人は痛み・苦しみに耐えることはできても、悦び・快感に耐えることは難しい。
それは当然の事実だった。人間に限らず、すべての生き物は『気持ちよくなる』ために生きているのであり、それを得るために多少の痛み・苦しみには耐えることができるが、悦びや快感という『気持ちいいこと』自体に耐える意味はないからだ。
ゆえに。
「ン、グぅ、ウウウうウっッ!」
噛まされた口枷を軋ませながらも、その女騎士がどこか甘い声音を隠すことができていないのも、ある意味自然なことだった。
その女騎士――アーリアは、普段の凜々しい姿からは想像できない、艶のある様子で身悶えていた。
彼女の身を包んでいた甲冑や衣類は取り払われ、女性ながら筋肉質の、しかし女性らしい均整の取れたプロポーションを保っている素裸が晒されている。
普段剣と盾を握っている両腕は、特殊な布の帯で雁字搦めに拘束されていた。拳を握り、折り曲げた状態で隙間無く帯が巻かれているため、指先ひとつ動かせない状態だ。
アーリアは女性の身でありながら大の男を投げ飛ばせるほどの膂力を持つが、いかな怪力も動かす余地が微塵もなければ発揮出来ない。彼女の両腕は完全に封じられていた。
その脚も同じ状態だった。脚の筋肉は腕のおよそ三倍と言われることがあるが、動かす余裕がなければ同じこと。
ギシギシと音を立てはしても、決して千切れることはなかった。
そんな彼女の両肘と両膝には、特殊な金具が固定されており、それぞれに鎖が繋がれ、彼女の四肢を別々の方向に向かって引っ張っていた。引っ張っているのは滑車を利用した機構であり、いかに彼女が怪力であったとしても、その引く力に抵抗することはできない。
結果、彼女は両手両足を×の形に開いたまま、動けないように固定されていた。裸に剥かれた胴体を隠すこともできず、ただ震えることしかできない。
彼女が震えている理由は、その股間を一人の――否、一体の雌犬が一心不乱に舐めているためである。四つん這いの彼女が舐めやすいように、アーリアが固定されているベッドはその部分の板が外れる仕様になっていた。
アーリアの股間に入り込んだ雌犬は、舌を使ってアーリアの股間を舐めている。アーリアの秘部は硬く閉ざされていたが、執拗に舐め続けた成果か、徐々に柔らかくその奥の様子を覗かせるようになりつつあった。
「フぅ……、ウっ、ううァうっ!」
彼女の口には、横向きになった棒が噛まされている。棒は硬くもなく柔らかくもない不思議な材質・ゴムでできた口枷だ。彼女がいくら渾身の力を込めて噛み千切ろうとしても、ゴム独特の強靱さとしなやかさで決して食いちぎることはできない。
そんな彼女の抵抗を、インディーは笑みを浮かべて見詰めていた。
「ふふ……女性の騎士として、敵に捕まって乱暴に犯されて殺される想定はしていても、こんな風に優しく、執拗に愛撫されるのは想像していなかったのかしら?」
「グゥ……ッ!」
抵抗を視線に変え、アーリアがインディーを睨む。しかしその視線も、瞳にかすかに涙が浮かんでいては、威圧感が出ようはずもない。
インディーは余裕のある動きでアーリアが寝かされているベッドの側に移動すると、指を伸ばしてアーリアの胸の頂点を指で弾いた。
「ングッ!」
アーリアが身体を跳ねさせ、身悶える。胸の一点を弾かれただけだというのに、その肌がじんわりと赤くなり、感じていることを示すように胸の先端にある乳首が存在を主張し始めた。
「いい反応ね。まだ薬を塗ってそんなに経ってないのに。やっぱり健康な肉体にはよく効くわ」
そう呟きつつ、インディーはアーリアの胸に顔を近づけ、軽く息を吹きかけた。その刺激にまたアーリアが悲鳴混じりの嬌声を上げ、悶える。
インディーはアーリアの股間を責めているヒトイヌに続けるように指示を出しつつ、再び観察に回る。
(いまのところ、問題はなさそうね……この調子で責めていけば、一週間後には完全に堕としてしまえるでしょう)
冷静にそう判断しつつ、インディーは真下――彼女の雇い主であるリルドが行っているであろう、難易度の高いシェラ姫の調教を思う。
(マスター、大丈夫かしら……あの人の手腕を疑うわけではないけれど、あの女相手のマスターは、色々こじらせてるからねぇ……)
本人にすら堂々と意見したが、インディーからするとリルドのシェラ姫への対応は色々とこじらせている感が強い。
何事も命あっての物種だとインディーは思っているため、彼のシェラ姫に対する処置は色々と甘く感じてしまっていた。
(マスターの意向には極力従うけど……場合によっては、私も身の振り方を考えておいた方がいいのかしら?)
部屋に響き渡るアーリアの嬌声を心地よく聴きながら、インディーは心の片隅でそう考えてしまうのであった。
腹心の部下にそんなことを思われているとは露知らず、リルドはシェラ姫の調教を続けていた。
現在、シェラ姫――雌犬のルルにさせているのは、ただひたすら歩かせるという行為だ。目の前にはファーファがいて、手本として彼女の前を先導している。
ファーファが歩く度にお尻が揺れ、その肛門に突き刺さっている尻尾飾りが左右に揺れる。普通の女性なら恥ずかしくて死んでしまいそうな動きだが、ファーファは元気よくお尻を振りながら歩いていた。ヒトイヌの基本歩行法として学んでいるため、恥ずかしいと思うこともなくなっているのだ。
一方、それを見せつけられる形になっているルルは、つい俯きがちになる顔をなんとか前に向けたまま、歩みを続けていた。少しずつヒトイヌの歩行に慣れてきてはいるのか、動きはマシになっている。だが、それでもふらつく時はふらつくし、まだまだ慣れきったというにはほど遠い。お尻の振りも甘く、前に進むのが精一杯という様子だった。
そんなルルの後ろについて歩きつつ、リルドは時折手に持った鞭を使ってルルのお尻を軽めに打つ。痛いというほどの刺激ではないが、確実な衝撃が走る。鞭打たれるたびにルルはびくんと身体を硬直させ、その身体を小刻みに震わせた。
「もっと尻を振れ。お前は犬だ。いつまでも犬が恥ずかしがっているものじゃない。それとも……もっと強く打たれたくてやってるのか?」
現在、ルルの耳から聴覚を遮断する耳当ては外されている。リルドの指示が通りやすくするためだ。
ゆえに、リルドは口で言いつつも、脅しつけるようにルルの横の地面を鞭で打つ。びくん、と身体を跳ねさせ、慌てた様子でルルがお尻を振りながら歩みを再開した。
目の前にファーファといういい例がいるためか、動き自体はルルもすぐものにすることができていた。恥ずかしさや疲労などのせいか、すぐに動きは悪くなるが、鞭を軽く振って音を立てるだけで必死になってお尻を振りながら歩くので、リルドの嗜虐心がさらに刺激されてしまったほどだ。
(いかんいかん。やりすぎたらシェラ姫が普通の生活に戻れなくなる……)
そう念じて冷静になろうと努めるものの、目の前でこれ見よがしにお尻を可愛らしく振られると、邪悪な考えがリルドの中に芽生えてくる。
このままルルを徹底的にヒトイヌに貶めてしまいたいという、邪な考えが。
王族の証である両目を抉り、王族として、否、人としての生を完全に終わらせることもできる。性処理便器兼愛玩用ヒトイヌに堕としきってしまえば、ことは楽に終わるのだ。
いかに国境付近の警戒が厳しかろうと、王族としての証と、人としての尊厳と心を全て失った女を、シェラ姫だと判断することはできなくなるのだから。
それがもっとも安全で、シェラ姫の命だけを助ける方法としては、悪くない選択肢だった。リルドには奴隷商人としてため込んだ財があるから、ヒトイヌ一頭くらい養いながら旅をするくらいなら容易い。
だが、それではシェラ姫の精神と身体は壊れ、二度と戻ることはないだろう。
それでは、リルドがここまで骨を折った甲斐もなくなる。
(……うん。やっぱりそれは最後の手段だな)
リルドも自分の命は惜しいため、ルルの正体がシェラ姫だと露見するような行動は控えなければならなかった。
いざとなればそういう手段を取らざるを得ないとはいえ、極力その手段を取らずに済むようにすることを改めて誓う。
そんなことを考えつつ、ルルを歩かせていると、とうとう限界が来たのか、その身体がふらふらと揺れ始めた。
(そろそろ限界か。仕方ない)
ヒトイヌの歩き方である四足歩行。犬ならば自然に行えるその歩行も、本来は人間であるヒトイヌにとっては負担の大きい歩き方だ。すっかり慣らされているヒトイヌたちはまだしも、厳しい拘束を施されて間もないルルには、すでに限界を超えていた。
「ルル、止まれ。ファーファもだ。一端休憩とする」
そうリルドが指示を出すと、ルルはその場に崩れ落ちるようにして倒れ伏した。崩れ落ちた際、ラバースーツに包まれた豊満な胸が押しつぶされ、形を変える。
「フュー、フュー……」
荒い呼吸を小さな呼吸穴から繰り返し、ルルは喘いでいる。口枷の穴は塞がれているため、鼻呼吸をするしかないのだ。小さな穴を通じてようやく呼吸出来ている様子で、苦しみはずっと続いているのだろう。
そんな彼女を心配するように、ファーファが近くに立つ。すりすりと鼻先を擦りつけるが、ルルはそれに反応する余裕がなかった。
(ふむ。だいぶファーファはルルに仲間意識を持ってくれたようだな……これなら、いいカモフラージュになりそうだ……)
リルドはそう考えつつ、ルルの側に膝を突き、その口を塞いでいる口枷を取り外した。
「あ、ぅ……げ、ほっ、ごほっ……! ぜー、はー……」
咳き込み、涎を溢れ零しながらルルが自由になった口で呼吸をする。
喋れるようにするのは危険かもしれなかったが、調教の度合いをさらに推し進めるためには、必要なことだった。喋れる状態でも、喋らないことを選択するようにしなければならないためだ。
「ルル、水を飲ませてやる。仰向けになれ」
リルドに命じられるまま、ルルはゆっくりと身体を動かしていった。それにリルドが手を貸してやり、ルルは仰向けにひっくり返る。
そして、リルドはファーファに目配せをした。ファーファはすぐに何を求められているのか気付き、リルドの側に移動してくる。
「よし。ファーファ、ルルに水を飲ませてやれ」
限界までいじめ抜いた状況。ルルは喉の渇きを覚えている。さらに、体力の消耗もあって、頭の回転は普段の数分の一に落ちているだろう。
その間隙を突く。
ファーファが器用にルルの顔を跨ぎ、空気を求めて大きく開いているルルの口にその股間を押しつけた。
「ンッ、グゥッ!?」
何が起きているのか、ゴーグル越しの視界ではわからないに違いない。思わず身体をばたつかせるルルだが、ファーファは両足でルルの頭部を固定し、逃げられないように抑え込む。
そして、その口内に向け、尿を排出した。
その味と臭いを感じれば、ルルとて何をされているのか悟る。いまだかつてない悲鳴をあげ、藻掻き苦しむが、抑え込まれている以上どうしようもならない。
口内に排出されるファーファの尿を、強制的に飲まされてしまう。
ファーファがその肩をぶるりと震わせ、排尿の終わりを告げる頃には、ルルはぴくぴくと痙攣するだけになっていた。
「よくやった。あとは退いてろ、ファーファ」
素早く指示を出してファーファを退かせるリルド。ルルは少し溢れた尿で顔面を汚し、悲惨な状態になっていた。
そんなルルの顔を、リルドは濡らした布で手早く拭く。普通の水をかけて軽く洗い流し、痕跡を消してやった。
「喉は潤ったか? お前はこれからヒトイヌとして……そして、肉便器として排泄物の処理にも慣れていかなければならない。飲まなければ、無理矢理飲ますだけだ。早めに慣れてしまった方が楽だと言っておこう」
無論、本当にそういう扱いをする奴隷のように、完全な肉便器として扱うわけではないのだが、早めに心を折っておく。堪えに堪えて折れると修復が効かなくなるが、早い段階で折れておけば修復することもできる。
果たしてルルはその残酷な宣言をどう受け取ったのか。
リルドの言葉に反応することもなく、声もなく震える彼女は――ただ哀れで惨めな雌のヒトイヌでしかなかった。
つづく