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夜空さくら
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繋がれたふたりは。8


 私と真波さんの肛門を繋げているチューブの中間の仕切りが取り除かれると同時に、お腹に凄い圧が襲いかかってきた。

「んぐっ……!」

 ちらりと真波さんを見れば、必死になって息んでいるのがわかる。その力強さを示すように、チューブの中央に位置してた赤と青、ふたつの浣腸液の境目がこちらにぐぐっと近付いてきている。

(これ……っ、やば、い……っ!)

 ほんのわずか境界線が動いているだけなのに、お腹の中に生じる圧は相当なものだった。

 まるで棒をぐいぐいと押しこまれているような、そんな圧力を感じる。それに伴って腸壁が擦り上げられる強い刺激が生じていた。

(く……っ! こ、このぉ……!)

 私も力一杯力んでみる。人に見られている中で息むなんて恥ずかしくて仕方なかったけど、そんなことを気にしていては為す術もなくやられてしまう。

 力を込めて息むと、とびきり硬くて長い便を排泄するときみたいに、肛門を固形物が擦って出て行くのを感じた。

 まるで本当に大便をしているかのようで、死ぬほど恥ずかしい。立ったまま息むなんてこと、普段なら絶対にしないことだから余計にだ。

「ングッ、ン~~~ッ!」

 逆に押しこまれる側になった真波さんは、その刺激に呻いて身を震わせていた。さっきの私と同じような感触を覚えているのだろうから、その反応も無理からぬことだ。

 さらに息んでゼリー状になった浣腸液を押し込んでいく。長い長い排泄をしているかのようで、気持ち悪かった。

 否――気持ち悪いはずだった。

(……うっ? な、なにこれ? どうなって……るのお……ッ!?)

 排泄する時には快感が伴うのは自然なことだけど、それにしてもなんだかおかしい。

 私はゼリーが肛門を通過していく感触が、とても気持ちよいものであると感じてしまっていた。

(ま、まさか……浣腸液の中に、そういう薬、が……?)

 そういえば、人体に害になるものは入っていないと言っていたけど、ただのゼリーだとも言われていない。

 媚薬のような、強制的に気持ちよくさせられる薬が混ぜられている可能性は高かった。

(むしろ、そうであって、欲しい……! こんな、こんな気持ちいいわけ……ないっ)

 息んでゼリーが動く度に、背筋を快感が駆け上がってくる。肛門が性感帯になってしまったかのようで、全身が疼いた。

 思わず目をぎゅっと瞑って、強制的に生じる快感を堪えていると――いきなり、胸にびりっとした衝撃が走った。

「ぎゃんッ! あ! ぐ、ぅううう……ッ!」

 その刺激に息む力が緩んだ瞬間、真波さんは一気にゼリーを私の中に押しこんで来た。

 押し出す真波さんも凄まじい快感なのだろう。ガクガクと体を震わせていたけども、真波さんは息む力を緩めない。

 押し返し始めていた境界線が、一気に私の方へと近付いてきた。

 するとお腹の苦しみが増してくる。押しこまれた分、お腹の中に溜まる量が多くなるのだからそれは必然だった。

「うぐ、ううううううッ!」

 なんとか食い止めようと息むものの、真波さんの勢いは止まらない。

 私のお腹は、注がれたゼリーの分プラス、押しこまれたゼリーの分膨れあがっていく。

(ま、まずい……! 少しでも、押し返さなきゃ……!)

 アナルでゼリーを使って相撲をする経験なんて勿論ない私だったけど、このまま押しこまれ続けてはまずいだろうということはハッキリしていた。

 これだけの量を完全に押しこまれてしまったら、上手く息むことも出来なくなる。そうなると時間制限がいつだろうと関係ない。押しこんでしまえば勝ちなのだ。

 だから少しでも押し返せるうちに押し返さなければならない。

「ふーっ……ふーっ、ふーっ、ふぅっ!」

 私は呼吸を整えてタイミングを計り、真波さんが呼吸のために息むのを止めた瞬間、渾身の力を込めて息んだ。腸内でずるずるとゼリーが動くのがわかる。

 押し込みかけていたものが、力を抜いた瞬間一気に押しこまれ、真波さんは仰け反ってその快感に耐えていた。

 抜けかけていたバイブを一気に押しこまれることに等しい。それだけの刺激を受ければ、真波さんといえど平静ではいられないだろう。

「ンンッ!」

「ッ! させません!」

 先ほどのように乳房に刺激を与えようとしてきたのだろう。真波さんが胸を張ってこちらの胸にぶつけようとしてきた。

 けど、同じ手を二度喰らってあげるほど、私は馬鹿じゃない。

 突き出してきた彼女の胸に、私も同じく胸を出す。

 金属のビキニ同士がぶつりかりあう音がして、鋭い刺激が生じる。

「「ングッ!」」

 ふたりして同じように呻いたということは、ふたり共に刺激が与えられたということだ。

(くぅ……! 相打ちってこと?)

「ウゥゥ……っ」

 真波さんが体を引いてまた押しこんでこようとしていることに気づいた私は、互いに離れないように胸を突き出して追いかける。

 金属のブラ同士が擦れ合いつつも、私と真波さんの胸は離れなかった。

「ウ、ゥッ? ム~ッ!」

「ぐ……!」

 すると金属のブラに仕込まれていた振動機能が、鋭い刺激から緩やかな振動パターンに変化する。ローターを貼り付けていた道中のような感覚に、ふたりして呻く。

 胸のその刺激に気を散らされる。

(くぅ……っ! 真波さん、上手く息んで……っ!)

 その隙を突かれ、またゼリーが私のお腹の中に押しこまれてくる。ミチミチ、と音がしそうなほど、お腹が膨らんで来た。

(んぅ……っ、……う? おかしく、ない?)

 中間点を見る限り、確かに押しこまれてはいる。けれど、チューブの太さや長さからすると、いくら押しこまれたといっても、ここまでお腹が膨らむのはおかしい。

(でも、追加で注がれて、いる、わけじゃ……んぅっ……ないし……こ、これはっ、まさか……?)

 ありえるとしたらひとつ。

 注ぎこまれたゼリーそのものの体積が増しているということだ。

 そう思って感じてみれば、中間点が押しこまれているわけでもいないのにお腹に感じる圧力は徐々に強くなっている。

(な、るほど……っ、ほんとうに、趣味が、悪、い……っ!)

 押しこまれようが押しこもうが、どちらにしてもお腹の苦しみは増していく。押しこまれれば押しこまれるほど、不利になっていき、最後には押し切られ、お腹は限界以上に膨らんでしまって地獄の苦しみの中、敗北が決定的になる。

(まけ、られ、ないんだから……っ!)

 私は壁に埋め込まれて拘束されている愛華を見る。

 その口に繋がれたチューブの先には、本来はすっきりとしたスタイルをしているであろう美波ちゃんの膨らんだお腹がある。

 私が真波さんに負ければ、そこに詰め込まれた大量の排泄物が愛華の口に注がれることになる。

(それだけは……っ、絶対に、ダメ……っ!)

 肛門に注ぎこまれたゼリーの効果によって、否応なく快感を覚えさせられてしまっているのを自覚しつつ、私は使命感を燃やして攻勢に転じた。



「フゥ……ッ、フゥ……ッ、フゥッ……!」

 かなりいい位置までゼリーを押しこむことに成功したものの、その代償は大きかった。

(うぅ……! ダメ……息が……苦しい……っ)

 間違っても美波が排泄物を口にしなくて済むよう、美波の代わりにチューブを口にしたのは後悔していない。

 けれど、口に咥えさせられたチューブは、あまりに大きなハンデになってしまっていた。

 歯が当たる部分は柔らかいゴムで出来ているから、思いっきり噛みしめても歯が砕けることはないのだけど、かなり邪魔だ。

 その上、口呼吸が出来なくて鼻呼吸をするしかなく、息みすぎたのもあってかなり酸欠に近い状態になってしまっている。

(うぅ……! 早く時間過ぎてよ……!)

 あとどれくらい耐えればいいのか時間が確認出来ないのも辛かった。尊厳を護るために意地になってしまったけど、冷静に考えればいくら先に押しこんでいたとしても、終了時間に押しこまれていたら敗北なのだ。

 それを見越して、余力を残しておくべきだった。

(冷静じゃなかった……! 焦ってた……!)

 いつまでこの状態で耐えられるのか。本当に耐えられるのか。胸に不安が広がる。

 その時、胸に感じていた圧力がふっと引いたことを感じた。恋花さんが体を引いている。

(しまった……まずい……っ)

 このままだと、一方的に恋花さんに胸を合わせられ、強い刺激を与えられてしまう。

 そんなことを許せば、折角押しこんだゼリーが押し返されてしまう。

(なら、こっちからも……!)

 胸をぶつけに行こうと、私は胸を張り、体を前に倒した。

 当然、恋花さんも胸をぶつけてこようと、胸を張って体を前に――倒してこなかった。

(なっ……あ!?)

 一瞬前まで倒そうとしてきたはずの恋花さんは、なぜか私が胸を出すのに合わせて、上半身を大きく引いた。

「は、ぁぅっ!」

 そうなれば当然、私の方から胸を合わせることになり、恋花さんは強い刺激を乳首に喰らう。

 緩んだ瞬間を逃さず、私は下腹部に力を込めようとして――飛び上がるほどの衝撃に悲鳴をあげる羽目になった。

「ンギィイイッ!?」

 恋花さんは上半身を引き、胸の衝撃を受け容れた代わりに、下半身を突き出して股間と股間を合わせに来たのだ。

 私たちが履かされた貞操帯にも、ブラと同じ機能があることをすっかり忘れていた。

 油断していたこともあって、まるで突然股間を蹴り上げられたかのような、凄まじい奇襲だった。

 自然と腰が引け、体の中で響き続ける衝撃に脚がガクガクと震える。

(まず、い……っ、これ、っ、いしき、が……っ)

 ただでさえ酸欠気味だった私の意識は、思いがけない衝撃に薄れかけていた。

 致命的な隙を見逃してくれるほど、恋花さんも甘くはない。

 ゼリーを押し込み返す前に、腰を立て続けに振って、私の股間に連続で衝撃を与え続けてくる。

「ふ、っ、うぅっ、んぁっ!」

「ンギ、ンッ、アフッ、グゥうッ!」

 腰を突き出して振るなんて、年頃の女性がする動きじゃなかったけど、恋花さんも必死なのだろう。そして、無様な格好を晒すだけの甲斐はあった。

 急所に立て続けに刺激を与えられた私は、薬のせいもあって何度も絶頂させられた。

 貞操帯に覆われていてもわかるほど、大量の愛液が噴き出して私の内股を溢れて流れる。


 そしてトドメとばかりに――肛門からゼリーが押しこまれてきた。


 バイブが押しこまれるように、肛門を押し広げながら太くて長いゼリーが私の中に入ってくる。腸壁を擦り上げ、押し広げ、お腹がぱんぱんに膨れあがっていく。

「アグ、ウ、うゥ……ッ」

 それを押し返すだけの力は、私には残っていなかった。

 恋花さんの肛門付近まで押しこんでいた中間点が、一気に私の方に戻ってくる。

 私はいまにも崩れ落ちそうになっている脚で懸命に立ち続けながらも、もはや濃厚になった敗北を感じていた。

 お腹が膨らんで重くなっていくのを、感じることしか出来ない。

『――時間だ。勝負あり。おめでとう恋花くん。君の勝利だ!』

 彼女にとっては福音が。

 私にとっては絶望を告げる声が響く。

『それじゃあ罰ゲームの開始だ。真波くん、その状態で気絶したら排泄物で窒息して死ぬことになるからね。気を確かに持ってね!』

 無邪気に残酷なことを告げる誘拐犯の言葉に、苛立つ余裕もない。

 咥えているチューブから、恐ろしい臭気が流れてくるのを感じた。

「う、ウゥ、ウウゥゥ……ッ!」

 どうしようもない生理的嫌悪感を覚え、私はなんとか口枷が外せないものかと首を左右に大きく振る。みっともないとか、そんなことは言ってられなかった。

(嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ……ッ! 誰か、助けて……!)

 ぼろぼろと大粒の涙を零し、子供のように泣きじゃくりながら、私は抵抗したけど、すべては無駄なことだった。

 口に繋がれたチューブの中を、茶色の液体が流れてきて――私は言葉にならない悲鳴をあげた。



 目の前で、白目を剥いた真波さんが無残に痙攣している。

 とても見ては居られなかった。罰ゲームが開始されると同時に目を瞑っていた私は、真波さんの悲鳴や苦悶の呻き声が聞こえなくなったあたりで恐る恐る目を開いた。

 その目に飛び込んできたのが、両手を縛る鎖に吊られるようになって、意識を失っている様子の真波さんの姿だった。

 チューブの中にはほとんど何も残っていなかったけど、わずかに残った茶色い欠片が確かにそこに流れたもののことを示している。

(酷すぎる……っ。こんなの、あんまりよ……っ)

 勝てたわけだけど、全然嬉しくない。

 せめて、愛華がそれを味合わずに済んだことを喜ぶしかない。

「真波さん、ごめんなさい……ごめんなさい……」

 私は申し訳なさからくる涙を流しつつ、そう謝罪するしかなかった。

 そんな私たちの様子を面白がっているとしか思えない弾んだ声で、誘拐犯は告げる。

『とてもいい画が取れたよ、ありがとう! 約束通り、皆ちゃんと家に帰してあげるから安心してね。ただ、その前に――』

 嫌なことを呟く誘拐犯。

 まだ何かする気なのか、私はもう諦観の思いで相手の出方を待つしか無かった。

 そんな私の元に、私たちをこうして縛り付けた黒子達が再び現れる。拘束を解いてくれるのかと思ったら、それはそのままにして、貞操帯だけを外してしまった。

 黒子たちに至近距離から見られても、反応する気力はもう残っていなかった。

 私の秘部と肛門に入っていたプラグもずるりと抜ける。チューブは中間点で二つに分離し、その中に詰まっていたゼリーもそこで切れた。

 ゼリーはまだ私の身体の中に繋がっていて、チューブが引き抜かれると、まるで尻尾みたいに揺れる。

 思ったより硬度があるようで、揺れるのにあわせて肛門が刺激されてしまう。

「ひゃぅっ。な、なにを……!」

『後始末はきちんとしないといけないでしょ?』

 声がそう告げると同時に、黒子のひとりが私の肛門から飛びだしたゼリーを掴んだ。

 そして、ゆっくりと力を込めて引っ張り始める。

 内蔵全部が引っ張られるような、経験したことなんてもちろんない衝撃。本来感覚なんてないはずの腸が、まるで全部性器になったような、そんな凄まじい感覚が生まれていた。

 恐らくゼリーに含まれていた薬のせいで、体の感覚が鋭敏になってしまっている。腸の中をゼリーが動いて出ていくのを感じてしまう。

「あうぅっ!? や、やめっ、ひっぱっちゃだめぇっ」

 外部からの力で引っ張られるせいで、思わず肛門に力が入る。すると肛門を通り過ぎていくゼリーの感触がより強烈に感じられるようになって、目の前に星が飛ぶほど凄まじい快感が生じた。

 かといって肛門の力を弱めれば、その分早くゼリーが抜けることになってしまい、その刺激はまた私を一段階高いところへと押しあげる。

「いやっ、いああああああ!」

 厳密には排泄ではないにせよ、排泄のような行動で絶頂したくない。

 そんな私の思いは、勢いよくゼリーが引き抜かれる瞬間に容易く砕かれた。

 にゅるん、とゼリーの端が肛門から抜けた瞬間、私は確かに絶頂し、そして失禁までしてしまった。

 生暖かい感触が足下と内股に広がっていくことを感じつつ、全てに疲れ果てた私はそのまま意識を手放した。

 私たちは――愛華は本当に無事に開放されるのか。不安に思いながら。





 そして気づけば――私は自分の部屋で寝ていた。

 あまりにいつも通りの天井が見えて、かえって混乱したくらいだ。

 布団の中から動く気がせず、暫くぼーっとしていると。

「お姉ちゃん、起きて-。朝だよ-。ご飯出来てるよー」

 妹の愛華が起こしに来てくれた。

「愛華……? えっと、おは、よう?」

 愛華はいつも通りの様子だった。

 私が寝ぼけていると思ったのか、からからと愉快そうに快活に笑う。

 私の自慢の、可愛い妹だ。

「おはようお姉ちゃん。まだ寝ぼけてるの? 早くご飯食べちゃおーよー」

「あ……うん……そうね」

 私は言いながら自分の身体を見下ろす。いつものパジャマだ。特に乱れてもいなければ変わったところもない。

 愛華が出て行ってから着替えるついでに体を調べてみたけど、拘束具の痕はなかったし、肛門に違和感を覚えることもなかった。

(あれは全部、夢……だったの?)

 非常に記憶が曖昧だ。

 寝る前のことを思い出そうとしたけど、はっきりと思い出せない。

 スマホを見て、日付を確認する。

(日付的には、昨日は休みだったはずだけど。何かした覚えがない……)

 私は釈然としないものを感じながら、愛華を待たせるわけにもいかず、着替えてリビングへと向かった。

 愛華と食卓を囲み、一緒に朝ご飯を食べる。食事中こっそり愛華の様子を窺ってみたけど、何の変わりもない。囚われの身にあったようには思えない。

 やっぱりあれは全部悪い夢だったのだろうか。

「……ねえ、愛華。昨日お姉ちゃん何してたっけ?」

 気になって仕方なくて、私は愛華にそう尋ねていた。

 愛華は「まだ寝ぼけてるの?」と呆れつつも、応えてくれた。

「でも無理もないかなぁ。一昨日家に帰って来た時、ほんとに辛そうだったもんねぇ。覚えてない? ろくにお風呂にも入らずにそのまま寝ちゃったんだよ」

「そ、うだったかしら?」

「スーツにシワが出来ないよう、着替えさせるの大変だったんだからねー。それで昨日もずーっとグロッキーで寝てばっかりでさぁ。買い物に付き合ってもらおうと思ってたのにぃ」

 ぷくっと可愛らしく頬を膨らませて抗議してくる愛華。

 私は反射的に謝りつつ、あの全てが夢だったような気がしてきていた。

(そうよ……あんなこと、現実に起きたことのはずがないじゃない……疲れすぎて、変な夢を見ただけよ……)

 夢にしてはあまりにも生々しく、死にたくなるほどの羞恥の感覚をいまでも鮮明に思い出せたけど。

 夢だと思えば、かなり気持ちが楽になった。

 そのほっとした気持ちが伝わったのか、愛華は不思議そうだった。

「変なお姉ちゃん-。まあいいけど。そうそう、今日はわたし友達と飲んでくるから~。お姉ちゃんも適当に済ませてくれる?」

「……まさか、男の子と飲むんじゃないでしょうね?」

 もし男の子と飲むのであれば、注意しておくべきことは山ほどある。愛華はとても素直で純粋な子だけど、それゆえにちょっと無防備なところがあるから。

「何の心配してるの? だいじょーぶだよ、女の子だから」

 女の子同士なら心配は要らないか。

「そう……でもあまり飲みすぎないようにね」

「はーい。わかってるよぅ。一昨日のお姉ちゃんみたくなりたくないしね!」

 からかうように笑う愛華に、一昨日の夜の記憶がない私はなんといっていいかわからず、曖昧な笑みを浮かべるしかなかった。

(一昨日の私はそんなに酷かったのかしら……? でも確かに仕事の後、飲んで帰ったかどうかも覚えてないのよね……昨日は一日寝ちゃってたみたいだし、しっかりしなきゃ)

 この家は私と愛華のふたり暮らし。

 愛華は抜けているところも多いし、私がしっかりしなければならない。

 そう決意を固めると同時に、私は時計の針がかなり危ない時間をさしていることに気づいてしまった。

「あっ、そろそろ出ないと! 先に行くわね!」

「うん。いってらっしゃいお姉ちゃん」

「愛華も気をつけて行くのよ」

 いつもの朝、いつもの挨拶。

 私はいつも通り、何の変哲もない日常に戻っていった。


 全てはきっと、悪い夢だったのだと信じて。



エピローグにつづく

繋がれたふたりは。8

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