特殊な形状の口枷を噛ませられ、中央に空いた穴から無防備に喉奥を晒してしまうようになったルル。
「フッ、ウゥッ、ウーッ……!」
苦しそうに呻く彼女の口内で、赤い舌がちろりちろりと蠢いていた。
口枷によって口内を一杯に広げられた彼女は、覗かせた舌から涎を垂らしてしまう。それを見たリルドは彼女の顎を掴み、無理矢理上を向かせて涎が落ちないようにする。
「床を汚すな。滑って困るのはお前達だぞ」
耳当てが音を遮断しているので、ルルにその言葉は聞こえないのだが、叱責されていることは伝わったらしく、身体を竦ませて必死に涎を飲み込もうとする。
そんな健気なルルの姿を見つつ、リルドは新しい『蓋』を取り出した。
「よーく舐めて唾液を絡めておけよ……辛いのはお前だからな」
蓋を見せられたルルの目が見開かれる。半透明のゴーグル越しにもわかるその異様さに、恐怖が滲んでいた。
その蓋には、とんでもなく大きな張り子が取りつけられていたのだ。
開口具をそれを使って塞げば、その張り子はルルの喉奥まで達し、相当な苦しみを与えるだろうことは確実だ。
あまりの威圧感に、ルルは怯えを見せ、短くなった四肢を後退させて逃げようとする。
首輪を掴んでその動きを留めたリルドは、その蓋についた張り子の先端をルルの口内に差し入れていった。
「ムグッ、ウグググッ、ウーッ!」
ルルは押し込まれてくる張り子のあまりの大きさに、目を白黒させて戦き、ただ呻くだけで舌を絡めることはなかった。
「唾液を絡めないと辛いんだけどなぁ……まあ、大丈夫か」
リルドはそう判断し、手に持った蓋を回転させながら奥へと押し込んでいく。回転させることによって自然と唾液が塗されるのだが、口内から喉奥を抉られるようなもので、ルルにとっては溜まったものではなかった。
苦しみ、もがき、呻きを上げるが、リルドは手を休めない。
どんどん奥へと張り子を滑り込ませ、最終的に口枷に完全に蓋をするように、固定してしまった。それによって、ルルがどれほど力を込めようと、吐き出そうとしようと、絶対に張り子が抜けることはなくなった。
「フゥー、フゥー、フゥー……」
全頭マスクに空いた小さな穴から、鼻で呼吸をくり返すルル。その音は良く響き、苦しげなものであった。
常に喉の奥まで張り子が占領しているという状態は、ルルにとって極めて苦しい状態だ。だがそれに慣れなければ、窒息して死んでしまう。絶妙に空気の通り道を確保されたその張り子は、手っ取り早く喉奥での奉仕を覚えさせるための、悪魔のような道具なのだ。
「よしよし、その調子で馴れてくれよ……」
リルドはルルの頭を撫でながらそう呼びかける。
普段、そういった張り子を普通の奴隷に使うとき、張り子には特性の媚薬を塗って、喉の奥まで逸物を突き込まれることに快感を覚えるようにしていた。それによって調教された奴隷は、素質によるところはあるが、固形物の食事を取るだけでも快感を覚えて絶頂してしまうほどになることもあった。
だが、ルルに快楽を覚え込ませ、普通の生活を出来なくさせてしまうわけにはいかないため、今回その特性の媚薬は塗っていなかった。
その結果、ルルは苦しい状態が延々と続く。
快楽に溺れてしまう方が、よっぽど楽だと思われるほどの苦しみだ。
そのことをリルドは考えて、自嘲するのだった。
(俺はシェラ姫を助けたい……それは事実なんだが……結果として、余計に苦しめているかもしれないな……)
助けたいといいながら、誰よりも彼女を苦しめている矛盾。
無論その先に本来の彼女がたどり着けなかったであろう、平凡な幸せを用意してはいるのだが、いまの段間で誰よりも彼女を苦しめ、辱めているのはリルドであることも事実。彼女にしてみればリルドこそ悪魔のようなものだろう。
その自覚を持ちながらも、リルドは彼女を救うために、調教を続ける。
しばらくすると、ようやく落ちついてきたのか、ルルの呼吸が安定し始めた。苦しそうな呼吸に変わりは無かったが、少しは慣れてきたようだ。
その時、調教部屋の扉が、外からノックされた。
「ただいま戻りました。ご主人様、入っても構いませんか?」
そう告げる声はインディーのものだ。リルドは立ち上がり、入り口の方を向く。
「ああ、いいぞ。入ってこい」
「失礼いたします」
扉が開き、ヒトイヌたちを連れてインディーが部屋の中に入ってくる。
彼女の連れているヒトイヌたちの視線が、一斉にルルに集中した。
ヒトイヌたちの視線に晒され、居心地が悪そうに身を竦めたルル。
そんな彼女を囲うように、ヒトイヌたちはルルの元にやって来て、それぞれ色々な方向からルルの様子を確認していた。
他のヒトイヌたちは拘束以外何も身に付けていないため、肌の大部分を晒しているが、ルルは逆に肌の露出が一ミリたりともない。目すらゴーグルに覆われている。
ラバースーツによって徹底的に封じられているルルに対し、他のヒトイヌたちは戸惑っているようだった。
彼女たちにとってルルは後輩であり、仲間になるのだが、その外見があまりに違いすぎる。犬の群れの中に狸を混ぜるようなもので、ヒトイヌたちにとってはどう接したらいいかわからないのだろう。
そんな彼女たちの様子を傍から見ていたリルドは、悩ましく思って顎に手を当てる。
(ふむ……わかってはいたが、やはりひとりだけこの装備だとルルが目立ちすぎるな……かといって、ルルを他のヒトイヌたちと同じ装備にするわけにはいかないし)
ルルの身体を徹底的に覆い隠しているのは、彼女の正体がシェラ姫であるということをわからなくするためだ。
元々シェラ姫の身体にはシミも傷もなかったが、思いがけないところから本人であることが知られる可能性もある。代表的なものはやはりほくろだろう。インディーに調べさせたところ、シェラ姫の身体にもいくつかほくろが確認されている。その大半は小さかったり見えにくかったりして、それを見て彼女がシェラ姫であることを想起するものはそうそういないと思われたが、用心するに越したことはない。
(手を打っておいて正解だったな)
国境を越える際には、シェラ姫を――ルルをヒトイヌたちの中に紛れさせる必要がある。そのための策として、他のヒトイヌたちの分もラバースーツを用意する算段になっていた。いまはルルを最優先したため、この場にそれはないのだが、亡命決行日までには揃う手筈になっている。
(ああ、痛い出費だ……でもまあ、仕方ないか)
ラバースーツはこの辺りでは手に入らない品のため、相当な労力をかけて遠方で調達するしかない。時間も限られていたため、相当な代償を支払っていた。
特に、ルルの体格に合わせて作成したラバースーツは、一品ものだけにひとりの奴隷にかけるにはあり得ないくらいの高値となっていた。必要と思われる着用時間の長さを考え、妥協するわけにはいかなかった。
(ルルには他のヒトイヌたちの存在に慣れてもらわないといけないが、他のヒトイヌたちにもルルの姿に慣れてもらう必要があるな……)
リルドはそう考えつつ、ルルとヒトイヌたちの邂逅を、ひとまずは黙って見守ることにした。
ヒトイヌたちはルルを取り囲むと、一斉に鼻を鳴らしてルルの体臭を嗅ごうとする。
これはリルドがヒトイヌとして彼女たちに覚え込ませた、いわゆる『ヒトイヌとしての挨拶』であった。
本来ならお互いの尻や秘部、肩口や口内などの臭いを嗅がせ合うのだ。
本物の犬のように個体の判別は出来なくとも、互いに互いの匂いを知るという過程を得て、同じ境遇の仲間であるということを頭ではなく、身体に覚え込ませるのだ。
意外と、この挨拶の効果はそれなりに高く、この挨拶を交わしたヒトイヌたちは比較的短期間で仲良くなることが多かった。
とはいえ、今回はあまりに勝手が違いすぎる。他のヒトイヌたちはルルの匂いを嗅いでも、ラバースーツの臭いしかしないらしく、戸惑っているのが傍から見てもわかる。
同じ生物かどうかも怪しんでいるようにすらみえ、しきりにルルの匂いを嗅いでいた。
一方のルルは、とんでもない格好の女性達に詰め寄られ、匂いを嗅がれるということに困惑し、どうすればいいのかわからない様子なのが見て取れた。
ヒトイヌの振る舞いを学べとリルドからは言われているものの、その匂いを嗅ぐという行為を出来るほど、彼女はまだヒトイヌに慣れてはいなかった。
「まだ少し時間が必要か……さて」
リルドは手を叩き、ヒトイヌたちの注意を引く。ヒトイヌたちは合図に反応して、即座にリルドの方を見た。
「よし、お前ら。ひとまずルルに対する挨拶はしなくていい。いつものように、運動を開始するぞ」
そうリルドが告げると、ヒトイヌの彼女たちは特に恥ずかしがる様子もなく、床にお尻を突き、M字に足を開いて両腕も開く。背中を反らし、身体の前面を晒す体勢を取った。
それは四肢を拘束されたヒトイヌにリルドが取らせている『待て』の姿勢だ。彼女たちは十分に調教済みなため、恥ずかしがる様子もなく、身体を晒している。
それを教えられていないルルは、ひとり四つん這いの姿勢のままでいた。周りが取っている姿勢の意味はわからなくとも、皆が同じ姿勢を取っているということは、聡い彼女のこと、すぐに察しただろう。
そしてリルドの言葉を踏まえると、自分もその姿勢を取ることを求められていることがわからないわけがなかった。
だが、彼女たちが取っている姿勢は、普通の女性が取るには恥ずかしすぎる姿勢だ。淑女たる人間が取るべき体勢ではない。
困った様子でおろおろしているルル。その視線がリルドの方に向いた。
リルドはそんなルルにわかるように、大きく頷いて見せる。ヒトイヌたちも、新しい仲間に対し、応援するような目線を送っていた。
そのふたつの圧力に屈したのか、恐る恐る、ルルが四つん這いの姿勢から、お尻を地面に突く体勢になろうとして――
「ウゥ……ッ、ウァゥ!?」
慣れない体勢を取ろうとしたためだろう。ころりと後ろに転がって、身体を全開に開くあおむけの姿勢になってしまった。
ひっくり返った虫のように、短くなった手足をばたつかせるが、起き上がれない。大事なところはラバースーツに覆われているとはいえ、恥ずかしすぎる姿だった。
リルドはそんなルルの滑稽な姿を見て、悪戯心を抱いてしまった。
「やれやれ……おいお前達。ついでだ。ちょっと遊んでやれ」
そう周りのヒトイヌたちに呼びかける。ヒトイヌたちは嬉々として待機ポーズを崩し、ルルに群がっていった。
ルルの両手両足にそれぞれヒトイヌが取りつき、お腹や胸で抑えるようにして、あおむけの体勢でルルを拘束してしまう。
「ウゥッ、ウッ!」
ただでさえ呼吸が自由にならず、力が出にくいところを、四肢を押さえつけられたルルが抵抗出来るわけがない。ルルは身体を全開に開いた状態で固定され、ラバースーツに覆われた股間や乳房を無防備に晒すことになった。
恥ずかしさのあまり、顔を横に背けて呻くルルの身体で、ヒトイヌたちが遊び始める。
ラバースーツに覆われている上から、それぞれが舐め始めた。
「ウグッ、ウアゥッ」
ヒトイヌたちの舌が動くたびに、ルルの身体が跳ね回る。そんな彼女の反応を楽しむように、ヒトイヌたちは舌でルルの身体を弄んでいた。
彼女たちにしてみれば、ラバースーツの存在は未知のものであり、最初は戸惑っていたようだが、変わった衣服の一種と認識してからは気にせず舐めるようになっていた。
ヒトイヌたちの舌技に対するルルの反応自体は、彼女たちがよく見てきたものなのだ。見た目や触感は普通と違っても、反応が同じなら彼女たちが恐れを抱く理由はない。
柔からかな乳房の膨らみがヒトイヌの舌によって変化させられ、先端部を含めた乳輪のあたりを甘噛みする。ラバースーツに包まれているために、直接触れられている感覚はしないものの、間接的にも十分な刺激がルルに与えられていた。
「フゥ、ッ、ウーッ」
苦しげに悶絶するルルが、拘束された身体を軋ませて悶える。ヒトイヌたちの攻撃は至るところに及び、彼女の股間にも当然向かっていた。
ルルの両足にのし掛かって抑えている二頭のヒトイヌが、同時に彼女の恥丘を責める。ラバースーツに隠されたそこに直接刺激は与えられないが、その場所への刺激はルルには十分強烈だった。それもヒトイヌたちは舌を用いている。その場所を舐められるという行為は、ルルが想像したこともない行為だ。
「ウウゥ、うぅ……うぅ……ぁぅ……ッ」
相手はヒトイヌとして経験豊富で、そういった奉仕に手慣れた存在である。ふたりがかりで与えられる舌の刺激は、異様な感覚となってルルに襲いかかる。
ルルにしてみれば、股間という場所を舐められる嫌悪を感じているはずなのに、気持ちよさも同時に感じてしまうという、わけのわからない状態になっていた。
その異様な感覚への戸惑い、忌避感。そういったものが彼女を追い詰めている。
「んっ、んんっ、んあぅ、あっ……」
徐々にその声から硬さが取れ、甘い声になりつつあった。感じ始めている証拠である。
リルドはそんなルルの様子を見つつ、考えを巡らせる。
(思ったより早いな……いや、この場合はヒトイヌたちを褒めるべきか……?)
ヒトイヌになりたての者が、すぐにヒトイヌの愛撫に感じられるようになるかといえば、基本的にはその者の素養次第だ。あるいは、リルドが目的を持ってやらせている場合、薬などを用いて手早く感じるようにすることもある。
そういった手が加えられていない、素のままでの反応と考えると、ルルの順応はいささか以上に早かった。
(ふぅむ。そういった素養がある……というべきか、それとも性格上受け入れるのが早いからと思うべきか……いずれにせよ、やらせすぎるのは良くなさそうだな)
そうリルドが結論を出すのと同時に、ヒトイヌたちに弄ばれていたルルが、一際大きく身体を震わせ、絶頂に達した。
ヒトイヌたちはそれを確認すると、一端責める舌を止め、リルドの次の合図を待っている。彼女たちはしっかり躾けられているため、勝手な行動をすることはない。この場合、責めている対象が一度絶頂を迎えたため、さらに続けて責めるか、それとも一端やめるか、リルドの判断を仰いでいるのである。
(全く、可愛いヒトイヌたちだよ)
リルドはそう思いつつ、ヒトイヌたちの頭を軽く撫でて労ってやる。
そして、ルルを解放するように指示を出し、仰向けにひっくり返ったまま、荒い呼吸をしているルルを改めて観察した。
激しい呼吸に従って、彼女の胸が上下している。柔らかい乳房の膨らみや、恥丘の盛り上がりを覆うラバースーツは唾液によってテラテラと光り、淫靡な輝きを見せていた。
その光景に、リルドはドキリとしてしまったのだが、ヒトイヌたちの前では、あくまで冷静な奴隷商人を心がける。
軽くルルの頬を叩き、茫洋としていたその意識を取り戻させた。
「寝るにはまだ早いぞ、ルル。さっさと起きろ」
言いつつ、リルドはルルの両脇に手を入れ、赤ん坊を持ち上げるように彼女の身体を引っ張り起こした。
お尻を地面に付けさせ、M字開脚となるようにしながら、体勢を整えさせる。
「しっかり背筋を伸ばせ。次に転んだらいまの優しい責めでは済ませないからな」
言いながら、ルルの背中を叩いて背筋を伸ばさせる。声は聞こえずとも、仕草や動きで大体のことは伝わっているらしく、ルルは必死になって背筋を伸ばし、姿勢を正していた。
リルドの満足がいくような体勢をルルが取るころには、他のヒトイヌたちは何も言わずともルルと同じ待機ポーズで待っていた。
そんな優秀なヒトイヌたちを内心誇りつつ、リルドは改めて彼女たちの前に立つ。
「さて、少々時間がかかったが……改めて、今日の躾を開始するぞ、お前達」
「わんっ!」
調教開始を告げたリルドの言葉に、元気のいい返事が返る。
そんなヒトイヌたちの中に紛れ込まされたルルは、不安そうな様子でしきりに周囲を見渡している。
彼女たちの状態に満足しつつ、リルドは次なるステップに進むべく、今日の調教開始を宣言する。
「今日は新入りに奉仕の仕方を学んでもらう。お前たちはその見本になってやって欲しい」
つづく