スライムお嬢さま、会社ごと社畜OLをかう 序章③
Added 2018-12-21 13:58:05 +0000 UTCスライムの不思議な力によって、私は女なのに股間にペニスを生やされてしまった。
パニックにならずに済んだのは私自身、男だった過去の――正確には前世のことを思い出したからだ。
スライムの体に包み込まれた私の――いや、俺のものからは、この世のものとは思えない快感が生み出されていた。この世界にはスライムが存在しないから、この世のものではなくて当然なんだけど。
包み込んでくれているスライムの身体は温かく、滑らかで、ほどよい弾力があった。ぴったりと張り付いてくるような粘着性があるのに、実際に動くとあっさり離れてくれる。吸い付いてくるのと、あっさり離れてくれる両極端な性質がとても気持ちよかった。
以前は毎晩のように楽しんでいて、慣れ親しんだ感覚だったけれど、いまはもっと強力に、気持ちよくなっている気がする。
私が女性として三十年近く生きてきたために、男性の時の慣れを忘れてしまったこともあるのだろうけども。
どろりと全身が溶け出したスライムは、辛うじて人の形を模しているということがわかる状態で、腰を振っていた。
「んぁっ。気持ちいいですか? ますたぁ♡」
私の体に跨ったスライムは、腰を上下だけではなく、左右や前後にもスライドさせて、俺のものに対する刺激を自由自在に変化させていた。
それは非常に手慣れた動きで、過去俺がオナホがわりに使っていた時には決して見せなかった動きだった。
「気持ち……いい、けど……どうし、て……こんな……っ、動き……っ!」
気持ち良すぎて、頭の中が真っ白になりかける。それをなんとかこらえながら、辛うじて言葉を絞り出した、
それを受け、スライムは腰の動きを止めないまま、少し恥ずかしそうに身を捩った。
『ますたーに気持ちよくなって欲しくて、練習、したんですわ。……ああ、ご安心くださいませ。この体にマスター以外の物を受け入れたりはしておりません♡ ああいったオモチャを使ったんですの』
そういってスライムはさっき気絶した社長を指差す。
心を折って服従させた、奴隷のような存在を使ったということだろうか。
そう考えた私の予想は、まだまだ甘すぎた。
スライムの抜けた指先から、細く糸のような何かが社長に向けて伸びる。
それがスライムの体の一部であるとわかったのは、その細い糸が社長の体に当たると同時に瞬く間に体積を増して、社長の体を覆い尽くしてしまったからだ。
それはスライムの体らしい半透明な液状のもので、社長にしてみれ突然水の中に叩き込まれたことに等しかったのだろう。目を見開き、溺れた者らしい無茶苦茶な動きで暴れる。
「えっ、ちょっと! 何してるのっ」
殺してしまうのではないかと焦った私に対し、スライムは落ち着いたものだった。
「ご安心を。死にはしませんわ。……肉体的には」
「な、なんだ。それなら……ん? ちょっと待って最後に何か付け加えなかった?」
スライムは気のせいですわ、なんて言って流したけど、明らかに物騒な言葉が付け加えられていた。
不安に思いつつも社長の様子を見ていると、その動きが緩慢になると同時に、半透明だった液体が急に濁り、中の様子が見えなくなった。液体で出来た繭に捕らわれているみたいだ、となんとなく感じた。
中で何が起きているのかわからないまま、数十秒が経っただろうか。
丸っこくなっていた液体の繭が、グニャリと歪み、どろりと溶け出した。中に閉じ込められていた社長の姿が露わになる。激しく咳き込んで、生きてはいるみたいだった。ちなみに社長を解き放ったあと、液体はすぐにスライムの身体に合わさり、消えた。
(……あれ? 社長、なんか小さくなってる……?)
それが社長だと、私以外にはわからなかったに違いない。
私とて、社長がその液体に飲まれた瞬間をみていなければ、それが社長だなんて思わなかっただろう。
「げほごほっ! な、なにが……んんっ、な、なんだこれはぁ!」
甲高い声で、社長が悲鳴をあげる。いままでの社長の低音ボイスは影も形もなかった。
それも当然だろう。
社長だったはずのその人は、可愛らしい美少女へと姿を変えていたからだ、
恐らく私にペニスを生やしたのと同じ力で、社長の身体全体を変化させたに違いない。
男性であったはずの社長は、とても可愛らしい十代後半の美少女の姿になっていた。
元々禿げてはいなかった社長だけど、男性らしく短く切り揃えていた髪は、腰に届くほど長く、うばたまの、という形容詞が似合う、ロングストレートで艶やかな黒髪に。
恰幅が良かった身体つきは、豊満な乳房が揺れるほどの発育とスタイルがいい女体に。
きめ細かく白い輝く肌は、残業続きで荒れ果てた私のそれより遙かに優れていて。
丸い大きな瞳は、吸い込まれるほどに綺麗な魅力に満ちていた。
どこからどう見ても美少女であり、社長だったという面影はどこにも残っていなかった。単純な性転換ではなく、これはもはや社長という存在の否定に等しい。
本人は自分に起きた変化を受け止め切れていないのか、呆然と自分の胸や股間をまさぐって、あまりにも変わり果てた自分の姿に唖然としているようだった。
『どうですか、ますたー? 可愛らしく作れたと思うのですが……こうやって作り替えた肉のおもちゃを使って、ご奉仕の練習をしていたのですわ』
人間の身体を丸ごと作り替えておきながら――さらに言ってる内容からすると、その上で憑依するように操れるらしい――スライムは微笑んでいた。
私を見る目が期待に輝いているのは、褒めて欲しいからだろう。
前世で私が俺だった時、俺が教えたことをきちんとやった後、こんな感じの気配を滲ませていたからわかる。
「あー……えーと……うん、可愛い……と思うよ。すごいすごい」
躾け通り、よくやった時は褒める。私は俺だった時に徹底していたテイマー方針に従い、スライムの身体を撫でてあげた。スライムがめちゃくちゃ喜んでいるのが伝わってくる。
『えへへ……ますたぁ♡』
ただ、身体を作り替えられた本人にとっては「すごい」で済むことではないだろう。社長が――元・社長だった美少女がスライムに向けて抗議の声を上げる。
「おい! 元に戻してくれ! 会社を売れば俺には何もしないって言ったじゃ無いか! これじゃあ家族にもわかってもらえな――」
『お黙りなさいな』
私に向けるのとは全く違う冷めた声で言い放ちつつ、スライムが元・社長に向けて指を振る。
その瞬間、端正な美少女の顔が崩れ、のっぺりとした肌色一色の、のっぺらぼうになってしまう。当然、鼻も口も無くなってしまうのだから、元・社長は声もあげられなくなった。苦しそうに爪を自分の顔に立てているのは、呼吸もできないからだろうか。
「ん、ん~~ッ! んんん~~~ッッッ!」
もがき苦しみ、元・社長は恥も外聞もなく、地面をのたうち回る。
それはまるで浜辺に打ち上げられた魚が、最後の抵抗で跳ね回っているようにも見えた。
スライムは眼があればさぞ冷たい眼で見下しているとわかる気配を放っていた。
『全く、せっかく可愛い姿と声にしてあげましたのに……見苦しいですわよ』
もう一度スライムが指を振ると、元・社長の身体がぐにゃりと歪んだ。
手足が折れ曲がるように身体に巻き付くと、頭部を中心とした肉団子のような形状になって地面を転がった。
普通の人体ではあり得ない球体にされてしまったのだ。
肉団子はぴくぴくと声もなく震えており、一応、生きてはいるようなのだけど。
『そもそも、私は会社ごと買ったんですわ。会社ごとということは、その中にはあなたも含まれるということですわ。マスターを苦しめた者達を無罪放免にするとでも思っていたのであれば……ご愁傷様ですわね』
にっこりと笑っているであろうスライム。
『特に、元凶であるアナタを逃がすわけがないでしょうに』
私のためにやってくれていることはよくわかったけども、やっていることは鬼畜そのものだった。
そして、スライムの言った言葉からすると、疑問に思えることがいくつかある。
「えっと、もしかして、なんだけど……」
『なんでしょうか! マスターっ!』
さっきまでの殺伐とした空気はどこへやら。
活き活きと嬉しそうにしているスライムは、ここだけ見れば普通に可愛い。
けれど、私は理解してしまっていた。
「そういえば、今日誰も会社に出社してこなかったんだけど……君が、何かした?」
それは疑問というよりは、確認だった。
スライムは「取るに足らないことですが」と前置きをして。
『マスターを長年苦しめた者達ですわ――当然、全員確保済みですの』
ある意味想像通りに、想像を超えてきた。
『ああ、ちょうど良く来たようですわね』
何気なく言ったスライムが、私の身体を押さえている部分を動かし、窓際へと連れて行く。私はほとんど抵抗できないまま、窓際へと連れて行かれた。窓際に立った私の背後から、スライムが覆い被さってくる。
『下をご覧くださいませ、マスター』
社長室の窓からは会社の搬入口が見え、そこにやたら大きなトラックが入ってくるところだった。
「あれは……?」
スライムは見ていればわかると言いたげに、何も言わなかった。
トラックが停車し、中から無個性な運送員が出てくる。制服を着ているから、というだけじゃなく、なんというか、本当に個性が感じられなかった。キャップを目深に被っていて、どんな顔や髪型をしているかもわからない。
そんな運送員たちが、手早く荷下ろしの作業に取りかかる。トラックの中から現れたのは――。
小さな檻の中に窮屈に閉じ込められた、美少女たちだった。
ただ檻に閉じ込められているだけではなく、それぞれが全く違う拘束具を身に纏わされているのが見える。時にはあられもない格好で檻の中に閉じ込められている者もいる。
さっきの光景を見ていなかったら、誤解していたかもしれないけれど、さっきの変化を見ていた私には、その彼女たちが、誰なのかを察するのは容易だった。
「ま、まさか……」
『ご明察ですわ。マスター♡ 私はこう申し上げました――この会社ごと、マスターを買ってしまいました、と』
それがまるで当たり前のように。
『会社というのは、そこで働いている社員がいて、初めて会社として成り立つものでしょう?』
ですから、とスライムが耳元で囁く。
『当然、従業員の皆様も合わせて購入しましたわ♡ マスターの好みに合うよう、ちょっと仕様の変更はさせていただきましたけども』
まるで買った物の話をしているかのような気軽な様子で、スライムは言う。
『ちゃんと個々の意思は尊重したんですのよ? ちゃんと、再雇用の形を取りましたわ。ちょっと契約の内容は変えましたけど、皆さん給与のお話しをしたら契約書を見もせずにサインしてくださって♡』
(うん、絶対わかってやったよね)
そうツッコミを入れたくなったけど、我慢した。
もうすでにここまでやってしまっていることだし、半ば詐欺のような手法とはいえ、自業自得な面もあるし。
なにより――ちょっとざまあみろって思っちゃったし。
そう思ってしまった時点で、このスライムを怒る権利も窘める資格も、私にはないのだ。
つづく