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夜空さくら
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スライムお嬢さま、会社ごと社畜OLをかう 最終話

 会社の終業時間。

 それは昨日までは『タイムカードを押す』ためだけの時間であって、その時間で『仕事が終わる』という意味ではなかった。

 タイムカードを切った後はまたデスクに戻って仕事を続ける、というのが昨日までの普通の、日常的な流れだった。

 けれど、今日からは違う。

「あら、今日の仕事は終わりですわね、マスター。一端社長室に戻りましょうか」

 そうスライムは呟き、私を連れてエレベーターホールへと向かう。

 その途中、スライムがこの世界で雇った社員達と出くわした。

 彼女たちは帰り支度を終えて、いままさに帰るところだったようだ。

「お疲れさまでした~」

「気をつけて帰るんですのよ」

 彼女たちはスライムとそんな朗らかな挨拶を交わし、そのまま会社の外へと出て行った。

 空はまだ明るく、彼女たちはこれからの予定を話しながら楽しそうに帰って行く。本当に、昨日までとは状況が変わったのだと改めて感じた。

 ただ、少し気になることもある。

「あの人たちはいいとして……元々いた社員の人たちは終業時刻になったらどうしてるの?」

 昨日まで自分がそれを強要されていたとはいえ、だからといって自分もそれをあの人たちに強要するのは、なんというか、すこし後ろめたいものを感じるのだ。

 それは優しさというよりは、立場が変わっただけで同じことをするような卑怯者になりたくないという、偽善的な、後ろ向きな意味合いだった。

 だけど、スライムは呆れたように溜息を吐きながら片手を頬に当てる。

「ふぅ……マスターはお優しいんですから。大丈夫ですわ。終業時刻が来れば、あの者達にもちゃんと休んでもらっております。あくまで仕事で、社員ですもの」

 早々に壊れられてもつまらないですし、と付け加えられていたのはさておき、ちゃんと休ませているという事実にほっとした。

「それなら、いいんだ」

 ただ、スライムのいう『休んでもらっている』というのは、きっと『普通に仕事から解放される』というわけではないのだろうとわかっていた。

 わかってはいたけど、そこまで突っ込んで聞くつもりはなかった。

 昨日までの私のように、二十四時間三百六十五日働かされるようなことがないなら、それでいい。

 私はスライムと一緒に社長室へと戻る。

 スライムは執務机の前に移動してパソコンを起動し、手早く何かを確認し始める。おそらくメールチェックなどの雑務だろう。

 それを終えると、再び私のところに戻ってきた。

「お待たせしました。わたくしたちの家に帰りましょう、マスター♡」

「あ、うん。わかっ――んあっ」

 普通に帰るのかと思えば、やはりそんなことはなく。スライムはそのお嬢さまの外見を解き、私の体に絡みついてきた。

 足先から這い上がるようにして、すでにスライムによって覆われていた私の体を、もうひとつ重ねてスライムが覆っていく。

 まるで底なし沼に嵌まってしまったかのような、抗いがたい力で私の身体がスライムに沈み込んでいく。

(う、受け入れてはいるけど……結構大変だなぁ……)

 スライムの気の済むようにやってくれればいいとは思うし、気持ちいいのも確かなのだけど、これを常に受け入れ続けるのは中々大変だ。

 どうしても体は反射的に抗おうとしてしまう。そんな私のささやかな抵抗なんてまるで意味を成さなかったけど。

 這い上がってくるスライムは私の首から下の体を完全に包み込むように覆って――不意に、消えた。

「え?」

 思わず私がそう呟いてしまったのは、自分の体が急に何事もなかったかのように、普通のビジネススーツに身を包んでいたためだ。

 さっきまで私の体を覆っていたぴっちりスライムスーツは、真っ黒い光沢のあるラバーのような見た目で、感触もそれに近かった。

 いまの私が身に付けているスーツは、一般的なスーツと同じような布の感触で、一瞬前まで液体状だったとは思えない。

 困惑していると、袖口から薄い黒い膜のようなものが這い出して来て、手首から先を包み込んでいく。

 いや、身体の感覚からすると、手だけではなく全身がその薄い膜に覆われつつあるようだった。

「う……っ、これ、は……!」

『うふふ。驚きましたか? マスター』

 私の耳元でそうスライムが呟く。思わず肩を竦めながらそちらを見たけど、スライムの姿はどこにも見えない。

『マスター、わたくしはここにおりますわ』

 スライムの言葉と同時に、私の着ているスーツの襟が勝手に立って、その部分がスライムとなった。

 どうやら早着替えではなく、早変化だったようだ。ラバーのような見た目や感触になれるのだから、普通の服にもなれて当然だった。

 スライムは完璧に普通の服を再現していた。感触的にブラジャーまで完全再現しているみたいだ。

 ただ、スライムはその普通の服の下、普通の服のように見える体の下に、私の全身を薄く覆う全身タイツのようなものを作っていた。

 首の半ばから手足の先に至るまで、ぴっちりと覆っていて、素肌が露出しているところがなくなっている。

 それは明らかに自然ではない見た目だった。ビジネススーツは普通に見えるし、感じる分、違和感がすごい。

 試しに手を顔の前に持ってくると、黒い物に覆われて真っ黒な手になっている。

 さらに自分の体に視線を落とすと、タイトスカートから伸びる足が、黒いタイツに覆われているように見える。

 手を覆っている部分や首筋を覆っている部分と、色が全く同じだから、よく見るとなんとなくおかしな状態だと気づけるだろう。

(ビジネススーツの下に全身タイツを着ているようなものよね……でも、まあ)

 仮にこういう服装の人が街中を歩いているのを見かけても、極端に不自然には思わないかな、と思える程度の外見だった。

 手が黒いのも手袋と考えればまだあり得るし、首を覆う黒いものもネックウォーマーだと思ってもらえるだろう。

 防寒対策にしては季節が違うし、それにしても薄い素材だと思われるかもしれないけど、不審に思われない程度の外見ではあった。

 ただし一点だけ、どう見ても不審な点がある。

 それを意識したくはなかったけど、聞いておかなければならない。

 覚悟を決めるという意味で。

「あ、あの……さ。こ、これはなんとかしてくれないの……?」

『これ、とはなんのことですの? マスター?』

 不思議そうに言うスライムだけど、明らかに声音が面白がっている。

 私はからかわれていることを理解しつつ、恥ずかしいのを我慢して再度聞いた。

「だ、だから……その……だ、男性器……よ」

 私の股間に生やされたあまりにも立派で逞しいそれ。

 タイトスカートに隠されているはずのそれは、スライムによってぴちぴちにコーティングされているせいもあってか、さっきから全く勃起が収まらず、タイトスカートを内側から押し上げていた。

 スカートが割と丈夫な布の素材として形作られているからか、極端なまでにテントを張ることこそなかったものの、女性としては明らかに不自然な程に押し上げている。

 どうも胸と違って、ショーツなどの下着は形作ってくれていないようなのだ。

 丈夫なラバーパンツなどを形作って体に密着させてくれれば、かなりマシなのだろうけど、コーティングされているだけであとは自由だから、勃起してスカートを押し上げるのに制限がない。

 恥ずかしい思いをしつつ、スライムにそのことを伝えた。

『マスターのおちんちん、ですわね。とても元気がよくてよろしいかと』

 ふふふ、と笑みを含んだ声でスライムは指摘してくる。

 その指摘に羞恥心が煽られ、頬に熱が集まるのを感じた。

『大丈夫ですわ。マスターが冷静になれば、自然と収まりますの』

「そうできないから、言ってるんだけど……」

 スライムによって包み込まれるという刺激は与えられているものの、強いて刺激を与えるように動いているわけじゃない。

 だから、しばらくすれば落ちつくと思っていたのだけど、私のそれはちっとも落ちついてくれず、スカートを内側から押し上げ続けていた。

『仕方ないですわね……では、ここはひとつ、一度射精していただきましょうか』

 勃起を抑える手段としては基本だろう。恥ずかしいけど、いまのまま外を歩くよりはマシだった。

「そうしてくれると嬉し――いっ、ぐぅッ!」

 いきなり、だった。

 男性器を包み込むスライムの動きが急に激しくなり、まるで口で吸われているかのように男性器が吸いあげられた。

 すでに十分すぎるほど勃起していた私の男性器にその刺激は強烈で、射精を耐えるとか堪えるとかそういうことを考える間もない。不意打ちだったのもずるい。

 思わず手が股間に伸びかけたけど、体を覆うスライムの体が急に硬くなって、触れることはできなかった。どうやら、私の自由に弄らせてくれる気はないようだ。

 前屈みになって少しでも耐えようとしたけれど、その体勢の変化はかえって男性器の先端――亀頭をスカートの裏に擦りつける結果となった。

 スライムに吸われるのとは別種の刺激が加わり、我慢など出来るはずもなく。

 自然と男性器が脈打って、前世で慣れ親しみ、今の私もだいぶ慣れてきた射精の感覚が男性器を貫いた。

 排出されたどろりとした精液は、すべてスライムが吸収してしまったようで、ゴムに覆われているような状態の男性器が精液塗れになることはなかった。

「ふ、ぅ……っ、も、もっと優しくやって欲しかった……」

 射精の間は呼吸することも忘れてしまう。私は荒くなった呼吸を繰り返しながら、スライムにそう言って抗議する。

 スライムは特に悪いことをしたという認識はないようで、射精に至ったこと、精液を吸収できたことを喜んでいるようだった。

『さあ、落ちついたところで、帰りましょう、マスター』

「はいはい……」

 私は改めて、スライムの好きにさせるしかないと悟るのだった。

(心構えくらいはさせて欲しいんだけどなぁ……)

 そう思いつつ、私は外から見て不自然ではないかどうか、自分の姿を改めて確認する。

 端的に言えばタイトスカートのビジネススーツに身を包んだ、極普通のOL。

 スカートから伸びる足は黒いタイツに覆われ、袖口から伸びる手には黒くて薄い手袋をしている。

 スーツの襟元から覗く胸元を含め、首の半ばまではタートルネックの黒いインナーが隠している。

 素肌の露出が極端に少なく、不自然なほどではないにせよ、今の季節にしては防寒対策がしっかりしているなという印象を受ける。

 靴は極普通の高さのヒールで、オシャレと実用性の中間を突いているようなデザインだ。有り体にいってOLが履いていておかしくないものだ。

 肌の露出が極端に少ないことを除けば、極普通のOLになった私は、スライムに促されるまま、社長室から出て帰路につく。

 歩き出してすぐ、両手が自由なことに気づいた。

(……そっか。荷物はないんだっけ)

 てぶらで帰るのもなんだか落ち着かないし、目立ちそう。

 何気なくそう思っていると、スライムの一部が蠢いて、私の体に肩掛けのハンドバッグがかけられた。

 それを持っているだけで、不自然さはかなり薄れる。

「あ、ありがとう」

 口に出していたわけでもないのに、こういうところに気配りできるあたりは、さすがというかなんというか。

 言葉でのコミュニケーションが取れなかった頃から、こちらの意図を読んで動く察しの良さはあったから、いまのスライムならこの程度はできるだろう。

(それにしても、このハンドバッグ……センスいいなぁ)

 派手すぎず、地味すぎず。ビジネスウーマンにぴったりなデザインと機能性を兼ね備えているように見える。

 何気なく蓋を開けて中を見てみると。バッグの中は青い半透明な液体で満ちていた。

 一瞬驚いたけど、すぐにそれがスライムの体だと気づく。いや、そもそもそのバッグもスライムの体ではあるのだけど。

『ふふ……こうして鞄に入る形になると、昔のことを思い出しますわね、マスター』

「あー……そう、だね。あの頃は水筒に入れて、その上で、だったけど……」

 スライムは何かと便利な存在だったから、荷物の中に入れて常に一緒に行動していた。

 いまほどチートな力は持ってなかったけど、スライムの基本の能力である消化液だけでも非常に優秀だったからだ。

 その頃のことを少し思い出して、感慨に耽る。

 エレベーターに乗って一階まで降り、会社の正面玄関から外へと出た。

 外にはまだ夕方と言っていい空が広がっていて、この時間に帰れるという事実になんだか感動してしまった。

(昨日までじゃ、本当にありえなかったよね……)

 スライムに全身を包まれている自分の状態もあり得ないことではあるんだけど、定時帰宅の方が印象として濃い辺り、かなり社畜だった頃の生活に毒されている感じだ。

 また以前のような生活をしたいとは決して思わないけど、社畜であったことはスライムとの関係においては良かったかもしれない。

(もし普通に暮らしてて、スライムが現れていたら……受け入れるのにもっと時間がかかったかもしれないし)

 スライムの愛情表現は、普通の人間が受け入れるには厳しいものがある。

 私が受け入れられたのは、前世の記憶を思い出したということも、もちろんあるのだけど、それと同じくらい、社畜生活で心身が麻痺していたということが大きい。

(人は気持ちよすぎても苦しくなっちゃうけど……社畜な私は苦しいのには慣れてるからなぁ……んっ)

 そんな私の感傷を塗りつぶすように、服の中でスライムの体がにゅるりと動いた。

 胸の、乳房の下あたりを入念に撫でさすられたような感覚だった。

「ひゃっ! ……っ」

 思わず変な声をあげてしまい、慌てて口をつぐむ。

 たまたま近くを歩いていた道行く人が、不思議そうに私を見た。声を聴かれてしまったことを恥ずかしく感じ――それが妙なことに気づく。

(あ、あれ……なんか、朝と様子が違うような……?)

 朝はいまの格好なんかより、もっと凄い格好で歩いたり走ったりしていたけど、こんな視線は向けられていなかった。

 スライムが魔法で認識できないようにしていてくれていたから。

 でも今向けられているそれは、こちらのことを不審に思っている視線だった。

 視線が向けられている理由はすぐにスライムが教えてくれる。

『ちなみに、いまは朝と違って認識阻害の魔法を使っておりませんので、擦れ違う者達は皆マスターの姿や行動を正しく認識しております。あまり不審な動きをしておりますと、いっぱい見られてしまいますわよ?』

「えっ!? ちょっ、嘘でしょ……っ!」

 思わず叫びそうになってしまって、慌てて言葉を飲み込んだ。

 朝はすごい格好だったのに、いまは普通に見える服装なのを不審に思うべきだった。

(じゃ、じゃあ、手が真っ黒なのも、タートルネックみたいに首が覆われているのも……まとも認識出来てるってことじゃない……!)

 道のど真ん中で立ち尽くす私に視線が集中しているのがわかる。

 私は顔から火が出るほど恥ずかしく感じつつ、慌ててその場から移動を始めた。

(ひいいい! み、見ないで……っ)

 擦れ違う人の視線が一瞬自分に向けられているのを感じる。

 意識しすぎなのかもしれないけど、明らかな視線の感覚を手や首元に感じていた。

(だ、大丈夫……大人しくしてれば……普通に歩いていればだいじょ……はうぅッ!)

 努めて冷静に、何事もないように歩こうとするのを、スライムが許してくれるわけがなかった。

 股間をスライムが這い回って、背筋がゾクゾクする。

「い、ぎい……っ、あんまり、動かないで……!」

 声を潜めて、周りに聞こえないように囁く。

 私の全身を覆っているスライムに聞こえていないわけがないのだけど、スライムは動くのをやめてくれなかった。

『うふふ……恥ずかしがるマスターは本当にお可愛らしいですわぁ。もっと、もっとそういう顔をわたくしに見せてくださいまし……♡』

「そ、そんな……ひゃぅっ!」

 背筋を丸め気味に歩いていた私は、肛門にスライムが入り込んで来たことで大きな声をあげてしまった。今日一日で散々そこは弄られたけど、いまだに慣れない。

 自然と背筋が伸び、その場に立ち尽くしてしまう。

 そんな私の様子を怪訝そうに見ながらも歩き去って行く通行人達。そのさりげない視線の集中が、私を無自覚に追い詰めてくる。

 何も知らないからこそ、もし私の現状を知られるのはまずい。

 スライムによって全身が覆われているなんてこと、想像する事も出来ないだろうけど。

(こ、こんな人前で……何も知らない人たちの前で……私……肛門を弄られちゃってる……!)

 頭が混乱して変な気持ちになりそうになる。

 さらにスライムは肛門だけではなく、前の穴にも侵略を始めていた。

 まるで誰かの男性器でも入れられているかのようだ。スライムに逢うまでは処女だったのだから、その例えが正確かどうかは想像するしかできないのだけど、たぶん間違ってはいないはず。

 生暖かい棒状の物が、私の体内へと潜り込んでくる。

「~~~ッ!」

 いくら足を力一杯閉じようとしても、スライムの力には勝てない。学習しないと呆れられそうだけど、反射的な行動だから私自身にもどうしようも出来ないのだ。

 両太ももの内側がくっつくほど強く足を閉じているのに、体の内側を上下する物の感覚がする。

「ん……っ、はぁ……んぁ……」

 スライムの体は暖かくて、柔らかく、そしてほどよい湿り気があるから、凄く気持ちよく感じてしまう。口から押し出されるように自然と声が出てしまった。

 女性のその場所にローターを仕込むAVはよくあるけど、基本的にやらせだと言われている。

 実際、ただ振動するものがそこに入れられたからといって、気持ちよくなる気がなければ、気持ちよくなるわけがない。

 私はそう思っていたのだけど、スライムの責めはそれとはまるで次元が違った。

 振動するだけではなく、私の弱いところを的確に突いてくるのだから、当然だ。

 歩きながら恋人に愛撫されているのと全く変わらないのだから。

「ふぅ……はっ……はぅ……っ、あっ!」

 それでも快感を我慢して歩いているうちに、私は致命的なことに気づいた。

 スライムの愛撫によって気持ちよくなってしまったことで、その快感が生やされた男性器の方まで影響を表していた。

 男性器は徐々に硬度を取りもどし、再びタイトスカートを内側から押し上げようとしていたのだ。

(や、やばいやばいやばい……!)

 ハンドバックを体の前に持って行って隠そうとしたら、どうしても体の前に持って行くことが出来なかった。手を覆っているスライムが邪魔しているのだ。

『隠しちゃダメですわ、マスター。うふふ……恥ずかしいのですわね。頬が林檎みたいに真っ赤ですわ』

(ううう……! は、恥ずかしい……)

 私はとにかく早く家に帰ってしまおうと、足を速める。それとスライムの動きが活発化するのは同時だった。

「あぅっ!」

 躓いて転びかけるのを、スライムが強制的に立て直させてくれる。安全には配慮してくれているみたいだったけど、周りからの視線の集中はさらに強くなった。

 中には、私の異常に気づき、眉を潜めてひそひそと声を交わしている人たちもいた。

「き、気づかれてる……気づかれてるよぉ……」

 いまなら恥ずかしさで死ねそうだ。

 それでもスライムは私の体を弄ぶのを容赦してくれなかった。

 股間だけじゃなく、胸も揉みし抱かれ、硬くなった乳首が舌で転がされるように刺激される。

 堪えきれなくなった私は、男性としての射精という形ではなく、女性として絶頂を迎えた。目の前が白くなり、倒れそうになる。

 何度も絶頂に達し、ふらふらになりながらも電車に乗り込んだ。

(この時間に電車乗ったことないけど、凄い人の、数……?)

 あとからあとから人が乗り込んで来て、ぎゅうぎゅうすし詰めになってしまう。

 まるで朝の通勤ラッシュの時のような人の波に、何かおかしいことに気づいた。スライムが何かしているに違いない。

 耳の中にスライムの体の一部が入って来て、私だけに聞こえるように囁く。

『こちらの世界にはこういう電車の中で行う痴漢プレイ、というのもあるそうですわね。せっかくですから、やってみようかと』

 確かにそういうAVはあるけど、あれは実際に公共の乗り物を使っているわけじゃないと思う。

 そのことを指摘しようとした私のお尻が、いきなり揉まれた。人の手に掴まれたような感触だけど、それはスライムの仕業だとわかっている。

「んっ、くう……っ」

 声をあげるわけにはいかない。私は歯を食いしばって快感を堪える。

 そんな私の努力をあざ笑うように、スライムの体が服の下で蠢いて刺激を加えてくる。本物の痴漢にやられてもそうはいかないだろうというくらいに執拗に、入念に体をまさぐられる。

 スライムの責めに耐えていると、不意に私の前に背を向けて立っていた学生くらいの女の子が、心配そうに私に声をかけてきた。

「あ、あの……大丈夫、です……か?」

 痴漢に遭っていると思われているのだろう。

 痴漢に対する嫌悪感と私に対する心配の感情が半々の顔で、その女の子は肩越しに私を見ていた。

 私は冷や汗が流れるのを感じつつ、彼女に言葉を返した。

「だ、だいじょう……ひぅっ!」

 不意に凄く冷たい感触がして、思わず自分の股間を見下ろす。するとそこでは、タイトスカートなどに包まれていたはずの、私の男性器が露出していた。服はスライムの体なのだから、自由にそういうこともできるのだろうけど、どうしてここで。

 自分の意思では収まらないそれは、グロテスクなまでに血管が浮き出ていた。そしてそれが、心配して声をかけてきてくれた女の子のお尻に当たってしまっていた。

「ひゃっ!?」

 その子は、お尻に当たっているものの正体がわからず、困惑しているようだった。

 それはそうだろう。痴漢にあっているのは私のはずで、彼女の真後ろに立っているのは私なのだから。

 仮にお尻に当たっているものが男性器だとわかったとして、なんで自分にそれが当たっているかはわからないだろう。そんなものすごい長さの男性器なんて、ありえるわけがない。

 わからないなりに、何かがおかしいことには気づいたのか、彼女は何も言わずに前へと向き直ってしまった。耳の先まで真っ赤になっているのが見え、そんな風に感じさせてしまっていることが申し訳なく思えた。

 けれど、若くて無垢な彼女にそんな顔をさせているという事実に、興奮してしまっている自分もいるのだった。

 複雑な感情を覚えていた私の耳に、スライムが再び囁く。

『お気を付けくださいね。マスターのご精液は普通の人間にとって、極めて強力な媚薬となりますわ。もし目の前の彼女にそれをかけようものなら……彼女、大変なことになってしまいますわよ?』

「うえっ!?」

 いきなりとんでもない事実を告げられ、思わず変な声が出てしまった。周囲の視線が私に集中するのがわかって、慌てて顔を俯けて口を閉じて声を殺す。

(な、なんでそんな特性を持たせてるのよっ)

 そう問いただしてやりたかったけど、満員電車の中ではそれも出来ない。

 それに、すぐそんなことを考えている余裕はなくなった。

 目の前の女の子の人生を守るために、私は射精を堪えなければならなかったからだ。

 けれどそれは生半可な精神力では不可能だった。スライムは相変わらず全身を丹念に愛撫してくるし、覆うものを失い、外に晒された男性器は最初の一瞬こそ冷えて射精の感覚が遠のいたけど、その一瞬がすぎてしまえば、満員電車内の独特の熱気で暖められ、かえって心地がいいくらいの状態になってしまっていた。

 さらに、男性器を押し付けてしまっている女の子のお尻の感触。

 スカート越しとはいえ、その柔らかなものが亀頭に擦りつけられているというのは、物凄く気持ちがいいことだった。

(うぅ……! ま、まずい……出る……っ、で、ちゃうぅ……っ)

 精神力を駆使して射精を堪えているけど、その怒濤の如く流れ込んでくる快感の渦に抗うのは並大抵のことでは出来なかった。いまにも意識が千々になって遠のきそうになる。

 それでも、その女の子の人生をこんなことで台無しにしたくはなかった。

 拳を握りしめ、その痛みで射精しないようにしようと試みる。ところが、掌に爪が食い込むほど強く握りしめているつもりなのだけど、全然痛くならなかった。どうやら、手を覆っているスライムが体を分厚くして爪が食い込まないようにしているみたいだ。

(この、ままじゃ……!)

 与えられる快感に流されてしまいそうになる。むき出しになった私の男性器の先端からは、透明な先走り液が溢れていて、すでに女の子のスカートが少し汚れてしまっていた。

 女の子の制服を汚してしまったことに対する罪悪感と、穢れを知らないと思われる純粋な彼女を汚しているという背徳感が、私の背筋を震わせる。

(あ、ああ……あああああっ)

 射精が間近に迫っている感覚が、私の脳を焼く。

 無性に走りだしたくなるような、それでいて足が震えて動かないような。追い詰められていく感覚が全身を震わせる。

(も、もう……だめぇ……っ!)

 逃げ場のない満員電車の中で、快感を与え続けられて我慢なんて出来るわけもなく。

 私は呻き声を押し殺しながらも、女の子に押し付けた男性器から、大量の白い液体を噴きだしたのだった。

 


 へとへとになった体で、ようやく家にたどり着き、玄関扉を潜ったところで私はその場に崩れ落ちた。

 私の体を覆っていたスライムが瞬く間に離れ、再びお嬢さまの姿になる。

「マスター、お疲れさまでした。今日もたくさん楽しめましたわね♡」

 そのにこやかなスライムの宣言に、私は反論する元気もなく、その場に頽れていた。

 結局、電車内で男性器を押し付けて射精してしまった女の子には、私が出した精液は一滴もかからなかった。

 私が出す寸前、スライムが男性器を覆うように体を伸ばし、全部絡め取ってしまったからだ。

 さぞかし奇妙な体験だったとは思うけど、彼女自身がどうこうなることはなかった。先走り液で汚れたスカートも、スライムが綺麗にしたから、何の物証も残ってはいない。

 何の罪もない、一人の女の子の人生を終わらせかねないようなことをするスライムには、少し教育が必要なのかも知れない。

 元々スライムにそんな気はなかったのだとしても、それがわからない私にとっては冷や汗もののことだったと、しっかり教えて、反省してもらわなければ。

 そう思ってへたりこみつつも、スライムの方をじろりと睨む。スライムは楽しそうな顔をしていた。まるで飼い主の褒め言葉を待っている犬のような態度だ。

 そんな顔をされると、叱る気持ちも霧散していく。

(はあ、全く……)

 とても褒められるようなことではないのだけど、一応は私を気持ちよくさせるための行為ではあった。そして、気持ちが良かったことも確かなのだ。

 どう足掻いても射精を我慢できないほどに。

 何も聞かされていなかった私は焦ったけど、結果としてあの女の子の人生を終わらせるようなことはしていない。

 私の痴態をあんな間近で感じさせられて、おかしな方向に性癖を開花させていないことを祈るばかりだけど、まあ、それはそれ。

 最低限、女の子の人生を狂わせないようにする配慮は出来ていたのだから。

「……そうね。大変だったけど、気持ちよかったのは否定しない」

 私は嬉しそうにすり寄ってくるスライムの頭を撫でつつ、もう片方の手で柔らかそうな頬を軽く摘まんだ。相手はスライムだし、ペンチで摘ままれたとしても痛くはないだろうけど、視覚的な効果というのはある。

「けど、もうちょっと手加減して欲しいかな。あと、周りを巻き込むようなこと言うの禁止。あなたにそういう気がなくても焦るから」

 なるべく角が立たないように、優しく言い聞かせる。

 それが良かったのだろうか。

「あぅ……わかりましたわ、マスター♡」

 頬を摘ままれながらも、嬉しそうにスライムは私の言ったことを受け入れてくれた。

 いまでもマスターと呼んでくれるだけはあって、私の命令を聞くということに喜びを覚えているようだ。

(本当に、基本的には素直で可愛い従魔なんだけどなぁ)

 時々容赦が無かったり、やり過ぎてしまったりしそうのが少々気がかりなくらいで。

 私は摘まんでいたスライムの頬から指を離し、その頬を掌で撫でてあげた。スライムは嬉しそうに顔を綻ばせ、余計に私にすり寄ってくる。

「ご夕食の準備はすでに出来ておりますわ。まずはそちらを」

 分身みたいな存在にさせていたのだろう。本当に便利な能力が満載の生物だ。

「そのあとは……ご一緒にお風呂に入りましょう。隅々まで綺麗にして差し上げますわね」

 スライムと一緒にお風呂、というのはお湯に浸かっているんだかスライムに浸かっているんだかわからなくなりそうだけど、気持ち良さそうではある。

「うん、ありがとう。……たまには私が料理してもいいかな」

「え? マスターにそのような家事などさせるわけには……」

 スライムはそういうけれど、この世界で育って来た私にとって、家事というのは下の立場の者に押し付けるものではない。

 特に料理はそうだ。親愛の気持ちを込めて、作ってあげるものである。

「私があなたに、愛情を込めた料理を作ってあげたいんだよ」

 それを伝えると、スライムは一瞬驚いたように固まったあと、感極まったのかお嬢さまの姿からどろりとした液体へと完全に姿を変え、私に絡みついてきた。

 スライムが離れたことで素裸になっていたので、体に直接触れてくるスライムの感触がむず痒い。

「うひゃっ、ちょ、ちょっと落ちついて……!」

『マスターが悪いんですわ♡ そんなこと言われたら、もう我慢なんて出来ないではありませんの! 予定変更! 愛し合ってからご夕食と参りましょう!』

 そう言いつつ、すでにスライムは私の体に対する愛撫を始めていた。

 私はスライムに包み込まれて気持ちいい感触に身を委ねつつ、これから続いていくスライムとの生活――否、性活を思い、幸せな気持ちで目を閉じた。


 愛撫だけではなく、スライムの存在全てを受け入れ、私は気持ちよく喘ぎ声をあげるのだった。



~スライムお嬢さま、会社ごと社畜OLをかう~ いったんおわり



Comments

久しぶりにスライムお嬢様シリーズのこと思い出しました^w^ これも割と好きな話なので、何かの機会に書きたいところですねぇ……ーw-フム 人外の能力全力で発揮してますから、書きやすい系統の話ではあります0w0

夜空さくら

スライムお嬢様シリーズ一気読みさせて頂きました。 最高でした!スライム娘によるレズ物は大好物でその上上位の存在としての愛され方まで行われて好物がふんだんに盛り込まれた最高の人外レズでした♪

ミズチェチェ


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