リルドとギルバストックの足下に這いつくばる、ヒトイヌ拘束を施されたひとりの女性。
目隠しによって顔の大部分が隠されているが、その黒髪といい、背格好といい、ギルバストックがそれを『シェラ姫』だと認識するのは自然なことだった。
行方不明のはずのシェラ姫が、調教されきった性奴隷そのもののヒトイヌの姿で現れた。
想定外のことに、慌てふためくギルバストックを、リルドは冷静な言葉で宥める。
「落ちついてくださいギルバストック様。先ほども申し上げた通り、本物のシェラ姫の行方はいまだ掴めておりません。『これ』は……」
言いながら、リルドは四つんばいの彼女の目を追っている目隠しを取り外した。
急に目隠しを外され、彼女は戸惑っているようだ。
眩しいからか、目を瞑ったまま、開けようとしない。
そんな彼女の頭頂部あたりの髪を掴んで顔をあげさせ、リルドが低い声で命じる。
「この方にお前の目をお見せしろ」
びくりと身体を震わせたその者は、恐る恐るゆっくりと目を開いた。
そして――赤銅色の瞳が露わになった。
それを見たギルバストックは、落ち着きを取り戻す。
「ああ、なるほど……リルド殿は人が悪い。『これ』はシェラ姫の偽者ですな?」
「ええ。シェラ姫本人を手に入れられれば話は早かったのですが、手に入らない可能性も出てきましたから……代わりに、シェラ姫に年恰好が似ている女性を仕入れることが出来ました。なので、ここはひとつ、これを『亡国の姫風性奴隷』として、隣国で販売しようと思っております」
「確かに、隣国であればシェラ姫の噂程度は届いているはず。私どもが見れば違和感の強い明らかな偽者でも、隣国からすれば本物と大差なく、いい値段で売れるというわけですな。……しかし」
ギルバストックはしげしげと、そのシェラ姫もどきのヒトイヌを見て呟く。
「偽物とはいえ、目の色以外は良く似ておりますなぁ……この髪は、染めたのですか?」
「ええ。元々が色の濃い髪色をしている娘でしたから、比較的楽に黒く染められましたね。さすがに、本物と比べると少々見劣りしてしまいますが……」
艶や手触りはそれなりに整えられていたが、本物とは比べるべくもない。
「また、生え変わってもおかしなことになってしまいますので、もう少し手を変えて調整する予定です。目の色ばかりはどうしようもありませんが」
髪は染める手段が色々とあるのだが、現在の技術水準では瞳の色は変えられなかった。
遠い異国では眼の中に色のついたガラスを入れて色を変えたように見せかける手段もあるというが、リルドたちのいる国の付近でその技術は確立されていない。
そのことはギルバストックも残念に思えるらしい。
「目の色が違うと、偽物だと一目でわかってしまいますからな……おお、でしたら、捕まえられた際に暴行を受けたことにして、両目とも潰してしまえばよろしいのでは?」
残酷なことを嬉々として告げるギルバストック。
リルドは若干顔が歪みかけたが、なんとか営業スマイルを保った。
「……それをしてしまうと、姫の偽物としての価値はあがりますが、性奴隷としての価値は下がってしまいますから……善し悪し、ではありますね」
「それもそうですなぁ。いや、いいものを見させていただきましたぞ」
楽しげに笑うギルバストックは、上機嫌のまま屋敷を後にした。
彼を見送った後、リルドは自室の椅子に背を預け、疲れを隠そうともせず、深々と溜息を吐く。
「やれやれ……なんとかなったか……まったく、本当に厄介な相手だよ」
ぼやきつつも、リルドは時計で現在時刻を確認する。
(そろそろ頃合いか……シェラ姫の様子を見に行かないと……)
ギルバストックの対応にかなりの時間を取られたため、シェラ姫の次の調教を行う予定の時間が迫っていた。
机の上に手付かずの作業はあったが、それはまた次の機会に回すしかない。
溜息を吐きながら、地下室に降りるための準備を始めるリルドの元に、メイドのインディーがやって来た。
「ああ、インディー。ちょうど良かった。この姫様の髪を痛めないように保存しておいてもらえるか。加工はあとで俺がやるから」
シェラ姫から切り取った彼女の髪の毛の入った箱を示す。インディーは恭しく頷いた。
「承知しました。……あの偽物について、ギルバストック様にお教えしてよろしかったのですか?」
「ああ、構わない。むしろ最悪の場合の保険だよ。もし検問でシェラ姫のことがバレかかった時のために『奴隷商人リルドが姫様の偽物を商品として抱えている』って保証してもらうのさ。ギルバストック殿はあれで地位の高い人だからな。この上ない保証人になる」
万が一のことを考えて、幾重にも命綱を用意しておく。
リルドの考えを理解したのか、インディーは納得がいったようだ。
「理解しました。……ところで、マスター。表の仕事はほぼ片付きました。休憩をいただいても構いませんか?」
「さすがインディー。優秀だな。この髪の毛の処理を済ませたら休憩してもらって構わないよ。お疲れさま」
「ありがとうございます。それで……休憩の際の『玩具』に、例の子を使わせてもらいたいのですが」
インディーの要求に、リルドの動きが止まる。
「……いいけど、あれも商品ではあるからな? やりすぎて壊したらまた一から仕込み直さないといけないんだ。最悪のことも考えておいてくれよ?」
「ご安心ください。万が一の際は、ちゃんと私が身代わりになりますから」
「そうならないようにしてくれって言ってんの! お前は優秀なメイドなんだから、いてもらわないと困るんだよ!」
「あら、嬉しいことを言ってくださいますね」
「ただの事実だよ、まったく……趣味にとやかくは言わないけど、ほんと頼むぜ」
「善処いたします」
飄々と言ってのけるものだから、リルドは深く溜息を吐いて、それ以上何かをいうのは諦めた。
リルドがシェラ姫の調教を行うために地下室に降りていったのを見送り、インディーはまずは言われた通りに髪の毛の保存処理を行う。それを手早く済ませると、嬉々として彼女本人に宛がわれた部屋へと移動した。
ドアを開けて部屋の中の光景を見て、インディーは朗らかな笑顔を浮かべる。
「さて、お待たせいたしました。いっぱい楽しみましょうね、ふたり……いえ、二匹、かしら?」
彼女の部屋には、生物学上は人間である『ふたり』が待っていた。
「わぉーん!」
片方は、彼女が飼っているペット。
元貴族の令嬢で、高飛車な性格をしていた彼女は、インディーによる徹底的な快楽調教によってその人格を半ば放棄し、インディーに擦り寄るただの雌犬へと成り果てていた。裸でいることに何の疑問も抱かず、主人であるインディーの脚に自分の体をすりつけることに何らためらいがない。
「ゥウ……」
そしてもう片方。
先ほどギルバストックの前に引っ張り出した『シェラ姫の偽物』として調整された存在。シェラ姫とうり二つの背格好、顔立ちをしていたがために、リルドによって選ばれた奴隷だ。シェラ姫の偽物として売り出すために、徹底した調教を施されており、体を衆目に晒したり、性的なことをするのは恥ずかしい、という当たり前の認識を残したまま、主人の命令には絶対に服従するように躾けられている。
四肢を短く拘束されるという、肘や膝に非常に負担のかかる拘束のされ方をしている彼女は、インディーの手によってベッドに仰向けに寝かされていた。
その姿勢を取らされた彼女は、手足の拘束具の重みによって、自然と両手両足を左右に開いてしまう。ピアスに貫かれた両乳首と、貞操帯に覆われているとはいえ、本来は脚を閉じて隠すべき秘所を全開に晒してしまっている。
目隠しはされており、視界は閉ざされていたが、体の感覚で自分がどういう格好をしているのかはわかっているためか、悩ましげに体をうねらせていた。どうにか体を隠そうとしているようだが、肘と膝に取りつけられたクッション兼重りが自然の枷となって体を開かざるを得ないのだ。
足下に擦り寄ってくる元貴族令嬢のペットを適当にあやしてやりながら、インディーはベッドの上の偽シェラ姫を舐めるように見つめる。
「うふふ……さあ、おたのしみの時間よ」
インディーは着ていたメイド服を手早く脱ぎ、完全に役職から解き放たれる。
ただ、メイド服や下着を脱いでも、彼女の体にはその身を覆うものが残っていた。
彼女の股間を覆っているのは――鈍い輝きを放つ、金属の貞操帯だった。
インディ-はリルド腹心の部下であり、メイドであり、そして――性的なパートナーでもある。
リルドに恋愛感情はなく、インディーもそうであったが、ふたりは互いに性的な欲求をぶつけ合う間柄であった。
(マスターはよく我慢しておられますわ……マスターの精力はむしろ強いほうですのに)
相手が初恋のシェラ姫であるということが、リルドを抑えさせている要因ではあるのだろう。だが、その気になったリルドの激しさを知る彼女からしてみれば、よく我慢しているな、という感想にしかならない。
もっとも、リルドに言わせれば「精力が強いとかインディーにだけは言われたくない」のであった。
あまりにも性的欲求が強すぎるがゆえに、普段の仕事に支障がでないよう、インディーには金属の貞操帯が嵌められているくらいだ。
その貞操帯は彼女の体の疼きを抑えるため、内側に巨大な張り子が付けられた特注品だ。その張り子はインディーの秘所と肛門を容赦なく抉っており、貞操帯を外さなければそれらの張り子は取り外せない。
彼女は排泄をするのにもリルドの解錠を必要としており、それこそが彼女がリルドを裏切れない理由だった。
それがなくとも、恩も借りもあるリルドを裏切る気はインディーにはなかったが。
ともあれ、この場に貞操帯の鍵を持つリルドがいない以上、インディーの股間は彼女の自由にはならない。そのもどかしさはあったが、彼女は貞操帯を嵌めたままでも、十分に楽しむ手段を知っていた。
「おいで」
四つん這いで移動するペットを促し、共に偽シェラ姫を寝かせたベッドの上に昇る。左右からその偽シェラ姫を挟むようにしていた。
そして、インディーが偽シェラ姫に嵌めていた貞操帯を取り外す。貞操帯の内側には二つの長い出っ張りがあり、それらはシェラ姫の体内を抉っていた。
貞操帯を外すと同時に、それらふたつの出っ張りが彼女の体の中から抜けていき、偽シェラ姫の体はその刺激に応じて激しく震えた。
ずるり、という音を立てて二つの穴から出っ張りが完全に飛び出すと、その出っ張りが埋めていたふたつの穴は、だらしなく少し開いたまま、その奥を露わにしてしまっている。
それを見たインディーは、指先で軽く肛門の穴の縁を突く。すると、偽シェラ姫はびくりと腰を跳ねさせ、その肛門が収縮した。
「よし、ちゃんと穴の閉じ方を覚えてたわね。締まりの無い穴なんて誰も使いたがらないから……えらいえらい」
インディーはそういって偽シェラ姫の頭を撫でる。肛門の扱い方を褒められ、偽シェラ姫の顔が羞恥に赤く染まった。その反応を見て、調教の成果がしっかりでていると、インディーは満足する。
「もう十分解れているだろうけど……この子の穴をしっかり解してあげて」
「わぅん!」
インディーから指示を出されたペットは、楽しげに鳴いて、そして躊躇なくその顔を偽シェラ姫の股間に埋めた。舌を駆使して、彼女の秘所を抉っていく。
「ウゥッ、ウァッ!」
突然の激しい舌の攻勢に、偽シェラ姫の体が跳ね、快感を享受していることを示すようにぶるぶると震えた。思わず脚を閉じようとしたのを、ペットが手で押さえ込み、むしろ大股開きにされてしまう。
ペットに舌の穴の処理を任せている間に、インディーは偽シェラ姫の開口具へと手を伸ばしていた。偽シェラ姫が嵌められている口枷は、彼女の口を開いたまま固定するものだ。その中央には穴が空いており、そこから舌が突き出せるようになっている。
いまはそういう指示を出されていないため、引っ込められているが、普段はそこから舌を突き出しておくのが、彼女の基本姿勢だ。
そんな開口具に対し、インディーが取り出したのは、長大な張り子のついた栓であった。 彼女の開口具にぴったり合うサイズのそれは、彼女の口内を余すところなく占領しながら、喉の奥まで潜り込んでいく。
「ウッ、ウェッ、オゥッ!」
あまりに太いものゆえに、押し込まれる偽シェラ姫には溜まったものではない。激しく嘔吐き、栓を吐き出そうとする。
だが、インディーがそれを許すわけもなく。
「飲み込みなさい」
冷徹な命令を下す。偽シェラ姫は激しく嘔吐きながらも、その張り子を喉の奥へと受け入れていった。彼女はそういったものを受け入れるように調教されているため可能だが、普通の人間がそれを嵌められたら、喉奥を刺激されたことで胃の中のものを吐き戻してしまい、窒息して死んでいるところだ。
最後まで押し込むと、栓の部分をくるりと半回転。かちりと音がして口枷と栓がロックされた。同時に、喉の奥を抉られた偽シェラ姫は、一際大きく体を跳ねさせた。地獄の苦しみを味わっているのだろうが、どれほど暴れたところで、ロックされた栓はびくともしない。
「フゥー……フゥー……フゥー……」
鼻呼吸しかできなくなった彼女は、苦しげに呼吸をくり返す。
そんな彼女を楽しんでみていたインディーは、ちらりとペットの方の様子を見た。ペットは一心不乱に偽シェラ姫の股間を舐めながら、その片手を自分の秘所にやっていた。偽シェラ姫に刺激を与えた結果、ペット自身も昂ぶってしまったようだ。
インディーは続けて偽シェラ姫の乳首を弄ろうとしていたが、そのことに気付くと眉をひそめた。いったん偽シェラ姫から離れ、ペットの背後に回ると、突き出された丸くて白いお尻を容赦なく引っぱたく。
ぱしん、と鋭くいい音が響いた。
「きゃいんっ!」
鋭く走った激痛に、ペットが悲鳴を上げる。お尻を突き出したまま、恐る恐るインディーを振り返った。
「誰が、オナニーしていいっていったのかしら?」
インディーはにっこりと笑顔だったが、その背後に怒りが立ち上っている。
ペットはガクガクと体を震えさせながら、「きゅーん……」と哀れみを誘う声音で啼いた。もちろん、それでインディーが絆されることはない。
「その子の穴を解す作業を続けなさい。ただ――悪い手にはお仕置きが必要よね」
インディーはそう呟くと、ペットの両手を掴み、背中に回して捻り上げながら、両の手のひらを合わせた。いわゆる合掌縛りの形で、相当に体が柔らかくなければ取れない体勢である。
それほど柔らかい部類ではなかったペットにとって、その体勢はキツすぎるものだ。
「んぎっ……あうぅ……っ」
肩や肘が悲鳴をあげ、ただそうしているだけで激痛を走らせる。インディーはその状態から動かせないようにペットの手首を縄で縛り、その余った縄尻を二の腕の上から体の前面に縄を回し、胸の上下を挟むように縛り上げる。それにより、ペットは合掌縛りの状態から腕を動かせなくなった。
それは普通の人間が取らされるにはあまりに厳しい状態。
「はう……あぁ……っ、んぁ……っ」
だが、そんな状態でも、ペットは痛みの中に快楽を見いだしていた。肩も肘も悲鳴をあげているが、その激痛が心地よい、とばかりに体を捩る。それがまた固められた体の軋みを生み出し、彼女の体が痛みに疼く。
それを気持ちいいと感じられるように、彼女は調整されているのだ。
さらに、そんな状態にも関わらず、ペットは口の動きを止めていなかった。痛み、苦しみに呻きながらも、命じられたことをやり続ける。
ペットのそんな様子に、インディーは満足げにペットの頭を優しく撫でた。
「ふふっ。これじゃあ全然お仕置きにならないわね」
愛おしげに扱うのと、責めを苛烈にするのは矛盾しない。
彼女にとって、愛とはそういうものだった。
ペットを背後から犯して楽しもうと、自分の付けている貞操帯に男性器のような張り子を接続しつつ、インディーは自分の主であるリルドのことを思う。
(マスターも、シェラ姫にこういうことを好きにして差し上げればよろしいのに)
リルドのことをマスターとして認めているインディーであるが、唯一不思議に思うのがシェラ姫の扱いであった。
極普通の人間である以上、道具や薬などを用いた調教に堪えられる者などいない。
いまこうしてペットとしての幸せを享受している元貴族令嬢のように、痛みや苦しみにも性的な快楽を得ることの出来る体に調整してしまえば、容易く愛し合えるだろう。
特にシェラ姫は王族として快楽に浸る生活とは無縁の生活をしてきたはずだ。
快楽に溺れ、リルドに依存するように仕向けるのも簡単だろう。
(それが出来ない、したくないというのは……まったく初恋の相手というのは厄介な要素ですね)
やれやれと溜息を吐きつつ、インディーはインディーで楽しむつもりなのだった。
貞操帯に装着した張り子を男性器に見立て、上半身を合掌縛りのように固められ、お尻を自分に向けて突きだしているペットの性器を後ろから突く。
その奴隷に命令して解させている偽シェラ姫の秘所も、あとで貫いて遊ぶつもりだった。
三人の女性が館の一室で複雑に絡み合い、享楽にふけている中――
地下室へと降りたリルドは、シェラ姫の調教を再開する。
つづく