遺された『もの』を継ぐ者 ~叔父から託された『もの』 その1~
Added 2023-02-03 13:53:58 +0000 UTC■ あらすじ:親戚の叔父が亡くなった私は、なぜかその遺産を相続出来ることになった。相続した屋敷に訪れてみた私がそこで受け継ぐことになった『もの』とは……。
■ 予定外に色々な『もの』を相続することになって、興奮したり奮闘したり堪能したりするお話群になる予定です。今回は『者』を相続した成人男性のお話ですーw-ペコリ
■ お話ごとに、支援者様向けにしたりしなかったりしようと思います。今回のは初めのお話なので全体公開です0w0クワッ!
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私が遠縁の叔父から相続したのは、やたらと古めかしく立派な屋敷だった。
その前に立って思わず唖然としてしまう。
「まじかよ……ちょっと古いけど、十分豪邸じゃん……立地は良くないけど……車で来れるしな」
こんなものを相続してしまっていいのだろうか、と正直思う。叔父は資産家であったが家族はおらず、唯一の兄弟だった私の親もすでに亡くなっているので、私まで相続の話が来たというわけだ。
しかしそもそも、その叔父と会ったのだって結構前で、実は葬式にも参列出来なかった。
悲しいことについ先日まで私はブラック企業に勤めており、両親の死に目にも会えなかったくらいなのである。
働こうとして不義理を働いたわけではないものの、そんな自分になぜこんなデカい遺産が転がり込んで来たのか。
正直、いまだに騙されているんじゃないかという気分になる。
「しかも相続手続きも一切合切を叔父さんの秘書さんや弁護士さんが全部やってくれてるってんだからなぁ……意味が分からん」
おかげでというか、自分は小難しいことを一切考えず、ただこの館に住みさえすればいいらしい。
そこまでして自分にこの屋敷を継がせたかったのだろうか。
色々と気になることは多いが、相続してからにはちゃんと管理していくしかないだろう。
「どうせ暇だしな!」
そう、叔父さんが亡くなってすぐに、私の勤めていた企業は見事に倒産していた。
めちゃくちゃなスケジュールで無理矢理回していたので、たぶんいずれそうなるとは思っていたが、まさかこのタイミングでそうなるとは思っていなかった。
社長が蒸発して、なんかよくわからない間に無職になっていた。
(もしかして、叔父さんが何か手を回してた、とか……? それ叔父さんがいなくなって回らなくなって社長は逃げた……と。……いや、そんなわけないか)
タイミングが良すぎることはちょっと気になるが、まあ偶然だろう。現実は小説よりも奇なりというし。
おじさんが亡くなってからまだ二週間。
わずかな時間でえらく状況が変わってしまったものだ。
ともあれ、秘書さんから受け取っていた鍵を使って館の中に入ることにした。
やたら色んな鍵がまとめられている鍵束の中から「玄関用」と書かれた鍵を使う。
「おじゃましまーす…………うぉ、広い……それに、綺麗だな……」
玄関を開けて中に入ってみると、屋敷内は普通の状態だった。
てっきり多少は埃臭くなっているのかと思えば、全くそんなことはない。
(ハウスキーパーとか雇ってたのかな?)
パッと見た限りでは空気も淀んでなさそうだ。
秘書さんとかが来ていたのかもしれない。
棚ぼたというにはとんでもないものだが、この屋敷が自分のものになったと思うとさすがに少しワクワクする。
「とりあえず、まずはざっと中を見て回って……屋敷の管理ルーティンを決めて……それも終わったら……なにすっかなぁ」
暫くはのんびり過ごしても罰は当たらないだろう。ブラック企業で酷使されている間に趣味らしい趣味もなくなってしまったし、改めて何か始めるのもいいかもしれない。
(そういえば……叔父さんと最後に言葉を交わしたのは、大学卒業の時だったっけ)
お酒を飲めるようになってから会ったのはその時が最初で最後だった。
あまり飲み慣れてなかった私は、結構ぐでんぐでんに酔っぱらってしまい、叔父さんに多大なご迷惑をかけたような気がする。
よくそんな私に遺産を相続する気になったものだ。
(あんまり覚えてないけど……そういや、あの時の叔父さん、妙に機嫌が良かったような気もするな……? 何話したのか、全く覚えてないけれど……)
もしかするとその時の会話に、遺産を相続してくれた理由があるのかもしれない。
ただ、もう叔父さんにそれを聞くことは出来ないので、もはや永遠の謎だ。
そんなことを考えながら屋敷の中を歩いていると、普通の家にはあまりない、珍しいものを見つけてしまった。
「……お? この家、地下室もあるのか」
それは、地下への階段だった。貯蔵庫か何かに繋がっているのだろうか。
ただでさえ広い敷地があるというのに、自分一人で全部管理出来るのか、少し不安になってくる。
それこそハウスキーパーとかが必要になってきそうだ。
「地下室って憧れるけど、いざそれがある家に住むってなると、色々大変そうだな……」
俺は何気なくその地下への階段を下りていった。
ワインセラーとか、何か面白いものがあればいいなと思ってのことだ。
(……そういえば、入居は出来る限り迅速に、って秘書さんに言われたな。何か腐るものでもあるのか?)
パタ、パタ、とスリッパの足音を響かせながら、地下室への階段を下りていく。
地下室だからもっと空気が淀んでいるかと思いきや、空気清浄機が動いているのか、換気がいいのか、特に問題はなさそうだった。
そうして地下への階段を下りると、何やら物々しい鉄の扉があった。
「………………うわぁ、なんというか……」
ある言葉が頭の中に浮かんでしまった。
いかにもそれっぽいというか、それ目的で作られていてもおかしくないというか。
「……あ。あの鍵ってこれっぽいな?」
さっき家の鍵を開けた鍵束を取り出す。現代風な鍵の他に、如何にも古風な鍵が一本紛れ込んでいた。
大きさといい、見た目の物々しさといい、明らかにここの鍵っぽい。
半ば確信を持ってその鍵を使って扉を開く。
(鍵束には他にもやたら鍵がついてるんだよな……家の鍵はわかるとして、他の細々したものはどこで使うんだ……ろ?)
その部屋の中は、至って普通の部屋だった。空調が動いていたのか、普通の感覚だ。
そして、予想外のものがいて自分の目を疑った。
「え……?」
それは、動いていた。
自動的に動く掃除機のようなものなら何も気にはならないが、そこに存在していたのはそう言った物とは全く違った。
人間大の黒い塊が――動いている。
全身がラバーのような何かに覆われており、黒一色の見た目をしていた。
その形は、どちらかといえば人間よりも犬に近い。
短く太い四つの足を動かして、四つん這いで動いている。
頭部に当たる部分もラバー素材の何かで覆われており、のっぺりとしたのっぺらぼうのようだった。
口があるはずの場所は、円形の機械になっていて、穴は塞がっていた。
鼻穴はあいているのか開いていないのかわからない。呼吸音すらしないのはどういうわけだろう。
目の部分にも穴が開いているようにはみえないが若干盛り上がっているところを見ると、密着しているわけではないのかもしれない。明暗くらいはわかるのだろうか。
それとは逆に耳の方は盛り上がっている様子は一切なく、頭部の丸みも合わせて卵みたいな見た目になっている。
よく見れば首には黒塗りの首輪が巻かれており、その細い首をしっかり拘束していた。
人間だとすると、両手両足が半分くらいの長さしかないが、折り畳んでいるため、そう見えるようだ。
腕はまだしも、足の方は明らかに足首から先っぽい突起が外から見てもわかる。
胸に膨らみがあり、腰が細いので、可能性としては女性の方が高そうだ。
その腰には、これまた黒塗りの、パンツのような形の何かが履かされていた。貞操帯というものだろうか。金属の物々しさが伝わってくる。
それはいわゆる――ヒトイヌと呼ばれる類の存在だった。
唖然として見ていると、そのヒトイヌはトコトコと部屋の中を歩き、壁際に移動する。
そしてその壁から突き出していた管を探り当てると、まるで仔牛が母牛のお乳を飲む時のように、口の辺りをその管へと触れさせた。
すると口枷の機械はその管と接続され、何かが流し込まれていく。
(なるほど……ああやって水分補給やら何やらをしているから、二週間放置されてても平気だったわけか……)
私は妙に冷静になってしまった頭で、そんなことを考えていた。
(なるべく早く入居しろ……っていった理由はこれかぁ……完全にメンテナンスフリーってわけにはいかないんだろうな。体とか洗わないといけないだろうし……)
しみじみと私が思考を巡らせていると、ヒトイヌが壁から離れる。
どうやら補給が終わったようだ。トコトコと再び動き始めた。
窮屈なヒトイヌ拘束のままだというのに、そのヒトイヌは思った以上に軽快に動いていた。
運動不足などが心配されたが、全く苦になっていないようだ。
(……うーん。なんか無理矢理連れて来られて監禁されてる、って雰囲気じゃないな)
試しにそのヒトイヌに近付いていってみると、歩く時の振動で気づいたのか、そのヒトイヌが勢いよくこっちに向かって来た。
慌てて膝を突き、そのヒトイヌを正面から受け止めてやる。
そのヒトイヌはぐりぐりと私の胸に頭を押し付けて来て、とても喜んでいるように見えた。
(……いや、表情も何も見えないから正確にはわからないけど……もしも拉致されたんなら、こんな風にお尻を振らないだろう……)
そう、頭をこちらに押し付けると同時に、そのヒトイヌはお尻をふるふる振っていた。
明らかに犬が尻尾を振って喜ぶ時と同じ表現をしている。
もしも意に反してヒトイヌにさせられていたとしたら、こんな風には出来ないはずだ。
(そんな風に躾けられたという可能性はあるけれど……さすがにそこまではわからないな)
叔父さんが自分を指定してこんなすごい屋敷を相続してくれた理由は大体わかって来たので、あとはこの人の意志を確認しなければならない。
恐らくは同意の上だと信じているが、いずれにせよ叔父さんが亡くなったことは伝えないといけないし。
(秘書さんとかはこのことを知ってたのか……? いや、でもあの人滅茶苦茶真面目そうなタイプで怖かったし……多分知らないんだろうなぁ)
そんなことを思いつつ、私はヒトイヌの拘束具を確認する。
なんとなくどれから外せばいいのかはわかるが、前知識なしで外していいのかどうかわからなかった。
「弱ったな……外すにしても……どうやって外したらいいんだ……?」
私は途方に暮れつつ、そのヒトイヌの頭を撫でた。
特に何かを意識したつもりはなかったのだが、ヒトイヌはどこか戸惑っているような感じがした。
叔父さんと撫で方が違ったのかもしれない。
(騙す気はないし、別人だって気付いてくれればそれはそれでいいか)
そんなことを考えながら、私は部屋の中を見渡す。
そして、机があることに気付いた。人が座る用の椅子もある。
一端ヒトイヌに離れて貰い、その机に近付くと、一冊の手帳がその上に置かれているのが見えて来た。
開いてみると、そこには叔父さんの達筆な文字で私宛のメッセージが書かれていた。
『我が唯一の同類たる甥へ。最愛の雌犬を君へ託す』
そんな言葉で始まっていた叔父さんのメッセージによると。
1.彼女は同意の上でヒトイヌになっている。
2.自分の死後、主人が変わることは承諾済み。
3.主人になるのであれば、ちゃんと生活の面倒をみること。
4.基本、世話の仕方はマニュアル通りに。
5.主人にならない場合は、別途マニュアル通りに処理すること。
別途マニュアルというのは、要は彼女を人間に戻すための手続きのやり方だった。
なんでも彼女は対外的には住み込みの家政婦として雇われているらしい。
別に戸籍が存在しない幽霊みたいな存在というわけでもなく、数年前までは普通に暮らしていたごく普通の一般女性のようだ。
「……これ、免許証の写しか? 期限切れてるけど……」
履歴書のようなものがマニュアルの中に含まれていて、その彼女の名前と顔はそれで判明した。
野暮ったい眼鏡をかけて、なんとも冴えない表情を浮かべている。
顔立ち自体はそう悪くないように見えるけれど、別にすごく整っているというわけでもなく、平々凡々な顔立ちをしていた。
(……私がいえた話じゃないか)
私の方こそ、毒にも薬にもならない平凡な顔立ちだ、と揶揄させることは多いのだから。
ともかく、まずは拘束具を外して、本人の意思を確認するのが大事だった。
「えーと、拘束具の外し方は……こっちのマニュアルか」
拘束具の脱着はお世話の範疇に含まれるからか、飼育マニュアルの方に書かれていた。
このラバースーツは特注品で、最低でも一週間は着けっぱなしに出来るようだ。ヒトイヌの飼育にはいくつかスタイルがあるらしく、ざっくり分けると『裸体』『拘束具』『完全拘束』の三種類がある。
『裸体』はそのまま、『拘束具』はラバースーツの有無を問わず拘束具を用いる時の呼び方、そして最後にいま彼女が施されている肌一つ見えない『完全拘束』状態だ。
拘束具の外し方の手順も丁寧に書かれているので、それに従って行えばほぼ問題はなさそうだった。
私は手帳を持ったまま彼女の側に移動し――少し躊躇われたが――彼女の尾てい骨の少し上付近を拳で軽くコツコツと叩く。
彼女の股間は金属の貞操帯が覆っているので、そんな感触になるのだ。
その衝撃を感じた彼女は、ぴくっと体を震わせた後、大人しくその場に正座するように体勢を取った。
これがいわゆる『拘束解除』の状態。
拘束を解除しやすいように、背筋を伸ばして両手を前で合わせていた。
(……従順だなぁ)
中身は人間なのだから当たり前だが、こっちの指示に従ってくれるというのはとてもありがたい。
私は早速、鍵束の中から首輪の鍵を探し出し――うなじの方に向いていた鍵穴に鍵を差し込む。
かちゃりという音がして、彼女の首に巻き付いていた首輪が緩んだ。
つづく
Comments
ありがとうございます~^w^そう言ってくださると大変励みになります! ネタバレですがこの青年の場合はまだ元から素養があったタイプですが、全くそういうのを知らない子がその手の者を受け継いじゃって性癖が百八十度歪む話も書きたいと思ってます!0w0クワッ!
夜空さくら
2023-02-04 02:07:02 +0000 UTCああ、久しぶりに夜空さんの小説を読んだんですが、やっぱり違うな~ このドキドキ、ワクワク感がつたわる書き方はやっぱ夜空さんならではですな~ それにしても豪華な屋敷にヒトイヌ付きの遺産とか、人生が180度変わっちゃいますね~
ミズチェチェ
2023-02-03 17:01:33 +0000 UTC