ファーファが喉奥まで受け入れ、彼女の唾液塗れになった張り子を、ルルがその口内に受け入れていく。
「ウゥ……ッ、ウゥゥ……」
大きな張り子ではあったが、開口具を噛まされたままであるために、ルル自身は身体を沈めるだけでその張り子を喉の奥まで導くことが出来る。
だがそれをすることは、彼女にとって苦しみを生むことと同義だ。
先ほどリルドの手によって喉奥を抉られはしたが、自分から動くというのは、耐えるのとはまた違う苦しみを生む。
それにルルの精神が耐えられるか――リルドは慎重に見極めつつ、見守っていた。他のヒトイヌたちも新入りが気になっているのか、じっと彼女を見詰めていた。
大多数がヒトイヌとはいえ、衆人環視の中で自ら男性器を模した張り子を受け入れなければならないルルから、葛藤する気配が深く伝わって来ていた。
ゆっくりと、しかし確実に。
張り子がルルの口内へと入り込んでいく。
「ウッ、グッ、オゥッ、グ、オオ……ッ」
淑女らしからぬ、潰れた呻き声を上げながら、張り子を喉へと受け入れていくルル。
外聞を取り繕う余裕もなく、受け入れることだけに必死になっていた。
そんなルルの姿を見ていたリルドは、一番奥へ受け入れた瞬間を見計らって、おもむろに手を伸ばし、ルルの頭を鷲掴みにした。
受け入れることだけに集中していたルルにとって、その感覚は不意打ちで強力すぎた。
「ウグッ!? ウッ、ウウゥッ! グボッ!」
身体を跳ねさせ、ルルが苦しんで呻く。咄嗟に張り子を抜こうとするルルの頭をリルドは力で抑え付け、抜くことを許さなかった。
四肢を拘束され、自由が利かないのがかえって幸いしたのだろう。ルルは体を盛大にビクつかせながらも、その場に崩れ落ちたりすることはなかった。
ルルの口から唾液だけではなく、異臭のする大量の胃液が吐き出された。朝飲まされたものが逆流したのだ。
このままだと吐瀉物によって窒息するかもしれなかったため、リルドは一端ルルの頭を持ち上げ、張り子を喉奥から引き抜く。
「ゲボッ、ゴボッ、ウェ……ェォ……」
横倒しになったルルの体が痙攣し、さらに吐瀉物を吐き散らした。その様は非常に無様で、高貴な身分だった者とは思えない。
リルドはそんなルルの姿を見ながら、冷静に状況に対処する。
「インディー」
「すぐに清掃用具をお持ちします」
声をかけただけでリルドの意図を汲んだインディーは、素早く部屋から退出していった。
リルドはその間に、横倒しになったルルを抱え上げ、吐瀉物から引き離して床に仰向けで寝かせる。
「やれやれ。奉仕中にちょっかいを出された程度で吐いていては、ヒトイヌは務まらないというのにな」
その言葉に、ルル以外のヒトイヌたちは何も応えなかった。
売れるまでの暫定とはいえ、主人であるリルドのやることに反対することは出来なかったし、何よりいかなる場合でも彼女たちは人の言葉で話すことを禁じられている。
しかし、彼女たちの視線は、ルルに対して同情的なものが多かった。
それは張り子に対する奉仕の練習の際、全員ルルと同じようにリルドによって何らかの邪魔をされ、吐き戻した経験があったからだ。
それも、彼女たちがそれをされたのはある程度奉仕の練習を繰り返した後の話であり、初めての奉仕の練習の際に邪魔されたものは、この場には誰もいなかった。
その苦しみと厳しさをわかっているからこそ、この場にいる彼女たちはルルに同情的な目を向けている。
(一定の仲間の輪の中で、新入りが仲間として認められるかどうかは、運次第なところもある……普段なら受け入れられないなら受け入れられないで他の方法を考えるが、ルルに関してはそういうわけにもいかないからな)
ゆえに、彼女たちに芽生えさせたのは性奴隷としての仲間意識だ。
それを芽生えさせるために、ルルの初めての練習をあえて邪魔したのだが、確かな効果をリルドは感じていた。
(ルルも彼女たちに慣れさせるとはいえ、完全にはほど遠いに違いない……なら、ヒトイヌたち側の方から歩み寄りたくなる状況を作り出す)
ヒトイヌの仲間同士がぎこちなく接していては、明らかに不自然なことになってしまう。
それを防ぐため、リルドはヒトイヌたち側からルルと距離を詰めるようになるように画策したのだった。
ルルを苦しめた甲斐はあったらしく、ヒトイヌたちは彼女に対して早くも仲間意識を抱きつつあるようだった。
仰向けで痙攣するルルを、心配そうな目つきで見ている。リルドが許可を出していないので、近づきはしなかったが。
そこに、清掃用具を取りに行っていたインディーが戻ってくる。
「清掃用具をお持ちしました」
「ああ。ありがとう、インディー。……あとは俺がやるから、お前は上に戻っておいてくれ。次は3時間後に」
「承知しました」
インディーはペコリと頭を下げ、退出する。
彼女は表の仕事を済ませなければならないためだ。
ひとり、ヒトイヌに囲まれた状態になったリルドは、ひとつ息を吐く。
「さて、と……」
リルドはルルの口枷を一端取り外し、それを丁寧に拭いて吐瀉物を取り除いた。
綺麗な水を口に含ませ、吐瀉物を綺麗に洗い流してから、暫くそのまま放置する。彼女が休憩している間に、吐瀉物を洗い流し、床を綺麗に整えた。
「よし、こんなもんか」
リルドは一息吐き、清掃用具を部屋の隅において、ルルを再び四つん這いに立たせた。
仰向けに寝かせていたため、かなり手足の休憩にはなったはずだった。
他のヒトイヌたちは俯せに伏せたり、お尻を突いて楽な姿勢を取ったりして思い思いに力を抜いていた。ヒトイヌ拘束に慣れると、自然とそういった休憩姿勢を取ることが出来るのだが、ルルには難しいため、リルドは仰向けに寝かせていたのだ。
(暫く一緒に過ごさせていれば、優秀なルルのことだから自然とそういう振る舞いを身に付けられるだろうな)
事情さえなければ、本当に理想の逸材なのである。
そんな益体のないことを考えつつ、リルドは手を打って周りのヒトイヌたちに合図する。
「待たせたな、お前ら。運動の時間だ」
そうリルドが声をかけると、ヒトイヌたちは一斉に立ち上がり、四つん這いでリルドの前に並ぶ。ルルは何が行われるのか不安そうにしていたが、大人しくその列に加わっていた。
リルドはヒトイヌたちを二頭一組のペアになるように指示を出す。
ルルにはファーファを宛がった。
「今日の運動はお前達の大好きな奴だぞ」
そういってリルドが取り出した道具。
それを見たルルの目が見開かれる。それそのものを見た覚えはなくとも、どういう意図で使われるかは想定出来たのだろう。
リルドの取り出した道具。それは、金属製のパンツに――男性器を模した張り子が付けられたものだった。
いわゆる、ペニスバンドの一種である。女性が女性を責める時に使われるもので、これを装着することによって、本来不可能な性交の真似事を、女性同士で行うことが出来る。
とある国に『双子の姉妹や母と娘の親子の片方に着けさせ、もう片方を襲わせる』という趣向を好む得意先がいて、リルドがその人物から譲ってもらった装備品だった。
ルル以外のヒトイヌたちはこれを用い、ヒトイヌ同士で交尾して楽しんでいる。リルドとしてもヒトイヌ同士は仲良くしていた方が都合が良く、また顧客にもなかなか受けがいい見世物になるので、ペニスバンドを用いた交尾は頻繁にさせている。
ペニスバンドを着ける側になるか、突き込まれる側になるかはその時々で違うため、ヒトイヌたちは誰が選ばれるのかと期待する目でリルドを見詰めていた。
「そう慌てるな。まずは……と」
リルドはルルとファーファ以外のペアは適当にペニスバンドを装着させていく。そちらはあくまで手本になるため、誰がどっちになってもあまり関係がないのだ。
いま重要なのは、ルルとファーファだけだ。
「ファーファ。今日はお前が受けだ。ルルは慣れてないから、お前が動きを合わせてやれ」
「わんっ!」
任せてくれ、と言わんばかりに元気よく吠えるファーファ。ファーファはそれなりに経験豊富なので、実際上手くやってくれるだろうという期待がリルドにはあった。
リルドはルルの腰を捕まえ、その腰にペニスバンドを巻いて固定する。
そしてその際、ルルの耳当てをずらし、小さく囁いた。
「どうしたらいいかは、周りの様子を見て判断しろ。躊躇っていたら、受け側をやらせるからな」
受け側をやらされるということは、つまり張り子を体に受け入れることになる。そうなれば彼女が大事に守ってきた処女は無残に散ることになるだろう。王族でなくなったいま、律儀に守ったところで何にもならないのだが、貞操観念というものはそう簡単に変わるわけではない。できる限り処女は守りたいはずだった。
約束が違う、とばかりにルルは目を見開いたが、リルドが聞き入れることは無論ない。
そうなりたくなければ、ファーファを犯せばいいだけの話である。
(ファーファは経験豊富な性奴隷だが……さて……どうなるか……)
ルルは処女を守りたいはずだったが、根が真面目な性分だ。自分の処女を守るためにファーファを犯すというのは、自分のために他人を犠牲にするということが出来るかどうか。
あるいは踏ん切りが付かずに、受け側に回ることもあり得る。
(まあ、そこに関してはどっちでもいいけどな)
この国で、嫁入りするまで処女を大事に守っているのは上流階級の人間だけだ。大抵の庶民にはそこまでの貞操観念はない。
ゆえに、もしここでルルの処女が散ることになっても、リルドとしてはより疑われる可能性が低くなるということなので、むしろ散って欲しい気持ちまであった。
ただ、処女喪失というのは彼女にとって相当にショックなことになるため、軽々しく散らして良いわけでもない。最悪、処女が散ったショックで心が壊れてしまう可能性もある。
(強引に処女を奪うとその危険性は高まる……だが、ルル自身が定められた行動をしなかったから、処女喪失を回避できなかった、というワンクッションを置けば、ショックを和らげることができるだろう)
それがいい方向に働くとばかりは限らないが、それでもただ無残に散らさせるよりは、心が壊れる可能性は小さくなる。
ルルは自分の股間に取りつけられたペニスバンドに異様な感覚を覚えているのか、むず痒そうに腰を震わせていた。その際、男性器を模した張り子も揺れ、先端が彼女の下腹部に軽く辺り、彼女は腰を引かせて異様な感覚に戦いていた。
(まあ、そういう反応になるよなぁ)
男性器を普通に触ったこともなかったであろうルルのこと。ましてやそれを模したものが自分の股間につくなど、想像すらしていなかっただろう。それが普通であるが。
一方、ペニスバンドに慣れているヒトイヌたちは、早くも交尾ごっこを始めている。
本来なら主人の許可もなしに交尾ごっこを始めるなど、許されることではないのだが、今回に関しては特に禁止もしていなかったため、リルドも咎めなかった。
(見本として、ルルにやり方を見せてもらわないといけなしな)
女性同士、それもヒトイヌ拘束をされた者同士が、まるで本当の犬のように片方の背後から片方が腰と腰を合わせているという、奇妙かつ倒錯的な光景。
そんな光景を目の当たりにしたルルは、目の前に広がる光景が悪夢のように感じるのだろう。
ただ呆然と、ヒトイヌたちの性交の宴を見つめていた。
つづく