状態変化スーツ歴史館 未来の状態変化スーツ 前編
Added 2021-08-06 14:05:08 +0000 UTC■ その世界のあらゆるところで活用されている「状態変化スーツ」。人体を圧縮し、コンパクトなサイズになることで、この時代の人間たちはあらゆる恩恵を受けていた。そんな状態変化スーツがすっかり一般にも浸透した時代。とある五人の少女たちは、学びの一環でスーツを取り扱う歴史館を訪れ、そのスーツの歴史を学んでいく。
■ 前後編の今回で「状態変化スーツ歴史館」は終わりです。最後までお付き合いくださると幸いですーw-ペコリ
■ この作品には状態変化・圧縮などの描写が含まれます。苦手な人は回避をお願いします。
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その後も五人は、状態変化スーツ歴史館の見学を続けた。
特別展示室にて、ヌイグルミ圧縮スーツに包まれ、しばらくそのまま運ばれていた葵も、途中で元気を取り戻していた。
いまは他の四人と同様に、最初から身に着けていた現代の状態変化スーツが変化したラバーセーラー服の姿になっている。
当初の予定に沿って、歴史館の見学を隅々まで行った五人は、最後の展示室に到着する。
彼女たちを先導してきた職員が、五人に向き直って軽く頭を下げた。
「お疲れ様でした。ここが当歴史館の最後の展示室――通称『未来の状態変化スーツ』の展示室です」
その職員の言葉に、五人がざわめく。
「未来の……ですか? 状態変化スーツは、すでに完成していると一般的には言われていますが……」
「もっと、すごい機能が……ある?」
「全然想像できないね」
五人が口々に喋るのを一通り待ってから、職員は続ける。
「はい。実際皆さんが身に着けている状態変化スーツで、機能的にはすでに完成しています――元々の平面化スーツの頃に求められていた性能は、という意味ですが」
実際、それ以上の機能があっても、一般的な用途では過剰と言える。
「しかし、技術としてより良きもの、優れたもの、高度なものを生み出そうとするのは、人間の本質ともいえることです。これから皆さんが目の当たりにするスーツは、よりスーツを高次元のものにしようとして生み出された、究極の状態変化スーツといえるものです」
職員の言い方は、少々大仰にも取れる言い方であったが、そんな話をされて好奇心旺盛な若者たちがワクワクしないわけがない。
「究極の状態変化スーツ、か。どんな機能が搭載されているのか……」
「楽しみですねぇ、幸世ちゃん♡ ……ワクワクしてる幸世ちゃん、可愛いです♡」
あくまでブレないゆかりの言動に、さすがに慣れた職員は特に反応することなく、展示室のドアを開ける。
「それでは参りましょう――これが未来の状態変化スーツです」
そうして職員に導かれ、最後の展示室に入る五人。
その展示室では、至って普通の光景が広がっていた。
どこかのショッピングモールをイメージしているようだ。いくつかの店舗が並び、人影がいくつも行き交って、思い思いの行動をしている。
遠景や一部の人物は立体映像などを駆使して演出されているようだったが、五人が入った扉から数十メートルの範囲は、実物のもので作られているらしく、その範囲で行動している人々も実演のスタッフのようだった。
その光景自体は、どこにでもある『ショッピングモール』の様子であったが、だからこそ五人は違和感を覚えた。
「この人たち……スーツを、着ていない、の……?」
ひかるがぽつりと呟いた言葉に、他の四人も同じことを思っていたのか、同意する。
「……普通の服……のように見えるな」
「アタシたちの服装がむしろ浮いちゃってるね」
いまの時代、基本的にほとんどの人間が状態変化スーツを着用して生活している。
移動手段のほとんどが圧縮された状態で行うものになっているため、状態変化スーツを着ていた方が都合がいいからだ。
服の色やデザインを含めた気合の入れたお洒落をしたいときなど、単純に趣味として、普通の服を着て出かけることがないわけではないが、特に拘りがない場合は状態変化スーツを変化させるのが普通だ。
五人が着ている状態変化スーツがセーラー服になっているように、服のデザインに関してはある程度弄れることが大きい。拘りがなければそれで満足できる程度には、いまの状態変化スーツは優秀な変化能力を有している。
ただ、あくまでも状態変化スーツが変化したものであるため、ラバーっぽさはどうしてもどこかに残ってしまう。
その点、展示室内で動き回っている実演のスタッフたちは、明らかに普通の服を着ているとしか思えない格好だった。色とりどりでデザイン自体もスーツでは変化させられなそうなものばかりだ。
これはどういうことなのか、とざわめく五人の前で、案内の職員がひとりのスタッフを呼び止める。
「小河さん、こちらに立ってください」
『ウィンドウショッピングを行っている通行人』に扮していると思われるそのスタッフは、職員に言われるまま、五人の前に立った。
そのスタッフを何気なく見た奈那は、とんでもない事実に気付いた。
「あれ……? その人、眠ってませんか?」
なんと、その人物は目を瞑っていたのだ。
糸目というわけではなく、明らかに目を瞑っていて、前を見ていない。
その指摘を受けた案内の職員は、スタッフに対して若干呆れた様子を見せつつ、応える。
「はい。眠る必要はないので、寝ているのは彼女の性格上のことではありますが……実は、この未来の状態変化スーツには、全自動で体を動かしてくれる機能があるんです」
自律して動いていたヌイグルミ圧縮スーツの発展版である。
「とはいえ、普通は歩きながら寝ることは出来ません。この人が慣れているから、眠れるようになっているだけですが……それくらい、移動をスーツに任せることが出来るのです」
「外部から無理矢理体を動かされたら、起きてしまわないか?」
「全自動移動モードの際は、体の感覚が極めて鈍くなるんです。夢の中で体を動かしているような、そんな感覚ですね。それでも、眠れるのは結構器用な芸当ではあります」
「ぴかっちなら寝れそうだよねぇ」
「……あたしもそう思う」
「いまのスーツでも、圧縮移動後はいつも寝ぼけ眼ですしね」
未来の状態変化スーツの性能に関心する五人。
しかし気になることは他にもあった。
「その方……素肌が露出しているところが多いように窺えますが、その覆われ方で大丈夫なのですか?」
実演を行っているスタッフが着ている服は、ノースリーブのトップスに、膝丈のスカート、そしてフラットのパンプスだ。
腕は大胆に露出しているように見えるし、スカートからは素足が覗いている。
先ほど葵が包まれていたような、全身を覆うヌイグルミ圧縮スーツのようなタイプならまだしも、素肌が露出していては、全身を立たせたり歩かせたりするのは難しいと思われた。
そのゆかりの疑問に対し、職員はそのスタッフの腕を取り、五人の前に差し出させる。
「どうぞ、触れてみてください」
職員の言葉に、五人はある予感を覚えつつ、そのスタッフの腕にそれぞれが手を伸ばす。
そして、スタッフの腕に触れた瞬間、五人が抱いていた予感は確信に変わった。
五人から一斉に歓声があがる。
「えええっ、これ、もしかしなくても……!」
「まさか、腕も脚も透明なスーツで覆われているんですか!?」
五人が触れたスタッフの腕からは、彼女たちも着ているスーツのような、ラバーの感触が返ってきていた。
触れているはずの指は、ほんの僅かその肌から浮いていて、透明なスーツがその間にあることを示している。
「これってつまり、全身覆いつつも、部分ごとに色が変わって、別々の服を着ているように見えてるってこと?」
「わかって触れてみると、確かにラバー製のようだが……これは見た目ではほとんどわからないな……極普通の服に見える」
彼女たちの着ているスーツでも、様々なデザインの服に変化することは出来るが、そのスタッフが着ているスーツのような精密さはなかった。
セーラー服がラバーセーラー服に見えるように、見た目で状態変化スーツが変化したものだということがわかってしまうからだ。
それだけでも驚きだったが、より驚くことはまだあった。
「……! 皆さん! この方の顔をよく見てみてください……!」
「え、どうしたのゆかりん……って、ああ!? これって……!」
ゆかりの指摘を受け、まじまじとスタッフの顔を見た葵が、何かに気付いてスタッフの頬を指で軽く突いた。
その無遠慮な触れ方に、本来であれば真面目な奈那が苦言を呈するところだったが、葵の行動の意味を奈那も察して、驚きでそれどころではなくなっていた。
「顔も透明なスーツに覆われているんですか……!? 張り付いているようには、全然見えないのに……!」
顔は他の体の部位に比べ、非常にデリケートな部分だ。ぴったりスーツが張り付けば、その張り付きの力によって柔らかい頬や瞼などが引っ張られ、変に皮が突っ張ったようになって、不細工な顔に見えてしまうことだろう。
しかしそのスタッフの顔は自然体で、とても何かが張り付いているようには見えない。
葵が頬を突いた指先が、わずかに頬から浮いているため、透明なスーツがそこにあるということにようやく気付けるほどだ。
「待ってください、奈那さん。顔だけではありませんよこれ……! 髪も覆われています!」
「そんなまさか!」
ゆかりの指摘を受け、髪に注目する奈那。
その目に、透明なスーツが髪すら覆っているのが見えた。
さすがに髪の毛一本一本が覆われているわけではなかったが、一定の髪のまとまりを維持したまま、押し潰すことなく、髪が透明なスーツに覆われている。
そのスタッフは一見、普通の服を着ているように見えて――その実、全身を余すとことなく『状態変化スーツ』に覆われていたのだ。
「これは……もはや、スーツと言っていいのか? コーティング、というべきでは?」
ある意味至極真っ当な疑問を幸世が口にする。
その疑問に対し、案内の職員は苦笑気味に応じた。
「その通りですね。実際、このスーツの正式名称は『コーティング式状態変化スーツ』となっています」
言いながら、職員がぱちんと指を鳴らす。
それが合図になっていたのか、五人の前に立たされていたスタッフのスーツが、ラバーのような色と質感を取り戻した。
透明だったり普通の服になっていたりした部分全てがラバーのような外見になった。
結果、五人は視覚的にもそのスタッフの全身が、コーティング式状態変化スーツに包まれていたことを理解することが出来た。
まるで溶けたラバーを全身に引っ被り、薄く膜を張った状態で固まったような、そんな不思議な像となっていた。
「おぉ……こうなると、確かに全身スーツに包まれていることがわかるな……」
「呼吸穴がないように見えますけど……」
「……というか、元々呼吸してなくなかった? 全然肩も胸も動いてないし……」
「もしかして、状態変化している扱いになってるんですか?」
職員はご明察です、とその疑問に答えた。
「全自動モード、というのは体を通常通りに動かしているわけではなく、そういう体勢の形に少しずつ変化している、というのが正しい認識なのです」
要するに、と職員が手をカクカクとメリハリをつけて動かして見せる。
「いうなれば非常に細かいアニメーションのようなものですね。立っている体勢から、足を前に出す体勢に少しずつ、しかし高速に変化を切り替えていき、結果として外からは歩いているように見えている……という理屈です」
ですから、と職員がぽん、と手を叩くと、その場に立っていたスタッフが消え、立っていた場所の足元に平たい板が出現していた。
その板がスタッフが圧縮された板だということを、五人は言われずとも理解する。
「このように、一瞬で形を変えることも可能なわけです」
もう一度ぽん、と手を叩くと、何事もなかったかのようにその場にスタッフが出現した。
そのあまりの変化の早さに、未来の状態変化スーツと呼ばれる理由を五人は理解する。
「これは……本当にすごいね」
「私たちの使っているスーツだと、どうしても変化する時間が必要だからな……このレベルの変化速度が必要かはわからないが……」
「結構有用なんじゃない? 突発的な事故も防げるし」
ほとんど圧縮状態での移動が主になっている現代でも、交通事故による死傷者はゼロではない。
圧縮状態じゃない人間に、何らかの原因で暴走した車が突っ込むなどの事故は――昔に比べれば激減はしたが――年に数回は起きている。
「仰る通りで、突発的な事故においても、この変化速度があれば、衝突直前に強固な形を取ったり、衝撃を受け流す軟体になったり、そもそも衝突を回避する形になったりすることが可能です。……とはいえ、いまの段階ではまだスーツ一枚一枚にかかるコストが高すぎるので、国民全員が着用することは難しいのですが……一国の大統領など、必要とされる人はこのレベルのスーツを身に着けています」
職員の説明に、感心する五人。
「このスーツが行き渡れば、事故死という言葉は完全に死語になるな……」
「コストを減らすことが出来れば、というところでしょうか」
「皆が同時に移動するわけでもないし、普通の変化で十分な場合もあるから、必ずしも全員が同時に着用しなくてもいいかも?」
「それ……ちゃんと考えたら、レポートに出来そう」
根は皆真面目なので、しきりに未来のラバースーツに対する感想を話し合っている。
そうこうしているうちに、未来のラバースーツを身に着けていたスタッフ――小河が目を覚ました。
スーツに覆われているが、スーツは瞼の開閉を阻害しないらしく、ぱちぱち、と瞬いている。
『あら……? ごめんなさい。見学の方が来てたのね』
小河の言葉は不思議な聞こえ方をした。音として響くのではなく、頭に直接響いてくるような、奇妙な聞こえ方。
「いまの……その方のお声、でしょうか?」
ゆかりの確認に、小河は頷く。
『驚かせて、ごめんなさい。このスーツは口も覆われているから、普通の声とは少し違う聞こえ方をするの』
「テレパシー、のようなものか……」
『念話と違って、種も仕掛けもある技術の結晶だけどもね。その認識で問題はないわ』
「未来の状態変化スーツには、こんな機能もあるんですね……」
「液体化スーツが作られた頃に、一度実装されたことはあったようです。その当時は触れた者にしか通じなかったようですし、スーツを流通させるために量産化する際、過剰な機能とされてカットされましたが」
「説明文に、書かれてた……残念だよね……」
「確かに……その機能がいまもあれば、幸世ちゃんと一緒に変化しているときもより幸せですのに……」
無限に愛を囁くつもりなのだろう、とゆかりを理解していない小河以外の全員が同じことを思った。
『あら? もしかしてまだあの機能に関しては説明してないのかしら?』
そう小河が案内の職員に確認する。
職員は呆れ気味の顔をしつつ、頷いた。
「貴女が寝ていたんですから、説明のしようがないと思いませんか?」
『起こしてくれれば良かったのに……まあいいわ。それじゃあ早速、この子たちにも例の機能を体感して貰いましょ♡』
そう不敵に笑いながらいう小河は、五人の中からひかるを指名して自分に近付かせる。
『貴女が楽しそうだわ。痛いことは何もないから、安心してね♡』
「は、はい……わかりまし――」
内気なひかるが言い終わるか否かのところで、すでに小河は始めていた。
ひかるのラバーセーラー服に片手を触れさせる。
その瞬間、ひかるの状態変化スーツが強制的に解除されていた。当然、それ以外の衣服など身に着けているはずもなく、ひかるはいきなり素っ裸になってしまった。
いくら多少性に寛容になった時代とはいえ、ヌイグルミ圧縮スーツの時の葵がそうだったように、一人裸になってしまったひかるは、一拍遅れてその頬を朱に染めた。
「ひゃあっ!?」
慌てて両手を使って胸と股間を隠すひかる。しかし、哀しいかな――主に葵にとってだが――ひかるの巨乳はとても片手で隠しきれるものではなく、その腕からかなり溢れてしまっていた。
そんな初々しい反応をするひかるを、小河は年長者特有の温かい目で見つめながら、宥めるように『声』をかける。
『あらあら。とても素敵なものを持っているのだから、恥ずかしがらないでいいのよ♡』
そういって小河はひかるの両肩に手を置いた。
そして、裸のひかるの両肩がぐにゃりと曲がる。
後編につづく
Comments
ほんと変態の国ですからね!0w0クワッ! 状態変化スーツに至っては開発者が変態なので、何を言わんや、ですが……(笑) 次回の後編ではその変態性を存分に発揮した内容になる予定です!こうご期待!0w0クワッ
夜空さくら
2021-08-07 01:03:37 +0000 UTC人類は、日本人はいったいどこを目指しているのか… 一見それ必要?って疑う技術であったとしてもその技術をうまく活用して生活レベルにまで落とし込む日本の変態技術力はこの世界においても発揮されてるみたいですねw 最後のは接触している相手を状態変化でも起こすのかな? 後編がとても気になります!
ミズチェチェ
2021-08-06 23:47:28 +0000 UTC