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夜空さくら
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抜け忍を追うくノ一、敗北す。 前編

■ 忍者の里を抜け出した裏切り者を追うくノ一の少女は、OLが襲われているところを助けようとして、抜け忍に捕まってしまう。忍術を駆使した脱出ゲームをさせられることになった彼女は、生きて脱出することが出来るのか。

■ ずっと前にTwitterで募集した御題を元に書いた作品です。前置きが長いーw-; 後編は終始エロエロ展開になる予定ですので、乞うご期待0w0クワッ!

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 その街では、最近とある都市伝説が流行っていた。

 夜な夜な、怪しげなピエロの着ぐるみが街に現れるという、珍妙な噂話だった。

 それに見つかった者はそのピエロに攫われ、次のピエロになって街を彷徨うことになる――という、都市伝説としては割とありがちな話である。

 ただの笑い話かネタ話にしかならないような都市伝説だが、彼女にとってそれは調査すべき対象だった。



 真夜中。

 ほとんどの住民が寝静まった頃。

 民家の屋根の上を、音もなく移動する人影があった。

 人影はまるで風のように家の屋根から屋根に飛び移り、音もなく目的の場所に向けて猛スピードで駆けていく。

 目的の場所が見えるところまで来ると、屋根の凹凸を利用して身を隠した。

(……怪しいピエロがいたっていう場所は、あそこね)

 そう口にした彼女だが、実のところ怪しさでいえば彼女も似たり寄ったりの姿をしていた。

 端的に一言で表すのであれば、くノ一。

 覆面を被り、古き良きデザインの忍者装束に身を包んでいる姿は、どこからどう見てもくノ一だった。

 ポニーテールにした長い髪が風に靡いている。

 彼女は胸の谷間から装束に似合わない文明の利器――スマホを取り出して画面を見る。

 そこにはSNSにアップされた、怪しげなピエロの写真が写っていた。

 不鮮明ではあるが、周囲の様子を見る限り、確かに彼女が見張っている路地である。

(……今度こそ、捕まえてみせるんだから……!)

 そう意気込む彼女には理由があった。

 実は都市伝説になっている怪しげなピエロは、彼女の所属する忍者の里から抜けた者であるのだ。

 いわゆる抜け忍とでもいうべきもので、彼女はそれを捕縛、もしくは抹殺する使命を里から受けていた。

(本来秘匿して世のため人のために使うべき忍術を、自分の欲望を満たすために使うなんてとんでもないわ……! 絶対に今日こそ捕まえるんだから!)

 使命に燃える彼女は、里を抜けて好き勝手に振る舞っている者が許せなかった。

 彼女はじっと待ち構え、着ぐるみピエロがやってくるのを待つ。

 彼女が気配を殺して待っていると、ちょうど見張っている路地を、女性が駆け足で抜けようとしていた。

 OL風のその人物は、この近くに住む人間なのだろうか。仕事が遅くなって仕方なく暗い路地を歩いていると推測された。

 くノ一は嫌な予感を覚える。

(これは……まずいかも……!)

 案の定、女性が路地の中ほどに差し掛かった時、その背後に怪しげな着ぐるみのピエロが現れた。

 音もなく滑るように動き出し、異様な速度で女性への距離を詰めていく。

(まずい――!)

 彼女は咄嗟に飛び出していた。

 苦無を逆手に持ち、一気に距離を詰める。

「え?」

 着ぐるみピエロがすぐ近くまで近づいた時、女性も気付いて足を止めてしまった。

 女性に向けて、何やら棒を振り上げていたピエロ。

 そのままだとピエロが振り下ろした棒が女性の頭を殴りつけるところだったが、辛うじて間に入ったくノ一が苦無でその棒を受け止める。

 ガキンッ、と激しい金属音が路地に響き渡った。

「ひゃぁっ!?」

 その音に驚いたOLの女性がその場で転倒し、尻もちを突く。

「早く立って! 逃げなさい!」

 くノ一は咄嗟にそう呼びかけながら、ピエロに向かって苦無を振るう。

 ピエロはずんぐりむっくりした着ぐるみとは思えないアクロバティックな動きで、その苦無を避けて距離を取る。

(一般人に姿を見られるのはご法度だけど……! いまは緊急事態だから仕方な――)

 ピエロの動きを見逃さないよう、そちらに集中していた彼女は、気付くのが遅れた。

 どこからともなく飛んで来た吹き矢の針が、正確にくノ一の首筋に突き立つ。

「あっ――しまっ……!」

 くノ一は咄嗟に突き立った針を抜いたものの、すでに十分な量の毒が体に回ってしまっていた。

 体の平衡感覚が失われ、地面に倒れるくノ一の前で、着ぐるみピエロがぐしゃりと潰れてしまう。

 中には誰も入っておらず、抜け忍が忍術で動かしているだけの囮だったのだ。

(ふか――く――)

 そのままくノ一の意識は薄れ、気を失ってしまった。



 次にくノ一が目覚めた時、彼女の体は縄で縛られていた。

 手を前にやろうとしても、後ろ手でしっかり縛られていて、縄が軋む音だけが響く。

「……くっ」

 ぼんやりとする意識を何とか奮い立たせ、彼女は状況を把握する。

 彼女は地面に横向きに転がされていた。

 場所はくノ一の記憶にある路地ではなく、どこか倉庫らしき広い屋内空間のようだ。冷たい床が彼女から体温を奪っている。

(捕まってしまった……のね……なんという不覚……!)

 まんまと抜け忍に出し抜かれてしまったことを悔しく思う彼女に、恐る恐る声がかけられる。

「あ、あの……だい、じょうぶ……?」

 声がした方をくノ一が見ると、そこには先ほど助けようとしたOLがいた。

 彼女もまた縄で体を縛られており、なんとか身体は起こしたものの、それ以上はどうしようもならず途方に暮れているようだった。

 くノ一は高い身体能力を活かし、OLと同じく上半身を起こした体勢にはなんとかなる。

「大丈夫、です。少し、くらくらしますが……」

「ええと……何が起きているか、貴女にはわかる?」

「すみません。言えないんです。ただ、守ることが出来ずに、申し訳がありません……としか……」

 忍者が現代の世にも実在しているということは、一般人には言ってはならない。

 そのあやふやな説明でも、OLは納得したようだった。

「とりあえず、自己紹介しましょうか。私は山田花子。ハナって呼んで」

「……? 私は堂縞もみじです」

 妙な違和感を覚えたくノ一・もみじだったが、ひとまずそう名乗った。

 無論偽名ではあるが、元々彼女には本名自体がないようなものなので、今名乗っている名前も本名と言えなくもない。

「もみじちゃんね。可愛い名前ね」

「……ハナさん、落ち着いてますね」

 そう彼女が感じたのも無理はない。

 ハナはくすりと笑って見せるほど、余裕があった。

「正直、どうしようもないからね……慌てても仕方ないし、私が目を覚ましてから結構時間も経ってるから……」

 いくら誘拐されたという衝撃も、何事もないまま時間が過ぎてしまえば多少は和らぐというものである。

 彼女を攫った犯人が目の前にいるなら、また違った反応になったのかもしれないが、すでに一通り慌てるだけの時間は過ごしてしまったというのが、彼女の言い分だった。

(そういう、ものでしょうか……いや、確かに現代人は危機意識の欠如した平和ボケした者が多い、とは教えられましたが……)

 もみじは生まれた時から忍者だったので、普通の感覚にいささか疎いところがあった。

 ある程度忍者として習熟するまでは里の外に出ることも出来ないため、彼女は一般常識を知識でしか知らないのである。

 気を取り直したもみじは、縄抜けが出来ないかを確かめていく。

(縄抜けは……難しそうですね。さすがは相手も忍者というところですか……)

 自力での縄抜けは難しいと感じたもみじは、OLが縛られている縄を確認する。

 しかし縄のように見えたそれは、縄とは別物らしく、結び目も何も存在しなかった。

(ゴムのような……チューブのような……なんといえばいいんでしょう。随分と妙なもので一般人を縛ったものですね)

 だが忍者と同じ場所に閉じ込めるのであれば、そういうもので縛っておくのは妥当であるともいえる。

 忍者の器用さがあれば、人の縄を解くくらいは朝飯前だからだ。

「私にもどうしようもなりそうにないですね……」

 なるような状態に忍者がするわけがない。

 もみじがそう悔し気に歯噛みすると、倉庫の中に声が響いた。

『ふふふ……楽しんでくれているようだな』

「だ、誰っ!?」

 怯えた様子でハナが身を縮ませる。

 もみじは冷静に音の出所を探ったが、残念ながら至る所にあるスピーカーから流しているだけで、本人がこの場にいるわけではないようだった。

『さて、キミたちにはチャンスをあげよう。上手く逃げ出すことが出来れば、それでよし。逃げ出すことが出来なければ――彼女と同じ末路を辿ってもらう』

 ぱちん、という音と共に、倉庫の一角にスポットライトが当たる。

 眩しい光に目が眩みつつ、もみじは妙だと感じていた。

(誰か他にいたの……? でも気配なんて少しも……ッ!?)

 眼を見開くもみじ。OLは何が何だかわからない様子で、それを見ていた。

「え……? なに……? もみじちゃん、あれが、どうしたの……?」

 OLが『あれ』と呼んだ物。

 それは倉庫の一角に無造作に置かれた、精巧な裸婦像だった。

 身を捩り、苦悶の表情で固まっているそれは、人間と変わらないくらい精巧に出来ている。

 ただし、普通の裸婦像と違い、その材質は金属ではなく――柔らかそうな粘土だ。

 一般人が見れば、それはただの物であり、怯えるべき対象ではないだろう。

 だがしかし、この世の裏側を知るくノ一のもみじにとっては、その存在はとても恐ろしいものだった。


 なにせそれは――本物の人間が、忍術によって粘土化させられた『者』なのだから。



後編に続く


Comments

ずーっと頭の端に残っていたので、思い切って書き出しました^w^; 集まったお題については、最後に開示しようと思いますので、お楽しみに!0w0クワッ!

夜空さくら

あの結構無茶ぶりなお題が投稿された作品ですね! いや~よくまとまりましたね~ 素直に素晴らしいと思います! でもどんなお題が集まってましたっけ? 自分は都市伝説を送ったのは覚えてますけどそれ以外は…なんだったけ?

ミズチェチェ


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