ヒトイヌたちが二頭一組になって無邪気に繋がりあっている光景。
奴隷商人であるリルドはよく見ている光景だが、元王族で世の中の汚い部分はあまり見ていなかったであろう若い女性のルルにとっては、悪夢に等しい光景だ。
ルルにとって信じがたいことに、擬似的に交尾しあっている彼女たちは、非常に楽しそうに交尾を行なっていた。
それもそのはず。ヒトイヌとなることにためらいを覚えなくなった彼女たちは、すでに人間としての尊厳を捨てている。そんな彼女たちにとって、ヒトイヌとしての交尾はとても気持ちのいい、いわばご褒美なのだ。
ご褒美に抵抗を覚える者などいるわけがなく、ただひたすらに腰を打ち合わせ、尻を振り、体を震わせて快感を貪り合う。
ルル以外のヒトイヌにつけたペニスバンドには、挿入する反対側、つまりつけている側にも多少の突起がある。膣道の奥まで届くほどのものではないが、腰を前後させ、相方のヒトイヌを責めれば責めるほど快感は増していた。より強い快感を得ようと激しく腰を振るようになるのは道理であり、四肢を拘束された不自由な姿勢だというのに、ヒトイヌたちは激しく、また官能的に繋がりあっていた。
接合部から噴き出した愛液がヒトイヌたちの周辺を濡らし、女の匂いを部屋に充満させていく。その匂いがまた彼女たち自身を興奮させ、さらに激しい性交へと繋がっていくのだ。
しかし、彼女たちがいくら気持ち良さそうだからといえ、それを始めて目にするルルにとっては狂気の沙汰でしかない。男性器で女性器を貫く、という通常の性交の手段は知っていても、女性同士が腰につけた男性機を模した張り子で貫き合うなど、もはや彼女の知る常識とはなにもかもが違いすぎた。
戸惑い、困惑することしかできないルル。
そんな彼女の側に、彼女の相方とされたヒトイヌ――ファーファが寄り添う。呆然としている彼女のすぐ側に立っているのだが、ルルは目の前の光景に釘付けになっていて彼女の接近に気づいていないようだった。
(聴覚を制限しているし、ゴーグルのせいで視界も悪いだろうから無理もないが)
しかしファーファにとっては無視されているのと同じだ。ファーファはヒトイヌの先輩として、ルルの気持ちは理解できるだろうが、それはそれ。
「うー、わぅっ」
その抗議を形にするように、ファーファがルルの首筋にその頭を軽く押し付けた。ギリギリ視界の端には映っていたのだろう、ルルは驚愕しつつも、彼女の頭突きを受け止める。
「ん、ムッ!」
体を擦り付け、自分の存在を示すファーファ。
そうしておいてから、ファーファはルルにそのお尻を向ける。それは経験の乏しいルルであっても、何を求めてそうしたか明らかな行動だった。
ファーファがお尻を向けたことで、彼女の股間の様子がルルの眼前に晒される。
その股間からは今にも滴り落ちそうなほど――透明な愛液が溢れ出していた。
ルルの眼前に晒された、愛液の滴るファーファの女性器。
自分のものですらそこまで至近距離でまじまじと眺めたことはないだろうルルは、その場所の、一種グロテスクとも呼べる存在感によって、完全に圧倒されていた。
ましてや、相手はヒトイヌとして経験豊富なファーファ。普通の女性器より仕込み尽くされたその場所は、男性器を受け入れるために特化しており、怪しく蠢いている。
衝撃から立ち直ったルルは、自分がどこを見ているかを理解し、その顔を真紅に染めた。慌てて顔を背ける。
だが、ファーファは早くその穴に張り子を入れて欲しいということを示すように、尻を振ってルルを誘惑する。ルルに対しては逆効果なのだが、ヒトイヌとしてそうするように仕込んでいるため、仕方のないことだ。
ますます顔を真っ赤にして俯いてしまうルル。
そんな彼女たちのやり取りを脇で見ていたリルドは、ひとつ息を吐いた。
(心情は理解できるが……このままだと、ファーファが可哀想だからなぁ)
ヒトイヌたちにとって、交尾タイムというのは好きに気持ちよくなってもいい時間であり、ご褒美だ。
新入りの面倒を見るのが先輩の勤めだと教育しているとはいえ、新入りと組まされたことによってそのお楽しみの時間がただ無為に過ぎ去るというのは、ファーファにしてみれば極めて残念なことになる。
気落ちするくらいならいいが、新入りのせいだとルルを敵視するようになっては、今後の調教にも差し障る。
(ファーファは穏やかで、そうなりにくい性格だが、絶対じゃないからな……)
二頭が上手くいくように、リルドは手を貸してやることにした。
ルルの傍に腰を下ろしてそのお尻に平手を落とす。ぱちん、と軽く乾いた音がした。
「ングッ!」
それでも視覚や聴覚が制限されたルルにとっては、刺激として十分だったのだろう。おおげさなまでに体を震わせて身を竦める。
リルドはルルの耳当てを少し浮かせ、聞こえるようにしてから囁いた。
「お前がやらないなら、そいつには本物の雄犬を宛がうことにするぞ。ヒトイヌとはいえ、本物の犬の相手は危険で、死ぬこともあるが……お前がやらないなら、仕方あるまい」
なるべく冷徹に、無慈悲に選択を突きつける。
実際のところ、ヒトイヌとして経験を積んでいるファーファたちは、本物の犬と交尾しても特に問題は無い。
場合によっては雄犬が興奮しすぎてヒトイヌが噛み殺されることもあるにはあるが、よほどでなければ、雄犬は雌犬を殺すまではしないものだ。
むしろヒトイヌの中には、本物と出来ることを歓迎する者もいる。人にはない激しさや独特の性器の形がくせになるのだとか。
それはさすがに特殊な話だが、少なくともいまこの場にいるヒトイヌの中で、本物との交尾を嫌がる者はいなかった。
なのだが、ルルにしてみれば「本物の犬と交尾させる」というのは悪魔同然の仕打ちでしかない。絶対に避けなければならない類いのことだろう。
そして、力及ばず革命に達してしまったとはいえ、民のために奔走した彼女が、ヒトイヌとはいえ女性が犬に犯されるのをよしとするわけがない。
交尾の真似事など、いままでの彼女の生活からすればとてもすすんで出来ることではないだろうが、しなければ目の前の彼女が本物の犬に犯されるとなれば、するしかない。
(より嫌なことを避けるために嫌なことをすすんでする……俺の思い通りだ)
リルドが目論見通りの展開にほくそ笑む中、ルルはゆっくりと尻を向けているファーファに近付いていく。
どうすればいいのかは、周りのヒトイヌたちが教えてくれている。
しかし、ただでさえ視界が悪い上に、まだヒトイヌ拘束の動きに慣れていないルルには、他のヒトイヌと同じようにヒトイヌの背中にのし掛かるようにしてペニスバンドの先端をファーファの膣に挿入するということは出来そうにない。
「フゥッ……フゥッ……フゥッ……」
それでも頑張ってファーファの膣にペニスバンドの先端を挿入しようと努力していたが、股間に擦りつけるばかりで先端が入っていかない。ただ、その動き自体はファーファに確かな快感を与えていた。
「わふぅ……っ、んぅっ」
ずりずりとファーファの股間でルルのペニスバンドが前後する。そのたびにファーファは気持ちよさそうに喘ぎ声をあげていた。トロトロになって溢れだした愛液がルルにペニスバンドを濡らし、潤滑が良くなっていく。
そんな二頭の様子を見ていたリルドは、手を貸してやるべきか考えていた。
(このままだと埒があかなさそうだしな。ペニスバンドの先を誘導してやるくらいはいいだろう)
そう結論を出し、手を貸してやろうとリルドが動きかけた時――それは起きた。
それはある意味必然だったかもしれない。ヒトイヌの動きに慣れていないルルは、なるべくファーファに体重をかけないよう、腰が高くなっていた。それに対し、早く膣にペニスバンドをいれて欲しいファーファはお尻を突き出すようにして誘導していた。
結果として、ルルの着けているペニスバンドの先は、ファーファの膣ではなく、肛門の方に狙いが定まってしまったのである。
無論、ヒトイヌ調教が済んでいるファーファは肛門の拡張も済んでいる。人によるが、肛門でも性処理を出来るように希望する者も多いため、一通りの調整は必須だった。
ゆえに、はいりやすかったというのはあるのだろうが、ずぶりと音をさせる勢いで、ルルのペニスバンドの先端はファーファの肛門にめり込んでいった。
「きゃうんっ!?」
思わぬところへの衝撃に、ファーファが声を上げる。思わず突きだした尻を戻したファーファだったが、調教が完了していた彼女の肛門は、入って来たペニスバンドの先端をしっかり咥え込み、離さなかった。
結果、膣圧によってペニスバンドを引っ張られることになったルルは、バランスを崩してファーファに体重を預けてしまう。
繋がった状態で彼女に体重を預けるとはどういうことか。
ペニスバンドを根元まで、ファーファの肛門に突き入れることになってしまった。
「うぎっ! んぁっ!」
いままで表面に擦りつけられるだけだったところに、突如体の奥まで抉られる衝撃は強すぎた。
ファーファの体がガクガクと震え、ルルに全体重をかけられたこともあって、ぐしゃりとその場に崩れ落ちてしまった。
「ウグッ!」
そうなれば当然、上に乗っかっていたルルも同時に潰れてしまう。ヒトイヌ拘束を施された二頭が、繋がりつつ、重なって潰れているのは、なんとも無様というべきか。
潰れても、ペニスバンドを咥え込んだファーファの肛門は緩むことがなかったようで、立ち上がろうとするルルの動きをつなぎ止めていた。
「ウーッ、ウゥゥ……ッ」
「うぐっ、んぅ……っ」
どちらも苦しそうな声をあげてはいたが、下になってより苦しいはずのファーファの呻き声には、どこか快感の響きが混じっていた。細かく痙攣しているのは、ただ苦しいからだけではないことは明らかだ。
間違った穴に挿入し、厳しく責め立てることになってしまったルルだが、彼女自身もかなり苦しげだった。それは下になっているファーファが動くため、二頭の間で潰れた彼女の乳房がぐにぐにと変形させられているためだ。
ただでさえラバースーツに包まれ、拘束具に絞り出されて刺激に敏感になっているところを、ファーファの体が動いて擦れてくるのだ。
異様な感覚に戸惑うしかない。
リルドは暫くそんな二頭の様子を眺めていたが、手を貸して立たせてやることにした。
軽く掌でルルの背中を叩き、存在を示してから、二頭纏めて抱えて、持ち上げる。さすがに完全に持ち上げるのは難しいが、ファーファが体勢を立て直すのには十分だった。
元の通り肘と膝で体を支える四つん這いの姿勢になり、しっかり床を踏みしめる。
ルルの方はまだ状況がわかっていない様子で、手足を振り回して暴れようとしたため、少し強めにお尻を叩いた。
「ングッ」
「んあっ」
震動が伝播してファーファが喘ぎ声をあげる。
リルドはそちらは無視して、ルルの足を掴み、膝を地面に着けさせた。
体勢を立て直せ、という意図は通じたらしく、体重をファーファの背中から自分の脚へと移動させ、体を安定させる。
「よし、それでいい。さて、と……ファーファ。ちゃんと膣に入れてほしいか? それともこのまま続けるか?」
通常の交尾であろうと、アナルセックスであろうと対応出来るファーファであるため、少し悩んだ素振りは見せたが、最終的にはそのままでいいと頷いた。
「わんっ」
「よし、いいだろう。ならばこのまま動かすぞ」
リルドはそうファーファに断っておいてから、ルルのお尻に手を当てた。相変わらずリルドの手が触れる度にルルは体を震わせている。
(新鮮な反応ではあるが、少々過敏すぎるな……慣れさせるか)
最初はすぐ手は離すつもりだったが、リルドは手を添えたまま、ルルに腰を前後に動かすように誘導する。
その誘導の動きを受け、賢いルルはすぐに意図を察し、リルドに言われるまま、腰だけを動かし始めた。
「よーし、いいぞ」
「んぅっ、はふっ、んんっ、はっ」
ようやくヒトイヌ同士の交尾らしくなってきたことで、ファーファも気持ちよくなっているのか、大きく口を開け、犬のように荒い呼吸を繰り返しながら、涎を流して喘ぎ続ける。
ルルの方はといえば、少しずつ腰の動きに慣れてきたのか、ゴーグルが曇るほど汗だくになりながらも、動き自体は洗練されつつあった。
リルドはそんな彼女の様子を見ながら、順調であることに満足していた。
(この調子でヒトイヌの動きに慣れさせていけば、数日後には国外脱出計画を実行に移せそうだな……)
そんな風にリルドが考えている間に、さらにルルの動きは洗練され、ついにファーファが彼女の手によって絶頂を迎えた。
ファーファが腰をびくんびくんと跳ねさせたので、ルルは驚いていたが、それでも体勢を崩さない程度には慣れたようだった。
アナルセックスで簡単に絶頂してしまったファーファだが、そうなるように躾けたリルドとしては、非常に誇らしいことだ。
ルルに合図を出しつつ、手を貸して二頭を引き離し、ペニスバンドを取り外す。
二頭の頭を撫で褒めてやりながら、リルドは周囲のヒトイヌたちにも一端交尾を止めさせていった。
「さて、次だが……」
次なる指示を出そうとしたとき、部屋にカランカランとベルの音が鳴り響く。
ヒトイヌたちがざわめく。彼女たちが聞いたことのない音だったので無理はない。ルルは聴覚が制限されているので何も反応しなかったが、突如周りのヒトイヌたちが落ち着きを無くしたので、妙に思ってはいるようだ。
この中で唯一そのベルが鳴った意味を知るリルドは、その顔を微かに歪めた。
「……お前達、楽にして待っていろ。すぐ戻る」
そうヒトイヌたちに告げたリルドは、部屋を飛びだしていった。念のため、ヒトイヌたちのいる調教部屋の扉を外から施錠しておく。
「将軍の手の者は昨日来たばかりだ……なにが起きた?」
リルドは微かに焦燥を滲ませつつ、急いで地下室から階段を駆け上がる。
地下室に鳴り響いたベル、それはインディーが対処できない、呼びにいく余裕もない――
一刻を争う緊急事態を告げるためのものだったからだ。
つづく