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夜空さくら
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キミと過ごした、全裸の夏 ~全裸生活?を送る彼女~

■ あらすじ:全裸露出に興味のあった都会の女の子・綿部鈴が、人里離れた田舎に引っ越し、裸族のような生活をしている田舎の女の子・五月雨塚なぎさと出会い、露出への道をどんどん進んでいく物語。

■ ついになぎさの秘密に鈴が迫ります。とんでもない状況にまだ混乱が勝っている鈴ですが、はたしてこ出会いは彼女にどんな影響を与えるのでしょうかーw-ウム


■ 一部のエピソードは支援者様向けに限定して公開します。あらかじめご了承ください。

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 それから暫くの間、私はなっちゃんと毎日会って過ごした。

 田舎特有の距離感でぐいぐい詰めて来る彼女に、私もだんだん慣れ、すっかり親友みたいになっていた。

 コンビニの店先で並んでアイスを食べながら、私はふと気になっていたことをなっちゃんに尋ねる。

「なっちゃんって、友達多そうだけど、ずっと私と遊んでていいの?」

「あー……うちの友達、皆結構遠くに住んじょるんよ。学校はバスやら電車やらで遠方から集まっちょるから」

 それに、となっちゃんは続ける。

「皆、うちみたいに外で遊ばんけん」

「あぁ……そういうこと……」

 なっちゃんは生粋の田舎ッ子というか、アウトドア派だ。

 しかし彼女の友達はそうではなく、今時らしくインドア派の遊戯が好きだということなのだろう。

(SNSとかもなぁ……そもそもなっちゃん、ガラケーだし……)

 そう、今時珍しいというべきか、なっちゃんは携帯を持ってはいるのだが、本当に最低限のメールや電話が出来るだけの物しか持っていなかった。

 目が良すぎるせいなのか、液晶画面を長く見ると目が痛くなってしまうらしい。

 このインターネット全盛、スマートフォン全盛の時代に、かなり生きづらそうなのは間違いない。

「学校始もうたら、れいんこと皆に紹介しちゃるけんね」

 そんな風に屈託なく言えるところを見ると、別に嫌われているとかハブられているということではないようだ。

(学校か……そうだよねぇ……)

 そろそろそのことも考えなきゃいけない時期だ。

 馴染めるかどうか、少し不安ではある。

 そんな私の気持ちを読んだのか何なのか、なっちゃんは安心させるようにニコニコ笑顔を浮かべていた。

「れいはいい子じゃけん、皆ともすぐ仲よぉなれるとよ」

「……だといいんだけど」

 いまから考え込みすぎても仕方ない。

 私は最後に残ったアイスの欠片を口に含み、冷たいのど越しを味わうのだった。



 そんなある日のこと。

 なっちゃんは珍しく家の用事があるとのことで、私は久しぶりの一人でいた。

 毎日のようになっちゃんが色々な場所に連れて行ってくれていたので、この日くらいは家でのんびりしようかと思っていたのだけど。

 お父さんから家にある書類を持って来て欲しいと頼まれてしまった。

 言われた通りの場所に行くと、すっかり日に焼けて真っ黒こげになったお父さんが出迎えてくれた。ある意味、私より田舎暮らしを満喫しているように見える。

「おお! 鈴! ありがとう! いや、取りに一度戻ろうかと思ったんだけどな! 丁度収穫の日で、せっかくだからお前にも食べさせてやりたくて!」

 そう言って、お父さんがお世話になっている人の家にあげてもらった。

「おっ、純ちゃんその子が純ちゃんの?」

「すげぇ別嬪さんじゃないの!」

「こりゃあ純ちゃん畑頑張らないとねぇ!」

 お父さんはすっかり馴染んでいるようで、「純ちゃん」と気安く呼ばれていた。

 私はなるべく悪印象を与えないように、愛想をよくしてその人たちに対応する。

 幸い変なことをしてくる人も言ってくる人もおらず――向こうも結構探り探りだった気はする――気のいい感じの人たちで、収穫したばかりのものを使った料理を振る舞って貰った。

 何事もなく過ごした後、私は帰宅の途につく。

 自転車を押して歩きながら、住宅街を抜けたところで、ふぅと息を吐いた。

(久しぶりに色んな人と話して緊張したぁ……)

 なっちゃんに色んな場所を案内してもらった際、行く先々で人と会って話はしたけれど、多くても同時に会うのは二人くらいだった。

 あれだけの大人数に囲まれるのは最近全然なかったから、かなり緊張した。

 そろそろ自転車に乗って帰ろうと思ったとき、ふと道端に立っている看板が目に入った。

 その看板はその先が「五月雨塚」であることを示すものだった。

(なっちゃんの住んでるところだよね……)

 まだ日は高いし、少し寄り道してみようとそちらの道にハンドルを切る。


 この判断が、その後の全てを決めたのだと、私はあとから思い返すことになる。


 五月雨塚という村は、かなり昔からあるようで、立派で古い建物が立ち並んでいた。

 そのあまりの立派な建物から、時代が時代ならなっちゃんも結構なお嬢様だったんじゃないかと思えて来る。

「……あ、でも結構人がいないところも多そう……?」

 住む人がいなくなったのか、全く生活臭のしない家も多い。

 基本的にこの辺では表札が表に出ていることが多いのだけど、五月雨塚では取り外されているところが多い。

 どこの田舎でも過疎は深刻だというけれど、ここにもその片鱗は感じられた。

 まだ空は明るいのに、人っ子一人いない静かな村だ。

「むしろ、逆かな……夜になったら、もう少し人が戻ってくるのかも……」

 昼の間は畑仕事とかでいないということも考えられそうだ。

 私はそんなことを考えながら、静まり返った村の中を自転車で移動する。

 なっちゃんの家はどこなのだろう、と何気なく考える。

(五月雨塚っていうくらいだし、大きな家な気がするけど……例えば、あそことか……)

 人っ子一人いないと思っていたから、私は完全に油断していた。

 いきなり目の前に人が現れる。角から歩いて出て来たのだと気付いた時、すでにその距離は物凄く近づいていた。

「わっ!?」

 衝突を回避するため、咄嗟に私はハンドルを大きく切り――バランスを崩して思い切り転倒してしまった。

 静かな住宅街に、自転車が転倒する喧しい音が響き渡る。

 私は強かに体を打ってしまい、暫く倒れたまま動けなかった。

 ワンピースの裾が捲れあがって、大変恥ずかしいことになってしまっているような気がしたけれど、打ち付けた全身が物凄く痛くてそれどころじゃない。

「あれま!? 大丈夫かえ!? お前さん!」

 御婆さんの声が、慌てた様子でかけられる。

 大丈夫です、と言いたかったけれど、足が痛くて声が出ない。

 私の足に伸し掛かっていた自転車が取り除かれる。

 御婆さんが自転車を退けてくれたみたいだった。

 頭は見事な白髪で、結構な御年を召していると思われるけれど、体は元気そうだ。

(ぶつからなくて、よかった……)

 いくら元気そうでも――今が元気だからこそ――ぶつかって骨折でもしていたら大変だった。

 御婆さんの手も借りて、私はなんとか体を起こすことが出来た。

「いたた……すみません。ありがとうございます。ぶつかりそうになって、ごめんなさい」

「大丈夫けぇ? ……あー、怪我しちょるやないの! うちで手当てしちゃるき、おばあの肩掴まりんしゃい!」

 言われてみてみたら、結構思い切り膝を擦りむいていた。

 特別血が苦手というわけじゃないけれど、擦り傷ほど見た目痛々しいものはない。

 私は御婆さんのお言葉に甘え、肩を借りて立ち上がる。

 見た目以上に御婆さんの足取りはしっかりしていて、私が片足立ちで軽く体重をかけても、小動きもしなかった。

 そんな御婆さんに誘導され、私はなんとか縁側まで移動する。

「靴脱いであがりんしゃい。いま薬箱持って来ちゃるけぇ」

 御婆さんはそう言って、バタバタと家の奥へと走っていく。

 私は靴を脱いで、縁側に上がらせてもらった。

 そのついでに体の状態を確認したけれど、膝を擦りむいた以外には特にけがはしていないようで、少し安心する。

「中まで入って来れるけぇ? ソファがあるけん、そこに腰掛けてええよ」

 御婆さんにそう促され、私は慎重に立ち上がって、片足飛びで居間らしき場所へと入る。

「すみません。失礼しま……す……?」

 そして、私は見た。

 恐らくは御婆さんのいうところのソファは、いくつかあった。人が集まった時用なのか、ちゃぶ台を囲んで二人掛けと三人掛けのソファがある。

 そしてその三人掛けのソファの方に、彼女はいた。


 首に首輪を巻いただけの素っ裸のなっちゃんが――そこで寝ていた。


 その時の私の混乱具合いは、ハッキリ言って言葉に出来ない。

(え……? なにこれ……?)

 どこからどう見ても、そこで寝ているのはなっちゃんだった。

 寝ているだけなら、たまたま関わりを持った御婆さんがなっちゃんの御婆さんだった、という程度の奇跡で済むのだけど。

 裸で過ごしているというだけなら、百歩譲ってわからなくはない。

 なっちゃんは最初の川遊びの時からそうだったけれど、割と裸族よりの思考と振る舞いで、あまり自分の裸を晒すことに抵抗がない様子ではあったから。

 家族の前でも裸族、というのはどうかと思うけれど、彼女の性質を考えれば理解出来なくはない。

 ただ、そこに首輪が加わると、途端に私の理解の及ばない範疇の話になってしまう。

 私が混乱している間に、御婆さんが救急箱らしきものを持って帰って来た。

 そして、なっちゃんのことを全く無視して――というか気にする様子もなく――ちゃぶ台の上にその救急箱を置く。

「そのソファに座ってよかよ」

「あ、え、あ……は、はい……」

 あまりに自然な態度過ぎて、私の方がおかしいのかと思ってしまった。

 私は恐る恐る、ソファに腰掛けて御婆さんの治療を受ける。

 でも視線はどうしてもなっちゃんの方に向いてしまった。大混乱している私に対し、なっちゃんはすやすやと眠っている。

「染みるでな、我慢しちょくれ」

 そう言って御婆さんが傷口にタオルを添えながら消毒液をぶっかけて来る。

 とんでもなく染みた。さすがにこの一瞬はなっちゃんのことも忘れ、歯を食い縛って痛みを堪える。

「ええ子じゃ。ほい、ええよ」

 傷口は綺麗に洗い流され、大きな絆創膏がぺたりと張られる。

 ちょっと涙が浮かんでしまったけれど、なんとか零さずに済んだ。

「見た目ほどは抉れちょらんかったから、きっと痕も残らんでぇ」

 ニコニコとした笑顔で御婆さんはそう言って、私の頭を撫でてくれる。

 すごく優しい面立ちだ。屈託なく笑うなっちゃんにどことなく似ているから、血縁関係にあると考える方が自然だろう。

 だけど、だからこそ――すぐ傍で寝ているなっちゃんの存在が意味を分からなくさせている。

(虐待……とか思っちゃったけど、そういうわけでも……なさそう、だよね……)

 仮に虐待だとしたら、やけに自由にさせすぎというか、普通にソファの上に寝かせているのがおかしい。

 これではまるでペットのような扱いだ。

「お茶でも飲んでいきんしゃい」

「え、あ……あ、ありがとうございます……」

 御婆さんはあくまで親切で丁寧な御婆さんであるので、余計に訳がわからない。

 ふと、私がちらちらなっちゃんのことを気にしていることに気付いたのか、御婆さんの表情が少し曇る。

「お前さん……もしかして、苦手けぇ?」

「に、苦手? 苦手、というか、えーと……」

 どう応えればいいのか。

 私が言い淀んでいると、苦手だと言っていると思われたのか、御婆さんはいい笑顔を浮かべる。

「太郎は人を噛んだりせんけぇ、安心してけれ」

 太郎。噛む。

 まるで犬に対する言葉みたいだなと思った。

 御婆さんは台所らしきところに行ってしまう。お茶を淹れに行ってくれたのだろう。

 それはありがたいのだけど、そうではなくて。

 私はソファの上で呑気に寝ているなっちゃんに、恐る恐る視線を向ける。

 それは、どこからどう見てもなっちゃんだった。

 褐色の肌に、すらりとしつつも筋肉のついた手足。そして――スレンダーなボディライン。

 川遊びの時に見たなっちゃんの裸そのものだ。

 その姿に見覚えがあるからこそ――その時と違う、異物である首に巻かれた首輪が際立っている。

 明らかにおかしい装飾品だ。ヘビメタという音楽のジャンルで、そういうファッションが流行ったこともあったらしいけれど、そう言うのとは明らかに違う。

 その首輪は明らかに普通の犬に付けるみたいな、飾り気のないシンプルなものだった。

 そんなものだけを身に着け、裸で眠っているなっちゃん。

 あまりにも異常で背徳的な光景すぎる。

(なっちゃんを起こして、どういう訳か、聞きたい……!)

 私がそう思って強い視線を送っていると、なっちゃんがぴくりと顔を動かした。

「ん……っ、んぅ……?」

 眠そうに唸り、ぱちくりと目を開ける。

 私となっちゃんの視線が交錯した。

 暫し、二人とも無言で時間が経過する。

 その間、なっちゃんは顔色を赤くしたり青くしたりと、忙しなく変えた末に、その体をパッと起こした。

 そしてきょろきょろと周囲を見渡し、たぶん御婆さんの姿が見えないことを確認すると、私にだけ聞こえる声で囁いてくる。

「あとで全部説明するから! 何も言わずにおばあに話し合わせて! お願い!」

 普段の訛りはどこへやら。この上なく真剣な様子でそう囁いて来る彼女に、私は頷くことしか出来なかった。

 それと同時に、お盆にお茶の入ったコップを乗せた御婆さんが戻ってくる。

「麦茶で大丈夫やったけ?」

「あ、はい。大丈夫、です。ありがとうございます」

 私はなるべく自然に振る舞うつもりで、明らかに不自然な声になってしまいつつ、御婆さんから麦茶を受け取る。

 氷まで入れてくれていて、それはとても美味しかった。

 御婆さんはなっちゃんが起きていることに気付くと、そっちのソファに腰をかけにいき、なっちゃんは体を丸めて御婆さんの座るスペースを確保してあげていた。

 御婆さんは優しい笑顔で、そんななっちゃんの頭を撫でていた。

「うー……わぅっ」

 なっちゃんは犬っぽく唸り、御婆さんの手を受け入れている。

「んー? 知らん人がおるけぇ、緊張しとるんか? 太郎は昔から体は大きくても気弱じゃけぇなぁ」

 楽しそうに呟き、愛おしそうに笑う御婆さん。

 本当の犬を撫でながら言っている言葉であるなら、とても微笑ましいものではあるのだけど。

 私と同い年のなっちゃん、それも裸に首輪だけを身に着けた姿の彼女を撫でながら言っているとなると、微笑ましいどころか、狂気すら感じる。

 私は「後で説明する」というなっちゃんの言葉を信じ、ひとまず御婆さんの話にひたすら頷いてやり過ごすのだった。


つづく


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