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夜空さくら
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状態変化なふたり ~ぺったんこ塗壁の話~

■ 状態変化系統の短編連作十一作目です。約三年ぶりのこのシリーズ、本当はこうやって色々な方法や色々な関係性の『ふたり』をどんどん書いていこうと思っていました。

■ でも個々のお話のキャラがそれぞれ気に入ってしまいましたので、今後それぞれのふたりの続きを書いた時に、それぞれ個別でシリーズにしようと思っています。正直どれが誰と誰の話なのかややこしいですしね。

■ 今回の二人のコンセプトは「怪談・都市伝説系」です^w^

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 ある日、学校から帰って来たら、マンションの廊下が真っ白な壁によって遮られていた。

 エレベーターから降りて、鉤状に伸びた廊下を曲がった先がそうなっていたので、危うく衝突するところだった。

「……なにこれ?」

 壁が建てられる工事が行われるなんて話は聞いていないし、そもそもこんなところに壁を立てられたら生活の邪魔で仕方ない。

 私は元来た道を引き返しかけ――その体が急に固まった。

「んぎっ!?」

 金縛りのように体が痺れて動かない。

(……! しまった! これって――!)

 ぼーっとしていて気づくのが遅れてしまった。

 いまさら思い至っても、もう遅い。

 私の前に立ちはだかっていた白い壁が――私に向けて倒れて来た。

 その壁は私の身体を地面へと押し倒し、そして、そのまま私の身体をぐちゃりと押し広げてきた。

(ふぎゅううう!!)

 体が上下左右に引き伸ばされているのを感じる。

 まるでパン生地がめん棒によって押し広げられるように、頭の先から爪先まで、ペッちゃんこに押し潰されている。

 普通にそんなことをされたら、さぞかしスプラッターな光景になっていたところだろうけれど、私の身体はそうはならなかった。

 骨も内臓もなくなってしまったかのように、私の身体は柔軟にその形を変え、平たく引き伸ばされている。

 物理的に有り得ない変化だ。

(うぎゅぎゅ……っ! ぎゅぅうううっ!!)

 しかもそんな状態になってなお、私は身体が平たく伸ばされていく感覚をちゃんと感じていた。

 自分の身体が限界を超えて平たく引き伸ばされている感覚は、不気味な感覚ではある。

 けれど身体が平たく広がった分感じる感覚は、決して不快な感覚ではなかった。

 強いていうなら、それなりに気持ちいい感覚。勉強した後、思い切り身体を伸ばした時のような、そんな解放感みたいな、そういう快感が全身から感じられる。

(むぎゅぎゅ、ぎゅうううっ……!!)

 気持ちいい感覚に私の意識が悶えている間にも、私の身体はさらに引き伸ばされ、どんどん広がっていく。

 気付けば、私を押し潰して来た壁と全く同じくらいの大きさまで引き伸ばされていた。体の感覚が何倍にも広がっていて、しかもその何倍もの感覚が気持ちいいものだから溜まらない。

(はひ、はひいいい……っ!)

 気持ちよさに頭がクラクラする。体が熱くなって、無性にもどかしく感じた。

 でも平たく引き伸ばされた身体では、ぴくぴくと痙攣することしか出来ない。

 手足が普通に動いたなら、きっと私は自分であそこを弄っていてしまっていたことだろう。

 実際何倍にも引き伸ばされたアソコが熱くなっているのも感じていた。

 ぷるぷる震えていると、いままで私を押し潰していた壁の圧力が弱まり、壁が起き上がっていく。

 私はその壁に張り付いたまま持ち上げられ、床に寝そべっていたような感覚から、無理やり身体を起こされるのを感じていた。

 背中やお尻に空気が当たっているのがなんとなくわかる。

 さっき私の前に立ちはだかった壁のように、私の身体はマンションの廊下いっぱいに広がってしまっていた。

(私、壁になって……る……?)

 私が張り付いていた壁が離れて行く。

 支えを失ったはずの私の身体は、なぜかそのまま壁と同じように立ち続けていた。

(あ……目が……)

 私の身体は押し潰されてかなり不格好に広がっているはずだけど、なぜか目が見えた。

 見慣れたマンションの廊下ではあったけれど、その視点はいつもと違ってかなり高い。押し潰された結果、目のある位置がかなり変わってしまったようだ。

 新鮮な気持ちで見慣れた廊下を眺めていたら、ふと、目の前に奇妙な形をした紙粘土みたいなものが転がっているのを見つけた。

 その白い不格好な団子は、ぐにゃぐにゃと形を歪めて変え、そして――ひとりの女性の姿へと変化する。

 女性はとても美しい成人女性の姿をしていた。

 長い黒髪は癖一つないストレート。豊満なバストに長い手足。シミ一つない、輝かんばかりの白い肌。

 その容姿は傾国の美女もかくやと言わんばかりの素晴らしさで――しかし彼女は全裸だった。

 恥ずかしげもなくその肢体を晒し、堂々と君臨している。

 逸らした手の甲を口元に当て、高らかに笑う様は、典型的なお嬢様という感じの仕草だった。

「おーっほっほっほっ! まんまと引っかかりましたわね!」

 口調もいかにもそれっぽいというか、多分本当のお嬢様ならしないだろう言葉遣いだ。

「いかがです? 塗壁というお怪異様を参考にさせていただきましたわ! 近づいた人を押しつぶし、その人を壁にしてしまうお怪異! とっても素敵じゃございませんこと?」

 嬉々として言い募る彼女。私は抗議したかったけれど、ぺったんこになった体では何の主張も出来なかった。

(やっぱり……! あなたの仕業だったのね……!)

 私はその女性のことを良く知っていた。

 なにせ、同じ家に住んでいるのだから。知己とかいうレベルではない。

(気は済んだでしょ! 戻しなさいよ! ヤミヨ!)

 彼女は人間ではない。

 魔物、妖怪、物の怪、あるいは怪異。

 夜の闇から発生したという、悪しき精霊の具現化したもの――というのが本人の発言だ。

 本人曰く、現代社会で失われつつある『よくわからないものへの恐怖』を蘇らせるために活動しているらしい。

 なんのこっちゃ、と私も最初聞いた時は思った。

 要領の得ない本人の話を解き解した限りでは、要するに『怪異は怪談などの人間の認識を経由して力を着けるものだが、最近の人間は科学的思考で怪異を恐れることがなくなり、怪異はほとほと困っている。そこで彼らの代表的立ち位置である自分が率先して現代の人間たちを怖がらせることを行い、怪異が恐れられる世界を再建させようとしている』のだという。

 彼女が人を恐ろしく感じさせれば感じさせるほど、怪異たちの力は増すらしい。

 私はひょんなことから被害者を求めていた彼女に付きまとわれ、日々今回のような非現実なことに巻き込まれているのだった。

 彼女の目的はあくまで人を怖れさせることなので、殺されることはない。恐怖を騙って広めてくれないと困るという理由でだ。

「おっほっほっ。カリンが何をおっしゃっておられるのか、てんでわかりませんわぁ~」

 そう言いながら、ヤミヨは壁となった私の傍に立ち、その手を私の体に這わせて来る。

 そこはちょうど私の潰れた胸が広がっているところだった。

 彼女が触れたところから、じわじわと気持ちのいい快感が広がってくる。

(ふぃいいっ!? や、やだっ、そんなところ、触らないでよっ)

「うーん、乳首当てクイズでもやろうかと思いましたが……こーんなに大きくなっていたら、簡単ですわねぇ♡」

 ヤミヨはそういいながら掌を私の胸に、かなり大きく広がった乳首に触れさせてきた。

 ビリビリと鋭い快感が私の全身を貫く。

 もどかしく感じるほどの強い快感が広がり、私は体を震わせてしまう。

 身体が熱くなって、あそこがじっとり湿っているのが、なんとなく感覚でわかった。

 そのことは、目の前で見ていたヤミヨにも伝わってしまったようで。

「あらあら。壁のこんなところが湿ってしまっておりますわぁ。ちょっとアンモニア臭いですし、誰かがお立ち小便でもなさったのかしら?」

 そんなことを言いながら、ヤミヨは壁となった私の下の方、股間部分を見ている。

 私の股間を見ているのは体の感覚で言われずともわかった。

(うぅう……恥ずかしい……!)

 私は目を閉じてしまいたかったけれど、ぺったんこに潰された体では全くそんな自由はなかった。

 ヤミヨは私にそんな自分の見せつけるように、少し離れたところに大きな鏡を出現させる。

「ほら、ご自分のお姿を、ご覧になってくださいな」

 目を逸らしたかったけれど、視界に入っている以上、どうしても見えてしまう。

 その鏡の中には、肌色の壁が立ちはだかっていた。

(これが……いまの、私……?)

 思っていた以上に、悲惨な状態だった。

 ほぼ真正面から圧し潰された私が、酷く引き伸ばされた状態で壁になっている。

 それはとても不格好で、恥ずかしくて――いますぐどうにかして欲しい姿だった。

(も、戻してよぉ……!)

 そんな私の気持ちを知ってか知らずか、ヤミヨは壁となった私を弄ぶ。

「おや? この壁、触っていたらちょっとこの辺が盛り上がって参りましたわね」

 彼女がそういいながら撫で摩っているのは、さっきからずっと触られている乳首の部分だった。

 掌以上の大きさに引き伸ばされていても、感じ方やそれに伴う変化は同じみたいだ。

 そして乳首が硬くなったということは――その分、感じる快感も大きなものへと変わっていっているということで。

(ふぐうぅううっ……!! い、逝っちゃゥウ……!!)

 巨大になった乳首を触られ続け、私は絶頂させられてしまった。

 股間部分のシミがさらに大きくなり、まるでお漏らししたみたいな状態になっていた。

 ヤミヨはそんな私の反応を見て、満足げに頷く。

「とっても素敵な匂いも漂って参りましたわね! ふふふ、これなら、きっとたくさんの人が率先して語り継いでくださるに違いありませんわ!」

 彼女に目的はあくまで自分たちの存在を広く知らしめ、畏れさせることにある。

 なるべく多くの人に語らせることが大事なのだとか。

 だからこそ、彼女の作る怪談は、死んで終わりの設定にはなっていなかった。

「ご安心なさって! ぺたんこ壁から脱出するのは感嘆ですの! 連鎖型、というもので、壁となった者の前に、誰かが立てば、今度はその方を押し潰して壁とするのですわ!」

 えへんとその豊満な胸を反らして教えてくれる彼女。

 そうやって次々犠牲者を連鎖させていき、多くの人に語り継がせるのが目的のようだ。

(……あれ? でもいまの条件だと……)

 私がそのことに気付くのと、私の体が『壁になった私の前で』偉そうに仁王立ちになっているヤミヨに向かって倒れ掛かっていくのは、ほぼ同時だった。

「壁から戻った時には、きっと忘れられない経験に――へぶぅっ!?」

 彼女の体が、あっという間に私の体の下敷きになった。

「へばっ、へうへんふぉみひ……っ、ふぎゅう~~~っ!」

 ヤミヨの体が、私の身体に圧し潰されて平べったくなっていくのがわかる。

 さっき私がそうだったように、広がっていく感覚にヤミヨはとても気持ちよさそうな声をあげていた。

(んぅ……っ! こ、これ、潰すほうも結構……! 気持ちいい……っ!)

 私は平べったくなった私の身体によって、ヤミヨの体がドンドン薄くなっていく感触をしっかり感じれていた。

 凹凸が激しく、とても豊満だったヤミヨの体が、厚みを失って平べったく伸びていく。

 私の身体と密着する部分が増えて、その体が持つ熱がしっかりと感じられた。

(んんぅ……♡ き、気持ちいい……かも……♡)

 身体と体がぴったり合わさって、気持ち良さが何倍にもなっているのがわかる。

 やがて彼女の身体が私の身体と全く大きさになり、完全に一枚の板同士がぴったり一致しているような感覚になった。

 触れ合っている部分がとても心地よく、このままでもいいかも――なんてことを考えてしまう。

 ヤミヨは抵抗しているのか、ぴくぴくと痙攣しているけれど、私の熱く湿った部分と同じような場所に熱と湿り気が生じているのを、私は感じていた。

(さっきと同じなら、そろそろ起き上がって壁になるはず――)

 そう私が幸せ気分で思っていると、突然近くから大きな金属音がして、部屋の扉が開いた。

 思わずびくりと身を震わせる私とヤミヨ。

 カツ、コツ、と廊下に出て来たその住民は、ドアを閉めて鍵をかけると、私たちの方に向けて近づいて来た。

(えっ、あっ、これまずいんじゃ……!)

 そう私が思ったのも、一瞬。

 その人の足が――多分履いていたのは踵の高いヒール――私とヤミヨの合板を踏みつけていく。

((フギュゥウウウウッ!!♡♡♡))

 頭の一点に圧力がかかって、私とヤミヨは揃って痙攣した。

 急いでいたのか、それとも気付いていて無視したのかはわからないけれど、その人は怯むことなく私たちの上を歩き、そしてそのまま通り過ぎて行った。

 その際、ちょうど私の股の部分をピンポイントで踏み付けていったため、私はとんでもない感覚に悶絶させられ、意識が跳んでしまった。

 意識が途切れる寸前、私は自分とヤミヨの体の間に、生暖かい感触が広がっていくのを感じていた。



 そして次に目を覚ました時、私はヤミヨの膝の上で寝かされていた。

「カリン。目が覚めましたの?」

 相変わらずヤミヨは全裸で、膝枕されている視点だとその暴力的な存在感が良く分かり過ぎてしまう。

 いくら同性とはいえ――厳密にはヤミヨに性別はないのだけど――さすがに恥ずかしくて、慌てて起き上がった。

 見渡してみると、そこは私の家の中だった。

 どうやらヤミヨが部屋の中まで運んでくれたみたいだ。

「はー……運んでくれてありがとね、ヤミヨ」

「いえいえ。わたくしの活動にお付き合いくださっているのですから、これくらいのご奉仕は当然ですわ♡」

 そう楽しそうに言ったヤミヨは、気を取り直したように首を傾げる。

「今回も失敗でしたわ……今回こそ、素晴らしい怪異が誕生すると思いましたのに。エンドレスぺったんこが発生してしまうなんて……設定ミスですわ~」

 盛大に溜息を吐くヤミヨに、私は慰めるように声をかけた。

「まあ、昔の怪異を参考にするって方向性は間違ってないんじゃない? 昔から言い伝えられてるってことは、それだけ畏れられてたってことだし」

「カリンもそう思いますの!? 嬉しいですわ~! もっと都市伝説を調べる必要があるということですわね!」

 一瞬前まで落ち込んでいたくせに、嬉々として次の事を考え始めるヤミヨ。

 そんな彼女に私は苦笑せざるを得ない。

 ヤミヨ、という大層な名前で、『人に畏れられるモノ代表』みたいな大仰な身分を自称する割りに、このお嬢様はポジティブかつ陽気で、そしてかなりのポンコツなのだ。

(……優秀だったら大変なことになってたかもしれないし……この人はこれでいいのよね)

 私は彼女に目を付けられた第一被害者であると同時に、彼女の活動が上手くいくように協力する者でもある。

 彼女と一緒にいると、普通では味わえないような快感を味わうことができるので、ある意味winwinの関係なのであった。

「早速次のプランを考えますわ! カリンも手伝ってくださいまし!」

「はいはい。あまり騒ぎにならないようにね」


 こうして今日も私は、ヤミヨと一緒に怪異を楽しむのだった。



おわり


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