地下室に降りたリルドが、シェラ姫の調教部屋に入る。
(さて、どの程度、シェラ姫の精神力と体力は削れたか……)
奴隷商人として、見極めは得意とするリルドであったが、今回は相手が相手だ。
シェラ姫に対する感情が見極めを乱す可能性もあり、かつ、失敗できないことであるため、リルドはかなり神経を尖らせていた。
シェラ姫はリルドが出て行った時と変わらない体勢で――変えられないのだが――そこに鎮座していた。
か細い呼吸音が静かに地下室に響いている。視界も聴覚も奪っているから、リルドが再びやってきたことに気づく様子はない。
まともな状態であったなら、調教部屋の重いドアの開閉する振動で気付けたかもしれないが、いまのシェラ姫にそんな余裕はないだろう。
リルドは慎重に彼女に近づき、その様子を観察する。
(気を失っている……訳ではなさそうだが)
時折、シェラ姫が身体を動かそうとして、彼女を縛り上げている枷や鎖が軋む音がしていた。
本来、人体というものは同じ姿勢を維持し続けることはできない。無理に同じ姿勢をとり続ければ、負担のかかった部分が悲鳴をあげ、悶絶するほどの痛みとなる。
それを恣意的に生み出す拷問具もあるのだから、その痛みと苦しみは想像を絶するものだろう。
(大丈夫だとは思うが……顔を見ておくか)
そう考えたリルドは、シェラ姫の目を覆う目隠しを取り外した。
散々に暴れ、鼻水と涙を流し、汗を掻いたのだろう。目隠しの布は湿ってずっしりと重くなっている。
目隠しを外すと、力なく瞼が開き、焦点の合っていない瞳が露わになる。
まだ意識はあるようだが、絶え間無く与えられる苦痛に、意識が途切れる寸前のようだ。
目隠しを外されたことで目を開けたようだが、その目が外界を認識しているとは思えない。リルドの存在を認めているかも怪しかった。
そんな彼女の悲惨な状態に、リルドは胸を痛めるが、同時にどうしようもなく興奮する自分も認識していた。
シェラ姫という穢れなき聖域をこのままぐちゃぐちゃに踏み荒らし、あらゆる尊厳を蹂躙して、その上で新たに芽吹くものを愛でてやりたくなる。
だがそれでは、リルドが恋い焦がれたシェラ姫ではなくなるのだ。
(俺は、あくまでシェラ姫を助けたいんだ)
自分に言い聞かせるようにリルドは心の中で念じ、続いて口枷を外しにかかる。
穴の空いた球形の口枷――ボールギャグによって開きっぱなしになっていたシェラ姫の口の中は乾燥していて、枷が口内に張り付いて少し取り外すのに苦労する。
こぼす涎もなくなったシェラ姫の口が解放され、喋れるようになった。
そんな彼女の頬を、リルドは平手で軽く叩く。痛みを与える目的ではなく、刺激を与える目的だ。大した威力ではなかったが、シェラ姫の意識を戻すのには十分だった。
茫洋と彷徨っていたシェラ姫の目の焦点が、リルドに合った。
リルドは仮面を被っていて、個人の判別は出来ない。
だが、実際に誰がそこにいるかは問題ではなかった。シェラ姫にしてみれば自分を拘束から解放出来る者ならば誰でもいいのだから。
彼女の澄んだ空色の瞳が涙に潤む。
「どうした、ルル? 何か言いたいことがあったら言ってみろ」
リルドはあえて優しく聞こえるように声をかけた。
それは甘く感じても、毒だ。調教師として与える飴。
シェラ姫は何か言おうとして、カラカラに乾いた喉が思うように動かず、苦しげに咳き込む。声が出ないのだ。開きっぱなしを強制されていた顎も、うまく動いてくれない。
そんなシェラ姫の様子を仮面越しに見つつ、リルドは飲み水を取ってやった。
「飲め。普通の水だ」
単なる飲用の水であり、特別なものでは決してない。
だが、限界まで体力を消耗し、体から水分が抜け切ったシェラ姫にとっては、どんな高級な茶葉を使って淹れた飲み物よりも美味しく感じるはずだった。
いまだシェラ姫の首は分厚い枷によって可動域が制限されているため、斜め上を向いた状態から動かすことができない。
注がれる水を素直に飲み干すしかない。
程よく飲ませたところで、リルドは水を注ぐのをやめ、改めて問うた。
「これで喋れるようになっただろう。言いたいことがあれば聞いてやるぞ?」
シェラ姫は水を飲んでもなお乾き、掠れた声で懇願した。
「おね、がいです……も、う、外して、くださ、い……くるしい、ん、です……」
元より覇気がある方ではなかったが、シェラ姫は憐れなほど弱々しくなっていた。
初恋の相手のそんな姿を見て、胸が痛くなるのをリルドは感じつつ、冷徹な態度を貫く。
「苦しいのは当たり前だ。それを目的としている拘束なんだからな。……言いたいことはそれだけか?」
言いつつ、先ほどまでシェラ姫が咥えていた口枷を示す。
もう一度咥えさせられ、放置されると思ったのか、シェラ姫の顔が絶望に染まる。
その眦からまた大粒の涙が零れ落ちた。
「や、やめ、て……! もう、いや……っ」
「やめて?」
わざとらしく強調してオウム返しにする。シェラ姫は即座に言い直した。
「やめてくださいっ! もう、耐えられません! ゆ、許して……!」
ギシギシと体を軋ませながらシェラ姫が懇願する。
「なんでも、しますから……!」
口枷を近づけていたリルドの動きが止まった。
仮面の裏側で、笑みを浮かべていた。
「ふむ……なんでも、といったな。その言葉に偽りはないか」
意地悪くシェラ姫の言葉を復唱して、確認するリルド。
シェラ姫は呻き、葛藤しつつであったが、力無く頷いた。
「っ……なんでも、します……しますから……もう……」
「その言葉、忘れるなよ」
リルドは口枷を机の上に置いた。しばらくそれの出番はない。リルドはシェラ姫のすぐ傍に立った。
何をされるのかわからず、シェラ姫が恐怖に満ちた眼でリルドを見上げている。
リルドは手を伸ばし、そのシェラ姫の頬を軽く撫でると、人差し指を中指をシェラ姫の口の中に突き入れた。生暖かいシェラ姫の口内の感触を、リルドは指先に感じていた。
「ンッ……」
指を口の中に入れられ、呻くシェラ姫。リルドはが命じる。
「噛んでみろ」
「……?」
意味がわからないと言う様子でありつつ、シェラ姫は言われた通りに、口の中に入れられたリルドの指を噛んだ。
しかし、開きっぱなしで放置されていた彼女の顎は疲れ切っていて、全く力が入らない状態だった。ほとんど甘噛みと変わらない程度の力しか出ない。
当然、指を傷つけることは出来ず、血が滲むこともなかった。
それを確認したリルドは、あっさりと指を引き抜く。指と口の間に、シェラ姫の唾液が糸を引いていた。
(これなら……万が一の時も大丈夫だな)
いまが好機、とばかりにリルドはその行為に取りかかる。
自分のズボンをずらし、シェラ姫の艶めかしい姿を見てすっかり準備万端になっていたそれを取り出す。
リルドのそれは、一般的なものよりも大きく、恐ろしい存在感を持って、シェラ姫の眼前に飛びだした。
シェラ姫が恐らく生まれて初めて見るであろう男性器。
彼女の目は、その禍々しくグロテスクなそれに釘付けになっていた。長年恋い焦がれた思い人に見られているという事実に、リルドは興奮を隠せない。表面上はあくまで冷静な奴隷商人を保っていたが、その激しく勃起した逸物が興奮している何よりの証拠だ。
「舐めろ。舐めないなら、口枷を嵌め直して、もう数時間放置だ」
それがどういう意味を持つのか、実際の行為に疎いシェラ姫でも理解していた。
男のそれを口の中に入れ、なめ回すという行為。それは互いに愛情を持つ夫婦の間柄でないのなら、奉仕行為の一種であり、上下関係を明確にする行為であると。
本来のシェラ姫の身分であるなら、死んでも拒否しなければならない行為。
だが。
「どうした、ルル?」
いまや、シェラ姫は王族ではなく、シェラ・ムトゥという名前ですらない。
ただのルルという存在だ。
クーデターが成り、もはや過去のものとなった国の王族など、死んだも同然。
それを刻み込むように、リルドはシェラ姫をルルという新たな名で呼ぶ。
数時間の放置による責め苦は、シェラ姫の体力と精神を極限まで削り、抗おうという気力を奪っていた。
彼女ひとりが意地を張ったところで、もはやどうにもならない。ただ苦しめられるだけの時間が待っている。
それを頭ではなく、心で理解したのか。
あるいは疲弊しきった心が受け入れてしまったのか。
シェラ姫はおずおずと、その口を開いた。
赤く湿った、艶めかしいシェラ姫の口内がリルドの視線に晒される。
これまでのような、口枷によって強制的に割り開かれたのとは違い、シェラ姫が自分の意思でその固い門を開いたのだ。
いますぐにでもその穴にペニスを突き入れて、思うままに蹂躙したいという思いを押しこめ、リルドは慎重に脚を前にずらし、腰を前へと動かす。
ゆっくりと、固く膨張したリルドのペニスが、シェラ姫の口内へと迫る。
シェラ姫は眼に見えてそれを恐れながらも、口を閉じて拒絶することはしなかった。
大きく、開かれたその口の中に、リルドのペニスを受け入れていく。
わずかなシェラ姫の吐息がリルドのものにかかり、彼はシェラ姫に見えないところで拳を握りしめた。掌に爪を食い込ませ、射精に至らないように痛みで気持ちよさを紛らわせる。
そんなリルドの影の努力など知らないシェラ姫は、口内に存在する自分以外の体温を気持ち悪く感じつつ、その棒状のものに自分の舌を絡めた。
技とは言えない、拙いばかりの舌の動き。シェラ姫にリルドを気持ちよくしようという意図などなく、ただ「舐めろ」という命令を機械的に実行したにすぎない。
だがそれでも、シェラ姫の舌の動きはいまのリルドには効果抜群だった。
「んっ……っ、ぐっ……!」
奴隷商人として。
絶対の上位者として。
奴隷のルルに情けない姿を見せるわけにはいかない。
主導権はあくまでもリルドが握っていなければならないのだから。
だが、リルドは頭ではそれを理解していたのだが、ギリギリまで膨張したリルドのものにとって、シェラ姫によって与えられた刺激は耐えがたいものだった。
(ま、ずい……!)
引き抜くわけにもいかず、リルドは快感の並みを堪えようとしたが、耐え抜くにはリルドのものはあまりにも膨張しすぎていた。
堪えきれずに、リルドのものが爆発し、波打って、先端から白い液体をシェラ姫の口内へと噴き出す。
白い液体の放つ生臭い臭気が、シェラ姫の口の中に一瞬で広がる。
「ウッ、ゥエッ……!」
生臭い欲望そのものを口内に噴き出され、喉の奥でその臭気を味あわされることになったシェラ姫が悶絶して痙攣する。一度似たような味と匂いのする液体を飲まされ、慣らされていなければ吐きもどしていたかもしれない。
辛うじて吐き出すことだけは堪えることが出来たが、彼女がそれまでの人生で味わったことのない臭いと味と触感のそれに、シェラ姫は眼を白黒させて悶絶していた。
「フー……吐き出さなかったのは、褒めてやる」
平静を装い、ゆっくりとペニスをシェラ姫の口から離すリルド。白い粘つく液体が、シェラ姫の口の中の涎と混ざり合い、生々しいアーチ状の糸を引いた。
「よく味わって飲み込め。舌で転がすように……そうだ。偉いぞ」
命令を出し、シェラ姫が口内の精液を飲み込むのを見ながら、リルドはシェラ姫の頭を撫でてやる。
彼女が口内にあるものを全て飲み込んだ後、リルドは再度膨張したペニスを彼女の前へと示した。
想像以上の気持ちよさに、想定より遙かに早く出してしまったリルドだが、まだ挽回は可能だった。精力が強いことは奴隷商人にとって善し悪しなのだが、この時ばかりは射精してすぐ再び勃起する元気な自分のものにリルドは感謝する。
「もう一度咥えて、今度は丁寧に舐めて綺麗にするんだ」
彼女自身の唾液と精液に塗れて汚れ、テラテラと光るリルドのものを翳されたシェラ姫は、呻きつつもそれを受け入れた。
「ウゥ……はい……」
大人しく開いたシェラ姫の口内にリルドのペニスが再び突き入れられる。二度目だからか、シェラ姫は恐る恐るといった様子ながらも、すぐに舌をペニスに絡めた。
ぴちゃり、ぴちゃりと、いやらしい水音を立てながら、シェラ姫の舌が動く。
その暖かいものの動きにリルドはまた射精したくなるが、一度出した直後のため、硬くするだけで堪えることが出来た。
シェラ姫は『舌を動かす』という行為にのみ集中することで、奉仕させられている現状を忘れることにしたようだ。
文句ひとつ、呻き声ひとつあげずに一心不乱に舌を動かすシェラ姫。そんな彼女のいじらしい姿に、リルドはますます興奮する自分を感じたが、今度こそ彼女の飼い主としての立場を維持するため、射精を堪えた。
ほどよくシェラ姫に舌での奉仕をさせた後、リルドは軽くシェラ姫の頭を撫で、ペニスを引き抜いた。
「よし。舌の動きはまだまだだが、ひとまず合格だ。いったん、拘束を解いてやる」
リルドの言葉に、シェラ姫が喜色を浮かべる。
拘束が解かれるということを喜んでいるのだ。
それが次なる段階に進むための、一時の解放であることなど、知るよしもないのだから、無理もない。
ただのルルから、主人に奉仕する性奴隷のルルになった彼女は。
次なる段階――雌犬のルルに堕とされるのだ。
つづく