SamSuka
夜空さくら
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箱詰倶楽部の新年会 前

■ 新年を迎えたら、このネタで箱詰倶楽部を書かないといけませんよねぇ!? というわけで久々の箱詰倶楽部シリーズです。大体いつも感じですーw-ウム 今回は技技名無双編。お前、倶楽部やめてちゃんとした研究所いけよとかいうツッコミはNGです。

■ 過去、コラボしていただいた某社のキャラクター様にちょこっとゲスト出演してもらいました。無許可です。怒られたら消します。コラボの件はこちら(https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=10901665)


■ この作品には箱詰め、呼吸制御、完全拘束などの描写が含まれます。苦手な人は回避をお願いします。

■ なお、箱詰倶楽部でのプレイは謎の技術で安全に配慮が成されています。真似をすると死ぬので真似しないでくださいーw-ペコリ

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 箱詰倶楽部の新年会に招待された。

「箱詰倶楽部で新年会って……想像しにくいなぁ」

「普通の立食パーティっぽいけどね」

 私がそう呟くと、案内を熟読していた彼はそう教えてくれた。

 確かに案内には普通のパーティのような内容が書かれている。

「でも、間違いなく普通じゃないんだろうなぁ」

 会員として、何度も箱詰倶楽部を利用したけれど、毎回毎回とんでもない内容やら道具やらで驚かされている。

 きっと今回も普通じゃない新年会になるのは間違いない。

「それじゃあ参加の方向で連絡しとくね」

「ええ、お願い。……箱詰されて会場入りとか、そういうのもあり得るかしら?」

 あの倶楽部ならやりかねない。

 そんなことを考えはしたものの、特にそういう特殊なことはなく、普通にパーティ会場の住所などの連絡が来ただけだった。

 拍子抜けしつつも、それならそれで普通に楽しもうと私と彼は思っていたけれど――


 箱詰倶楽部の新年会が、ただ普通に行われるわけがなかったのだ。


 新年会当日。

 パーティ会場はいつもの箱詰倶楽部の建物ではなく、一般のイベントでも使われる地下のホールだった。

 受付にはいつも倶楽部の受付にいる受付嬢さんが、相変わらず真面目な表情をして立っている。

「ようこそ、箱詰倶楽部の新年会へ。招待状をご確認いたします」

 私たちが招待状を彼女に手渡すと、受付嬢さんはそれを確認して、先に促してくれる。

「本新年会は仮面舞踏会式で行われます。そちらの支度部屋で、『仮面』をお付けください」

 身元がバレたくないという人もいることだろう。

 その形式になっているのは理解出来たので、私たちは素直に支度部屋に入った。

 そこでは、案内役のスタッフが待っていた。

「ようこそ。早速ですが、こちらをどうぞ」

 そう言ってスタッフが手渡して来たのは、ヘルメットくらいの大きさの――箱だった。

 思わず素直に受け取ってしまった。思ったよりも軽い。

 私と彼は揃って箱を抱えて、首を傾げる。

「…………はい?」

「ああ、その箱の底を見て見てください」

 言われて箱を裏返してみると箱の底には丸い穴が空いていた。

 ここに頭を通せということだろうか。

(……正体は隠せるかもだけど……何も見えなくならない?)

 不思議に思いつつ、とりあえずスタッフの指示に従ってその箱を頭に被る。

 ちょうどヘルメットのように、私と彼の頭が箱によって覆われる。目の前に壁がある感じは、箱詰めプレイ愛好家としては慣れ親しんだ感覚なので、なんとなく落ち着く。

「普通の、箱……? わっ!?」

 頭を通した箱の穴の縁が膨らんだ。首が軽く圧迫され、箱が固定される。

 苦しくはないけれど、ちょっとびっくりした。

 箱の穴がほぼ塞がって、本当に真っ暗になってしまう。

「え、本当に何も見え……!?」

 私が呟くと同時に、急に視界が開けた。

 被っていたはずの箱が透明になったかのように、視界がクリアになる。

「いかがですか?」

 スタッフさんがそう聞いて来る――何気なくそっちを見た私は、さらにびっくりする羽目になった。

「きゃっ!? す、スタッフさん、いつの間に……!?」

 さっきまで普通の、お堅いスーツみたいな服を着ていたはずのスタッフさんが、セクシーなバニースーツ姿になっていた。

 ウサギ耳がぴょこぴょこと自然に動いている。

「驚きましたか? 技技名さん開発のヘルメットの効果ですね。私は先ほどまでと全く変わっておりませんよ。ほら」

 そう言ってその人がバニースーツのカフスだけを身に付けている腕を差し出してくれる。

 恐る恐る手を伸ばして手首辺りに触れてみると、確かにカフスの感触ではなく、普通のスーツの感触があった。

「へぇ……!」

 要は周囲の映像を取り込んで箱の内部に映し出す過程で、その映像に編集を加えているということなのだろう。

「お客様同士の顔や体型は見えないようになっておりますので、プライバシーは守られております」

「え……あ、ほんとだ」

「すごいな……ドレス姿になってる」

「あなたも、タキシードになってるわよ?」

 顔も本人とは似ても似つかぬ顔になっているらしい。

 私と彼同士は身内だから、いつも通りの顔に見えてるけど。

 ひとしきりそれを実感した後、私は改めて思う。

「……ほんと、技術力凄すぎるよね」

「ほんとだよねぇ」

「私たちもそう思います」

 スタッフさんまで同意するのだった。

 ともあれ、箱を被った私たちは、パーティ会場に入った。

 中にはすでに結構な数の人が集まっている。

 すごく豪奢なドレスやらスーツやらを着た人たちが普通に談笑している。

「これも全部そう見えてるだけ、なのかぁ……」

「っていうか、地下ホールって言っても、さすがに広すぎるよな?」

 物凄く天井が高いように見えるけれど、たぶんこれもそう見えてるだけだろう。

 私たちが入口付近で圧倒されていると、バニーガールの衣装を着た別のスタッフさんが近づいて来た。

「箱詰倶楽部の新年会にようこそ! 飲食の方法について、ご説明いたします」

 そういえばあまりに自然に感じていたから忘れてたけど、私たちの頭は現在箱に覆われている。

 試しに口に手をやろうとしたら、透明な箱の感触がそれを阻んだ。

 立食パーティっぽいのにどうやって食べろというのかと思っていたけれど、ちゃんとその対策もあるようだ。

「まずお飲み物ですが、こちらをお持ちください」

 そういってスタッフさんに渡されたのは、水の入ったグラスだった。

 それを手に取ると、口の前辺りに何かが出現する。ちょうど自分でストローを咥えようとするあたりの位置に、管が出現していた。

 その管は外側に垂れさがっていて、掴むことが出来た。映像というわけではなく、ちゃんと実在するようだ。

「なるほど、これで呑めばいいわけかぁ」

「すごいな……」

 試しにグラスにその管を刺して飲んでみる。ストローで吸うときのように口の中に水が入って来た。

「ふぅ……」

 吸うのをやめて口を離せば、自動的に管が離れて行った。

 もう一度飲もうと口を開け、反射的にストローを迎えに口を動かしかけると、ちゃんとストローを口に咥えることが出来た。

「……これも何気に凄い技術よね?」

「……ふへぇ。すごいなこれ」

 もはやそれしかいう言葉が見つからない。

 私たちが感心していると、スタッフは今度は食べ物の絵が表示された缶を渡してくる。

「次に食べ物ですが、今回はこちらを御試食ください。箱詰められたままでも食べられる流動食のサンプルなのですが、様々な種類がございます」

「どれどれ……? えっ。これ……シチューって書いてあるんだけど……」

「飲食物を呑む時と同じように、この缶の部分に挿してみてください」

 スタッフに言われるがままそれを呑んでいく。

 流動食は確かにシチューの味だった。触感がないから変な感じだけど。

「うわっ。これって焼き魚!? すごい……!」

「え、どれどれ?」

 彼が食べていた流動食を呑んでみると、確かに焼き魚の味がした。

 すごいキワモノのドリンクを飲んでいるようで、若干不気味ではあったけれど、意外と支障なく飲めるように工夫がされていた。

 長期間箱詰めを行う際には、ずーっと同じ流動食でも飽きるからこういうのがあると、とてもいいかもしれない。

「宇宙食にも使えそうだなぁ」

 彼はそんなことを呟いていた。確かに、こういう形で摂取する宇宙食もありそうだ。

「味はともかく、固形物がありませんから、実際の宇宙食には不向きかもしれません。ろくに顎も使えないこともある、箱詰めプレイのために技技名さんが開発したそうです」

「あの人ほんとになんでも作るね!?」

 彼は心底驚いていたが、私も同感だった。

 ともあれ、飲食の方法も聞いた私たちは、暫く会場の中を軽く歩いてみる。

「こうしてみると、女性の会員が結構多いのね」

「そうだねぇ……もしかすると、男性でも女性の姿に見えてるのかも……?」

「さすがにそれはないでしょ……ないわよね……?」

 VRチャットでは女性の姿をした男性も多いとは聞くけれど。あれはそもそも人の姿すらしてないこともあるから参考にならないか。

「よく見ると、結構な著名人も来てない? ほら、あのあたり……なんかどこかで見たことがあるような……」

「まさか……それこそ、そういう人っぽく見せてるだけでしょ」

「でもあのあたりとか、明らかに一般参加者と違うし……」

「やっぱりあの人、政治家のあの人じゃ……」

「……ま、まさかぁ」

「名札付けてる人は、一般参加者じゃないみたいね……うわ、黒猫のロゴまであるし……ん?」

 一般参加者ではなさそうな人たちの名札を見ていたら、気になるロゴを見つけてしまった。

「ねえ……あれって、ミススラのロゴじゃない?」

「え? あ、ほんとだ」

 ミスト・スランバーは、大手アダルトグッズメーカーだ。

 そのロゴが入った名札を付けた若い女性たちが集まって楽しそうに話をしている。彼女たちと話しているバニーガール姿の小柄な子はきっと箱詰倶楽部側のスタッフだろう。結構密接な関わりがあるらしい。

「ああいうのは、むしろ納得できるんだけどね……」

「箱詰めプレイでも、あそこのグッズには結構お世話になるからなぁ」

 会場の壁際では、箱詰倶楽部で使っているグッズや道具などの展示も行われているようだった。

 それも気になるけど、せっかくパーティに参加しているのだから、他の参加者と話もしてみたい。

 頭の箱のおかげで身バレの心配もしなくていいし。

 私たちがどうしようかと悩んでいる内に、パーティ会場の照明が絞られ、会場の一角に用意されたお立ち台がスポットされる。

 自然と会場中の視線がそこに集中すると、そのお立ち台の上に小柄な女性が上がっていく。

 バニースーツを着たその子は、さっき見かけたスタッフによく似ていた。

(あの子……じゃないわよね。さっきの子たちと一緒にいるし)

 マイクを持ったその子は、豪快な、いい笑顔を浮かべていた。 

 なんとなくその笑顔に見覚えがあるような気がして、記憶を探っていると、その子が声を上げる。

「やあ皆! あけましておめでとう! 今年もよろしくね!」

 パーティの挨拶にしてはフランクに過ぎる挨拶。

 ざわめきが会場内に広がる。ただ、そのざわめきは別にフランクすぎるその挨拶に不快感を覚えたとかじゃなく、その声にどこか聞き覚えがあったからだ。

 それにその豪快な笑顔と、喋り方。

「はっはっはっ! 気付いてない人もいるかもしれないから名乗るね! 箱詰倶楽部技術班主任、技技名だ! 皆いつも私の開発品を楽しんでくれてありがとう!」

 ざわめきはさらに大きくなった。

 技技名といえば、この箱詰倶楽部の会員で知らぬ者はまあいない、オーバーテクノロジー気味な開発品で箱詰めプレイを盛り上げてくれる人だ。

 本来は裏方なはずなのだけど、この人の場合、発明品を自分で解説したがるからよく客の前に現れる。

 そして彼女の最大の特徴は、外国の女性ボディビルダーばりに巨大な体躯をしているということ――発明品のインパクトも相成って一度会ったら忘れられない人なのである。

(本当に……? あ、もしかして『そういう風に見えている』というだけ……?)

 私はそう考えた。それならまだ納得がいくからだ。

 しかし技技名さんの身体とその小柄な体はあまりにも落差が大きすぎる気がする。

 いくら映像に手を加えられるといっても、そこまで現実と乖離したものにすると色々と問題が起きそうだ。

 ステージ上の技技名さんは、そんな私たちの半信半疑の視線を受け、なぜかとても嬉しそうだった。

「はっはっはっ! 皆戸惑ってるね! そう! これは映像に細工をして私を小さく見せている……というわけではないのさ! これぞ恐らく今年最大の目玉となる発明品……遠隔箱詰めロボット! 本来の身体は少し離れた別室でこの体を操作しているのだ! 感覚はほぼ完全にフィードバックされるから、箱詰めプレイを安全に楽しみたい人も使えるよ!」

 またわけのわからないことを言い出した。

 私は呆れればいいのか感心すればいいのかわからなくなってしまう。それは周りの人たちも大体同じだったようで、なんとも奇妙なざわめきが広がっている。

 一般参加者は大体私と似通った反応だったけれど、ビジネスチャンスを感じている企業側の人たちは、その多くが真顔になっていた。

(遠隔操作とかは割と一般的にもある技術だけど……技技名さんのあれは明らかに百年くらいは先を行ってるもんね)

 そういった立場の人たちが真剣になるのもわからないでもない。

 一方、そんな爆弾発言をした自覚がないのか、技技名さんはいつものマイペースで話を進める。

「ともあれ! 今年も一年箱詰め倶楽部をよろしくということで……新年といえば、やっぱりこれだよね!」

 そう言って技技名さんが合図をすると、お立ち台の頭上の空間が歪み、何もないように見えていたところからゴンドラのような何かが降りて来る。

(やっぱり高すぎる天井はただの映像かぁ)

 ゴンドラで降りて来た物、それは、箱詰倶楽部の正月に馴染みの深いものだ。

 毎年この時期になるといつも箱詰倶楽部のエントランスに置かれている。


 『箱詰大明神』と側面に書かれた木製の賽銭箱だった。


つづく


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