※この話は全体公開の幕間となります。次回の更新が19になります。
※同じく全体公開の「00」からこちらを読んでも話が通じます。
革命が成って、王権が崩壊したムトゥ王国では、かつて上流階級と呼ばれていた貴族たちは、ことごとくがその地位から投げ出された。
革命の中心となった将軍は戦争で武勲を立て成り上がった存在だった。
そのため、彼は容赦なくかつての上流階級の者たちを追い詰める策を打ったのだ。
ほとんどの元貴族に懸賞金をかけ、国民に彼らを狩らせたのである。それは革命のドサクサに紛れてほぼ全ての実権をにぎった将軍自身から目を逸らさせる手でもあったが、同時に反乱分子を速やかに処理するためでもあった。
懸賞金に目が眩んだ国民たちは、国外逃亡を企てる元貴族たちをハイエナのごとく追い詰めた。
潜伏先から引きずり出し、老若男女関係なく、捕らえては軍部に引き渡す。軍部は名ばかりの裁判を行なって元貴族を断罪し、最下層の奴隷身分に落として奴隷商人へと売り渡す。
そんなサイクルが出来上がっていた。元貴族を一人残らず潰し、万が一にも反乱を起こさせない気だった。
そして当然、反乱分子の旗印になり得る元王族の最後の生き残り、シェラ姫に対しても、懸賞金はかけられていた。
将軍が私財を投じてまで設定した懸賞金の額は、天文学的なものになっており、名だたる賞金稼ぎたちが血眼になって探している。
王族の中で、唯一国民のことを考えて動いていたこともあり、同情する声がないわけでもなかったが、革命による興奮はいまだに激しく、表立って彼女を庇いだてする者はいない。
結局、彼女を捕まえることで得られる得にみんな目が眩んでいたのだ。
国境の町。
その町には、王国の外に出ようと思えば、必ず通らなければならない関所があった。
国から出ようという者にとっては関所が最後の関門である。
さらに、その町には賞金稼ぎも多く集まっていた。
関所に入ってしまえば、国の命令を受けた兵士たちが控えているため、賞金稼ぎたちが目を光らせているのは、町の大通りだ。そこにいるうちに捕まえられれば、賞金は彼らのものになる。
ひとりふたりではない賞金稼ぎたちが、怪しい者が通らないか、目を光らせていた。
その内のひとり、退屈そうに立っていた強面の男が、側に立つ青年に話しかける。
「まだシェラ姫は捕まってないんだよな?」
その仲間らしき糸目の青年は、強面の男の確認に頷いてみせる。
「もしすでに捕まっているとすれば、みせしめのためにも晒し者にしない理由がないからね。無理な逃亡を企てて、どこかで死んでいる可能性もあるけどーーそれは考えても仕方ないかな」
強面の男はあまり見張りなどの作業が得意でないらしく、不満そうな顔をしていた。
「もうとっくに別の国に逃げちまったんじゃねーの?」
「さすがにそれはないだろうね。将軍の監視の目もあるから。国境を越える女はひとりの例外もなく、瞳の色を確認されているみたいだし」
ムトゥ王国において、瞳の色というのは上流階級の最大の証であり、王権が崩壊してしまった今は最大の枷となっていた。いかに変装しようと、瞳の色はそう変えられるものではない。
一時的に盲目の者を装うなど、元貴族側もさまざまな手を弄していたが、ほとんどが失敗に終わり、捕まっていた。
糸目の青年の説明に、強面の男は不満げだ。
「でもさぁ、国境なんて越えようと思えば、山に入ればすぐ越えられるじゃん」
「僕たちのように、山道に慣れている者とは違うんだよ。お姫様が歩けるような山道など限られているし、人間一人分ほどの大荷物を背負っているものが山に入ろうとすれば目立ちすぎる。あの将軍、性格はともかく能力は本当に優秀だから、下手な山越えはすぐに見つかるだろうね」
「じゃあなんでまだ見つかってないんだ?」
「……少しは自分で考えて欲しいな。無理な山越えをしかけてのたれ死んでいないとして、考えられる可能性はそう多くないよ。ひとつは国の上層部、例えば将軍がすでに捕まえているけど、あえて公にしていないという可能性」
「そんな可能性あんの?」
「あるさ。あの将軍の性格上、見世物にする可能性の方が高いとは思うけど、姫という貴重な存在を自分一人のものにしようとするかもしれない。シェラ姫はいかにもあの将軍が好きそうな、大人しくて可憐な女性だしね。他にも狙っている奴はいるみたいだし」
糸目の青年は王城がある、ムトゥ王国の首都がある方向を見遣った。
「他には、革命が起きたときにはすでに国外に脱出している可能性もあるね」
「どういうことだ?」
「姫の性格上なさそうではあるんだけど、姫もそれなりに有能ではあったからね。革命の予兆を読み取って、革命の前に国外に脱出していた可能性があるのさ。まあ、それに関しては将軍だって警戒していただろうし、少ない可能性だけど」
だから一番ありそうなのは、と糸目の青年は続ける。
「監視の目が緩むまで、王国のどこかに隠れているか、かな」
その糸目の青年の予想に、強面の男は首を傾げる。
「ろくに城の外に出たこともなさそうな、あの姫に隠れることなんてできんの?」
「もちろん、その場合は相当優秀な協力者が手を貸しているんだと思うよ。実際、王女付きだった女騎士の姿がみえないらしいし、彼女が姫を連れて逃げているという可能性は高そうだね」
青年の話を聞いていた強面の男は考えることが面倒になったのか、遠い目をした。
「なんか、めんどくせえなぁ……諦めね?」
「いやいや、諦めてどうするのさ。王女にかけられた懸賞金は見たろ? 確かに骨折り損になるかもしれないけど、捕まえられれば、こんな賞金稼ぎなんてする必要もなくなるくらいのお金が手に入る。一生遊んで暮らせるかもしれないんだよ? 多少の損は覚悟しようよ」
「ま、その辺の判断はお前の方が的確だから任せるけどよー」
彼らの間では、役割分担がされているらしい。
強面の男のいい加減な態度に、糸目の青年はため息を吐く。
「大体ね、仮に僕が手を引く判断を下したとして。彼女が受け入れるわけないだろう?」
ふたりの賞金稼ぎがそんな会話を交わす中、突如、関所の方向から騒ぎが起きた。ふたりがその方向を見やると、関所の中から人間が飛び出してくる。
片方は頭から頭巾を被って顔を隠している女性と、屈強な体格をしたその護衛らしき男だ。
男は腰にさげていた剣を抜いており、ふたりを追いかけて飛び出して来た衛兵たちにその切っ先を向ける。
「奥様、お逃げください!」
男はそう叫び、女が逃げる時間を稼ごうというのか、衛兵たちと斬り結び始めた。
衛兵は数で勝っているが、それを凌いでみせる男はそれなりの使い手のようだ。
一方、頭巾の女は足を縺れさせながら走っており、いかにも走り慣れていないのが明らかだった。
その様子を見た糸目の青年が、そのふたりの素性を看破する。
「噂をすれば……とはいかなかったか。あれは南方領主夫人のビードォ・リトゥーシャと、マーク護衛長だね。屋敷が燃えて無理心中を図ったと言われていたけど……密かに脱出するつもりだったのかな」
「お前なんでも知ってるな」
「いや、リトゥーシャ夫人とマーク護衛長の話は結構有名だからねぇ。たまたま見覚えがあっただけだよ」
「ま、なんでもいいや。あいつらも賞金かかってるよな」
「はぁ……そうだね」
なんでもいい、で流された糸目の青年は何か言いたげだったが、強面の男に言っても仕方ないと思い直したのか、ため息と共にそうだとだけ答えた。
「そんじゃあ、捕まえにいくかぁ!」
強面の男が、意気揚々と背負っていた身の丈ほどの大剣を持ち上げる。
それを、糸目の青年が制した。
「必要ないと思うよ」
彼がそういった理由は、すぐに判明した。
懸命に走っていた頭巾の女性――リトゥーシャ夫人の前に、小柄な人影が躍り出る。
「ど、退きなさい!」
リトゥーシャ夫人はそう叫び、小柄な人影を突き飛ばそうとした。
その突き出した腕を小柄な人影が掴み、捻り上げながら足を払う。夫人の体は地面に転がされ、頭を隠していた頭巾が取れる。一般市民と変わらないほど短くなった金髪が暴きだされた。かつての上流階級の存在にとって、長い髪は象徴であり誉だった。短くなった髪を恥じて頭巾を被っていたのだろうが、怪しさが増して疑われるきっかけになったのだろう。
そんなリトゥーシャ夫人を地面に転がした小柄な人影は、彼女をただ転がしただけでは済まさず、捻り上げた腕に体重をかけた。
街頭に、乾いた音が響き渡る。
「いッ、ギャアアアアアアアアッッ!」
とても高貴な者があげていい悲鳴ではない潰れた悲鳴をあげ、元貴族のリトゥーシャ夫人が地面をのたうちまわる。
その片腕はまったく動いておらず、骨が折れたか脱臼してしまったようだった。
「奥様っ! 貴様あああああ!」
彼女を逃がそうとしていた屈強な男――マーク護衛長が、夫人の悲鳴を聞いて激昂した。
やりあっていた衛兵を力任せに吹き飛ばし、小柄な人影へと向かって走る。
伊達に護衛長を務めていたわけではない。一息に距離を詰めると、小柄な人影にむけて剣を振り下ろす。
瞬く間の決着だった。
振り下ろされたマーク護衛長の剣を、小柄な人影はいなして懐に入り込むと、いつのまにか握っていたナイフの切っ先をマーク護衛長の鳩尾に突き立てていた。
あまりの早業に、マーク護衛長は自分がどうされたかもわからない様子で、呆然とした表情のまま、その場に崩れ落ちる。
じわじわと広がる血の量は、彼が致命傷を受けていることを如実に表していた。
「ま、マーク! そんなっ、いやああああああ!」
男の骸に向け、声をあげる夫人。動かない腕を引きずって、這うようにしてマークの元へ向かおうとする。
ただの主従というにはあまりにも悲痛な叫びであり、必死な行動だった。
一部始終を見ていた糸目の青年が、興味深そうに唸る。
「ふぅん。やっぱり噂通り、並々ならぬ関係だったみたいだね」
「並々ならぬ関係ってなんだ?」
「君に言ってもわからないだろうからわからなくていいよ」
リトゥーシャ夫人があげる悲痛な叫びなど気にせず、二人の賞金稼ぎはのんびりと会話を交わす。
そんな彼らの視線の先で、リトゥーシャ夫人の腕を折り、マーク護衛長を仕留めた小柄な人影が動いた。
這いつくばって悲鳴をあげていた夫人のへし折った腕を蹴り飛ばし、激痛に悶絶させて黙らせたのだ。
あまりにも乱雑な扱いに、二人の賞金稼ぎは眉を顰め、その小柄な人影の元に向かう。
「おいおい、ラリータ。やりすぎだぜ。もう逃げられなかっただろ」
「傷物にしたら支払われる賞金が下がる場合も多いんだから、少しは自重して欲しいな」
ラリータと呼ばれた小柄な人影は、仲間の二人の私的に対し、その傷だらけの顔を嫌そうに歪めた。
傷だらけではあるものの、その造形自体は整っており、傷がなくそれなりの服を身につければ、それ相応の身分の令嬢に見られることだろう。
そんな彼女は、心底嫌そうな顔をして、冷徹に告げた。
「容赦する理由がないわ。悲劇のヒロイン気取りの女なんて」
「いや、だから賞金の問題……」
「文句があるの?」
「「メッソウモゴザイマセン」」
固めた拳を見せられ、ふたりの賞金稼ぎは声を揃えた。
大剣を振り回すような強面の男でも、いまのラリータに対して何かをいう気にはなれなかったようだ。
ラリータは地面に転がって泥に塗れるリトゥーシャ夫人の後頭部を踏みつけ、彼女の顔を地面に押し付けながら吐き捨てる。
「いままで散々贅沢三昧してきたお貴族様が、革命が起きたからってのうのうと逃げ出そうなんて許されるわけないでしょうが。一人だって逃がさない。特にあんたは『道ならぬ恋』なんていうものにうつつを抜かして、貴族の責務も怠ってたんだから……」
踵で踏みにじり、リトゥーシャ夫人にさらに悲鳴をあげさせたラリータが、壮絶な笑みを浮かべて吐き捨てる。
「死んだ方がマシってほどの、生き地獄に叩き落としてやるんだから」
そんな彼女の元に、マーク護衛長に吹き飛ばされた衛兵たちがようやくやってくる。
元とはいえ貴族の頭を踏みにじっているラリータの姿に、完全に尻込みしながら声をかけてきた。
「きょ、協力感謝する。あとはこちらであずか――」
「生ぬるいのよ、貴方達」
容赦のない断言に、衛兵たちが固まった。
ラリータはそんな彼等から視線を外すと、地面に転がっているリトゥーシャ夫人の服を掴むと、ナイフも用いて素早く剥ぎ取っていった。
元々偽装のためか、見窄らしい格好をしてた彼女の服はあっという間に剥ぎ取られ、下着姿にさせられてしまう。
「キャアアアアア!? やめてっ、なにするのっ!」
リトゥーシャ夫人は顔を真っ赤に染めて恥じらい、剥ぎ取られた服を取り返そうとしたが、ラリータに容赦なく頬を平手打ちされ、地面に転がされた。
「黙りなさいよ。あんたはもうお貴族様なんかじゃないの。ただの卑しい女なのよ」
ラリータは蹲るリトゥーシャ夫人に近づくと、残った下着もあっさり剥ぎ取ってしまった。周囲の群衆からはざわめきとわずかに喝采の声があがる。
「いっちょまえに体を隠してるんじゃないわよ」
全裸に剥いたリトゥーシャ夫人を蹴り飛ばし、うつ伏せにしたラリータは、その力無く垂れ下がる腕を掴むと、もう片方の腕も合わせて捻り上げ、肩甲骨あたりまであげさせた状態で、その腕を縛りあげた。
「痛い痛い痛い!! 腕がっ、腕が痛いの! やめて!」
ただでさえ負傷している腕を無理やり捻り上げられているのだから、痛みは想像を絶する。人がいい人間であれば、その悲痛な叫び声に同情して緩めることだろう。
だが、ラリータは一切緩めなかった。むしろ、手首から先が鬱血しそうなほどギチギチに締め上げ、固定してしまう。
「バカなの? やめるわけないでしょ?」
リトゥーシャ夫人の腕を縛り上げた縄は、彼女の体の前面にも回され、その乳房を上下から挟み込むようにして強調させた。彼女の乳房は大きく膨れ上がり、見た目からして痛そうな状態になる。
縄はさらに上下に乳房を縦断しながら股間へと伸びた。いい具合の位置に瘤を作って股間に食い込むようにし、リトゥーシャに体を割り割かれるような苦しみを与えるようにする。
縄尻は彼女を後ろ手に固定している縄に接続され、彼女が体を揺するたびに責め立てるようにされた。
さらにラリータはどこからともなく金属製の首輪を取り出し、リトゥーシャの首に巻きつけた。厚みと太さがある奴隷用の首輪であり、リトゥーシャは首を満足に動かすこともできなくなった。
その首輪の金具に太い鎖を接続し、その鎖の先を衛兵のひとりに手渡す。
「はい。これくらいすれば逃げるなんてこともできないわ。……運良く逃げられたところで、逃げた先で男たちに犯されて殺されるだけよ。今後の人生、奴隷としてせいぜい頑張ってご主人様に尽くしなさいな」
「こ、こんな……ひどい……っ」
全裸よりも恥ずかしい姿で地面に転がって、シクシクと啜り泣き始めるリトゥーシャ。
そんな彼女を、ラリータは憎悪も露わに見下していた。
「まだ悲劇のヒロイン気取りなわけ……? そのくだらないことしか言えない口、塞いであげるわ」
ラリータはそう告げると、リトゥーシャから剥ぎ取ったばかりの下着を丸め、その彼女の口に無理やり押し込んだ。さらに彼女の服を裂いて作った布を用いて、吐き出せないように猿轡を噛ませる。
自分の汚れた下着を口に突っ込まれ、塞がれて吐き出すこともできなくなった彼女は、ボロボロと大粒の涙を流して苦悶する。
「さっさと連れていきなさいな」
ラリータは衛兵をギロリと睨む。その眼力に負けた衛兵は、何度も頷きつつ、リトゥーシャを立たせて、鎖を引いた。
抵抗の術どころか、人間として最低限必要な衣服や尊厳をも剥奪された彼女は、鎖で引かれるままに歩き出す。
全てを曝け出しながら歩く彼女には、民衆からの視線が向けられ、もう二度と普通の生活には戻れないであろうことを予感させた。
ひとりのまともな人生を破壊した仲間に対し、糸目の青年と強面の男が呆れた視線を向ける。
「ラリータ……やりすぎ」
糸目の青年がそう指摘するのを、ラリータはそっぽを向いて拒否した。
「あれくらいやらないと、勘違いしたお貴族様は自分の置かれた状況を理解しないのよ」
「それはお前の体験談なのか? ……あ、いや、ごめん、なんでもねえ。まじで!」
失言した強面の男は、ラリータに対して必死に謝る。
「はいはい。そこまでそこまで。ラリータ、落ち着こうね。うん」
ラリータは仲間に向けてはダメな類の殺意の篭った目を男に向けていたが、糸目の青年が割り込んだことでその殺意を少し納めた。
「確かに昔、わたしは勘違いしてたお貴族様だったけど、いまは違うわ――あのクソ王妃のおかげさまでね」
強面の男に向けていた殺意とは段違いの殺意を滲ませるラリータに対し、強面の男は冷や汗を流しながら頷く。
「お、おう……悪かったって」
「あのクソ王妃がさっさと死んだのは残念だったけど……その分のツケは、その娘に払ってもらわないとね。ふふふ……」
壮絶な笑みを浮かべるラリータは、そう呟いた。
そんな彼女の様子を見ていた強面の男は、糸目の青年にひそひそと話す。
「ああ、確かにこりゃダメだわ……見つかるまで探索しそうだわ……」
「でしょ? 今回ばっかりは、シェラ姫が見つかるまで諦めそうにないんだよね……」
ため息を吐きつつ、糸目の青年は不敵に笑っているラリータに声をかける。
「でもさラリータ。もしシェラ姫が誰かに匿われてて見つからない場合もありうるからさ。止め時は決めといてよ?」
青年の求めに対し、ラリータは笑うのを止め、急に真顔になった。
「わかってるわ。とりあえず、もう数日ここで張って見て……それでも見つからなかったら、心当たりがひとりいるから、それに当たってみる」
「心当たり?」
「そんなのがいるならさっさといけばいいんじゃね?」
「警戒心の強い奴なのよ。もし匿っているのだとしたら、いますぐ行っても尻尾は出さないに違いないわ。だから、少し間を置くの。……正直、会いたくはないんだけど」
そう言いつつ、ラリータは心底嫌そうな顔で、その心当たりの名前を口にした。
「お姫様が初恋だ、なんてのたまってた元婚約者のあいつ――リルドには、ね」
つづく