偽シェラ姫と対面した将軍は、その偽者の完成度の高さに、感嘆の息を吐いた。
「ふむ……これはなかなか……知らなければ騙されておったかもしれんな」
彼の記憶にある本物のシェラ姫と、その偽のシェラ姫は極めて酷似していた。特に将軍が感心したのは、その腰ほどまで伸びる長い黒髪だ。
「カツラだという話だが……これほど本物らしい髪もそうそうあるまい。相当な手間暇をかけて準備したのであろうな。いつから準備していたのか……全く、先見の明がある男だ」
さらさらとした髪を無遠慮に手に取りながら、将軍は呟く。
触れられている偽シェラ姫は、声もあげられないまま、将軍の行動を見詰めている。
彼女は革命の前からリルドによって調教され、偽者として仕込まれていた。
ゆえに、革命のことは知らず、彼が最高権力者になったということも知らない。
だが、革命以前より将軍は敵対した者に対しては、容赦のないやり口で排除することで有名だった。
そんな将軍に自分が売られたとなれば、どういう扱いをされるのか想像するのは容易だ。偽シェラ姫は後ろ手に縛られていたが、その必要もないほどに将軍に対して怯えていた。
将軍はそんな彼女の顎に手をかけ、その瞳の色を確かめるべく、正面から彼女と目を合わせる。
「ふむ……当たり前だが、瞳の色は全然違うのか……」
瞳の色は王侯貴族の証だ。偽シェラ姫は年齢や体格はとても本物に似ていたが、瞳の色は全くの別物だった。
それが確認されれば、偽者であることは一目瞭然だ。
「ごまかしようはいくらでもある……くくく。喜ぶが言い。貴様はこれから本物のシェラ姫として、王族と同じ処刑方法で死ねるのだ。光栄に思え」
その将軍の言葉を聞き、偽シェラ姫は恐怖に身体を震わせる。
彼女自身、シェラ姫の偽者として扱われていることは知っていた。
だがリルドから受けていた説明では、『亡国の姫君』風の性奴隷として仕込まれているのであって、本物として扱われるわけではなかった。隣国の好き者に売られ、性的な奉仕を強制されるとしても、死ぬわけではないはずだったのだ。
しかし目の前の将軍は、彼女を本物の代わりとして、殺す気でいる。避け得ない処刑が迫る恐怖に、偽シェラ姫は耐えられなかった。
地面にへたり込んでいる彼女の股間から暖かな液体が零れ出す。
彼女が漏らしたことに気付いた将軍は、微かに眉をひそめた。
「……ふん。所詮は偽者か。本物のシェラ姫であれば、気丈に睨み返しているところであろうに……まあいい。シェラ姫と同等の振るまいなど、貴様に期待していない」
将軍は偽シェラ姫に興味を失ったように踵を返し、彼女を捕らえている部屋から出て行く。
廊下を歩きながら、将軍は召使いに命じた。
「あまりにも無様な調子だと偽者だと気付かれるかもしれん。都合のいい晒し方、拘束の仕方、そして処刑の方法を考えるぞ。とりあえず、口と尿道は塞いでおけ。本当のことを喋られても面倒だ。尿道は焼き潰しても構わん。ああ、だが下の口は潰すなよ。楽しめなくなるからな」
「承知いたしました。――ところで、アレのことを知る商人のことですが」
「無論、決まっておろう」
将軍はにやりと唇の端を持ち上げる。
「秘密を知る者は少ない方がいい。優秀な奴隷商人ではあったが……国から離れるとなれば、生かしておく必要はどこにもないからな。処理は任せる」
召使いにそう命じた将軍は宿泊している館の寝室に着くと、悠然とベッドに腰掛ける。
「国で奴隷商人を続けるというのなら生かしておいてやっても良かったんだがな……愚かな奴だ」
そういう将軍の足下に、摩訶不思議な衣装を身につけ、肘と膝の四点で床を這う生き物が近付く。
将軍はその生き物を軽く蹴飛ばして転がし、足置きにする。
ラバースーツに身を包んだそのヒトイヌ性奴隷の、ラバースーツ越しにもわかる身体の柔らかさを堪能しつつ、将軍は満足そうに笑っていた。
「このオマケの奴隷も珍妙ではあるが、なかなかにいいものではないか。まったく、本当に惜しい。取り立ててやっても良かったのになぁ」
言いながら、将軍はそのヒトイヌをベッドの上に抱え上げ、放り出す。
仰向けにひっくり返ったそのヒトイヌは、慌てて短くなった手足をばたつかせるが、柔らかいベッドの上では起き上がることは出来そうになかった。
「さて……せっかくだ。こいつで楽しませてもらうか」
一般的にはそれなりの年嵩である将軍だが、その性欲は衰えることを知らなかった。
ズボンを脱ぎ、逞しくそそり立ったものを晒す。
当然、その先端が狙うのは――ヒトイヌの股間であった。
ラバースーツのジッパーを引き下げ、そのヒトイヌの股間を露出させる。
汗ばんで蒸れているその場所は、別の生き物のように怪しく蠢き、男のものを受け入れようとしていた。
将軍はその見た目に満足しながら、まずは指でその穴を広げる。
「ンッ、オゥッ」
触れられたヒトイヌが反応し、脚を閉じようとするのを、将軍は無理矢理押し広げてさらに穴に指を突き入れる。
ヒトイヌの穴は、ずぶずぶと指の根元まで受け入れてしまった。
「ふむ。さすがに処女ではないか。そんな状態の奴をこんな形にはしないか……」
雑に掻き回す動きに合わせ、ヒトイヌの身体が波打つように跳ねる。
薬か何かが使われているのか、あるいは触れるだけで感じる様に仕込まれているのか、乱暴な愛撫にも関わらず、その穴からは後から後から愛液が零れ出していた。
その透明な液体を指先にすくい取った将軍は、それを自分の股間にあるものに塗り、滑りを良くする。
それはヒトイヌを案じての行動ではなく、自分が痛くならないための仕込みだった。
「よし、こんなものか」
将軍のものは年齢に反してかなりの太さと硬さを有していた。それがヒトイヌの愛液を塗されたことで、ぬらぬらと禍々しく光っている。
もしヒトイヌの目が見えていたならば、その凶悪さに恐れおののいていたかもしれない。それがなかったというのは、ある意味幸運で、ある意味不幸だった。
仰向けにひっくり返ったヒトイヌの身体を将軍が持ち上げる。
そして、そのそそり立った棒を持って、ヒトイヌの穴を無慈悲に貫いた。
「ンギィッ!」
背を反らし、悲鳴をあげて悶えるヒトイヌ。
無様に手足をばたつかせるのを、将軍は実に恍惚とした表情で見詰めていた。
「く、くく……いいぞ。もっと暴れるがいい。その方が気持ちが、いいっ!」
言葉に合わせ、将軍がヒトイヌの身体を持ち上げ、再度突きあげる。
長大なペニスによって貫かれたヒトイヌの腹部が、内側からぼこりと盛りあがっていた。
子宮口に容易に到達しているらしく、地獄の苦しみをヒトイヌは味わっているのだろう。しきりに暴れ、悶えて逃げようとするが、ヒトイヌ拘束を施された身体に自由はなく、ただ将軍の目論見通り、貫いている彼のペニスに刺激を与えるだけだった。
それが将軍を楽しませるのだ。
ギチギチ、とラバースーツと拘束が擦れ、軋み、奇妙な音を立てる。それは将軍にとってあまり耳慣れない音ではあったが、ありとあらゆる性的快楽を味わって来た将軍には、新鮮で良いと感じていた。
身体を捩らせ、ヒトイヌが苦しめば苦しむほど、突き入れている将軍のペニスが締め付けられ、将軍にとっての気持ちよさが増していく。
そしてとうとう、ヒトイヌの体内に将軍の欲望の塊が吐き出された。
その量はとても衰えを感じ始める年齢のものとは思えず、溢れた白い精液が接合部の隙間から滲み出すほどだった。
「ふぅ……これほど出したのは久しぶりだ」
満足そうに将軍は呟く。
その理由には、長らく身柄を確保出来ず、やむを得ず他の手段を取らなくてはならなくなったシェラ姫の問題に、解決の目処が立ったことがあるだろう。
使えるレベルの偽者を確保したことで、気が楽になったのだ。
(シナリオは『まんまと国外まで逃げおおせていたシェラ姫とその騎士アーリアを、儂自ら追跡して確保して国に連れ帰り、全ての所業の清算をさせるために公開処刑する』、と言ったところか。結果的にギルバストックの奴はいい状況を整えてくれたが、今後は必要ないな……無能だしな、あやつは)
将軍は国に戻って落ちついたらギルバストックも切り捨てることを密かに決める。
すべてが彼の都合のいい方向に回っていた。
偽のシェラ姫を処刑し、自身の地位を盤石に整えれば、仮に将来的に本物のシェラ姫が出てきたところでどうにでもなる。
(いよいよ、名実ともにムトゥ王国の全てが儂のものに……!)
ほくそ笑んでいた将軍は、ふと接合部から垂れてきたものが太ももに流れていくのを感じた。
「む……少し興奮しすぎたか」
汚れた自分の身体を見て、眉を潜める将軍。
ぴくぴくと小さく痙攣していたヒトイヌの口枷を外し、鼻先にペニスを押しつける。耳当てをずらして命令をくだした。
「おい、貴様のもので汚れたんだ。舐めて綺麗にするがいい」
「ウァ……ウゥ……」
口枷で開きっぱなしになっていたためか、不明瞭な呻き声を漏らすヒトイヌ。
将軍はそんなヒトイヌの尻を、手のひらで強く叩いて急かす。
「さっさとしろ。儂は暇じゃないんだ」
「ウゥ……」
のそりのそりと、不自由な四肢を動かして、ヒトイヌが将軍のものを咥える。
将軍は生暖かい口内の感触を受け、満足げだった。
(さて……これが済んだら、偽シェラ姫の輸送方法に関して、正体がばれないように詰めなければ――)
将軍は先のことを考えてヒトイヌのことを完全に忘れた。
彼にとって奴隷とは自分の命令に従って当然のものであり、意識するような存在ではなかった。人によっては奴隷を家族のように大事にする者もいたが、彼はそうではなかった。
それ自体は、権力者にありがちな思考であり、彼が特別奴隷のことを軽んじていたわけではない。
むしろ彼は奴隷の反逆に関しては気を遣っている方で、その時は抱えていた問題が解決しそうだという気の緩みが大きかった。
だから、まさか。
四肢を欠損し、視界も奪われ、完全に屈服していると思われたヒトイヌが。
彼の股間のものを食い千切るとは、夢にも思わなかったのだ。
将軍は歳の割りには強靱な肉体を誇っていたが、どうやっても鍛えられない場所はある。
その急所をみすみす咥えさせてしまったことは、彼にとって最大の油断で、迂闊な行動だった。
噛みつかれたその瞬間は、将軍も何が起こったのかわからなかったが、すぐに走った大激痛に状況を察する。
だがその時にはすでに遅く、ヒトイヌの口は完全に閉じていた。
「イ、ギャアアアアアアアアアアッ!!??」
凄まじい悲鳴をあげ、もんどりうって転倒する将軍。部屋の外に待機させていた護衛が部屋に飛び込んで来た。
「将軍様!?」
「こいつ……!」
優秀な護衛たちはすぐに状況を察し、剣を素早く抜いてベッドの上のヒトイヌを串刺しにする。
そのヒトイヌは剣に貫かれ、血を吐きながらも、にやりと笑う。
「くた、ばれ、クソやろう……!」
乱暴な言葉で言い捨てたそのヒトイヌ――リルドの元婚約者で、現在は賞金稼ぎのラリータはそのまま事切れた。
かつてその身分を王族の暴走によって負われた彼女にとって、王侯貴族は全て敵である。将軍は革命の舵を取ることによって革命の対象から逃れていたものの、ラリータにとっては彼もまた復讐の対象だったのだ。
だがそんなことは将軍にはわからない。
陰茎を噛み千切られた激痛に悶絶し、気が遠くなっていくのを感じつつ――怒りを募らせるばかりだ。
(おのれ、リルドォ……! あの若造めがぁああああ!! こんな、こんな置き土産をおおおおお!)
リルドは将軍の目論見を看破していたのだ。
いくら国から離れて遠くに行くとしても、リルドは処刑される予定のシェラ姫が偽シェラ姫だと知っている数少ない人間。
将軍がそれを見逃すわけがないと理解して、少しでも将軍に打撃を与えられるように細工を施していたのだ。
気を失いそうになった将軍だが、燃えさかる怒りでその意識を保っていた。
「お、え……っ、奴を……リルドを、必ずころ――」
そう指示を出そうとした矢先のことだった。
大慌てで、一人の召使いが部屋に走ってくる。
「恐れながら申し上げます! 騎士アーリアが脱走! シェラ姫を連れて逃走中です!」
「な、に……!?」
リルドの仕込みが、一つなわけがなかったのだ。
次々起こる騒動に将軍は歯噛みしながら、痛みでまとまらない思考を気合いでまとめ、指示を出す。
「シェラ姫だ……! 何を置いても、シェラ姫だけは確保しろ! い、け! グゥ……ッ!」
「将軍様!」
「お気を確かに!」
身悶える将軍に声をかける護衛たち。
彼らの懸命な声かけは実らず、将軍の意識は闇に吸い込まれていった。
その日、彼が滞在していた国境付近の街は、夜通し蜂の巣を突いたような大騒ぎになった。
そんな混乱の中、奴隷商人リルドはその行方を見事に眩ましたのだった。
最終話につづく
夜空さくら
2019-07-22 14:41:43 +0000 UTC