室には――液体化スーツよりもなお特殊な、一風変わったスーツが展示されているのです」

 そのスーツの名は。

「自立型特殊形状選択圧縮スーツ――通称・ヌイグルミ圧縮スーツ、と言います」


つづく



Comments

確かに、技術で命の安全が保障されている分、死にそうになるギリギリのハードSMプレイは出来ないかもしれませんね。

夜空さくら

何とかかなしいね。とある100%幸福のミクの歌の世界みたい。ギリギリアウトのプレイもできません。

c933103

実は設定上は存在するスーツだったりします^w^ 本当はもっとエロエロな責めも出来るんですが、さすがにこれ以上やると、寛容な世界と言ってもセクハラで訴えられるのでできませんでした!ーw-無念←コラ

夜空さくら

液体化は過去作の研究者の話ではなかったですけど、液体化が出来るOLさんと液体ゴムの呪いの人を元に書いてる感じかな。 ウム^.^ 実にエロい、スライム娘みたいに不定形だからこそできるエロスが実に素晴らしいです♪

ミズチェチェ

この世界の法律や政治がどうなっているかは不明ですが、緩く温い優しい世界なので不幸な人はそう多くないイメージです^w^b

夜空さくら

科技が発達した世界で、全体主義政府は避けられないのか。

c933103


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