SamSuka
夜空さくら
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スライムお嬢さま、会社ごと社畜OLをかう ~起床から朝食まで~


 愛しの我が家が見えて来て、俺はようやく安堵の息を吐くことができた。

「あーあ、死ぬかと思った……」

 ボロボロになりながらも、なんとか命だけは拾って冒険から帰ってくることができた。

 簡単な薬草摘みの仕事のはずが、運悪く巨大熊に遭遇してしまった時は、本当に死ぬかと思った。咄嗟に殺人蜂の巣を刺激して双方を争わせなかったら、今頃俺は骨になっていただろう。

 殺人蜂が全て巨大熊の方に行ってくれたのは幸運だった。多少は刺される覚悟をしていたのだが。これが不幸中の幸いという奴か。

 ただ、その後は逃げるのに必死で、せっかく摘んだ薬草も籠ごと置いてきてしまった。

 結局くたびれ損だ。ただでさえかつかつの生活だというのに。このままだと冒険者稼業も続けていられなくなる。

(一攫千金を狙ってダンジョンに潜るしかないかもしれないな……)

 ダンジョンは上手くすればいい収入を得られるが、その分危険も段違いだ。頼れる斥候などの仲間がいない俺にはかなり厳しい場所である。

 今後のことはまた後で考えることにして、ひとまず俺の仲間たちを労うことにしよう。

 最初に、肩に止まっていた小鳥に声をかける。

「お疲れさま。帰ってこれたぞ」

 俺の片手の掌に乗るくらいの大きさしかない小さな鳥は、囁き鳥と言われる種族だ。一応モンスターの一種だが、魔力を持たない動物と大差ない。

「きゅい!」

 囁き鳥は人懐っこくて育てやすいモンスターだ。身体が小さく臆病なので、手紙を運んだりは出来ないし、ちょっと危険な場所には連れて行けないけど、俺にとっては十分役に立つ存在だった。

 駆け出しモンスターテイマーの俺にもよく懐いてくれているし、今回も巨大熊の接近に反応してこいつが啼かなかったら、俺は為す術もなく殺されていたかもしれない。

 しきりに頭を首筋に擦りつけて来て、ふわふわと柔らかい羽毛が気持ちいい。指先で軽く撫でてあげてから、その身体を掴んで家のポストの上に降ろす。ご飯として花の種をおいてやり、もう一度頭を撫でた。

「ゆっくり休んでくれ、きゅー」

「きゅい!」

 きゅいと啼くからきゅー。我ながら安直な名付け方だ。

 囁き鳥に名前を付けるモンスターテイマーは少ない。大抵のテイマーは囁き鳥を手懐けるのに慣れたら、もっと冒険の役に立つ鳥に乗り換えてしまうからだ。俺がきゅーを飼い続けているのは、依頼の成功率が低すぎてお金も信用もないためである。

 いまではすっかり情が移ってしまって、手放せなくなってしまった。

 他にも俺は数匹のモンスターをそれぞれの寝床に戻していく。どれも初心者向けで懐きやすく飼いやすいが、一定以上の技量を持つモンスターテイマーならすぐに乗り換えてしまう類のモンスターだった。

 だが、俺にとってはどのモンスターも大事な冒険の相棒だ。

 町外れの荒ら屋に住んでいるのも、安い以上にこいつらがいるためだった。ここに住んでいるのは金銭的な必然に駆られてのことだが、これはこれで良かったと思う。

 冒険の後始末や貧しい夕食を終え、人心地ついた俺はベッドに寝っ転がった。ゴミ捨て場から拾ってきたこのベッドは、スプリングが壊れていてベッドらしい柔らかさはないが、床に寝るよりはマシだ。

 身体は疲れているが、死にかけたせいで神経が尖っていて、このまま眠れそうな気がしない。こういう時は眠れるように、気を静める必要がある。

 俺は常に腰に提げている水筒を手に取り、蓋を取って中を覗き込む。

 水筒の中は青い透明な色の水で満ちていた。指先で軽く突いてやると、その水は俺の指先に絡みつくようにしてすり寄ってくる。

 俺が飼っている可愛いモンスターの中の一匹、スライムだ。

 最初に従魔にしたモンスターであり、付き合いも長い。水筒に入れてずっと連れ歩いているので、純粋に一緒にいる時間だけ考えても、下手すれば親よりも長いかもしれない。

 それにこのスライムには他のモンスターには出来ない特別な役割があるから、俺の愛着もかなりのものがあった。

「いつも通り、頼むぜ」

 良いながら俺はズボンをずり下げ、大きさだけは一人前のそれを露わにする。

 スライムは勝手知ったるとばかりに、水筒から這い出て来て、腕を伝って移動し、そして俺のペニスめがけて飛び降りた。

「うぉっ、ほっ」

 いきなり冷たいものがそこに張り付いてきて、構えていたのに思わず変な声が出てしまった。スライム以外誰も聴いていないとはいえ、少し恥ずかしい。

 そんな俺の気持ちには構わず、スライムは俺のものの表面を動き回る。

 本来スライムの粘液というのは消化液であって、危険なものだが、スライムの意思次第でその粘液は無害なものにすることも出来る。このスライムは良く慣れているので、少し粘度のある、とても気持ちいい状態の粘液を分泌してくれていた。

 本物と比べたことがないからわからないけど、女性の膣で分泌されるものより気持ちいいんじゃなかろうか。気持ちいいのはスライムの身体が流体で、元々柔らかいというのもあるのだろうけど。

「う……っ、これは……やばい……っ、また技を……磨いたな……!」

 本来スライムという魔物は、あまり知性がある方ではない。けれど、このスライムは俺がこういうことを毎日のようにさせているからか、妙に技巧派だった。

 刺激しては離れ、また刺激しては離れる。その繰り返しが大層気持ちよく、俺のものはあっという間に天高く屹立してしまっていた。

 それを待っていたと言わんばかりに、スライムの動きが速くなり、締め付け、撫でさすり、扱いて、舐める。

 その経験はないが、きっと経験豊富な娼婦並だろうテクニックを前に、マスターたる俺は情けなくも圧倒され、ほとんど耐えるということも出来ずに射精するのだった。



 そして――『私』は眼を覚ます。



 どうやら夢を見ていたようだ。

 瞼を開けた視界に、見慣れたアパートの天井が見えた。

 窓の外が明るくなっていて、朝が来たのを知る。

(あー……いまなんじだろ……はやく、おきなきゃ……)

 社畜OLの朝は早い。本来なら明るくなる前に起きて家を出なければ、始業開始の三時間前には間に合わない。

 明るくなっているということは完全に遅刻であり、もはや叱責や減給は免れないだろうけど、社会人である以上は行かなければならない。

 そう自然に思って、起き上がろうとして。


 自分の股間に聳え立っている、生々しい肉棒に気づいた。


 思考が停止する。三十年間女として生きてきたはずの私にとっておかしなことに、それは実にしっくりくる感覚だった。まるでそれがあるのが自然だった頃があったかのような。

 停止した思考の中で、身体はただ事実を認識し始める。

 女性であるはずの私の股間に、男性器――ペニスというものが生えて、硬く膨張していること。

 それ以外の私の身体は記憶にある通りの形だったけど、裸で寝る趣味はないのに、なぜか一枚も服を身につけておらず、全裸でベッドに寝転がっていたこと。

 そして――股間の付近からなにやら青い液体が滲み出し、山のように盛り上がっていっていること。

 その液体は私の下半身を押さえるように覆いながら、徐々に形を変えていく。

 気づけば、その液体は人の形を作っていて、そして、それは眼を見張るような美少女の姿になっていた。

 股間にペニスを生やした私の腰の上に、全裸の美少女が跨がっている。

 訳がわからない状況に、頭の回転が追いつかず、ただ呆然とすることしか出来なかった。

 そんな私の上に跨がったその子は、ゆっくりと瞼を開く。長い睫が影を落とすほどで、ただひたすらに美しいという感想しか出てこない。

 その美少女の目が、私を見据え、どうしようもなく甘く蕩けた視線を向けてきた。

「おはようございます、ますたぁ♡ 昨夜は久々に気持ちよかったですわね♡」

 彼女は私の胸にすり寄るようにして甘えてくる。

 互いの乳房が押し合い、擦り合う感覚も気持ちよかったけど、それより大変だったのは股間の方だった。

 私の腰に跨がった彼女が上半身を押し付けてきたものだから、硬く膨張している私のものが彼女のお腹と私自身のお腹に挟まれて、圧迫されていた。

 滑らかなお肌に擦られるという感覚がどれほど気持ちがいいかは言うまでも無い。

「ちょ……っ、やめっ、だ、めぇ……っ!」

 慌てて彼女を引き離そうとしたけど、間に合うはずもなく。

 そこから感じる激しい快感に、頭の中が真っ白になって、女性としての絶頂と、男性としての絶頂が同時に襲いかかってきた。

 彼女との間で押しつぶされた肉棒が、別の生き物のように痙攣する。

 熱いものを盛大にお腹にぶちまけてしまった。白い液体が私の身体と彼女の身体の隙間に広がっていくのがわかる。

 それを彼女も感じたのか、すり寄ってきていた身体を一端離し、べとべとになった私の身体を見下ろす。自分のお腹にも少し飛んでいることに気づいた彼女は、それを自分の指で掬いとった。

 そして、とても優しい笑顔で私を見てくる。

「あらあら……この程度の刺激で出してしまわれたんですのね」

 指先に付着した白濁液を、艶めかしく舌で舐め取る彼女。

 私は恥ずかしくて仕方なく、穴があったら入りたい気分だった。

「恥ずかしく思う必要はありません。昨日少しやり過ぎてしまいましたから……身体が敏感になってしまっているのですわね」

 言いながら、その子の手の平が私のお腹に触れる。そこに付着したものも舐め取る気かと思い、止めようと口を開いた。

「ま……まっ、て……?」

 けれど、目の前で起きた現象に意識を持って行かれてしまった。

 その子の手がぶちまけられた白濁液に触れると、まるで布か何かで拭いているかのように、跡形も啼く消えていってしまっていたのだ。その彼女の手は少し半透明になっていた。

 人間にしか見えないけど、彼女はスライムなのだった。身体の一部分だけをスライムの身体に戻し、その部分で精液を吸収したのだろう。

「すぐに綺麗にできますから大丈夫ですわ。……でも、ところ構わず出されてはもったいないですから」

 その子は小悪魔のように笑い、私の股間にあるものを片手で掴んだ。

 一度出したばかりだというのに少し萎えただけで、すぐにでも再び膨張しそうなそれを包み込むように握っている。

 彼女の手のひらのすべすべとした気持ちいい感覚に浸るも刹那。

 なにやら冷たいものが巻き付いてきて、軽く痛みを感じるほどに締め上げられた。

「いだっ」

「これでいいですわ。少し我慢してくださいませ」

 スライムが手を離すと、ペニスには青いベルトのようなものが巻き付いていた。スライムが身体の一部を切り離して造ったものなのだろう。器用なことをする。

 というか、スライムの身体は流体だったはずなんだけど、いまの状態だと完全に硬いラバーだ。恐る恐る手で触れてみると、まさにそれっぽい感じがして、仮に刃物を使ったとしても切れそうにない。

 ぴくぴく痙攣するペニスは、刺激に反応して勃起しかけるけど、青いベルトがそれを阻害する。

「あだっ、いたたたっ! ちょ、これ、ものすごく、痛いんだけど!」

 物理的に勃起を制限されているせいで、めちゃくちゃ痛い。涙目になってスライムに訴えるも、彼女はニコニコと笑顔だった。

「あらあら、マスター。触ったらダメ、ですわよ?」

「そんなこと言ったって……」

 意識してしまうと、それだけで勃起してしまうのだから、触る触らないが問題なのではなかった。努めて意識を余所に向けようと、私はスライムを見る。

 スライムの身体は美しかった。同性から見ても、だ。モデルが職業の人と比べても美しいかもしれない。

 なおかつ、男性から見れば非常に魅力的な肢体でもあった。

 前世で男性だった頃のことを思い出した私は、基本的には今の女性としての感覚でいるけれど、たまに昔の感覚が蘇ることがある。

 スライムの美しくも艶めかしい身体はそれを刺激するのに十分なものだった。

「っ……あの、起きれないから、退いてくれない?」

 思わず反応しそうになるのを感じ、視線を横に滑らせる。スライムは残念そうな顔をしつつも、素直に身体の上から退いてくれた。

 私は股間に生やされたものをなるべく刺激しないようにしながら、起き上がる。

 スライムはベッドの横の床に正座して、私をニコニコと見つめていた。

 全裸の美少女に傅かれている王様にでもなった気分だけど、私は前世でも今世でもそんな立場になったことはない。

 前はうだつの上がらない冒険者だったし、今は社畜と言われるただのOLだ。

 ブラック企業に勤めて早数年。もう何年かしたら過労死していたか自殺していたか。そしたら多少新聞を賑やかすくらいはしたかもしれないけど、すぐに忘れ去られてしまう程度の存在だった。


 そんな私の前に現れ、すべてを変えてしまったのが、目の前にいるスライムだった。


 スライムは社畜OLに転生した私をいまだに「マスター」として慕ってくれているらしい。私に会いたいがためだけに異世界から転移して来たというのだから驚きだ。

 前世での記憶にある限りでは、ただのスライムだったはずなのだけど、前の俺が死んだ後に一体どんな出来事があったのだろう。いつか聴いてみたい気もする。

 この世界にやって来たスライムは、この世界にはあり得ない能力を用いて、途方もない資産と権力を築いているらしい。

 外見も相成って、このスライムこそ、上流階級のお嬢様として周りに傅かれているべきだろう。

 そんなスライムは私の勤めていた会社を、私ごと「かって」しまっていた。

 いまの私の状況を考えると「買われた」のか「飼われている」のかは微妙なところだ。

 正座してこっちの動きを待っている辺りは、従者らしい従順な態度だけど、性的な責めは容赦が無いし、射精を制限されていることもそうだけど、他にもかなりの範囲で自由を奪われている。

 社畜なだけあって拘束されたり制限されたりすることには慣れているから、別にこれという問題はないのが哀しい。

「ご飯の準備が出来てますわ。すぐにお持ちしますわね」

 スライムがそういうと同時に、キッチンの方から食卓ごと朝食が運ばれてきた。スライムの身体らしきものが机を持ち上げて運んでいる。単純な力も強いあたり、万能にもほどがある。

 運ばれてきた食卓はかなり大きいもので、豪勢な食事がずらりと並べられていた。元々そんな大きな机はなかったはずだから、どこからとも無く運びこんで来たのだろう。もうこの程度では驚かない。

 並べられている食事は、毎食エナジーチャージのゼリーかエネルギードリンクで済ませていた私にしてみれば、料理名すらわからないものばかりだ。

 とりあえずなんだか高そうというか、凄い。

 スライムも一緒に食卓に着くと思っていたら、そういうつもりはないらしく、私の膝の上に乗り、手ずから料理を私の口に運んでくれた。

 甘々の恋人同士でもそうはやらない食事スタイルだ。

「はい、マスター。あーん、ですわ」

 自分で食べてもよかったのだけど、抵抗する気も起きなくて、スライムに促されるまま、ひとつひとつ口に納めていく。

 味は、正直よくわからなかった。

 美味しいという気はしたけど、気がしただけで美味しいのかどうかよくわからない。私の舌が長い社畜生活のために馬鹿になっているからだろう。

 私の反応からそれを察したのか、スライムが私の顎を掴み、口を開かせる。

「むぅ、味覚が死んでますわね。これではせっかくの手料理が味わっていただけませんわ」

 てっきり料理人か誰かに作らせたものだと思っていたので、手料理だと聴いて驚いた。

 これらの料理が作れるとすれば、プロ並みの腕前だと思うのだけど。

「ふぉ、ふぉめん……」

 せっかく作ってくれたのに申し訳なくて謝ると、スライムはにっこりと笑顔を浮かべた。

「いいんですのよ。治せばいいだけのことですわ。……失礼いたします」

 そう断るや否や、いきなり口に指を突っ込まれた。

 私が眼を白黒させている間に、スライムの指が私の舌を掴む。人の形をしていたその指が、どろりと溶けて舌に融合してくるような感じがする。

「……あまり感覚を鋭くさせすぎると、発狂しかねませんから、慎重に……ほどよく神経を作り替えて……と」

 スライムが真剣に作業をしているから、私は黙ってそれを受け入れることしかできなかった。舌が少しヒリヒリする。何かしらの処置をされているのは間違いない。

 それにしても、私もスライムも服を身につけていないから、なんだか妙な気分だ。全裸で食事を取ることも普通ないので、より恥ずかしい。

 スライムはしばらく私の口内を弄くった後、満足げに頷いて指を私の口から抜いた。涎が糸を引いてスライムの指と私の口の間をアーチ状に繋ぐ。

「わたくしの身体を浸透させて、味覚を復活させましたわ。ささ、改めて食べて見てくださいませ」

 味覚の復活なんてどうやったのかさっぱりわからないけど、改めてスライムに食べさせてもらった朝食は、驚くほど美味しかった。

 やっぱり、味覚って大事だ。

 美味しい朝食を快くまで堪能した。あまりに美味しかったので、途中からスライムに食べさせてもらうことも気にならなくなった。

 小鳥が親鳥に餌を運んでもらうのに疑問を抱かないように、スライムが料理を差し出してくれる度に、大きく口を開いて料理を受け入れる。

「ああ……ますたぁ、お可愛らしいですわぁ……♡」

 なんだかスライム側も倒錯的な喜びに浸っている気がしたけど、気にせずたくさん食べさせてもらった。

「ふぅ。ごちそうさまでした。美味しかったよ」

 朝食でお腹いっぱいになるなんて、何年ぶりだろうか。

 服を身につけていないからお腹がぽっこりしているのがわかりやすい。それはちょっと、いや、かなり恥ずかしかったけど、満たされているのがよくわかる。

「お粗末様でした。ふふふ……マスターに食べてもらえて、わたくしも料理の腕を磨いたかいがありましたわ」

 どこまでも私のためであったようだ。それ自体は嬉しいけど、私にそこまでの価値があるのか疑問だったので、何も言えなかった。

 ともかく、朝食も摂ったし、身支度を整えることにしよう。

 ずいぶんゆっくりとした朝になったけど、いまから準備をして出れば十分通常の業務時間には間に合うはずだ。社畜としては遅刻だけど、普通の社会人としてはほどよい出勤時間となるはず。

 社畜としての感覚が心の片隅で警鐘を鳴らしているけど、お腹いっぱいになるまで満たされているからか、そこまでの焦燥感は覚えなかった。

 私は食後のお茶まで呑ませてくれたスライムにお礼を言いつつ、部屋の中に視線を滑らせる。しかし、目的のものは発見できなかった。

「ええと……あの、服を着たいんだけど……?」

 私は日々着るスーツを何着か壁に掛けていた。オシャレなど無縁な生活をしていたけど、最低限の身だしなみは整えておかないと叱られるので、ある程度の周期で数着のスーツを着回し、体裁を保っていた。

 けれど、いまこの部屋の中には、壁にかけていたはずのスーツが一着もない。

 昨日家に戻ってきた時に着ていたスーツすら、どこにも見当たらないのはどういうことなのだろうか。

 不思議に思って、スライムに尋ねると、スライムの彼女はニヤリという擬音がぴったりの笑みを浮かべた。

「服は全て処分させていただきましたわ。だって――」

 膝の上に座っていたスライムの身体が半透明になり、液状に溶けて広がっていく。

 私の身体を覆うように。


『これからマスターには私を『着て』もらうんですもの♡』


 スライムお嬢様との一日は、こうして始まる。


~身支度から出社~につづく

Comments

kenさん、今年も悶えていただきありがとうございます^w^ こんな可愛くて尽くしてくれるスライムがいたら最高でしょうねぇ……0w0フフフ…… 今年も頑張って書いていきますので、楽しんでいただけたら嬉しいです^w^

夜空さくら

新年一発目から悶えながら楽しませて頂きました💕💕 こんなスライムがいたらいいなぁ💕 続きが楽しみです💕💕 あぁ…自分の根元にもスライムの拘束具をつけて欲しい。。。

ken


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