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夜空さくら
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軟体怪盗リィンツリーの受難 Second season

■ 現代の義賊・黒猫怪盗リィンツリー(本名:鈴木志保)は、とある資産家・渡部亜希子の罠に嵌って捕らわれの身となってしまう。渡部の目的は怪盗リィンツリーの全てを手に入れることだった。リィンツリーは怪盗としての意地をかけ、彼女と拘束からの脱出ゲームを行うことになる。しかし渡部の狂気すら宿る拘束度合いにリィンツリーは振り回される毎日を送っているのだった。

■ お待たせしました!ーw-ペコリ 軟体怪盗リィンツリーシリーズ・Second seasonの開幕です!0w0クワッ! 相変わらずの二人の様子を楽しんでいただければ幸いです。


■ この作品には拘束・軟体・調教などの描写が含まれます。苦手な人は回避をお願いします。

■ 続きは支援者様向けと、全体向けの交互に書いていく予定です。今回の作品は紛れもなくハッピーエンドになる予定ですので、ご安心いただける構成となっておりますーw-ペコリ

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 黒猫怪盗リィンツリーは、現代の怪盗である。

 いわゆる義賊的な立ち位置で、あくどい資産家からその財宝や秘密を盗み出し、大打撃を与えては去る。

 痛快な怪盗劇は、被害を受けようもない一般人からしてみれば一種の娯楽であり、彼女にはファンクラブまであるくらいだ。

 その日も、リィンツリーはとある資産家のビルに盗みに入っていた。

「追い詰めたぞリィンツリー! 神妙にお縄につけぃ!」

 屋上の扉を蹴破る勢いで開きながら、一人の警察官がそう叫んだ。

 屋上には、黒猫怪盗リィンツリーが悠然と立っていた。

「言い回しが古すぎますね。それとも……銭形警部にでもなったつもりですか?」

 彼女は屋上のフェンスの上に立っていた。まるで平地に立っているかのような平然とした様子だが、そこは地上八十階もの高層ビルの屋上。

 気を抜けば吹き飛ばされてしまいそうな風が吹き荒び、思わず警察官が帽子を押さえる程度には厳しい環境だった。

 リィンツリーはそんな風など吹いていないかのように、フェンスの上に立っている。

 その体は黒いラバースーツで覆われており、黒猫怪盗と彼女が呼ばれる理由である頭の猫耳と尾てい骨付近から伸びた尻尾がゆらゆらと揺れていた。

 細い首に巻かれた首輪についている鈴がチリンチリンと音を立てている。

 端正な顔立ちはまさに気品ある黒猫のようで、背中にかかる程度の長い髪が風に優雅に靡いていた。

 左右で色の違うオッドアイの目が、警察官に呆れた視線を向けている。

「や、やかましい! これまで貴様には散々煮え湯を飲まされて来たが、今回こそは逃がさんぞ!」

 気を巻く警察官に対し、リィンツリーは「はぁ」と溜息を吐いた。

 その手には、輝くペンダントが握られている。

「その割には、今回もあっさり盗み出されているではないですか」

「まだ逃がしていないのだからセーフだ!」

「セーフってなんですか……私のライバルを気取るなら、せめてもうちょっと張り合いを見せてくださいよ」

 そういうリィンツリーの傍に、激しい爆音を立てながら警察のヘリコプターが現れる。

「はっはっはっ! ハンググライダーで逃げようとしても無駄だぞ! そもそもこの暴風の中では、まともに飛べまい!」

 勝利を確信してそう宣言する警察官の男に対し、リィンツリーはあくまで冷静だった。

「生憎、私は鳥ではないので、空は飛べません……よっと!」

 手に持っていたペンダントを高く放り投げるリィンツリー。

 そして落ちて来たそれを口で咥えると、ニヤリと笑ってフェンスの上から飛び降りた。

 警察官の待ち受ける屋上ではなく、反対側へ。

「はぁっ!?」

 自由落下したとしか思えないリィンツリーの蛮行に、警察官の男は目を見開いて慌ててフェンスに駆け寄って下を見る。

 見れば、リィンツリーは空中を走っているところだった。

 両手も使って、まるで猫が駆けて行くように、空中を走っていく。

「はああああ!?」

 警察官の男は瞠目するしかなかったが、その見開いた眼が空中できらりと光る何かを捉える。

「なっ、まさか、ワイヤーか何かか!? だからってありかよそんなのありかよそんなの!?」

 言ってしまえば、ただの綱渡りだ。だが命綱もなく、ほとんど糸にしかみえないワイヤーの上を駆けていくなど、人間業ではない。

 こうして、50メートルは離れている別の建物にリィンツリーは移動し、そのまま逃げおおせたのであった。



 そんな彼女の雄姿は、多くのマスコミのカメラが捉えていた。その映像を纏めて観賞用に整えた動画まで存在する。

 人間離れした見事なパフォーマンスに、拍手喝采があがったのは至極当然だっただろう。

「いやー、今回もすごかったよなぁ!」

「盗んだペンダントって、盗品だったんだって?」

「ああ、正確には期間限定で貸し出してたのを、のらりくらりと理由をつけて返さなかったらしいな」

「そういうの、ほんと許せねえよなぁ! さすがは我らがリィンツリーだ! どんどんやっちまって欲しいぜ!」

「俺たち庶民には一生縁のない話だしな!」

 リィンツリーの功績を称えて大笑いする男たち。

 彼らはリィンツリーのファンクラブのメンバーであり、彼らが集まっているのは『怪盗酒場』という名前の、いわばファンクラブ公認のバーであった。

 リィンツリーが活動すると期間限定でこのバーは開き、リィンツリーファンクラブメンバーであることを条件に格安で高級カクテルやワイン、食事などを楽しむことが出来る。

 誰が出資しているのかも不明な謎の多いバーではあったが、リィンツリーのことを大っぴらに語って騒げる場ということで、非常に人気のあるバーであった。

「しかし最近……リィンツリーちゃん出てこないよなぁ」

「休息期間なんじゃないか? いままでにもこういう時期ってあったじゃん」

「あー、休息期間がちょうど学生の試験期間と重なってるから、リィンツリーは学生説もあったよな」

「実際どうなんだろうな? めちゃくちゃ整った顔立ちをしてるから大人びて見えるけど、中高生くらいだと言われたら納得しちゃうんだよな」

「さすがに学生ってこたぁないだろー。数年前から活動してるんだし……」

「でもそう考えてもおかしくないくらいには、童顔だよなぁ……」

 そう呟きながら、男がちらりとカウンターの方を見る。

 思わず他のものたちもそちらの方を見て――何とも形容しがたい顔をした。

「……なあ、店に入った時から気になってたんだけど、あれって触れていいと思うか?」

「訊くなよ……わかんねえよそんなの……」

「ここのオーナーは何考えてるんだ……?」

 彼らがそう複雑そうな様子で呟いたのは、カウンターの上に置かれている物が原因だった。

 そこに置かれているものというのは、普通なら置かれるはずもないものだ。

 一言で言ってしまえば、生首のオブジェである。


 黒猫怪盗リィンツリーの頭部がそこに鎮座していた。


 妙にリアルな造形で、一瞬本物と見まがうほどに精巧に出来ている。

 頭頂部にはリィンツリーの象徴でもある猫耳が取り付けられており、いかにも本物を模しているということがハッキリわかった。

 台座の上に、ガラスケースに入れられたような状態で設置されていて、はっきりいって趣味の悪い置物だった。

「あれ実は本物だったりしないよな……?」

「いや、それはさすがにないだろ……ホラーすぎるぞ」

「でも等倍というか……たぶん本物と同じ大きさだよなぁ」

「実は首がつながってるとかないかな?」

「それもさすがにないだろ……台座はあるけど、あんなサイズじゃ、到底収まるわけないし」

「でも普通の台座にしては、妙に分厚くないか……?」

 男たちがその生首オブジェを見てひそひそと会話を交わしていると、男たちの元に一人の女性がやってくる。

「ふふっ、あれが気になるのかな?」

「えっ? あっ、い、いえ、そう言うわけでは……」

 思わず男がしどろもどろになったのは、その近づいて来た女性が、明らかに普通の女性とは比べ物にならないオーラ―を発していたからだ。

 非常に豊満なプロポーションといい、背後にボディガードらしき黒服の男性が立っていることといい、普通の立場の人間ではないことは明らかだった。

 そんな彼女は、楽し気に笑いながら、男たちに続けて話しかける。

「実はあれを持ってきたのは私でね……君たち。ぜひリィンツリーのことについて語り合いたいのだが……」

「あ、あー……すみません! もう俺ら帰るところだったんで!」

 やばい相手だと察したのか、男たちはそそくさと店を出て行ってしまう。

 ぽつんと残された彼女は、むぅ、と若干ふくれっ面になって不満を露わにした。

「なぜだ……ここにくれば、リィンツリーのことを語り放題だと思ったのに……」

「生首オブジェを店に持ち込むような危険人物を避けるのは、当然かと思います。彼らに非はないかと」

 不満げな彼女に対し、後ろに控えていたボディガードから鋭い言葉の刃が投げつけられる。

 がっくりと項垂れたものの、すぐに彼女は立ち直った。

「まあ、いいさ。やはりリィンツリーの魅力を語り合うには、ただのファン……一般庶民程度では役者不足というわけだ! うん。私と語り合うには、この生首オブジェを心から愛でられるような者でなければな!」

 拳を握って意気込む女性であったが、その後彼女のいう『語り合える相手』が現れることはなかった。



 営業終了後の店内で、女性はカウンターに突っ伏して拗ねていた。

「語れるファンが独りもいないなんて……私は悲しい……」

「むしろそれを前にして嬉々として語ろうとする者がいなくてほっとしましたがね」

 主人の奇行に付き合おうという奇人が現れず、そのボディガードはほっとしていた。

 なお、彼女自身に邪な目的をもって接しようとした者は、眼光鋭いボディガードがいたので逃げて行ったのだ。

 いずれにせよ、リィンツリーについて熱く語るという目的が達成できなかった女性は拗ねていた。

「いいさ……語れる相手がいなくても。元々今日の目的は、彼女に外の空気を吸ってもらうことだしな」

 そう言いながら、彼女は生首オブジェを納めているガラスケースを取り外す。

 すると、それまで何時間もの間微動だにしていなかった生首オブジェが、ぴくりと動いた。

 パチパチ、とその大きな瞳を覆う瞼を動かし、そのオッドアイの瞳を輝かせる。

 動き出したそれを恍惚とした表情で見つめる彼女に対し、リィンツリーの生首オブジェ――否、生首そのものは、非常に冷たい、呆れた視線を向ける。

「……外の空気を吸わせるというのなら、ガラスケースに詰めるのはおかしくないですか?」

 棘のある口調でいうリィンツリーに対し、彼女をそうした張本人である資産家・渡部亜希子は柔らかく応じる。

「ふふっ、言葉の綾だ。でも実際、君のファンクラブの生の声が聴けたのは貴重な経験だっただろう?」

「……まあ、それはそうですけども。いいかげんこの窮屈な箱の中から出して欲しいんですけどね?」

 そうリィンツリーは求めたが、渡部は首を縦には振らなかった。

「ふふ。君なら全く問題ないだろう? せっかくバーに来たんだ。お酒でも飲みながら、ゆっくりおしゃべりしようじゃないか」

 そういって閉店しているにも関わらず、お酒を用意させる渡部。

 従業員も買収済みであり、彼女の暴挙を止められる者はここにいなかった。

 リィンツリーは深々と溜息を吐く。

 バーの壁には、大きなスクリーンがあり、そこには『怪盗リィンツリーの華麗なる軌跡』と称された、ファンクラブ会員が作成したイメージビデオが延々と流し出されている。

 そこでの彼女は躍動感ある様子で、動き回っており、小さな箱に体を折りたたまれ、渡部という色んな意味で危ない資産家の手に落ちている今の彼女とは雲泥の差だった。

 その落差にめまいを感じつつも、彼女は決意を新たにした。

(必ず、脱出してみせますから……!)


 囚われた怪盗・リィンツリーの受難は、まだ続いていた。



軟体怪盗リィンツリーの受難 Second season

~小箱圧縮拘束~ につづく

Comments

だいぶ無茶してるんで、リィンツリーじゃなければ危なかったです^w^; 渡部はあくまで好意百パーセントでやってるのが性質の悪いところですーw-ウム

夜空さくら

ひ!ど!い!け!ど!す!き!

c933103

渡部はリィンツリーを調度品として飾りたい、と事あるごとに本人に宣言していますので、リィンツリーの方もだいぶ慣れてしまいました^w^; 見た目完全にホルマリン漬けとかと同じ類なので、一般人はドン引き案件です(笑) 箱の移動手段とか、もう少し詳細な詰め方に関しては、今後少し触れる予定です。

夜空さくら

箱詰めのリィンツリーを外に持ち運んだりカウンターの上に置いたり完全に物扱いされているのに渡部さんと普通に会話をしてるいのが良いですね。 箱の上にガラスケースをして大事に扱っているのが伝わってきます 。 箱の移動手段が気になりますね。 読んでいてとてもワクワクします。

振り回されているというか詰め込まれているというか、とにかく渡部のペースに呑まれているようです(笑) 誰にも縛られないことを信条にしてるところもありますからねぇ。単独で怪盗行為を働いているくらいですし。厄介な相手に捕まったものですーw-ウム 渡部のリィンツリーに対する愛(と言っていいのかどうか)はちょっとあれです。向けられる者にとってはかなり脅威です^w^;

夜空さくら

相変わらず振り回されているようですねw ある意味命の心配は無いけど、下手すると一生飼い殺しにされそうな環境下だからリィンツリーとしては是が非でも逃げ出したいよね。 渡部さん、本当にリィンツリー好きよね。

ミズチェチェ


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