朝、山に入った青年が、夕刻に大きなイノシシを背負って村に戻ってきた。
彼が来るまで年老いた狩人しかいなかった村では、滅多にありつけないご馳走だ。
それを見た村人たちは歓喜の声をあげる。
「いやぁ、なんとも見事なもんだ」
「あんた意外と力あるんだな、びっくりだ」
「畑を荒らされることもなくなったし、お前さんが村に来てくれて助かったよ」
村人たちから口々に賞賛された青年は笑顔で応える。
「いえいえ、流れ者の僕たちを村に受け入れてくれたんですから、これくらいは当然ですよ。皆さん、たくさん食べてくださいね」
そういって狩ってきたイノシシのほとんどを村人に渡してしまう青年に対し、村人たちは代わりに野菜や道具を分け与える。
肉ばかりになるよりはその方が青年にとっても都合がいいのだろう。礼を言ってそれを受け取っていた。
肉の解体を済ませ、その一部と村人たちからもらったものを抱え、青年は彼に貸し与えられた山小屋へと向かう。
山小屋からは一筋の白い煙が出ていた。
食事の準備を誰かがしていることを示す炊事の煙だ。
青年はその煙を嬉しそうに見上げながら家に近付き、扉を開けて中へと入る。
「ただいま。戻ったよ」
そう声をかけると、炊事場で作業をしていた女性が振り返る。
短い黒髪がその動きに合わせて揺れた。
「おかえりなさい。ご飯の準備、出来てますよ」
微笑む女性の柔らかな表情は、青年の疲れを溶かしていくようだった。
青年は荷物を置き、作業をしている彼女の手元を覗き込む。
「さすが、器用なもんだね。もうこんなに上達したんだ」
「ふふ。師匠が厳しかったですから」
朗らかな会話を交わしつつ、ふたりは共同でご飯の準備を整える。
揃って食べ始めながら、ふたりはその日にあったことを報告しあっていた。
「今日はイノシシが取れたよ。結構な大物でさ……割と手こずったな」
「怪我はしていませんか?」
「ああ、それは大丈夫。イノシシ程度に遅れは取らないよ。君は今日はどうしてた?」
「私はいつも通り、村人の皆さんから色々と勉強させてもらっていました。今日はマーサお婆さんに葡萄酒の仕込み方を学びましたね。季節になったら作ります」
「それは楽しみだね」
青年は微笑みながら、内心ではどうしようもなく幸せな気持ちを抑えるのに必死だった。
気を抜けばだらしなく笑み崩れてしまうであろうことを彼は自覚していた。
そんな情けない顔を彼女に見せるのは嫌だったため、表情に出さないように堪えているのである。
だが、彼が彼女との穏やかな生活に幸せを感じてしまうのも無理はない。
彼――元奴隷商人のリルドにとって、初恋の彼女――元ムトゥ王国第一王女のシェラ姫と、このような形で生活することは、想定外の喜びだったからだ。
あの運命の日。
将軍に偽のシェラ姫と騎士アーリア、そして元婚約者であったヒトイヌ性奴隷のラリータを渡した後、即座にリルドは逃亡するための準備を始めた。
偽のシェラ姫を本物として見せしめに処刑しようとしているあの将軍が、その秘密を知るリルドとインディーをそのまま逃がすとは思えなかったからだ。
逃走のための準備として、リルドが最初に行ったのは、万が一にもインディーが裏切らないように彼女の下腹部を封印していた貞操帯を外すことだった。
「インディー。いままで世話になったな」
「いいえ、マスタ-。私は私で楽しませていただきましたから」
いつもの飄々とした調子で応えるインディー。
彼女の貞操帯は裏切りを防止するためのもので、特に性的な行為を禁止していたわけではない。ゆえに、外されるということに特別な感慨はなかったのだ。
「マスターは必要最低限のものだけを持って逃げるのですね?」
「ああ。シェラ姫は俺が連れて行く。お前もペットを連れていくなら連れて行け。金に関しては、俺は身軽さを重視するから、残りはシンディーが好きなだけ持って行ってくれ。資産である奴隷もおいていくことになるから……」
「承知しました。ご安心ください。もっと落ちついた状況で受け継ぎたかったですが……致し方ありませんね。マスターの遺産は私が有効に活用させていただきます」
さらりと死者にされたリルドは、苦笑いを浮かべる。
「勝手に殺すな。じゃあな、インディー」
「幸運をお祈りしております、マスター」
長年片腕として働いてくれた彼女との別れは、そんな調子であっけないものだった。
インディーも秘密を知る者として将軍に狙われているはずだったが、彼女はリルドの資産を受け継ぐつもりだという。
どうするつもりなのか、リルドは彼女に尋ねなかった。
有能な彼女のことだ。将軍に自分が狙われることも考慮に入れた上で、なにかしら方策を見出していると感じたからだ。
その後、リルドは本物のシェラ姫の元に向かった。
奴隷商人の館から彼女を救出しに来た体を演出し、館から連れ出した。背負い袋に入ってもらい、荷物に偽装して移動することにしていた。
案の定、リルドは館を飛びだしてすぐ、将軍の手の者と思われる暗殺者に襲われた。
予想していたリルドは、その暗殺者たちを返り討ちにして逃走することに成功した。
暗殺者は元騎士であったリルドの実力を考慮した実力者揃いだったが、リルドはその想定を超えて強かったのだ。
(王国の中だと、こうはいかなかっただろうけど)
リルドは自分が人より多少強いことを自覚しているが、それでも一騎当千の英雄というわけではない。
周りが敵だらけの状況では、力任せに逃亡することなど出来なかった。隣国まで逃れていたからこそ、強引な手法を取ることが出来たのだ。
そうしてリルドはシェラ姫を連れて隣国からも脱出し、元ムトゥ王国から遙か遠く離れた異国で潜み暮らすことに成功したのである。
本来ならシェラ姫だけ村に預け、リルドは二度と彼女に会わないつもりだったが、一般的な生活における技能を何も持っていないシェラ姫を、そのまま放り出すわけにはいかない。
将軍が隣国まで追いかけてくるというイレギュラーがなければ、得られていた多額の資産を活用してシェラ姫を受け入れられるように村の環境を整えるつもりだったのだ。
それが頓挫してしまったため、リルドはシェラ姫が村に馴染むまで彼女と共に暮らすことにし――結果、とても幸せな生活を送れていたのだった。
食事が済んだ後、水場で片付けをするシェラ姫――もちろん村の中では偽名を使っているが――をなんとはなしに眺めつつ、道具の整備をしていたリルドは内心呟く。
(……本当は、あまり一緒にいない方がいいんだけどな)
彼女の命を救うためだったとはいえ、リルドがシェラ姫を性奴隷として調教し、苦しめたのは事実。
そもそも奴隷商人として、色々な女性を奴隷に堕とし、変態貴族や豪族に売り払うという鬼畜の所業も行っていたのだ。
シェラ姫という善性を前にすると、彼は自分がどうしようもなく薄汚れた存在に思えてしまうのだ。
そうでなくとも、自分を恨んでいる相手には事欠かない。
いつか自分の存在がシェラ姫を害することになるのではないかと、彼は心配していた。
(将軍がこっちに力を裂けそうにない状況になったのは助かったけど)
追っ手がかかる可能性を考え、リルドは密かに情報収拾を行っている。
それによると、将軍は元ムトゥ王国の掌握に苦慮しているようだった。
シェラ姫とその騎士アーリアが国外に逃亡した、という事実が広まってしまっていたからだ。もちろんそのシェラ姫というのは偽のシェラ姫なのだが、実際に本物のシェラ姫が逃げおおせている以上、その事実を抑え込むことはできない。
将軍の強引な統治手法が非難されるのに加え、民衆からの支持も厚かったシェラ姫が生きているという事実が相成って、彼の統治にはかなりの支障が生じているらしい。
そもそも、彼自身最近は覇気がなく、昔ほど表に出てこないのだとか。
(これを期待して逃げられるようにしていたとはいえ……まさか本当に逃げおおせるとはなぁ。アーリアを見くびっていたのかもしれない)
将軍にアーリアを引き渡した時、リルドは時間経過でアーリアの拘束が解かれるように細工を施していた。それは将軍の側でアーリアに暴れてもらうことで、自分の逃亡を容易にするための手のひとつだったのだが、それが想像以上に上手くいったようだ。
少しでも将軍の意識が散ればいいという程度の感覚だったのだが、まさか本気で逃げおおせてしまうとは思っていなかった。
(あの将軍が指揮を執っていたのだろうし、そう簡単に逃げられるわけないんだが……もしかして、あの夜、ラリータの奴が将軍にダメージを与えた、とか? いや、まさかな)
将軍を含めた王侯貴族に恨みを抱いていたラリータ。
彼女はリルドの館まで押しかけて来た後、リルド・インディー・アーリアの三人によって逆に襲撃をかけられた。仲間は始末され、その身をヒトイヌ性奴隷まで堕とされたのだ。
リルドにしてみればやられるまえにやっただけで、彼女に対する容赦は無かった。
四肢を切断し、本物のシェラ姫を誤魔化すための囮として活用したのだ。
とはいえ、リルドが行ったのは、ラリータに「お前を買ったのはムトゥ王国の将軍だ。上手くやれば喉笛を噛み千切るチャンスくらいはあるかもしれないぞ」と囁いたくらいのことだ。
直後にラリータを抱くとは限らなかったし、他にもたくさん打った布石のうちのひとつでしかない。
ともあれ、リルドにとって重要なのは、将軍の統治は綻び、リルドの追跡に力を裂く余裕はなさそうだという事実だった。
(インディーの奴も上手くやってるみたいだしな……本当にどうやったんだか)
ムトゥ王国の隣国では、新進気鋭の奴隷商人が活躍しているのだという。
短時間で女性を仕込み、顧客の思うままに仕上げる女性の奴隷商人。
だがその正体は判然とせず、会う度に顔が違うだとか、人に売る以上に自分用の奴隷やペットの数の方が多いだとか、あまりあの辺りでは見られない道具の制作や販売も行っているだとか、とにかく遠く離れた異国ですら話題になるほどだった。
(あいつならそれくらいやるだろうしな……意外だったのは、ギルバストックか)
将軍の小間使いだったギルバストックは、元ムトゥ王国の中でなんだかんだと勢力を伸ばしているらしい。
もしかすると一連の事件の本当の黒幕はギルバストックで、無能で無思慮な振りをして、実は全ての事柄を裏から操っていた、という可能性もあった。
(いや、さすがにないか。考えすぎだな)
リルドは頭を振って馬鹿げた思考を打ち払う。
もし仮にそうだったとしても、もはやそれを確認する必要もない。
リルドは無事に逃がすことの出来たシェラ姫と、遠い異国で普通の生活を営んでいるのだから。
これまでの苦労は報われたのだ。
ただ、ひとつだけ――彼にとっての誤算があった。
片付けを終えたシェラ姫が、リルドの側にやってくる。
道具を磨いていたリルドの側に、シェラ姫が腰を下ろす。
そして、自然な調子でその身を彼に預けてきた。彼女の柔らかな体と、匂い立つ甘い香りにリルドの心拍数が上がる。
「準備してくださってるんですね」
「……そろそろ、我慢できない頃合いかと思ってね」
そうリルドが呟けば、シェラ姫はその頬を軽く染め、恥じらって顔を伏せてしまう。だがその場から逃げようとはしなかった。複雑な心中が窺いしれた。
もっとも複雑な心中であるのはリルドも同様だ。
しかし彼女を動揺させないため、リルドはあくまでも平静を装う。
「準備して来て」
「……はい」
リルドが短く求めれば、シェラ姫は従順に頷き、楚々とした動きでリルドから離れ、水場へと向かう。
心地よい残り香に思わず魔羅が反応してしまいつつ、リルドは表面上はあくまで平静を保ち、準備を進めた。
彼が目の前に並べて磨いているもの、それはかつてシェラ姫の身を徹底的なまでに拘束していた拘束具の類だった。
逃亡を開始する段階では全てを解いて脱出、というわけにはいかず、また下手にシェラ姫に走ってもらうよりリルドが抱えて逃げた方が速かった。
拘束されていることを活かし、普通ならば絶対に収まらないような空間に収めて追跡をかわすこともしてきたのだ。
リルドにとって誤算だったのは、そうやって解放するまでに時間がかかってしまったことで、シェラ姫の性癖が決定的に歪んでしまったことであった。
助けに来たという体裁上、拘束に加減をしなければならなかったことで、元々目覚めかけていたシェラ姫の性癖の覚醒を促してしまったのだ。
そのことはリルドも後悔していた。
(俺としたことが……逃亡段階では彼女の協力も必要かと思って、味方であることを強調したんだが、完全に裏目ったな)
ムトゥ王国から遠く離れられた段階で全ての拘束は解いたものの、それまでの拘束生活は彼女の性癖を歪めるのに十分なものだった。
(一度開花してしまったものを無理に抑え込むのは、かえって苦しいことになりかねない……だからしかたな――)
胸中でそう呟き賭けたリルドは、思い直して首を横に降る。
(……いや、これは言い訳だな)
道具を捨てたり、そうでなくとも隠すなどしてシェラ姫がそれに触れられなくしてしまえば、多少苦しんだところで次第に拘束のない生活に慣れていったはずだ。
そうしなかったのは、拘束具がこの辺りでは手に入らない素材で出来た貴重品であり、いずれなんらかの資金が必要になった時の保険になるということが理由のひとつ。
もうひとつの理由は――結局、リルドも拘束具がない性活は考えられなくなっていたためだった。
本意ではないシェラ姫ですら歪んだのに、リルドが歪まずに済むわけもない。
リルドはあわよくば彼女がそれを求めるようになった時のために、拘束具の一式を手元においておいたのだ。
そして案の定、シェラ姫は拘束具の快感に囚われてしまい、彼と彼女は時折それを用いたプレイをするようになっていた。
目論見通りだが、望んではいない形になってしまった。
その事を、リルドは後悔していたし、反省もしていた。
「……お待たせ、しました」
慎ましい態度のシェラ姫がリルドの元に戻ってきた。リルドは努めて平静を意識しながら、そちらの方を見やる。
美しい裸身が彼の目に飛び込んできた。
元々王族として存在感は人並み以上にあったシェラ姫だが、ごく普通の山小屋という舞台においては、異質さもあって、その存在感はとてつもなく大きなものになっていた。
柔らかそうな肢体に、眼を見張るほどの美しさ。
性的な魅力にも満ちた、女性らしい肉体。
色々な意味で強烈な引力を持つ彼女から視線を逸らすのは、数多の女体に慣れているリルドでさえ、中々に困難なことだった。
思わず注視してしまっていると、シェラ姫は恥じらってその体を両腕で隠す。
「……あまり見ないでくださいませ」
柔らかな抗議を受け、リルドは慌てて弁明する。
「ご、ごめん。いつものことなんだけど、本当に綺麗だから……」
その賞賛の言葉が、さらにシェラ姫の顔を赤くするのだが、リルドの嘘偽りのない本心であるため、誤魔化すことはできない。
二人はどちらともなく視線を外し、シェラ姫はリルドの斜め後ろに移動する。
リルドは落ち着かせるために数度深呼吸をし、話を進めた。
「それじゃあ……始めようか」
「はい。お願いします。……ご、ご主人さま」
ためらいがちに呟かれた呼称に、リルドの心拍数は飛躍的に上昇する。
奴隷商人としては呼ばれ慣れた呼称ではあるが、いまは相手がシェラ姫で、しかもそこに込められた感情には、彼を憎からず想う気持ちが混じっている。
幼い頃からの思い人に、そんな呼ばれ方をしてリルドの心が揺れないわけがない。
リルドは興奮する自身の心と身体を自覚しつつ、それでも頭は冷静に彼女に向けて呼びかける。
「まずは、こいつからだね」
そう言ってリルドが最初に差し出したのは、全身を包み込むための――ラバースーツだった。
黒くツヤのある輝きを放っているそれは、大事に保管され、手入れがなされていることがわかる。
それを手渡されただけで、シェラ姫の瞳の奥に情欲の炎が燃え盛るのが、傍からみてもわかった。
リルドはそんな彼女を愛しく思いつつ、彼女がラバースーツを身につけるのを手伝う。
まずは、足先からラバースーツに通していく。
ピチピチと音を立てて、白く眩しい裸身が、第二の皮膚ともいうべき黒いラバースーツに覆われていく。
ぴっちりとシワなく、弛みなくラバースーツを身につけたシェラ姫の体は、先ほどとは全く違う魅力を有していた。
「ん……っ」
両足の太ももから下が完全にラバースーツに覆われる。まるで体の材質が変わってしまったようにも見えるその姿は、実に艶やかだった。
しっかり足場を確かめたシェラ姫は、そこからラバースーツをさらに上へと引き上げていった。
ギチギチと音を立てながらシェラ姫の臀部と腰がラバースーツに覆われていく。
「んん……、ん……うぁ……」
意識的にか、無意識的にか、彼女の口から熱い吐息が溢れる。その実に性的な魅力に満ちた反応に、リルドの性器もまたズボンの中で痛いほどに反応してしまっていた。
(落ち着け……! まだ……まだ……)
シェラ姫にきちんとラバースーツを着せるのが、いまのリルドの役割である。
性欲のまま暴走しないように堪えつつ、リルドはシェラ姫のラバースーツを手にしてさらに上まで彼女の体を覆う手伝いをする。
腰を絞り上げ、背中のジッパーを引き上げるたびに、シェラ姫の喘ぎ声が強くなる。
胸の位置をシェラ姫が調整するのを待って、一気にうなじまでジッパーを引き上げる。
「んうううううっ」
最後までジッパーを引き上げると同時に、それだけで軽く絶頂したのか、シェラ姫はその場に力無く膝をつく。
女神のような美しい輝きを放っていた彼女の白い裸身が、首から下が黒く塗りつぶされ、女体のいやらしさを強調した黒い肢体へと変貌していた。
そんな彼女に対し、愛おしい感情を溢れさせながらも、リルドはその前方に回り、改めてシェラ姫に呼びかけた。
「次は、これだね」
そう言うリルドが手にしているのは、無骨な首輪である。
彼女に顎をあげさせ、白い喉仏を晒させる。その細い首にゆっくりと首輪を巻き付けていった。
苦しくないように、しかし確実に首に力のかかる絶妙な位置で固定する。
「ふ――う……っ」
息を詰めていた彼女が息を吸おうとしたが、首輪が膨らみかけた気道を窮屈に締めた。
その絶妙な苦しみが、拘束によって開花した彼女の情欲を、さらに燃え上がらせる。
涙に潤んだ瞳が、リルドを上目遣いに見上げていた。見上げられたリルドは、心臓が痛いほど跳ね上がるのを感じる。
(ふー……落ち着け……まだまだ)
次にリルドが手に取った道具は、彼女の四肢を拘束するための枷だ。彼女をヒトイヌの身へ堕とし、抵抗出来ない雌犬へと変えるための、手枷と足枷。
それを身に付けてもらうべく、シェラ姫は自ら手をリルドに差し出した。
意に反して身に付けさせた時とは違う。彼女も望んでいることだという事実は、リルドに罪悪感を抱かせず、その上で彼女の全てを握るというリルドの暗い所有欲が満たされることだった。
拘束具で四つん這いにならざるを得なくなったシェラ姫の様子を、リルドはしばし観察する。
彼女自身四つん這いの状態にはすっかり慣れてしまっており、そこに苦痛を感じている様子はない。
リルドの視線が自分の身体に向けられていることを感じた彼女は、恥ずかしそうに身を捩った。その捩る動作に従って、ラバースーツがギチギチと音を立て、拘束具が軋む。
当然彼女が自由になることはなく、ただその拘束感を味わう羽目になっただけだった。
「ふふ……さて、それじゃあ次だ」
リルドはシェラ姫のお尻側に回り込み、その股間のジッパーを開いた。彼女の肛門と性器が外気に晒され、シェラ姫はその感覚を敏感に感じ取って肩を震わせる。
そんな彼女の反応を可愛いと思いつつ、リルドはふと気付いた。
「……ああ、まだ何もしてないのに、これとはね」
そっとリルドの指先がシェラ姫の股間を撫でると、その指先に透明な液体が付着する。
ラバースーツを着て、四肢を拘束されただけで、シェラ姫は感じてしまっていたのだ。それを指摘されたシェラ姫は、その顔を真っ赤にして俯いてしまう。
場数は踏んできているはずなのに、一向に恥じらいの感情を失わないシェラ姫の姿に、リルドはとても満足していた。
指先ですくい上げた愛液を、次の道具に塗り込む。
その道具を見ながら、リルドは内心呟いた。
(どんな言い訳をしても……これとかを大事に持ってきちまってる時点で、俺の趣味以外に言い訳なんて出来るわけもなかったか)
そう自嘲気味に考えつつ、リルドはその道具の先端を、シェラ姫の肛門に触れさせた。
反射的に肛門をキツく締めてしまったシェラ姫だが、何度かリルドがそれで肛門を突いている内に、ゆっくりとその門が緩んで、力が抜けてくる。
その瞬間を見逃さなかったリルドが、その道具――アナルプラグをシェラ姫の肛門に押し込む。
「ふ、ぅっ――はぁんっ」
ぬぷりと太い部分が飲み込まれ、括約筋が細い部分を締め付ける。そうなることで、自然とアナルプラグは抜け落ちなくなるのだ。常に括約筋が開き気味の感覚になるため、本人は落ち着かないだろうが。
そのアナルプラグには犬の尻尾を模した飾りがついていて、彼女をヒトイヌらしくするための道具であった。
最後に、首輪に鎖を繋ぎ、その反対側の端を持つ。
ヒトイヌになったシェラ姫が、そこにいた。
「ふぅ……ふぅ……ふぅ……っ」
その状態に興奮しているのか、荒い呼吸を繰り返す彼女は、見下ろしているリルドからは本物の犬のように感じる。
リルドは彼女の首が絞まらないように注意しながら、鎖のリードを軽く引く。
「さて……それじゃあ、今日は外を散歩してみようか。大丈夫。村人が近付いてきたらわかるから。今日は庭までにするし」
「っ……! わ、わん……」
弱々しくシェラ姫が――否、一頭のヒトイヌが啼く。恥ずかしくて、外に出るのは嫌だけど、ご主人様の命令は絶対だから、という健気な思考が透けて見える。
そんな愛おしい彼女の頭を撫でてあげながら、リルドはヒトイヌにシェラ姫を伴って外へと繋がる扉に向かった。
とある国で語り継がれる悲劇のお姫様は――ヒトイヌとなって生きている。
ヒメ➔イヌ ~初恋姫様処刑回避方法→人犬肉便器化調教~ おわり