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夜空さくら
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キミと過ごした、全裸の夏 ~全裸で自転車大疾走~

■ あらすじ:全裸露出に興味のあった都会の女の子・綿部鈴が、人里離れた田舎に引っ越し、裸族のような生活をしている田舎の女の子・五月雨塚なぎさと出会い、露出への道をどんどん進んでいく物語。

■ これにて、一端このお話は終わりです! 最後までお付き合いくださり、誠にありがとうございました!ーw-ペコリ ……ちょっとエロパート以外に拘りすぎましたね(笑)。反省してます。後悔はしていない0w0クワッ!


■ 一部のエピソードは支援者様向けに限定して公開します。あらかじめご了承ください。

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 助けを求めて来たなっちゃんの声は、かなり切羽詰まったものだった。

 境内でオナニーしていた時とは違う理由で鼓動が早くなる。

「なっちゃん、落ち着いて。……どうしたの?」

『おばあが……っ』

 なっちゃんに状況を聞くと、彼女は何度もつっかえながらも、説明をしてくれた。


 昨日、なっちゃんはかつて私が彼女の家にお邪魔した時と同様に、自分のことを太郎と誤認識している御婆さんの手でケージの中に入れられた。

 ただ、昨日はなっちゃんは少し疲れていて、うっかりケージに入ったまま眠ってしまったらしい。

 それだけなら、以前にも一度やってしまったミスだったという。

 以前の時は、朝起きて来た御婆さんにケージから出してもらって、暫く太郎として行動し、御婆さんが外に出たのを見送ってから、服を着て人に戻ったという。

 そうやって、何事もなくやり過ごせたらしい。

 だから今回も寝てしまったことに、朝になってから気付いても、特に慌てることはなかったそうだ。

 しかし安心して微睡んでいたなっちゃんはふと、普段の起床時間がとっくに過ぎていることに気付いたのだという。

 今日は畑の収穫を予定していて、本来なら御婆さんも起きて来ていておかしくない時間だった。

 嫌な予感を覚えたなっちゃんは、起きて来た御婆さんと出くわす可能性を危惧しつつも、おいていた鍵でケージの外に出ようとした。

 不運な偶然は重なるものだ。

 なっちゃんがあらかじめ用意しておいた予備の鍵で、ケージの鍵を開けようとしたところ――なんとその鍵がぽっきりと折れてしまったのだという。

 折れた鍵が穴の中に残る、という最悪の折れ方こそしなかったのは、不幸中の幸いだろう。

 だが鍵が破損してしまったことによって、なっちゃんは頑丈なケージの中から出られなくなってしまった。

 ケージの中で狼狽したなっちゃんは、必死に鳴き声をあげて御婆さんを呼んだ。

 しかし御婆さんの気配は現れない。

 すでに家から出てしまったのか、それとも、どこかで倒れてしまっているのか、それすらわからない。

 混乱と焦燥の極地に陥ったなっちゃんだったが、充電していた携帯電話が、辛うじて手に取れる位置にあり、それを引き寄せて私に連絡して来た――というのが、いまの現状らしい。


 最悪だ。

 私は運命を司る神を呪う。

「救急車を、呼ぶのは……?」

『家におばあがおるかどうかもわからんし……いまのうちを、見られてもうたら……』

 そうだ。檻の中から出られないということは、いまのなっちゃんは素っ裸に首輪を巻いた格好で檻の中にいるということ。

 そんなところを第三者に見られたら、どう言い訳しても虐待の現場にしか見えない。

 よしんば事の次第を説明出来たとして、そのこと自体はお咎めなしに出来ても、御婆さんは間違いなく病院行きだろう。

 正直、私も御婆さんは病院に行った方がいいとは思っているけれど、その過程がこれなのは最悪すぎる。

 事情を知っている私しか、助けに行ける人はいない。

 そして幸か不幸か、私がいる場所は自分の家よりも遥かになっちゃんの家に近い。ここからなら十分もあれば辿り着ける。

 問題は、ただ一つ。


 その私がいま、全裸であるということだけだ。


 家から素っ裸で出て来たから、手元に着られるものが何もない。

 いまは日中。五月雨塚は私が住んでいる場所よりも人の気配がたくさんあった場所だ。

 人に見られる可能性は、いままでの比じゃない。

 しかし、だからといって。

 いまから家に戻って服を着て、再びなっちゃんの家に向かうのは、時間のロスが大きすぎる。

 もしも御婆さんが倒れていたら、一刻を争うかもしれない。

 家に服を取りに戻る数十分で、助けられるものが助けられなくなるかもしれない。

 心の中で、天秤がグラグラと揺れる。

(そもそも最悪を考えるのなら――すぐに救急車を呼ぶように言うべきじゃ……)

 私が着くまでの時間もタイムロスといえばそうなのだから。

 最悪を考えて御婆さんが倒れているのなら、そうした方がいいに決まっている。

 でもそれは確実になっちゃんの秘密が第三者に知られてしまうということでもある。

 かといって、ならば自分が危険を冒すのはそれもそれで問題になる。

 いまのところ奇跡的になっちゃん以外に見つかってはいないけれど、もしも人に見られたら、露出狂の変態が越して来たと噂になるかもしれない。

 そうしたら、この田舎に居辛くなる。

(裸で川遊びをしているときに連絡が来たことにする?)

 裸で自然な理由を考えてみる。

 だけど、どう考えても不自然だ。

(ダメ……っ、そんなの、無理……ッ)

 数十分のタイムロスを覚悟してもらうしかない。

 私はそうなっちゃんに言おうとした。

 けれど。

『れい……お願い、助けて……!」

 絞り出すような声で縋られて、私は決意を固めた。

 電話の向こうのなっちゃんに告げる。

「すぐ行くから。待ってて」

 一言断ってから通話を切る。

 片手運転じゃ速度が落ちるし、通話する意味もない。

 私は自転車のスタンドを蹴って解除し、勢いよく走り出しながら自転車に飛び乗った。

 胸が震えるのを、咄嗟に片腕で抑えつつ、股間とサドルが触れてひんやりとした感触が生まれるのを感じつつ、力を込めてペダルを蹴り出す。

 一気に自転車が加速し、ここに来るまでよりも遥かに強く、自分がいま裸であることを、全身で感じた。

 想像以上の緊張と羞恥に、顔が一気に火照る。

「なるように、なれ……!」

 自分を鼓舞するように呟いた私は、全力でペダルを漕ぎ、全裸のままなっちゃんの家へと突き進んだ。

 誰かに見られるかもしれない――そんな危険な状況を自覚しつつも、私は自転車を漕ぐ足を止めなかった。



 胸が揺れる。

 心臓の鼓動が痛い。

 荒い呼吸音が耳に響く。

 寒くないのに指先が震える。

 視界は妙にクリアに広がっていた。

 色んな意味での興奮状態が止まらず、私は足元がふわふわしているような感触を覚えていた。

 神社を出発して数分。明らかに人の気配がする住宅街に、私はすでに入っている。

 日が差して明るい中、体を隠すものも何もない状態で、私は懸命にペダルを漕いで走っていた。

 至る所から視線が向けられているような気がする。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ……!」

 恥ずかしさで顔が真っ赤になっているのがわかる。

 呼吸を落ち着けようにも、必死に自転車を漕ぎ続けているので、落ち着くはずもない。

 これは興奮しているのではなく、運動しているからだと自分に言い聞かせた。

 思い切りペダルを踏み込み、加速していく。

(本当は、壁の側を走りたいけど……!)

 以前、御婆さんにぶつかりかけた時のように、突然人が飛び出してくるかもしれない。

 それを警戒するとなると、自然と道の真ん中を走るしかない。

 素っ裸の今、そんな道のど真ん中を走るのは、自ら晒しものになっているのに等しい。

 恥ずかしくて仕方ない。

 こんな状況に陥ってしまった原因の、家を出る時の自分を恨んでしまう。

 けれど。

 死にたくなるくらい恥ずかしくて、自分の行いを後悔しているはずなのに――私の体は同時に気持ち良さを感じてしまっていた。

 さっきからサドルに擦れている自分の股間の感触が変化していることにも気づいていた。

 最初のひんやりとした感触はどこへやら。

 私は自分の股間が熱を持ち、擦れる度にねっとりとした質感を生み出していることに気付いていた。

 それに、胸。

 段差で自転車が跳ねる度に、私の大きな胸はよく揺れる。

 走り出してすぐは痛みの方が勝っていたけれど、いまは揺れる度に気持ちいい感覚を生み出している。

 先端の突起に風が当たる感触も、微細に感じ取れてしまっている。

 衝動に負けて自分の胸を見下ろしてみたら――案の定、私の乳首は固く尖って存在感を増していた。遠目から見てもそこが尖って存在を主張していることがわかるかもしれない。

 いやらしい身体だと、自分でも思う。

 こんな緊急事態にも関わらず、露出の快楽を覚えて、なおかつそれを最大限増幅させてしまっているのだから。

 足に力を込めてペダルを踏み込めば、僅かに腰が浮いた。

「ん、ぅっ……!」

 サドルに当たっていた股間がわずかにズレて、じんわりとした快感がそこから全身に広がっていく。

 このまま股間を擦り続ければ、どれほど気持ちよくなれるだろうか。

 そんなことまで考えてしまい、私は自分自身がどれほど淫乱なのかを、改めて突き付けられたような気分だった。

(ほんと……私は……最低の、変態だ……っ)

 露出して気持ちよくなっている。

 特に、いまは緊急事態だというのに――私は自分の浅ましさに自嘲せざるを得ない。

 恥ずかしいのか、気持ちいいのか、情けないのか。

 私の感情はぐちゃぐちゃで、どうしようもなく思考が乱れる。

 その時、少し先の脇道から、一台の自家用車が出てくるのが見えた。

 一気に心臓の鼓動が跳ね回る。

(おわっ――た?)

 こっちを見ていなかったのだろうか。

 その車はそのまま私から離れていく方向に曲がり、背を向けて走っていく。

 バックミラーには映ってると思う。けれど、特にスピードを落としたり、止まったりすることなく、そのまま走り去っていく。

 それなりに離れていたとはいえ、本当に見られなかったのだろうか。それとも急いでいて止まって確認する暇もなかったのだろうか。

「はぅ……っ」

 ドキドキする心臓がきゅっと締め付けられていたけれど、大丈夫そうだと思った瞬間、ふっと身体が軽くなった気がした。

 ぐらっと体が傾ぐ。いつの間にか止まる寸前までスピードが落ちていたらしく、バランスを崩していた。

 慌てて足を地面に突いて、傾いだ体を支える。

 それと同時に、ひと際強くサドルが股間に食い込んでしまった。

「んぁ……!」

 背筋がピンと伸びて、胸が大きく揺れる。

 私はすぐ傍に人がいるかもしれない住宅街で――白昼堂々、絶頂してしまっていた。

 誰もいないと確信していた境内でオナニーした時より、遥かに強烈な快感が全身を駆け抜ける。

 荒い呼吸を繰り返して、なんとか気持ちを抑える。

「はぁ……はぁ……はぁ……っ、いか、なきゃ……っ」

 じっと立っていればいるほど、人に見られる可能性は高くなる。

 私は必死にペダルを漕ぎ、よろめきながらも、なっちゃんの家を目指して動いた。

 そしてついに、ようやく、なっちゃんの家に辿り着く。

 私はその家の敷地内に入り、自転車を止める間も惜しんで――自転車が倒れる音が響いた――家に飛び込む。

 なっちゃんが私に助けを求めた時点でわかっていたけれど、玄関の鍵は閉まっていなかった。ガバガバセキュリティに言いたいことはあるけれど、今回ばかりは助かった。

「失礼、します……っ!」

 一応声をかけて、私はサンダルを脱ぎ、家に上がり込む。サンダルも脱ぐと本当に全裸なので、全裸で人の家に入り込む変態でしかない。

 それをとにかく気にしないようにしながら、私はまずリビングを目指した。

 リビングの扉を開き、中へと入る。

 がちゃん、となっちゃんの入っている檻が音を立てた。

「れい! ありが――と?」

 そこで言葉を詰まらせないで欲しい。

(そりゃあ、駆け付けた友達が全裸だったらそういう反応になるだろうけど!)

 私は素で「どうしたの?」と言わんばかりのなっちゃんの目に、急激に羞恥心を覚えさせられてしまった。

 腕で体を隠しながら、私はなっちゃんに聞く。

「いまはなにも言わないでっ、御婆さんは?」

「あ、え、おばあの部屋は、そっちの廊下を出て……」

 なっちゃんもここで問答している暇はないと考えたのか、御婆さんのいると思われる部屋の場所を教えてくれる。

「わかったっ、そのケージの鍵は?」

「おばあが持ってるはず!」

 もしこの部屋にあるならなっちゃんを先に解放しようと思ったけれど、まずは御婆さんに会わないといけないようだ。

 私は急いで御婆さんの部屋に向かう。

 ここまで来て、私はもう一つ歓迎できないパターンがあることに気付いたが、いまさら仕方ない。

 御婆さんの部屋はすぐに見つかった。

 部屋の扉を開け、すぐに異常に気付いた。

(なに、この部屋……蒸し暑い……!?)

 サウナほど熱くはないけれど、明らかに暑すぎる。じわじわと汗が滲んでしまう。

(クーラーは……ついてるようだけど、運転してない……?)

 恐る恐る、部屋の中を覗き込む。

 果たしてそこに御婆さんは――いた。

 床に敷いた布団の上で、横になって目を瞑っている。

 寝ているだけかと思ったけれど、その顔色が良くないことに気付く。

「……ッ、御婆さんっ! 起きてください、御婆さんっ!」

 御婆さんに駆け寄った私は、御婆さんに向けて呼びかける。

 何度か呼びかけていると、御婆さんが顔を顰め、ゆっくりとその瞼を開く。

「ん、ぅ……?」

 目は開けた。動いている。生きてはいる。

 けれど、どうにもその目の焦点が合わない。意識が混濁している者の状態だ。

「御婆さんっ、しっかりしてください、御婆さん!」

 何度か呼びかけていると、その目がようやく私の方を向いた。

「あ……? おまえ……さん……? あ、れ……?」

「しっかりしてくださいっ。ご自分の名前、言えますか?」

「ん……? あー……? んん……」

 寝ぼけているだけなら良かったけれど、一向に意識が定まる様子がない。

 熱中症。そんな可能性が即座に浮かんだ。

「なっちゃん! 救急車!」

 ケージの中からでも、携帯電話は使えるはず。

 私はなっちゃんに向けてそう叫んだ後、御婆さんが体にかけていた薄い掛布団を剥ぎ――それは想像以上に湿っていた――御婆さんの衣服を緩める。

 本当はこの部屋から出したいところだけど、私一人じゃどうにもならない。

 扇風機はあったので、とりあえずそれで風を当てて体を冷やし、急いで飲み物を取りに行く。

 リビングに行くと、なっちゃんは携帯電話の向こうにこの家の住所らしきものを喋っていた。

 私は台所に向かう途中で、なっちゃんの服であろうズボンとシャツをとりあえずひっつかんで拝借した。

 色々サイズは合っていないけれど、これ以上裸でうろつき回るわけにはいかない。

 とりあえず目についたコップで水道水を汲み、御婆さんの部屋に向かいかける。

「れいっ」

 そこをなっちゃんに呼び止められる。なっちゃんが携帯を差し出していた。

 詳しい症状は私でなければ伝えられない。

「家の場所は伝えたのよね?」

 念のためそれを確認し、私はなっちゃんから携帯を受け取る。

「代わりました。はい。熱中症みたいです。意識はあるんですが、自分の名前も言えなくて……」

 話しながら急いで御婆さんの部屋に戻る。

 救急隊の人とやりとりをしながら、私は御婆さんの部屋に視線を巡らせる。

 なっちゃんのケージの鍵がどこかにあるはずだ。

(……机の上とかに置いてくれてたらすぐわかったのに……!)

 説明もしなければならないし、焦りもあって上手く探せない。

 そうこうしている間に、救急車のサイレンが近づいてきてしまった。

 私は覚悟を決め、御婆さんが体に掛けていた薄いシーツを手にリビングへ戻る。

 不安そうにしているなっちゃんに、大丈夫だから、と声をかけつつ、そのシーツをケージの上に被せた。

「ごめん、鍵が見つからなかった。同行しなくちゃかもだから、とりあえず隠すね!」

「……ごめんなぁ、れい。ありがとぉ」

「お礼を言うのはまだ早いわ。……なるべく早く戻るから!」

 そう言いつつ、私はシーツでケージを隠し、御婆さんの部屋へと戻る。

 ブラもショーツもないからすごく違和感がある。けれど、そんなことに構っている暇はない。

 御婆さんに声をかけている間に、救急車が家の前に到着した。



 そして、それから。

 ノーブラノーパンの恥ずかしい格好のまま、私は救急隊の人たちに対応することになった。

 向こうは仕事柄そういうことにも慣れているのか、あるいは単純に御婆さんのことだけを見ていて気付かなかったのか、とりあえず何かしら言ってることはなかった。

 それでもそんな無防備な格好でたくさんの人と会話するのは物凄く恥ずかしかった。

 病院まで同行を求められたけれど、私は御婆さんとは孫のなっちゃんを通じた知り合いでしかないことを理由に断った。

 そのなっちゃんが遠出をしていることを知らず、訪ねてきたら御婆さんが寝込んでいることに気付き、通報した、という我ながら無理のある言い訳をした。

 なっちゃんが戻って来るはずなので、帰って来たらすぐ病院にいくように伝えると、救急隊の人たちも納得してくれたようだった。

 救急車が走り去ってすぐ、私は御婆さんの部屋に行き、鍵を探す。

 介抱していた時には気づかなかったけれど、鍵は御婆さんの枕元にあった。

 それを使ってようやくなっちゃんをケージの中から出してあげられた。

「ありがとぉ、れい! このお礼は、あとで必ず!」

 なっちゃんはそう言いながら急いで身支度を整えて、そのまま凄い勢いで飛び出していってしまった。

 私は自転車に乗ってかっ飛ばす彼女に、「事故に気を付けて!」と声をかけることしか出来なかった。


 それから、夜になってなっちゃんと御婆さんはタクシーに乗って帰って来た。





 御婆さんは軽度の熱中症で済んだようだった。

「いやぁ、迷惑かけてもうたねぇ。なぎさと仲よぉしてくれて、ありがとぉなぁ、れーちゃん」

 病院で処置を受けた御婆さんは、すっかり健康になっていた。

 なっちゃんもとても嬉しそうだ。

 本当に、仲睦まじい祖母と孫なのだろう。

「いえ、たまたま近くにいたので……助けられてよかったです」

 私はそう当たり障りのない受け答えをしていた。

 夕飯を御馳走になるという話になって、朗らかに話は進んでいたのだけど。

「ああ、そういえば……太郎はまだかえっちょらんのかの?」

 そう言って、御婆さんは何気なく太郎のことを口にする。

 もういない愛犬の名前を。

「身体の大きな子ぉやけどねぇ、おとなしゅうて、可愛い子ぉなんよ。きっと、れーちゃんとも仲良くなれるでなぁ」

 ニコニコと、笑顔で。

 なっちゃんが困ったような笑顔を浮かべていることに、気付きもせず。

「ほや。なぎさ、ちょっと太郎がその辺に戻ってきちょらんか、探して――」

「太郎は亡くなった――よね、なっちゃん」

 気づいたら、言葉が口をついて出ていた。

 御婆さんの目が見開かれる。

「れいっ!?」

 なっちゃんが驚愕した様子で私を見つめている。

 だけど、私は撤回しなかった。

「ごめん、なっちゃん。なっちゃんの気持ちも、御婆さんの気持ちもわかるけれど……これは、言わないといけないと思う」

「なにを、ゆうて……だって、昨日も、太郎は……っ」

 私は御婆さんの言葉に応えず、シャツとズボンを脱ぎ捨てた。

 もちろんブラもショーツも身に着けていないから、それだけで私はすっぽんぽんだ。

 今度こそ御婆さんとなっちゃんの目が点になるのを見ながら、私はその場に四つん這いになる。

 めちゃくちゃ恥ずかしいけれど、これはたぶん必要なことだ。

 裸で四つん這いになった私の姿を見せることは。

 案の定、御婆さんの目が、零れんばかりに見開かれる。

「あ……っ」

「……思い出し、ましたか? 御婆さん」

 正直、思い出してくれなかったら私はただの痴女だったので内心めちゃくちゃ安堵していた。

「あ、ああ……っ。あの、夜の……っ」

 信じられない様子で、御婆さんは頭を抱える。

 その目が、なっちゃんの方を見た。

 なっちゃんは顔を俯けて、ぽつりと呟く。

「…………ごめん、おばあ」

 いつも天真爛漫ななっちゃんが、悔いるように俯いている。

 御婆さんの誤認識から始まったとはいえ、それに乗ったのはなっちゃんの選択だ。

 そのことを悔いる気持ちがあるのだろう。

 私はもはや言うまでもないとは思ったけれど、きちんと言葉にして、御婆さんに告げる。

「……御婆さんが太郎だと思っていたのは、いまの私と同じように裸になったなっちゃんです」

 御婆さんは顔を覆ってへたり込んでしまった。そんな御婆さんを、なっちゃんが慌てて慰める。

 私は立ち上がり、御婆さんに歩み寄って、言葉を続けた。

「残酷な現実を突きつけるような真似をして、ごめんなさい。……でも、このままじゃ、御婆さんも、なっちゃんも危険です」

 今回はたまたまなっちゃんが私に連絡を取れる状況だったから、事なきを得たけれど、もしも誰にも連絡を取れなかったら、御婆さんは確実に亡くなっていた。

 なっちゃんはいざとなれば声をあげて外に助けを求められたかもしれないけれど、広い家のリビングだ。

 もしかすると声が誰にも届かず、ケージの中でそのまま衰弱死、なんてことも十分あり得た。

 今後ずっと、ギリギリの綱渡りを続けるのは、危険すぎる。

 そのことは、御婆さんにもよくわかったのだろう。

 危うく自分の行いのためになっちゃんまで亡くなるところだったのだから。

 私は嘆く御婆さんの姿に罪悪感を覚えつつ、いそいそと脱いだ服をもう一度着るのだった。

(はぁ……本当に……今年の夏は、全裸でとんでもない体験ばっかりしちゃっちゃなぁ……)

 家の外から、虫の鳴る声が小さく聞こえ始めていた。


 夏ももう、終わる。




エピローグ


 それから。

 結構その後の経過を心配していたのだけど、御婆さんは無事正気を取り戻してくれた。

 太郎が死んだという現実を受け止め、前に進む心が定まったようだ。

 保留になっていた太郎のお骨はちゃんとそれ相応の寺院に納められ、なっちゃんのことを太郎と認識することもなくなった。

 なんだかんだまだまだ元気な御婆さんは熱中症でダウンしたばかりだというのに、遅れてしまった畑の収穫作業を精力的に行っているのだとか。

 御婆さんの近況を教えてくれるなっちゃんは、とても嬉しそうに笑っていた。

「うちもなー、どうしたらいいかわからんかってん。れいがあそこでああしてまでして、言ってくれたおかげで、ようやくおばあに言えたわ。ありがとぉな」

「いや……万事上手くいって良かったわよ……ほんとに……」

 私の行動の結果、御婆さんが意気消沈して一気に老け込んだりしたらどうしようかと思った。

「おばあ、れいのことすごく気に入っとったでなぁ。またいつでもあそびにきんしゃい、って!」

「……また、落ち着いたらね」

 正直、あれからどれほど胃を痛めたことか。

 それに加えて、あの日の自分の格好やらしたことを思い返すと、いまでも顔から火が出るくらい恥ずかしい。

 物凄く刺激的だったのは事実だけど、もう一度同じことはしないし出来ない。

 私はおばあさんのことを楽しく話してくれるなっちゃんの話を一度遮り、聞いておくべきことを聞いた。

「と、ところでさ、なっちゃん。あれから、ご近所さんはどうかな?」

「どうて?」

「だからその……」

 言葉を濁しかけてから、私はなっちゃん相手に今更取り繕っても仕方ないことに気付く。

「……変な噂、立ってなかった? 自転車に乗って走る裸の痴女が出た、とか……」

 誰かに見られていたとしたら、そんな噂が広がっても不思議じゃない。

 なっちゃんは小首を傾げて、そして、応えてくれた。

「ほんな噂は立っとらんで? あ。……もしかして、れい……あんとき裸だったのって……」

「し、しし、仕方ないじゃない! まさかあんな緊急事態が起こるなんて思ってなかったんだもん!」

 顔が真っ赤になるのを自覚しつつ、私はそう叫んだ。

「あ、ごめんなぁ。誰にも言わんから、安心しとって?」

「そうしてくれると助かるわ……」

「……ほやけど、一人であんな格好で出歩いとったら、危ないで?」

「それも、わかってる……」

 あれだけ大胆な露出をしたのだから、暫くは大丈夫だろうけれど。

 私がそんな風に思っていると、なっちゃんが首を横に振った。

「そやなくてな? ……露出するのに適した場所なら、いくつか心当たりがあるって話」

 私が思わずなっちゃんの顔を見つめると、なっちゃんは楽しそうに笑っていた。

「れいはうちとおばあの命の恩人やけぇ。うちがれいのお楽しみを――手伝っちゃるよ」

 そういうなっちゃんの顔には、悪戯が成功した子供のように、輝く笑顔が浮かんでいた。


 夏は終わっても――私の露出はまだまだ終わらないようだ。



To be continued.

Comments

読んでくださり、ありがとうございます!^w^ 実に平和な露出プレイをお送りしました!

夜空さくら

いい話だった!いい話でした! 温かい!

goremz


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