男性器を模した張り子が、床から聳え立っている。
平均的な大きさに比べるといささか大きすぎるのだが、この大きさに慣れておけば大抵の男性器に尻込みすることなく、奉仕することだけに集中出来る。そういった思惑もあって、普通に見るとかなり大きめの張り子を用意しているのだ。
張り子の前に座らされたルルは、リアルすぎてグロテスクな見た目に怯えていた。
リルドはそんなルルに対してではなく、周りのヒトイヌたちに向けて声をかける。
「とりあえずは、そうだな……ファーファ!」
「わんっ!」
ヒトイヌのうちの一頭の名前を彼が呼ぶと、嬉々とした返事があった。他のヒトイヌたちはいささか残念そうにしつつも、大人しく引き下がる。
ファーファと呼ばれたヒトイヌは、栗色の髪が美しい、ルルとそう変わらない年頃のヒトイヌだった。小柄な身体ながら、とことこと器用に四肢を動かしてリルドの足下に進み出てくる。
リルドはそんな彼女の頭を撫でてやりながら、指示を出した。
「まずはお前が手本を見せてやれ」
「わんっ」
ファーファはそう元気よく吠えると、張り子のすぐ傍まで歩き、ぺたりとお尻を床に付けて座り込む。
そして、ルルに対してニコリと笑みを浮かべたかと思うと――その小さな口を限界近くまで大きく開き、凶悪な長さと太さをした男性器の張り子をぱくりと咥え込んだ。
「ウゥッ!?」
ルルが驚愕に声を上げたのも無理はない。ファーファは顎が外れるのではないかというほどに口を開き、張り子を咥え込んでいる。張り子の先端、少し膨らんだ場所を丸ごと口の中に入れていた。
本物の男性器でいう亀頭に舌を絡め、執拗に唾液を塗していく。その勢いは凄まじく、あっという間に張り子全体に唾液が垂れ、ただでさえグロテスクな見た目のそれを、怪しく彩った。
ルルは初めて見る男性器への奉仕というものに、驚きを持って見入っている。
リルドは王族の性教育というものがどういったものだったのかまでは知らないが、いまファーファがルルの目の前でやってみせているような、見た目からイヤラシく男に奉仕するような形ではないことは確かだ。
「ん……っ、ぷあっ、んぅ……っ、んんっ」
ファーファはそれに加え、声や音まで立てて奉仕を盛り上げる。
その悩ましげな喘ぎ声や湿った水音は、直接奉仕されているわけではないリルドにも影響を与えていた。心臓の鼓動が早くなり、自分のものに血流が集中するのを、リルドは奴隷商人として培ってきた経験とプライドで上手く抑えていく。
(奉仕とはこういうものだということに、慣れておいてくれないと困るからな)
順調にいけばルルに奉仕をさせる予定はないが、失敗は許されない。どのような場合にも対応できるようにしておかなければならなかった。
(性奴隷とするはずの奴隷が、そういったものに疎い反応をしてしまっては、さすがにまずいからな)
そうしている間に、張り子に唾液が十分行き渡ったと判断したのだろう。
ファーファが、唐突にその身体を深く沈めた。明らかに喉の奥まで張り子が到達しているだろう深さ。それでもファーファは咳き込み一つあげなかった。
目を見開くルルの前で、ファーファが身体を持ち上げる。ずるずる、と音が聞こえてきそうな動きで、張り子が再びその姿を露わにする。
先ほどまでとは比べものにならないほど、唾液のまとわりついたその張り子は、ファーファがそれを喉の奥まで確かに受け入れていたのだということを示している。
唖然とするしかないルルに、顔を上げたファーファは、にこりと微笑み――
再び身体を沈め、張り子を喉の奥まで受け入れた。
じゅぷり、じゅぷりと空気と水が掻き回される音が響く。
その上下運動は非常に洗練されており、拘束された身体を器用に動かしていた。
「んっ……むぁ……んんぅ……んあっ……」
口の奉仕を暫く続けたファーファは、不利な体勢もあってか、身体や額に大粒の汗を搔いていた。その運動がかなり厳しいことを示している。
拘束具以外、何の衣類も身に付けていないファーファでこれなのだ。ラバースーツやゴーグルなどによって余すことなく全身が覆われているルルが行うのは、かなり厳しいだろう。
リルドはひとしきりルルにファーファの手本を見させてから、ファーファに声をかける。
「よし、もういいぞフォーファ。相変わらず口の奉仕はお前が一番上手いな」
「んっ……ぷあっ。わぅん!」
張り子を喉の奥から抜き取り、身体を起こしたファーファは、お尻を振りながら誇らしげに啼いた。お尻を振った拍子に、その肛門に突き刺さっているアナルフックに取りつけた尻尾飾りが揺れる。
まるで本物の犬が尻尾を振って喜んでいるかのようであった。
ルル以外のヒトイヌはすでに調教済みであるため、いまさら何か駆け引きをする必要は無い。リルドはファーファの頭を撫で、優しく褒めてやった。
その様子をルルが黙って見つめている。
実はそれも、リルドの計算のうちであった。
調教が完了した相手には優しい飼い主として振る舞っているところを見せることで、従順になることに対する抵抗感を薄れさせる目的だ。
(自分から従うようになってくれれば、今後の調教は飛躍的に進むからな……)
ルルの性格を考えれば、本来はそこまでする必要はない。
実際いままでの調教でもそうだったが、いまのところリルドの想定を大きく超えるようなことは起きていなかった。
ルルは非常に従順で大人しく、元王族とは思えないほどヒトイヌに適正があった。極端に向いている、というわけでもなかったが、『絶対に無理』でないだけでも、リルドの目的には十分すぎる。
(シェラ姫の元々の性格を考えれば、時間さえかければこんな絡め手みたいなことをしなくてもいいんだけどな……悠長にしている暇はないからなぁ)
敵の手がこの屋敷に伸びてくる前に国外に逃げなければならない。
さらにもうひとつ。ルルが本当にヒトイヌに墜ちてしまわないように、短期間でことを済ませる必要があるのだ。
調教が長期に及べば、その分ルルが、シェラ姫が普通の生活に戻るための時間は多くかかることになるだろう。
堕としきらないように十分注意しているとはいえ、きっかけひとつでシェラ姫の心が完全に雌犬のルルに変貌してしまう可能性もあった。
そうなってしまっては、シェラ姫を助けるというリルドの目的は果たせなくなる。
(迅速かつ丁寧に。けれど堕としきらずに。……まったく、仕事でもこんな厄介な依頼はそうそうないぞ)
内心息を吐いたリルドは、改めて気合いを入れ直し、ルルの傍に近づいた。
「さて……まずはルルには、喉の奥を抉られる感覚に慣れて貰わないといけないのだが……」
周りのヒトイヌ向けにそう呟きつつ、リルドはルルの顎を掴んだ。
「ウゥッ、ウー……」
開口具を兼ねた口枷がルルの口を塞いでおり、彼女は不明瞭な声をあげることしかできない。男であるリルドに顎を捕まれているため、ふりほどくことも出来ない。
万が一ふりほどこうとしたらその分罰を与えなければならないところであるため、なすがままになっているルルの反応は理想的だった。
リルドはルルの口枷に手を伸ばし、中央の栓のロックを解除して、それを引き抜いていった。蓋の内側に取りつけられている長い張り子が、それに連動して動く。
「ングッ、ウゥゥ……ッ!」
ようやく大きな張り子の感覚に慣れてきたところを、再度抉られてルルが呻く。
ずるずると引き出された張り子。完全に抜き取るわけではなく、リルドは途中でその動きを止めた。
そして、再度張り子を押し込んでいく。
「ウウッ!? ムグッ」
一端抜いてもらえると思っていたのだろう。予想を外され、喉奥を抉られたルルが目を白黒させて呻く。
そんなルルをあざ笑うように、リルドは繰り返し開口具の蓋の裏につけた張り子を使って、ルルの喉奥を蹂躙していく。
「ウッ、グゥッ、オゥッ、グッ!」
自ら喉奥に張り子を受け入れたファーファと違い、強引に喉奥を広げられるような動きをされ、ルルが苦しげに呻く。ゴーグルの奥の目に涙が溢れているのが、リルドにも見えた。
ルルの身体が苦しみを軽減するためか、彼女の口内には大量の唾液が分泌され、張り子の動きを滑らかなものにしている。
リルドがしばらくそうやってルルの喉奥を犯していると、彼女自身の気持ちに関わらず、身体はその行為に順応していく。最初は呼吸するのも苦しいといった様子だったが、張り子が動くタイミングに合わせて呼吸を行えるようになってきていた。
どんなに痛く苦しい行為であっても、『慣れる』のが人間という生き物の習性だ。
ルルの喉は無理矢理押し広げられ、抉られる行為に、早くも順応し始めていた。
(よし……これならいけそうか)
最後にもう一度喉奥までを抉ってから、リルドは蓋と張り子を完全に抜き取る。
「ンゥッ、グッ! ゲホッ、ゲホッ」
勢いが良すぎたらしく、開口具の穴を通してルルが咳き込む。
俯いたルルの口から大量の唾液が零れ、床をまだらに汚した。
「さて……と」
リルドはそんなルルの肩を叩き、そして先ほどファーファが口にしていた、床に固定した張り子を指し示す。
聴覚が制限されて声での指示は聞こえないルルだったが、そのリルドの動きを見れば何をさせようとしているのかは簡単に理解することが出来る。
ゴーグルの奥の目がすがるようにリルドを見たが、当然リルドは許さない。
「やるんだ、ルル」
「ウゥ……ヒャウッ!?」
突如、ルルが大きな声をあげて身体を震わせた。これにはリルドも意表を突かれて驚いたが、すぐにその原因は判明した。リルドは苦笑して、ルルの後ろ、お尻側にいるものに向けて声をかける。
「こら、ファーファ。新入りを応援したい気持ちはわかるが……勝手に動くな」
いつの間にか移動していたファーファが、激励の意味を込めてルルのお尻を舐め上げたのである。ラバースーツ越しのお尻とはいえ、舌に刺激されて驚いたのだ。
叱られたファーファは肩をすくめて反省の意を示しつつも、ルルを励ますということをやめるつもりはないようで、改めてルルに近付いてその首筋にすりすりと身体をすり寄せる。
ルルはそんなファーファの犬的スキンシップに戸惑い気味だったが。
リルドはそんな二頭の様子を見つつ、硬直しているルルからファーファを引き離す。
「ほれほれ、ファーファ。ルルはまだそういうにも慣れてないから、そのへんでな」
「くぅーん……わんっ」
残念そうなファーファは、最後にもう一度ルルの頬を舐めて離れる。
彼女も調教前までは極普通の人間、それもそれなりに高貴な血筋の令嬢だったはずなのだが、いまや振る舞いは完全に犬である。心がどう折り合いを付けているのか、リルドにもわからないが、彼女はもうヒトイヌであることに悦びさえ感じているように見える。
(振る舞いはさておき、心をここまで堕とす訳にはいかないからな……難しい話だ)
リルドはそう考えつつも、いまはルルに自ら張り子を受け入れさせるべく、再度ルルに身振りで指示を出した。
ルルは躊躇していた。それも無理からぬことで、床に固定されている張り子には、先ほどファーファが使った際に、彼女の唾液が付着したままになっているためだ。
他人の唾液に触れる機会などそうはなかったであろうルルが、躊躇うのも無理はない。
もちろんヒトイヌたちはそんなことを気に出来るような立場ではないため、そんなことで躊躇っているわけにはいかないのだが。
リルドは発破をかけるために、ルルが突きだしているお尻を平手で叩く。
「ヒ、ャゥッ!」
早くしろ、と言葉ではなく態度で示されたルルは、恐る恐る地面から聳え立つ張り子へと近付いていった。
開口具は付けられたであるため、穴に張り子の先端を合わせればそのまま奥まで受け入れることは出来るだろう。
ただし、地面に取りつけられた張り子は、先ほどリルドがルルの喉奥を責めるために使った張り子よりも大きいため、相当な苦しみが生じることは想像に難くない。
ルルは身体を震わせながらも、リルドの指示に従い、その張り子の先端を開口具の穴に宛がった。
ファーファの唾液まみれの張り子が、ルルの口内へと入っていく。
つづく