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夜空さくら
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箱詰倶楽部の新年会 中

■ お待たせしました! 箱詰倶楽部の新年会の続きです! 早く書かないと季節外れになってしまう……!(割ともう遅い) 次の後編で最後の予定です。


■ この作品には箱詰め、呼吸制御、完全拘束などの描写が含まれます。苦手な人は回避をお願いします。

■ なお、箱詰倶楽部でのプレイは謎の技術で安全に配慮が成されています。真似をすると死ぬので真似しないでくださいーw-ペコリ

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 『箱詰大明神』と側面に書かれた賽銭箱が降りて来て、お立ち台の上に置かれる。

 絶対にそんな神様なんて存在しないだろうに、神なんて銘打っていいのだろうか。

 そんなことをぼんやりと思っていた。

(そういえば、数年前にはあの賽銭箱に詰められる権利、みたいなのが『福箱』の中に入ってたのよね……)

 私は噂でしか知らないが、箱詰倶楽部の賽銭箱が普通の箱であるはずがない。

 その中に人が詰め込める仕様になっているというのは、倶楽部の中では割と当然の常識のようなものだった。

(考えてみれば……賽銭箱の中に人を詰めるようなことをやってるんだし……罰当たりなのはいまさらかぁ)

 こういう滅茶苦茶な倶楽部なのだから仕方ない、と私はしみじみと思っていた。

 そんな私の肩を、一緒に来ている彼が叩く。

「ちょっ、ちょっとっ、あれっ」

「どうしたのそんな慌て……て?」

 物思いに耽っていた私が、彼に促されて賽銭箱の方に意識を戻すと――その賽銭箱の中から、一人の女性が浮かび上がって来ていた。

 まるで幽霊みたいに、賽銭箱の中からするりと現れていた。

「は?」

 その女性の身体はラバースーツやら革の拘束具やらで厳重で縛られていた。箱詰めされている状態のまま浮かび上がっている。

 唖然と私たちが見守る前で、その人を覆っていた拘束具やラバースーツが消える。

 見事なプロポーションの裸身が一瞬だけ晒され――すぐにびしっと整ったスーツ姿になった。

『ん……。箱詰倶楽部の新年会へようこそ。本年も箱詰倶楽部をよろしくお願いいたします』

 そして何事もなかったかのようにペコリとお辞儀をするその人は――箱詰倶楽部の社長さんだった。

 社長さん自身が箱詰めプレイの愛好家だけあって、技技名さんと同じくやたらと関わって来たがる人なため、倶楽部の会員なら誰でも顔を良く知っている。

 そんな社長さんが、空中に浮かび上がっていた。

『なお、私の姿は皆さんに被っていただいた箱頭に映し出された映像――というわけではなく、賽銭箱EXに搭載された立体映像照射装置によるものです』

 どうやら、ホログラムというもののようだ。まあそれなら、まだわからなくはない。

 わからないのは。

「もちろん社長の生身の身体はこの賽銭箱の中に厳重に拘束して箱詰めてあるよ! ここをこうする、と……」

 そう技技名さんが箱の側面部を弄ると、『箱詰大明神』と書かれていた箱の側面が透明化し、箱の中の様子を露わにする。

 透明な板に映像を映し出すだけならまだしも、完全に不透過と透過を切り替えているのはおかしい気もするけれど、もはや普通のことのような気がするから、この倶楽部は恐ろしい。

 ともあれ、そうやって露わになった箱の中には、確かに先ほど一瞬だけ現れた、全身ラバースーツと革の拘束具で覆われた社長らしき人の身体が閉じ込められていた。

 体勢としては、正座した状態から体を前に倒し、出来る限り体を小さくするような体勢だ。

 両手は後ろ手に回してコの字型を作る状態で拘束されており、指先も丸いグローブのようなもので覆われているため、傍目から見えると自由らしい自由は全くない。

 股間部分と胸、そして口の辺りにはコードやら管やらがいくつも取り付けられている。

 それらが責め具だったり呼吸の確保のためだったり、様々な理由で取り付けられているということはよくわかった。

 相変わらずの徹底した箱詰め拘束具合に惚れ惚れする。

 ただ、そうなるとおかしなことがあった。

(さっきの声……録音とかじゃなかったわよね? 箱の中から喋っているのかと思ったけれど……口の辺り、動いている感じがしないような……)

『ふふふ! 素晴らしいでしょう! やっと年末年始を箱に詰められて過ごしたいという私の願望が叶ったのよ!』

 よほど興奮しているらしく、社長は嬉々としてそう喜びを口にする。

 そういえば社長という立場上、どうしてもプレイよりも運営に回らなければならないことも多く、ジレンマを感じているという話も聞いたことがある。

 もしもいま箱に詰められながらも挨拶できているのだとすれば、そのジレンマをようやく解消することが出来たということだろうか。

 社長さんが説明を始めた。

『いま、私の身体には、喉元深くまで突き刺さるペニスギャグが挿入されています。そのため、本来ならこうして挨拶することはできません……』

「そこで今回用いているのが、脳波から直接喋ることが出来るスピーカーさ! コツはいるけれど、これで完全箱詰め状態でも会話や電話ができるってわけ!」

 ってわけ、で済ませられるほど、軽いことではないと思う。

 また技技名さんがオーバーテクノロジーやらかしてる。

「社長は優秀だからね! 想定より遥かにそれを使いこなしてるよ! ちなみに、外の景色もちゃんと見えてるよ! 賽銭箱のここにカメラが付いててね……」

 そういうギミック自体は普通の箱詰めプレイの時にもあったから、おかしくはないけれど。

(確かゴーグルみたいなものの内側に映像を映し出してたよね……あれ?)

 そこまで考えかけて、おかしいことに気付いた。

 社長さんの体の様子は透明な壁を通して見えている。

 それによると、社長さんの頭にはゴーグルらしきものが取り付けられていなかった。

 顔のラインがはっきり出る、革の目隠しが社長さんの目を覆っている。

『ふふふ……以前から思ってたのよね。ゴーグルの内側に映像を映し出す方法は……箱詰め感が足りないと!』

「社長には映像を映し出せるコンタクトレンズを身に付けて貰ってるんだ! 瞼を閉じていても、ちゃんと映像が見えるってわけ!」

 そういう技術は確かにあるけれど。

 さらっと数世代は先を行くのをやめて欲しい。

 私の知る限り、まだまだ実用にはほど遠い未来の技術のはずだ。

 企業関連の人たちが一層ざわめいていた。そりゃそうだ。

「ほんと……この倶楽部って、なんでそういう超技術を箱詰めのため使ってるんだろう……?」

「……それは、言わないお約束だよ」

 思わずぼやいたら、傍にいた彼にそう返されてしまった。

 まあ確かにそうなんだけど。

 私たちが――たぶん会場内のほとんどの人が――そんな会話をしている中で、技技名さんと社長さんは相変わらずのほほんと会話していた。

「理想は頭の中に直接映像を伝えることなんだけどねぇ。さすがにまだまだ難しくて……頑張ってるんだけど」

『それが出来たら、完全に密封した状態でも、外のことがわかるようになるし、最高だけどねぇ』

 いつか体は箱詰めされながらも、自由に動き回り始めそうだ。

 実際、どういう方式で動かしているのかは知らないけれど、技技名さんのいまの身体は完全に義体みたいだし。

 今年も相変わらず、箱詰倶楽部には退屈しなくて済みそうだった。



 その後、挨拶もそこそこに済ませ、新年会が再開した。

 社長の詰められた賽銭箱はなんとタイヤが底についていて、移動まで可能な代物だった。

 箱に詰められたまま移動するということは、以前受付の人がやらされていたのを見たことがあったから、目新しいことではないのだけど――それが目新しいことでないというのもどうなのかと思うけれど――賽銭箱が移動してくるというのはなんともシュールな光景だった。

 社長さんは企業関係の人たちにあいさつ回りをした後で、私たちのところにも挨拶しに来てくれた。

『あけましておめでとう! 楽しんでくれているかしら?』

 向こうからしてみれば、別に太客でもないだろうに。

 普通の利用者でしかない私たちにもそんな風にフレンドリーに話しかけて来てくれる。

「……楽しんでいるというか」

「相変わらず、超技術の無駄遣いだなぁと呆気に取られてますよ」

「ちょっとっ」

『あははは! ありがとう、最高の誉め言葉だわ!』

 社長さんは楽しそうにそう流してくれた。

 まあ本人もある程度自覚はあるのだろう。

 それにしても。

「……わかっていても信じがたいですね。本当にホログラムなんですよね?」

 私は賽銭箱の中に閉じ込められている社長さんの様子を見ながら、その賽銭箱の上に展開している社長さんの身体に手を伸ばした。

 当然そこには物理的には何もなく、手は虚しく空を切っただけだ。

 社長さんがにやりと笑う。

『ふふふ……っ、でしょでしょ? 技技名の技術は世界一なのよ!』

 よくネタで言われる台詞が、冗談で済まないのが怖い。

「……表情とかはどうやって決めてるんですか? 声はまあ納得しましたけれど……」

『基本は全部脳波を読み取る技術よ? 私の感情を反映してるだけだから。私が手動で変えてるのは……』

 そう社長さんが呟くと、そのホログラムの身体が纏っている服が、ラバースーツ状のものに代わる。テカテカとした光沢を放ち、社長さんの艶めかしい体つきを強調する。

『服装くらいね。他にも……』

 社長さんの服装が再び変わる。

 拘束具に身を包み、完全に拘束されている状態になった。

『んぅうぅ、んぅ、ンぅウウウ』

 ちゃんと口枷を付けている状態を反映しているらしく、声がくぐもったものになる。

 感心していると、再び社長さんの服装が変わった。

『あとは全部感情を読み取るのにお任せね』

「へぇ……って、しゃ、社長さんっ!」

 機能の素晴らしさに感心してしまって反応が送れたけれど、私は慌てて隣の彼の視線を遮る。

 彼もちゃんと視線を外していたので、許してあげよう。

 社長さんはきょとんとした顔をしていた。いくら本物みたいにハッキリ見えていても、実体とは感覚が違うのだろう。

「色々、見えてますからっ」

 社長さんは全裸になっていた。

 ホログラムで足の付け根くらいまでは映し出されているから、胸は勿論、股間もバッチリ露わになってしまっている。

 社長さんも遅れてそのことに気付いたらしく、その顔が赤く染まった。

『……ああ、ごめんごめん。完全拘束状態の次は、そうだったわね』

 すぐにホログラムが服を着た状態になる。

 周知で顔が赤くなるところまで再現されているのだから、凄い技術なことに間違いはないのだけど。

 ちょっと気まずい。

 それを感じていたのは社長さんも同じだったのか、おほん、とわざとらしい咳ばらいをする。

『色々と、こういう技術も素晴らしいとは思うけれど……従来の技術も、十分素晴らしいのよ」

 そう言いながら、社長さんは賽銭箱の側面――『箱詰大明神』と書かれた面を私たちに向ける。

 その側面の板が透明になり、中に詰め込まれている社長さんの本体が露わになった。

『新年らしく、初詣してみない?』

 ワクワクという気持ちが隠し切れていない様子で、社長さんはそう私たちを促してくる。

 賽銭箱なのだから当然、箱の上部は格子状になっていてお賽銭を入れられるようになっていた。

「……そうですね、せっかくですし」

「箱詰めプレイの安全を祈願して、お参りするか」

 私と彼は揃って財布の中から十円玉を取り出す。

 その時、社長さんの顔があからさまに残念そうになったのを、私は見逃さなかった。

 お賽銭が少ないことに不満を持ったようにしか思えないが、この社長さんがそのことそのものを残念がるとは思えない。

 ならばなぜ残念そうな顔になったのか――私はすぐに察した。

「……小銭じゃないとダメですか?」

『やった! あっ――ちがっ、い、いまのなし!』

 脳波を読み取って声を出すというのは、割と危うい技術だなぁ、としみじみ思った。

『も、もちろん、小銭以外も大丈夫よ。でもあくまであなたのお気持ちでいいんだからねっ』

 ツンデレみたいな言い方になってるのは、動揺しているのを誤魔化したいからだろうか。

 私はそんな社長さんの反応で、大体賽銭箱のからくりが読めた。

(投入されるお賽銭が多ければ多いほど、賽銭箱に仕込まれている機能が強く発揮されるんでしょうね。……そういえば、去年置かれてた賽銭箱もそんな感じだった気がするわ)

 私が彼の方を窺うと、彼も苦笑を浮かべていた。

 なんだかんだ社長さんは箱詰めプレイという特殊なプレイを安全に、そして盛大に楽しめるようにしてくれている功労者だ。

 割と好き勝手やっていたようにも思うけれど、社長という立場上仕方なく裏方に回ったり、自分のプレイが存分に出来なかったこともあったはず。

 ならば新年の祝いの席でくらい、思い切り気持ちよくなってもらおうじゃないか。

 そう考えた私は、十円玉を財布の中に戻し、紙幣の方から一枚引き出した。

『…………!』

 社長さんの顔が驚愕しながらも、喜びに満たされる。

 私が取り出したのは、一万円札だったからだ。

 若干奮発しすぎな気もしたけれど、躊躇う前にそれを賽銭箱に向けてひらりと放った。

 彼と一緒に手を合わせ、祈る。

「「今年も一年、箱詰めプレイを安全に楽しめますように」」

 一万円札はするりと賽銭箱の中に吸い込まれて行った。


 そして、箱詰めプレイ用としての、賽銭箱の機能がフル稼働し始める。


つづく

Comments

社長にとっては長年の悲願でもありましたからねぇ。新年早々箱詰めされるっていうのは。 おかげでホログラムのスマイルも特上スマイルだったと思います(笑)

夜空さくら

賽銭箱の中で拘束されながらお客さん達を眺めるの楽しいそうですね(๑˃̵ᴗ˂̵)

まい

想像するとシュールすぎて笑えてきますよねw たぶん箱詰めプレイに理解はあるけど、真面目な企業の人たちは愛想笑いも出来ずに苦笑いだったと思われますw

夜空さくら

賽銭箱があいさつ回りして会話しているの面白すぎる)^o^(

まい


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