記者、ヒトイヌ拘束を施される 田中照正side①
Added 2021-11-05 14:03:03 +0000 UTC■ あらすじ:知る人ぞ知るヒトイヌ拘束が気軽に楽しめる有料公園『ヒトイヌ公園』。資産家による惜しみのない投資で成り立つその公園に、後ろ暗い裏があると睨んだ女記者・笛吹ちぐさ。後輩カメラマン・田中照正を連れて公園を訪れた彼女だったが、高額な一般入場料に手が出なかった。そこで彼女は自らヒトイヌとなり、照正をパートナーとして、公園内に侵入し、特ダネを掴もうとするのだが……。
■ 『ヒトイヌ公園』シリーズです。単体で読んでも、一応問題はないように書いています。なし崩しにヒトイヌになった彼女を待ち受ける、数々の試練をお楽しみください^w^ 笛吹ちぐさは無事特ダネを掴めるのか。それともヒトイヌ公園に飲み込まれてしまうのか! きっと今回もハッピーエンドですーw-ウム
■ 笛吹ちぐさsideは支援者様向けに公開、田中照正sideは全体向けに公開します。片方だけ読んでも楽しめるようになっています。
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この僕――田中照正は、まだまだ半人前のカメラマンだ。
教育係の笛吹ちぐさ先輩からは「慎重なのはあんたの美徳だけど、この業界でぐずぐずしてたらスクープを撮り逃すのよ!」と度々叱責されている。
事前に下調べを入念にする僕のスタイルが功を奏した時もあるから、そこは評価してもらえていると思いたい。
ただ、笛吹先輩の勘が外れたことはあまりなく、生き馬の目を抜くようなこの業界では、僕よりも笛吹先輩の方が遥かに多くのスクープを手にしている。
だから今回の『ヒトイヌ公園』への潜入も、きっと想定以上の成果が得られるはずだという確信があった。
笛吹先輩は口より先に手が出ることが多い、アグレッシブな体育会系の人である。
だからのんびり気質の僕とは、本来あまり相性がいいとはいえない。
けれど僕は、笛吹先輩のことをとても尊敬していた。
なんだかんだ面倒見はいいし、僕のノロい動きにもツッコミを入れつつ、ちゃんと正しい方向に引っ張っていってくれる。
ちょっと乱暴なところも、こっちのことを思ってのことだとわかるから腹も立たないし、なるべくそれに従った方がいいということもわかっている。
それに笛吹先輩は被写体として、とても優れていた。
下手なモデルやアイドルを撮るくらいなら、笛吹先輩を撮った方がよほど絵になる。
引き締まった手足といい、女性らしい丸みを帯びた体つきといい、とにかく完成度が高い。
顔立ちは前のめりな性格もあって少しキツめだけど、百人に訊けば百人が美人だと評価するはずだ。
そんな笛吹先輩と、先輩後輩の関係であっても行動を共に出来るというのは、純粋に嬉しい。
先輩はとにかく特ダネ優先の人なので、取材とあれば取れる手段は全て取る人だ。
だから、恋人同士でしか入れない場所に潜入するときに、二人が恋人関係であると偽証することは当たり前だった。
先輩のことを憎からず想っている僕としては複雑な気持ちになることではあるけれど、フリとはいえ先輩と恋人関係になれるのは嬉しくもあった。
そんな先輩は常々僕に恋人や好きな人がいないかどうかを確かめてくれていた。
もしそういう存在が出来たらいつでも『そういうこと』はやめる、と言ってくれていたのだ。
特ダネ優先の先輩だけど、人として最低限守らなければならない倫理観は守る人だ。そういうところも僕が好ましく思うところだ。
とはいえ、まさか『先輩のことが好きだ』と先輩本人にいうわけにもいかない上に、本人にそういうことを問われるということは、先輩からは全く何とも思われていないということがわかってしまうことだった。
そういう意味で辛い状況ではあったのだけど、それを差し引いても先輩と恋人ごっこが出来ることを密かに喜ばしく思っていた。
それがまさか、ヒトイヌとそのパートナーに扮することになろうとは。
さほど特殊な性癖をしていなくても、ある程度健康な男子であれば、夜のオカズを捜すときに一度は目にすることがあるだろう。
ガチガチに拘束され、主に従うことしか出来なくさせられる哀れな女性。
その見た目のインパクトは凄まじい物がある。
僕も特にSM関連のことに興味があったわけではなかったのに、いつの間にかそれを目にして知識としては知っていた。
すごいエッチな格好で、変態的なプレイだと思ったものだ。
ただ、フィクションの中だからこそ成り立つものだろうと考えていたこともあって、それを好き好んで自らやりたがる人がいるとは思えなかった。
鞭打ちや蝋燭責めといった、いかにも『痛そう』なハードSMと同じで、あくまでAV映像の中の演技としてやっているものだと思っていた。
だから確かに、ヒトイヌ公園という存在が成り立っていることに疑念は感じる。そこは先輩と同じ意見だ。
資産家たちの欲望を満足させるため、財力や権力に物を言わせて作った施設、と考えた方がよほど自然だろう。
もしも違法な運営をしている証拠を掴むことが出来れば、その資産家たちの醜聞にも繋がるわけで、特ダネになることは間違いない。
だから先輩が何が何でも潜入しようとする気持ちは、わからないわけではないのだけど。
そんな僕たちの前に、入場料という障害が立ち塞がった。
ヒトイヌ公園に入場する方法は三つあり、「一般入場」、「パートナー入場」、そして「ヒトイヌ入場」だ。
最初先輩は「一般入場」でいくつもりだったらしい。それなら何の問題もなかった。
しかし冷やかし防止か、そもそも「一般」と言いつつそれなりの資産家であることが前提なのか、その入場料は法外な高額だった。
さすがの先輩もそんな法外な入場料を二人分支払うことはできず、先輩は自分からヒトイヌになることで、入場料を手の届く範囲にした。
憧れの人が目の前でヒトイヌになるという――僕としてはさらに複雑な気持ちにさせられる状態になった。
受付で笛吹先輩が誓約書を書くのを待ちながら、僕は何気なく周囲を見渡していた。
高級ホテルのエントランスみたいな、広くて綺麗なロビーだ。
(この建物自体大きいけど……本当にすごい広い公園だよなぁ……)
細かい面積が書かれていたわけではないけれど、地図で見ればそれがどれくらいの広さになっているかは大体わかる。
その広さは、おおよそ東京ドーム三個分もあった。
端から端まで歩くのも大変そうだ。
普通の公園ならともかく、ヒトイヌ公園なんて言う特異な公園が有するにしては広すぎる敷地だろう。
(いくらさほど大きな都市じゃないとはいえ……極端に田舎、ってわけでもないのになぁ)
こんな広さの公園を全て管理しているのかと思うと、気が遠くなる。
比較的高い壁が周囲の視線を遮っているとはいえ、すぐ近くには住宅街もあるのだ。
そんなところでヒトイヌ公園を運営するには、相当な苦労もあるだろうに。
公園の運営費は、資産家たちのポケットマネーで賄われている部分が多いだろう。
でなければ、ここまでの規模の施設を維持できるはずもない。
一般入場者が数千もいれば賄えるかもしれないけど、どう見てもそんな盛況ではないし、ヒトイヌやパートナーとして入場する人が多いのなら、とても利益など上げられないはずだ。
先輩がこの公園にきな臭いものを感じるのも無理はない。
とはいえ、今のところ怪しい感じはしない。
受付の人も特に不自然な点はなく、普通に案内してくれている。
(色々見ておかないと……不自然な点がないかどうか……)
そう思って怪しまれない程度に観察していると、カウンターの上に置かれた地図に気付いた。
施設名やそこへの道順などが網羅されているようだ。
ところどころデフォルメされていて、いかにもテーマパークの地図、といった感じだけど、その規模感はハッキリと伝わって来た。
(この広さを、ヒトイヌで移動するって言うんだからなぁ……一応移動手段は色々あるみたいだけど)
下調べをした時には映像がなかったので事実かわからなかったけど、その情報通り公園の地下にはトロッコの線路が走っているらしい。
ヒトイヌはそれに乗って、公園内を自由に移動することが可能なようだ。
パートナーがいる場合は、キャスター付きのケージに入って運んでもらうことも出来る。
そこまでしてヒトイヌ状態での移動に拘らなくても、その場に移動してから着替えてもいいと思うのだけど。
僕がそんな風に思っていると、隅から隅まで契約文を確認していた先輩が、ようやくサインをする。
万が一、入場者が不利になるような条文が書かれていないか警戒していたのだ。
猪突猛進なところがある先輩でも、最低限の危機感や警戒感は持ち合わせてくれているので、僕は安心して従うことが出来る。
「大丈夫そうね。あなたもちゃんと読むのよ」
先輩からペンと契約書を渡してもらった。
「わかりました」
僕もざっと目を通したが、特に問題はなさそうだ。
問題になりそうなのは「公園内での出来事に関する守秘義務」を負うことくらいだけど、これはまあ普通の利用者がいるなら妥当だから文句は言えない。
あとは「他の利用者と公園外での接触禁止」というのも気になる。公園内でのことを外に持ち出すのが禁止というのは、理屈としてわからないことではない。
純粋にこの公園を利用している者が、ここでのことをちらつかされて脅される可能性もあるからだ。
とはいえ、逆の方向で疑っている僕たちとしては、怪しさを感じる禁止事項である。
(ここで交流して仲良くなって、あとで連絡して……ってことは出来なさそうだな……)
ともあれ、いまは実際に潜入してみることが第一だ。
ゆえに、僕も手早く契約書にサインをした。
受付の人にそれを渡すと、その人はすぐに更衣室に案内してくれた。
更衣室にはたくさんのロッカーが並んでいた。
更衣室を使用するのは一組ずつらしく、他の利用者の姿はなかった。
(まあ、いたら僕が一緒には来れないよねぇ)
一応先輩に着替えの場に僕がいてもいいのか確認すると、声を殺した先輩に怒られてしまった。
恋人設定なのだから、着替え程度でうろたえるのはおかしい、とのことだ。
確かにそれはそうなのだけど、少なからず先輩のことを想っている僕としては、先輩の着替えを見られることに多少なりとも興奮せざるを得ない。
その気持ちを落ち着けるため、僕はカメラを構えて先輩を見た。
カメラマンは目の前でどんなことがあってもカメラを揺らしてはいけない――カメラマンの先輩に教え込まれた鉄則を思い出し、心を静める。
改めて先輩の体をファインダー越しに見つめた。
先輩は、背が高めの僕と比べるとかなり小柄だ。女性としては平均的な身長だと思うけれど、いわゆるモデルとかそういう人ほど高くはない。
ただ、美人記者として有名なだけはあって、凄く大人っぽい雰囲気を持っていた。
その磨き抜かれた顔立ちと引き締められた体つき。
あまり気にするとセクハラになりかねないので普段は意識しないようにしているけれど、胸の膨らみはかなり立派な方だ。
安産型というか、いかにも健康そうな体つきで、非常にバランスが取れている。
先輩は肩に届くくらいの髪を、手早く軽くまとめていた。
少し顔つきがきついところはあるけれど、そこも含めて先輩のいいところだと思う。
そんな先輩が、いまからラバースーツに身を包み、ヒトイヌになる。
僕はなんだか目の前の光景が信じられない心持ちだった。
(どっちかというと……普段は僕の方が犬っぽいんだけどねぇ)
先輩のぐいぐい行く性質もあって、ぐずぐずしがちな僕を先輩が叩いて急かすことも多い。
どうしてもリーダー気質というか、指示が命令調であることも多い。
今回のことだって、半ば強引に流されたようなものだし。
(まあ、先輩に命令されるのは苦じゃないから、いいんだけどね……)
つい言うことを聞きたくなってしまう僕こそ、本当は犬側が向いているのだろう。
あるいは先輩もそう考えていたかもしれない。
ただ、先輩はカメラ音痴なので、きっとカメラを担当する僕をヒトイヌには出来なかったのだ。
(そういう理由はわかるけれど……)
恋人設定で動き回ることが多い僕たちだけど、設定は設定でしかなく、僕と先輩は『その手のこと』をしたことはない。
普段の僕らは男女関係ではなく、あくまで先輩と後輩の間柄だからだ。
水着姿や下着姿までは見たことがあるけれど、裸となると僕も見たことがない。
カメラを構えていなければ、きっと興奮と動揺で手が震えていたと思う。
そんな僕の前で、先輩はその服を脱ぎ出した。
笛吹先輩の裸は、想像していた通りに――あるいはそれ以上に――綺麗だった。
モデルのような、触れたら壊れそうな美しさではなく、しっかりとした生命力を感じさせる美しさ。
ぶっちゃけ僕の好みドンピシャだ。
何より普段堂々としている先輩が、頬を赤く染めて恥じらっている姿が大変すばらしい。
表面上は堂々としようとしているのが伝わって来て、なんとも愛おしく感じる。
(………………可愛いな)
普段先輩相手にあまり思わないことを自然と思っていた。
思わずシャッターを切ってしまったのも、仕方ないことだろう。
先輩からは「着替えは撮らなくていいから」と恨めしそうに睨まれてしまった。
咄嗟に体を隠そうとしてやめたのが見ている側からもわかって、余計に先輩をいじらしく愛おしく感じる。
全裸になった先輩の姿は、きっちり写真に収めた。
後で殴られるかもしれないけれど、こんな素晴らしい被写体を写真に収めないなんて、カメラマンの端くれとして許せなかった。
それと同時に――男としての自分が興奮していることも、股間の感覚で理解していた。
今日はいつものスーツじゃなくて、硬いジーンズにしておいてよかった。盛り上がっていることを悟られたくはない。
(ふー……冷静に、冷静に……)
僕が深呼吸して気を落ち着けている間に、裸になった笛吹先輩は、次の段階へと進んでいた。
「それでは、まずはラバースーツから着ていただきます」
職員の人がそういって示したのは、黒くて妖しげな艶を放つラバースーツだった。
手足の先が完全に丸まっている。
指が分かれていないから、それを着るだけで指の自由が奪われてしまうだろう。
いよいよ、笛吹先輩がヒトイヌになっていくのだ。
つづく