ヒトトラ披露会 前編
Added 2022-01-07 13:41:56 +0000 UTC■ あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。
■ ちょっと遅くなりましたが、新年最初の作品は、寅年らしく『虎』をテーマに書いてみました。その結果がヒトトラなので、今年も私は変わらない模様です。
■ 久々の『藤原宮子の羞恥なおしごと』シリーズ(https://www.pixiv.net/novel/series/1089343)の続編となります!
■ 全体公開で、前・中・後編で展開する予定です。今年も早速彼女は羞恥な目に遭います。まあ、いつものことですねーw-ウム
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鎖で繋がれた手枷と足枷が、彼女が動く度に音を立てる。
彼女の四本の手足それぞれに着けられた枷は非常に重く、四つん這いで歩くことを余儀なくされていた。
「フーッ……フーッ……フーッ……」
一般平均的な体力や腕力しか持たない彼女にとって、その枷を取り付けられての移動は相当にしんどい行為であるらしく、荒い呼吸を繰り返していた。
ポタポタッ、と枷を噛まされた彼女の口から涎が垂れ落ちる。
そう、彼女の口には枷が噛まされていた。横向きの棒を咥えさせられ、それを固定するためのベルトが彼女の頬を真横に広げている。
さらに彼女の顔にはマスクが施されていた。
それもただの布で出来たマスクではなく、枷を咥えた状態で口が開けないように顎を固定する、金属で出来たフレームのようなマスクだ。
しかもそのフレームは彼女の顔に厳密に沿っておらず、少し変わった形をしている。顎を開かせないための実務的な構造の他に、明らかに無駄な膨らみを作っている部分があった。
それは少し引きで彼女の姿を見れば、何の形を模しているのかは明白だった。
彼女の頭部にはあと一つ、普通は装着されていない道具が装着されていた。
それは耳当て付きの、動物の耳を模した耳飾りだ。犬耳や猫耳が良く見られる。
ただし彼女が身に着けている耳飾りは、通常の犬耳や猫耳と少し違い、全体的に丸みを帯びたものだ。
それについている耳当ては、本来の彼女の耳を完全に覆い隠しており、彼女をその動物の姿に近づけていた。
そう、マスクの形状もその動物を模したものなのである。
彼女をその動物に近づけるための工夫は、髄所に施されていた。
四つん這いとなるようにされている手枷と足枷もそうだ。
それらの枷は彼女の手首と足首辺りに嵌められているのだが、そこから先の、手足の先端は、肉球グローブのようなもので覆われており、手足の指が使えないようになっていた。ミトン状に手先を丸めるようになっており、彼女が自分で枷を外すことは不可能だろう。
さらに膝には地面にこすり付けても痛くないようにサポーターが巻かれているのだが、そのサポーターは彼女が四つん這いしか出来ないように曲げられる角度が調整されている。
手枷の重みも相成って、彼女は立つことも座ることも出来ず、四つん這いで歩くことしか出来なかった。
そんな彼女の体は、光沢のあるスーツで覆われている。
柄こそあるが、そのスーツは彼女の体にぴったり張り付いており、彼女自身の体のラインをほぼそのままハッキリと見せてしまっていた。
大ぶりな彼女の胸も形を整えながら露わにしているため、ある意味では裸より恥ずかしい格好かもしれない。彼女がそれを好んで着ているわけではないことを表すように、彼女の顔は羞恥で真っ赤に染まっていた。
そして極めつけに。
彼女のお尻――肛門および尾てい骨のあたりからは、少し太くて長めの尻尾が生えていた。もちろん彼女は人間のため、本人の身体から生えているものではない。
アナルプラグに尻尾飾りが装着されているのである。尻尾飾りにはちゃんと動く機能がついているのか、彼女が歩を進める度に上下左右に揺れていた。
その尻尾にも刻まれた縞々模様の柄は、彼女の扮する動物を端的に表している。
そんな彼女を先導しているのは、同じような柄のスーツを着ている妖艶な女性だ。
四つん這いになっている彼女の首には縄が巻かれており、その端をその女性がリード代わりに握っている。
「さ、宮子ちゃん。皆様にご挨拶しましょうね」
女性は優しく呼びかけながら、縄を引いて四つん這いの彼女を誘導する。
藤原宮子は――ヒトトラとして、店の中を歩かされていた。
藤原宮子は、ある会員制の特別なお店でバイトをしていた。
その店はいわゆるSMバーに近い性質を持つ店で、店員である女の子たちが少し――いや、かなりエッチな格好で給仕をしたり、話し相手になったり、イベントを行ったりしている店だ。
そんな店で、藤原宮子は働いている。
元々は友人の紹介で、一時的な雇用になるはずだったが、彼女の初々しさや反応が客層に好まれるものだったため、継続して雇われることになったのだ。
彼女と彼女をこの店に紹介した友人である天城美里は、共にイベントなどで主役を張ることも多い人気キャストであった。
そんな彼女に、そのオファーが来るのは当然のことだったのかもしれない。
店では寅年記念として、ヒトイヌならぬヒトトラを愛でるイベントを行うことになっていた。
そのメインのヒトトラに、宮子は抜擢されたのである。
わたしはもうこの店で働くようになって、結構な時間を過ごしていた。
全身スーツイベントに始まり、ヒトネコプレイだの、トリップだのライフだの……とにかく様々なことをしてきた。
色んな人に色んな姿を見られて、少しは慣れて来たかといえば全然そんなことはなく、いつもわたしは恥ずかしい思いをしていた。
それがまたいいという話はお店のママさんから聞いてはいたけれど、正直理解できる時は来そうにない。
そんなお店の制服は基本がラバースーツで、わたしはよくそこに色々な装飾品などを身に着けてヒトネコになることが多かった。
だからこそ、わたしにその話が回って来たという理解は出来る。出来るけれど。
「寅年だから虎柄のスーツにするって……」
安直なのではないか、という言葉は辛うじて呑み込んだ。
飲み込んだとはいえ、ママさんには何を言おうとしたのか伝わってしまったらしく、ママさんは少し不服そうに唇を尖らせる。
「こういうのは、わかりやすいのがいいんじゃない。それに、いつものスーツにこれだけハッキリとした柄を付けるのは、結構な技術革新なのよ?」
そういうママさんは現在、いつものぴっちりスーツが虎柄になっていた。
いつもは裸と見間違う姿なのだけど、いまはさすがに何かを着ていることがよくわかる姿だ。
ママさんの気品の高さや威風堂々とした態度は、虎というよりはライオンとかそっち方向の方が似合うような気がする。
それでも虎柄にしているのは、寅年の新春企画としての意味合いが強いのだろう。
「つまり、要するに……いつものプレイを、その虎柄のスーツを着てするってことですよね?」
プレイというか仕事なのだけど。
「ええ。私はこのスーツだけだけど、宮子ちゃんにはこっちの、いつもの道具の虎バージョンも身に着けてもらうわ」
そういってママさんが示した台の上には、わたしがいつも身に着けているものとよく似た、しかし虎バージョンというに相応しい形状や柄の変更がされたものが並んでいた。
猫耳はいつもの三角形でピンと先端の尖ったものではなく、どこか丸みを帯びていて虎っぽさが増しているものだった。
尻尾飾りも虎柄に整えられている。
肉球を模したグローブやブーツも、ちゃんと虎仕様に変わっている。普段の猫グローブより、若干爪の装飾が目立っていた。材質自体は体に引っ掛けて怪我をしないように柔らかいものだったけれど、本物ならざっくりと頬くらいは裂いてしまいそうな長さだ。
いかにも虎に寄せようとしている様子が、並べられた道具からも見て取れる。
ただ、それ以外の道具も並んでいることに、わたしは一抹の不安を覚えた。
「あの、そのいかにもごつい枷はなんですか……?」
そういって私が尋ねたのは、やたらと大きな四つの枷についてだ。
いかにも重そうな鉄の枷は、内側に柔らかそうな布張りが張られているわけでもなく、かなり無骨な存在だった。
そんなわたしの疑問を聞き、ママさんはなぜか微妙に言いにくそうな様子で口を開く。
「ああ、これはね……今回のイベントのコンセプトが、『囚われた虎』だからなの」
一瞬、その場の空気が凍る。とんでもないギャグだ。滑っても仕方ない。
そんな風に思ってしまった私に、ママさんが必死に弁明してきた。
「違うのよ! 決して、ダジャレのつもりで言ったんじゃなくて……っ、本当に結構適当に考えてこれでいこうと思って告知をだしたら、後からダジャレになっていることに気付いちゃったの!」
必死に弁明するママさん、まあ、その気持ちもわからなくはない。
「大丈夫です、別に、気にしてるわけじゃないですから……」
実際何とも凄いコンセプトだとは思ったけれど、別にだからと言ってどうということはない。
ママさんは気を取り直した様子で、こほんと咳ばらいを一つ。
「捕まった虎、がコンセプトだから、その枷を付けて行動して貰うわ。そして、貴女たちは『ハンターに捕らえられ、見世物になってしまった哀れな虎』……っていう設定だから、今回はステージの上で見られるだけじゃなくて、各テーブルを回ってもらうことになるわね」
今回はそういうタイプのイベントらしい。
皆に一度に注目されることがなくて安心なような、じっくり見られることになるので恥ずかしいような、そんな複雑な気持ちになった。
「もちろん、お客様からのお触りはいつも通り厳禁だから、安心してちょうだい」
「……美里とは絡むことになる、とは言いませんよね?」
以前ヒトネコとしてステージに上がったときは、美里とじゃれ合うことになり、性的な意味で悪戯されてしまう羽目になった。
その時のことを思い返しながらママさんを見ると、ママさんはわたしを安心させるように微笑むのだった。
「安心してちょうだい。今回、美里ちゃんと宮子ちゃんは別々のシフトだから。新年だから予約が結構いっぱいでね……全部に二人同時に出てもらうと、はっきり言ってオーバーワークなのよ」
そう言われて、わたしは首を傾げた。
「虎になるのは、わたしたちだけなんですか?」
「だって二人が一番人気なんだもの。給仕としてなら、他の子も人気なんだけど、ヒトネコ系統のイベントになると、明らかに貴女たちふたりの人気が異様なのよね……」
ママさんはなんとも悩まし気な顔でそう言った。
しかしそうなると、わたしと美里は別々になるわけだ。
こんなことをいうと美里を無暗に喜ばせてしまいそうだけど、彼女がいないというのは少し不安材料だった。
なにせ最近はセットで扱われるようなシーンが多く、別々のシフトになること自体稀なことだった。
(視線がわたし一人に集中するってことでもあるし……大丈夫かしら)
そんなわたしの不安を知ってか知らずか、ママさんは軽い調子で続ける。
「場合によってはちょっとした芸もしてもらうことになるかもしれないから、一応覚えておいてね」
簡単な、その場で出来る内容にする予定だから安心してね、とママさんは微笑む。
わたしは一人でイベントを回すことになる不安の方が大きくて、ついそのことをスルーしてしまった。
ここでもう少し『芸』の内容を突っ込んで聞いていれば、わたしは『あんなこと』にならずに済んだのかもしれない。
だけどそうはならなかった。
わたしは後の祭りという言葉を、改めて実感する羽目になるのだった。
中編につづく