感覚共有魔法 カゴノヒト side ①
Added 2021-10-03 13:54:02 +0000 UTC■ 感覚共有魔法という、本来は味方同士の連携を高めるための魔法。それを悪用し、冒険者を狩るサキュバス――の話に出てきた冒険者パーティ・カゴノヒトsideのお話です。
■ もっとも、正確にいうなら、その中の『ヒトウマ』拘束の話です。カゴノヒトでは感覚共有魔法を正しく?活用していますーw-ウム
■ カゴノヒトシリーズの番外編的な位置づけです。カゴノヒトシリーズを知っていなくても読めると思いますが、読んでいるとよりいっそう楽しめます。
■ 『サキュバス side』は全体公開しています。『カゴノヒト side』(①以降)は支援者様限定公開となります。ご了承ください。
■ この作品には拘束・連結・ヒトウマ描写などが含まれます。苦手な人は回避をお願いします。
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「「あたしたちをパーティに入れてください」」
最初、その双子がカゴノヒトにやって来てそう言った時、受付を務めているシャーティは非常に難しい表情をした。
まだ若い女性の双子。鏡写しのようにそっくりな二人は、誰がどう見ても双子だった。
スレンダーな体つきをしており、旅で少しくたびれている様子は窺えたものの、至って健康体で、服もそこまで薄汚れてはいない。
(さてどうしたものかしらねぇ……)
現在のシャーティはラバースーツに手枷、足枷、そして目隠しまでしている姿で、奴隷のような格好となっている。
そんな自分の姿を見て、最初こそ面食らった様子を見せていたものの、躊躇うことなくパーティへの加入を求めてきた双子は、固い決意を感じさせる表情をしていた。
「……つまり、加入希望ってことでいいのかしら?」
「「はい、そうです」」
「冒険者ギルドからうちの話を聞いたの?」
「「いいえ。ギルドでは場所を聞いただけです」」
全く同時に声を発する双子。
その気の合う様子もさることながら、しっかりと手と手を握って離さない様子からも、二人の間に並々ならぬ執着心があることは見て取れた。
生活に困窮しているにしては身綺麗で、見た目の年齢からすればまだ親の庇護を受けていてもおかしくない。
だが、双子という特殊な背景を持っていることが明らかな二人の存在は、間違いなく厄介ごとの類であった。
(カゴノヒトの噂を他所で聞いてこの街に来たってことよね……でも……)
シャーティはここで追い返すべきか、正直かなり迷った。
この街――トワノでは双子という存在に対してそう大きな忌避感はない。
だが、場所によっては厄災の元だの、獣腹で縁起が悪いだの、あまりいい扱いをされないことも多いものだ。
シャーティ自身にはそういう差別意識はないが、双子が所属しているということがパーティのマイナスイメージに繋がる可能性もないとは言い切れない。
迷った挙句にシャーティが出した答えは。
「わかったわ。パーティリーダー……カゴメさんに紹介するから、付いてきて」
受付という立場を弁えて、リーダーに判断を委ねることだった。
カゴノヒトは特殊な立場の冒険者パーティなので、近づく者に関しては冒険者ギルドが鋭く目を光らせている。
この双子が何もされないままここに辿り着けているという時点で、ギルドは彼女たちを問題なしと判断したということだ。
ならばあとはカゴメが決めることである。
双子が喜んでいる気配を背後に感じつつ、シャーティは恐らくこの二人は加入することになるだろうと確信していた。
(この子たちも運がいいんだか悪いんだか……)
カゴノヒトであるリーダーである、トワノカゴメ。
彼女は『拘束度合いによって強力な加護を与える拘束具を生み出す』という破格の加護を持つ異世界転移者だ。
その彼女は最近、新たな種類の拘束具のアイデアを試していた。
そのアイデアとは『セット拘束』、あるいは『連縛』というべきもの。
つまり、『複数人で一つの拘束を施す』アイデアだった。
かつて、カゴメは街を火山龍の脅威から守るため、その加護の力を用いて自身に厳重な拘束を施した。
その結果、街は火山龍の脅威から守られたが、カゴメ自身はその場から動けないほどに拘束されてしまった。
その拘束は現在も解けておらず、カゴメ本人の体は拠点の中にない。
だが、それで彼女が外界との交流が全く出来なくなったかといえばそうではない。
全身余すことなく拘束されながらも、彼女に施された拘束具の中には、『外界と交流することが出来る』加護を持つ物があったためだ。
拠点の応接室に置かれている、四角い額縁のようなもの。
カゴメがいうところの『モバイルモニター』に、その姿が映し出されていた。
彼女の元居た世界では双方向の映像通信というものが当たり前に存在したが、それを加護の力で行っているようなものである。
モニターにバストアップで映し出されているカゴメは、とても友好的な笑みを浮かべていた。
『ファリンさんとファレンさんですね。私がパーティリーダーのカゴメです。よろしくお願いしますね』
この世界にモニターというものはほとんど存在していないので、双子のファリンとファレンは奇異なものを見る目で画面をみていた。
そういった類の視線を向けられることに慣れているカゴメは、気にせずに話を先に進める。
『お二人はパーティに加入したいとのことでしたが……このパーティではそこにいらっしゃるシャーティさんが身に着けていらっしゃるような、特殊な衣装を身に着けていただくことになっています。御覧の通り、少し変わった服装ではありますが……それが許容できるのであれば、それ以外にこれという条件はありません』
あまりに緩い条件に、双子はきょとんとした顔で首を傾げる。
「「……本当に? 魔力とか武力とか、交渉力とか……何も求めないの?」」
一言一句違わぬ協調性で口を開く双子。
その動作があまりにも揃い過ぎている様子は、よくわからない者からすれば確かに異質に感じるのだろう。
だが元々双子に対する差別意識の少ない社会から来たカゴメは、双子だからといって特に気にすることはなかった。
『ええ。私の作る装備をつければある程度能力の底上げはできますし……それに、お二方はそうでなくともかなり優秀な加護をお持ちですしね』
何気なくそう指摘するカゴメに、双子がぴくりと反応する。
「「……あたしたちが加護持ちだって、なんでわかるの?」」
『私の視界は、普段は拘束されているので全く見えません。それを代償にして、時間は限られていますが普通は見えないものを見ることが出来るんです』
「あたしの目隠しにも、制限も能力も緩いけど似たような力があるわ。見えたから、聞いておきたいのだけど……ポルタス家って、あの商家のポルタスよね?」
その家名をシャーティが口にすると、ファリンとファレンの双子は体を固くした。
彼女たちは名前しか告げていなかったからだ。
「まあこの拘束具がなくても、食うに困った農民にしてはやけに小綺麗だし、お金もそこそこ持ってるみたいだし、なんとなくその辺の立場かなとは推測できるけどね」
『さすがはシャーティさんですね。観察眼が素晴らしいです』
手放しで褒めるカゴメ。
シャーティは少し照れながらも、双子に改めて尋ねる。
「双子であることからして大体の事情は察するけれど、問題ごとは出来れば避けたいのよね」
「「……犯罪行為はしていません。火山龍の騒動はご存じでしょう。あれの影響で経営が悪化してしまいまして」」
双子はしっかりとお互いの手を握りしめながらいう。
「「あたしたちが引き離されそうになったから逃げて来たんです。お金も自分たちが稼いだもので、親のお金を盗んではいません」」
『あ、大丈夫ですよ。そういったことも私はわかりますから』
さらりと犯罪歴がわかると言ったカゴメ。
そのすべてを見通すような情報力に、双子は自分たちの言葉を信じてもらえて安堵しつつも、戦慄していた。
双子の様子を置いて、カゴメはしみじみと呟く。
『姉妹愛……素晴らしいものです。お二人の持つ加護もそれにふさわしいものですね』
「感覚および感情共有の加護、ねぇ……二人が『二人でひとつ』みたいな感じなのはこれが影響しているのかしら?」
「「加護の影響じゃありません」」
シャーティの指摘に、双子は毅然とした口調でそう断言した。
「「幼い頃から、あたしたちはずっと一緒にいたかったんです。加護が生じたのは、それを世界が祝福してくれたのだと思います」」
あくまでも二人が一緒にいたかったから加護が生まれたのだと。
加護があるから一緒にいたいわけではない、と。
双子は固く信じている様子だった。
『加護を得るパターンには、そう言ったパターンもあるんですね』
カゴメはしみじみと感動していたが、シャーティは少し苦笑気味だった。
「うーん。鶏が先か、卵が先か、って話のような気もするけど……まあ別にどっちでもいいわ。二人がそう思いたい方を選べばいいし。いずれにしても感覚共有魔法のようなことが素で出来るなら、それだけでもとても有用なのだけどね」
シャーティのその発言に対し、双子がぴくりと反応する。
「「それについて、一つだけお願いがあるのですが」」
「言わなくても大丈夫よ。別々に行動するのは嫌ってことでしょ?」
溜息を吐きつつ、シャーティは双子の言葉を先回りして言う。
双子はこくりと頷いた。
「「あたしたちは離れたくないから、家を出たんです。それが叶わないのであれば、ここに所属する意味はありません」」
その言葉に嘘偽りが一切ないことを示すように、二人はお互いの手をしっかり握って離そうとしなかった。
依存としか思えない執着の強さだが、双子に迷いは一切感じられない。
「あなたたちの加護は離れてこそ意味があるものだと思うけどね……まあ、その辺の判断はリーダーに任せるわ」
そういって話を振られたカゴメは、優しい笑顔で頷く。
『大丈夫ですよ。お二人には常に一緒に行動してくださって構いません。いえ……むしろ、離れてもらっては困ります』
自分たちの要求が通りそうなことに喜びかけた双子だったが、カゴメの言い分に若干の不安を覚えた。
そんな双子を安心させるように、カゴメはその提案を口にする。
カゴメはあくまで楽しそうな口ぶりだった。新しいタイプの拘束具を試せることを喜んでいる。
『お二人には私が生み出す特別な装備品の中でも、さらに特別な――連結型拘束具を身に着けていただこうと思います』
「「連結型……拘束具?」」
双子が聴いたことのない単語をオウム返しに口にする。
カゴメはあくまで楽しそうだ。
『はい。複数人……といっても今のところはまだ二人一組が最大ですが、複数人を一つの形に拘束するタイプの拘束具です。……口で説明するより、見た方が早いでしょう。厩舎に行きましょうか』
そういって、カゴメは自分の映っているモニターをファリンとファレンに持たせ、厩舎へと連れていく。
双子はそこで、信じられない光景を目の当たりにすることになった。
厩舎の中には――人間が二人組み合わさって出来た『馬』がいたのだ。
テカテカと怪しく光るラバースーツを身に纏った二人の女性。
そのうち一人は直立し、その背後からもう一人別の女性がその腰にしがみつくようにして一体化している。
それは形だけ見ればケンタウロスという、人と馬が合体したかのような種族の姿だ。
しかしよくよくみれば別々の二人の人間が、特別な拘束具によって一つに成っている姿ということは明らかだった。
そんな、ともすれば異様で異常な光景を目の当たりにした双子は――
「「……す、素晴らしいです」」
その瞳を少年のようにキラキラと輝かせて、憧れの眼差しを『馬』に向けていた。
『ふふふ……お二人なら、そういってくださると思っていました!』
二人の反応を見て、カゴメはとても嬉しそうにその表情を緩ませていた。
『私はヒトウマ拘束と呼んでいます。ケンタウロス拘束……というのも考えたのですが、ここでは実在の種族ですから失礼に当たってしまってはいけませんから』
カゴメがヒトウマとなっている二人に、軽く動いて見せるように頼む。
それに応じた『馬』は、かぽかぽと軽く動き回って見せた。
狭い空間内の動きではあったが、そこに無理矢理二人を繋ぎ合わせているようなぎこちなさはなく、ひとつの生命体のようにちゃんと連携して動いていた。
「「一見すると非常に動きづらいように見えますが……実によどみのない動きですね」」
『加護の力である程度補助はされますが……二人の息が合っているかどうかは、とても重要です』
そもそも密着して行動しなければならない関係上、相性の悪い者同士では長時間の装着は難しい。
その点、常に二人でいたいという願いを持っている双子であるならば、全く問題がない。
『装着していただく拘束具について、細かく説明を聞いてから決めていただいても構わないのですが……それは野暮、というものですね』
カゴメは嬉しそうにそう言った。
ヒトウマ拘束を見た双子は、その顔を喜びに輝かせていたからだ。
つづく
Comments
この場合のモバイルモニターは、持ち運びが可能なだけの、ただのタブレット型モニターですね。 普段は壁掛けテレビみたいに壁にかけておいてあります。本人の感情がそのまま映っちゃうので絶頂の時のイキ顔も容赦なく映りますw 必要ない時は部屋自体封鎖して見えないようにしていますね。
夜空さくら
2021-10-07 13:33:25 +0000 UTC>モバイルモニター あれはただの持ち運び可能なモニターか、それともAmazon Astro Home Robotみたいな自力移動できるロボットに搭載しているモニターですか?
c933103
2021-10-07 06:27:38 +0000 UTC類は友を呼ぶとはまさにこのことーw-ウム 双子のヒトウマ、色々な意味で相性バッチリですからね! 自前の加護も合わせて、最強のヒトウマが誕生します0w0クワッ ファリンとファレンが現実世界に来たら、確かにそういうプレイを好んでやってそうですね^w^
夜空さくら
2021-10-03 14:25:57 +0000 UTCああ、まあ、うん。 流石カゴノヒトの元にやってくるだけのことはありますね。 当人たちにとって救いになるのであれば常識なんて彼方に飛んでいくもんですもんね~。 双子のヒトウマ、めっちゃ息ぴったりだろうし、感覚共有まで自然と加護でついているとなると… 制限と加護の内容次第ではめっちゃお楽しみいただけちゃうのでは?色んな意味でw 現代世界の方のプレイだけど、二人一組の箱詰めプレイのやつとか、めっちゃ好きになりそうですね~
ミズチェチェ
2021-10-03 14:09:52 +0000 UTC