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夜空さくら
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ヒトネコトリップ! ~ヒトネコホテル~ 6

 俺の目の前で、ラバースーツを身に纏い、猫耳と猫の尻尾を揺らしながら、仰向けに寝た姿勢で両手両足を縮め、無防備に身体の前面を晒しているヒトネコ。

 羞恥と期待に濡れた目が、こちらを見上げている。

 潤んだ瞳は実に扇情的で、平静を装うのが精一杯だった。

 普通の猫相手ならば何ということはない姿勢だが、彼女はヒトネコでその頬は朱に染まっている。

 栗色の子のように平然としてじゃれてくれるのもヒトネコとしてはいいのだが、この子のように人間らしく恥じらってくれるのも、また違うヒトネコの魅力がある。

 格好も相成って、実に壮絶な色気を感じさせてくれる状態になっていた。

(ひっくり返ったのは想定外だったけど……棚からぼた餅って奴だな)

 ノリのいい栗色の子のように、自分から仰向けになってお腹を晒してくれるのならやりやすいのだが、黒色の子のように緊張している相手だと、この体勢まで誘導するのが結構大変だったりする。

 思いがけずそういう体勢になってくれたことで、お腹を素手で押さえるということが自然に出来たし、上々の結果だろう。

 慣れていない子に手で触れるのは細心の注意が必要なことなので、流れで上手く触れられたのは好都合だ。

「ふー……ふー……」

 黒色の子は荒い呼吸をくり返している。緊張から来るものだろう。触れているお腹からも身体が強ばっている気配を感じた。

 俺は仰向けになった彼女の胸元を猫じゃらしでくすぐりつつ、慎重に機を窺う。

(気持ちよくしてあげるのが触れ合いの目的だからな……焦らない……焦らない……)

 乳房のふくらみに刺激を与えつつ、一番敏感な先端には手を出さない。

 じりじりとした刺激で、まずは身体の緊張を解す。

 そうしていると、お腹に置いた手から徐々に筋肉の強ばりがなくなっていくのを感じることが出来た。呼吸も安定し始める。

(ん……行けそうだな……)

 もぞもぞ、と黒色のヒトネコは両膝を摺り合わせるような動きを見せ始めた。どうやら執拗な刺激がいい具合に填まったらしく、気持ちよさを感じるようになってきたようだ。

 そこですかさず、両胸の先端に照準を合わせて、猫じゃらしをさっと動かした。

「にゃっ!」

 まずは触れるか触れないか、絶妙な刺激を与えていく。

 仰向けになったせいもあって、ラバースーツの上からでもはっきり乳首が硬くなっているのがわかる。

 いままで意図して直接刺激をほとんど与えてこなかったのだ。これは中々強烈に効くはずだった。

 何度か軽く刺激を与え、十二分に彼女にそこを意識させたら、本格的に弄り始める。

 猫じゃらしの腹を押し当てるようにして、強めに擦ってみた。

「っ……!」

 ぎゅっと目を瞑って耐えようとする黒色のヒトネコ。

 けれど目を瞑るというのは、悪手だ。

 視界を制限してしまうと、その分身体の感覚が鋭くなるのだから。

 現に、目を瞑ってからの方が、明らかに反応が良くなってしまっている。身体を捩り、快感に耐えようとしているようだが、かえって感じてしまっていることは明白だった。

「んに……っ、ふ、ぅ……ぁ……っ」

 悩ましげに身悶える黒色のヒトネコ。なんとも蠱惑的な仕草だ。半開きになった口から漏れ出る吐息にも官能の熱が篭もっている。

 すっかりこちらの思惑通りだった。

(この感じなら……やれる!)

 彼女の反応を見た俺は、ついにその機能を使う時が来たと確信する。

 使っている猫じゃらしの持ち手――電動歯ブラシのように膨らんだ部分――にあるスイッチを押す。

 すると、小刻みな振動が猫じゃらし全体に走り始めた。

 猫じゃらしにローターの機能を追加した、対ヒトネコ用の機能。

 その機械的な振動を使って、黒色のヒトネコの乳房をさらに責めていく。

「ん――にゃっ!?」

 振動する猫じゃらしを乳首に触れさせた瞬間、びくんと彼女の腰が跳ねた。

 あまりの刺激に目を見開き、自分の乳房を見ようとする。そんな彼女に対し、続けざまにローターの刺激を与えた。

「んにっ、にゃっ、ふにゃあぅ!」

 相当強烈な刺激なのだろう。黒色のヒトネコはしきりに首を横に振り、身悶えながら身体を痙攣させた。

 堪らず転がって逃げようとするのを、腹の上においた手でさり気なく阻止する。

 無論俺が力で抑え付けているわけではないので、本気で彼女が嫌がって暴れれば逃れることは出来るはずだった。

 しかし彼女の身体は、俺の手に抑えられたままで、跳ねようとはしない。彼女の本心がうかがい知れる。

 そうしているうちに、彼女の身体に触れている掌を通して、体温がどんどん上昇していっているのを感じた。

 今にもイキそうなのだろう。

 確かな手応えを感じつつ、さらに弄る手を強める。

(それにしても……ヒトネコになることに慣れてないにしては、この子の感度はいいなぁ。この状況に流されてるところもあるかもだけど……)

 このまま絶頂させてあげるのがいいだろう。

 そう思った俺は、ローター猫じゃらしで刺激を与えつつ、お腹を優しく撫でてあげた。

 強烈なローターの刺激と、それに比べればささやかな撫でられる感覚。お腹は性感帯ではないが、敏感になっている彼女にとっては相応の刺激になる。

 あまり経験豊富なわけではないのだろう黒色のヒトネコが、その波状攻撃にそう耐えられるわけがなかった。

「んにゃ、ああああああ……ッ」

 身体を仰け反らせながら、黒色のヒトネコはその身体を何度も痙攣させ、一際大きく震えたかと思うと、急に脱力する。

 どうやら、無事絶頂できたようだ。

 荒い呼吸をくり返しつつも、自分がどうしたのか理解したのだろう。その顔がみるみるうちに赤く染まっていく。両手を挙げて顔を覆い隠してしまった。

(さて……続けた方がいいかな……それとも一度インターバルを……)

 さらに責めるべきかどうすべきか悩んでいると。

「んぁ、にゃぉ」

 突如、背中にのし掛かってくる者がいた。いつのまにか栗色の子が俺の背後に回り込んでいて、のし掛かってきている。

「おっとと……悪い悪い。お前も構ってやらないとだったな」

「にゃ!」

 俺の言葉の意味は通じていないはずだったが、まるでそうだと言わんばかりに啼く栗色の子。本当に猫らしいヒトネコだ。

 俺は身体を捻って彼女の方へ腕を伸ばし、彼女の身体を掴んで持ち上げながらあぐらをかいた膝の上に載せる。相手の重心を利用した体勢変更だ。

 栗色の子は少し唖然としていたものの、すぐにこちらの意図をくんで、その背中を俺に預けてきた。さらに頭を肩口に擦りつけてくる。猫が飼い主に甘えるような仕草で、なんともこそばゆくて彼女が愛おしくなる。

(こっちの子はもっと激しくやっても大丈夫かな……思いっきり気持ちよくしてやるか)

 俺は栗色の子を後ろから抱き締めて固定しつつ、その胸と股間に手を這わせ始めた。

「んにっ、にゃあぁっ」

 彼女はすでに一度絶頂しているから、その愛撫に対する反応は激しく鋭い。

 弄りがいもあるというものだ。

 そんな俺と栗色の子の絡みを、黒色のヒトネコが見上げている。

 いまだ絶頂の余韻が残っているのか、少しぼんやりとした目ではあったが、その視点は俺と栗色の子から離れようとしていなかった。





 目の前で、男の人と美里の本格的な絡みが始まった。

 美里は男の人に身体を預け、擦りつけるようにしながらも男の人の手の動きに反応して身体を捩っている。

 男の人の手は、片方は美里の乳房を掴み、もう片方は美里の股間へと伸ばされている。

 仰向けに寝っ転がった体勢のわたしには美里の股間をどんな風に弄っているのかわからなかったけど、微かに濡れたものが動く音がしていた。

 美里が感じてラバースーツの中に出した愛液を、男の人の手がラバースーツ越しに弄っているのだとすぐに察する。

(美里……気持ちよさそう……)

 見ず知らずの男の人に抱き締められ、乳房や秘部といった場所を弄られているというのに、美里は気持ちよさそうに男の人の手に身を委ねている。

 そのあからさまな身体の預け方が、少し羨ましくなってしまった。

 そんな風に身体を預けた方が気持ちいいのだろうけど、私にはとてもそこまで真似出来る気がしない。

(せめて見ず知らずの人じゃなくて、美里やママさんみたいな、良く知った人相手なら……っていやいや!)

 思わずそんなことを考えてしまった自分に愕然とする。

 ヒトネコとして振る舞う内に、だんだん人に甘えることに躊躇がなくなりつつあるような気がした。

(うぅ……この旅行が終わったら、普通の生活に戻れるかなぁ……)

 非日常を楽しむのがこの旅行の醍醐味ではあると思うのだけど、あまりにもそれが強烈すぎて、普段の日常にまで影響が出てしまう気がする。

「んにゃっ、あああああああああッ」

 それを象徴するような、美里の甘い鳴き声が響き渡った。

(あ……美里……またイってる……)

 男の人の愛撫がとても上手いのか、それとも美里が敏感なのか、早くも二度目の絶頂に達したようだった。

 まあ、両方であるような気はする。

(すっごい優しくて気持ちよかったし……)

 逝ってしまって脱力した美里を、男の人は優しく床に寝かせてあげている。その手つきはとても優しいもので、慈しみが感じられた。美里の頭を撫でる手つきもとても柔らかい。

(わたしも……撫でて、欲しいかも)

 普段のわたしなら、そんな思考が浮かんでくること自体に驚いたかもしれない。

 けれど、いまのわたしはヒトネコで、彼にはもう十分に恥ずかしい姿をさらしてしまっている。

 そう考えれば、頭を撫でてもらうことくらいなんていうこともないのではないだろうか。

 自覚はなかったけど、わたしはすっかり雰囲気に吞まれていた。

 くるりと身体を反転させ、手慣れてきた四つん這いで美里を撫でている男の人の側に行く。美里を撫でる腕に、自分から頭を擦りつけに行った。

 男の人は一瞬驚いたようだけど、すぐににっこりとした笑顔になってわたしの頭を撫でてくれる。

 その心地良さに、思わず目を細めてしまった。

「んにゃ……」

 気持ちよさに変な声が出てしまう。

 男の人はより強く、優しくわたしの頭を撫でてくれた。

「むーっ」

 その時、いきなり頭にごつんと硬いものがぶつかった。

「んにゃっ!?」

「にゃ!」

 びっくりして後ずさりすると、むすっとした様子の美里がこちらを睨み付けている。

(しまった、美里の邪魔をしちゃった……!)

 気付いたけど、もう遅い。美里はぷいっとそっぽを向くと、足取りも荒く外へと向かってしまう。

「にゃにゃ!」

(待って、美里!)

 その後を追おうとして、男の人のことを思いだして立ち止まる。

 振り返ると、男の人は苦笑しながらひらひらと手を振っていた。言葉はわからないけど、「気にしないでいいよ」という意味なのはなんとなくわかった。

 わたしはヒトネコ的に正解かどうかわからなかったけど、ぺこりと男の人にお辞儀をして、出て行ってしまった美里を追いかける。

 男の人は最後まで優しい笑顔でわたしたちを見送ってくれた。





 美里を追いかけて触れ合い場を出たものの、わたしが入り口を潜る時には、すでに美里の姿はどこにもなかった。

(同じ四つん這いのはずなのに……ほんと美里の動きは速すぎ……)

 こうなると闇雲に美里を探しても仕方ない。

(帰るところは同じなんだし……お店に帰ったら謝ろう)

 それに美里は気分屋だから、時間をおけば自然と機嫌が直っている可能性も高い。実際、何度か喧嘩のようなことをした時も、一日二日時間が空いたらけろっとした調子でいつものように話しかけてくるくらいだった。

 そういうのを何日も引き摺ってしまうタイプのわたしとは大違いだ。

(仕方ない、ひとりで行こう……どうしようかな……)

 いまさら触れ合い場に戻る気にはなれないし、個室に行って寝てしまおうか。

 わたしは少し考え、せっかくヒトネコホテルに来ているのだから、もう少し探索してみることにした。美里と出くわすかもしれないけど、そしたら身体で謝罪の意を示せば、ずるずる引き摺ることもなくなる。

 ホテルの案内板のようなものを探して見ると、案外すぐ見つかった。

(喉が渇いたなぁ……カフェ、みたいなものは……ん?)

 案内板を見てみると、『水飲み場(カフェ)』という表記があった。ヒトネコ的に水飲み場と表記されているけど、カフェなら色々な飲み物があるはずだ。

(よし、行ってみよう!)

 わたしは階段を上ってカフェへと向かった。ここの階段はなだらかで、四つん這いのヒトネコでも自由に上り下り出来るようになっている。

(本当にヒトネコ用のホテルなんだ……)

 妙なところに感心しつつ、わたしは水飲み場へと向かった。





 本当に、ヒトネコとして大当たりのふたり、いや、二頭だった。

 栗色と黒色のヒトネコとの触れ合いを思いだしつつ、バーのカウンターに座った俺はカクテルを喉の奥に流し込む。

 ヒトネコホテルに隣接したこのバーの利用車は当然その愛好家が多く、客同士の会話を楽しむことが出来る。いまもテーブル席の方では愛好家同士が会話に花を咲かせていた。

 いつもなら俺もそこに加わるのだが、いまはヒトネコとして完成度の高かった二頭との触れ合いの余韻に浸っていたかった。

(専門のお店の店員でもないだろうに、実に見事なもんだったなぁ)

 もしかするとそういった店の従業員であるという可能性も考えられたが、そういう店のヒトネコはプライベートではヒトネコにならないのが大半だ。

 あの二頭の素性がどうであれ、すばらしかったことに違いはないから、構わないのだが。

(二頭同時っていうのがほんと奇跡だったよな……仲のいいヒトネコ同士だったんだろうけど……仲直り出来てるかな?)

 一頭ずつならないこともないが、二頭が一緒に行動して触れ合い場に来てくれるというのは、中々無い。少なくとも俺は初めてだった。

(俺を選んでくれて良かった……これだから触れ合い場に来るのは辞められないんだよな)

 いい自慢話が出来た。

 十分余韻に浸った俺は、そろそろ愛好家同士の会話に混ざろうかと思った。

 その時、俺の隣の席に妖艶な美女が座ってきた。

「ごきげんよう、お兄さん。お隣、いいかしら?」

 柔らかな口調でありながら、有無を言わせず隣の席に座った美女。

 少し驚いたが、俺も男だ。綺麗な女性が隣に座って来て悪い気はしない。

「ええ、もちろんで……すよ」

 一瞬言葉が途切れてしまった。

 と、いうのも彼女は身体のラインがハッキリ出るラバースーツを身につけていたからだ。(ヒトネコがこっちに……? いや、そういうわけじゃない、か)

 ヒトネコホテルの隣、という特殊な環境であるこのバーには、ヒトネコホテルに泊まっているヒトネコが吞みに来ることがある。ヒトネコとはいえ、純粋にお酒を飲みたいという場合もある。その際ヒトネコのままでは不便なので、ここでは普通の人間として行動することになる。

 個室で服を着替えてから来る場合もあるが、大抵はラバースーツはそのままだ。

 そのため、ラバースーツを着たこの美女もヒトネコ宿泊者なのかと思ったが、ヒトネコが着るラバースーツとは違うスーツを着ている。

 俺の考えを読んだのか、その美女は快活に笑った。

「うふふ。お察しの通り。私はヒトネコ宿泊者じゃないわ。ツアーで来ている子達の引率役ね」

「やっぱり。……もしかして?」

「ふふっ、まあ、わかっちゃうわよね。あの子達はとてもいい子達だったでしょう? 終わりは少し残念な形になってしまったようだけど。あの子たちはプロってわけじゃないから勘弁してあげてね」

 栗色と黒色のヒトネコ。

 あの二頭の引率者がこの人のようだ。引率者にはヒトネコの様子を観察する権利がある。

(なるほど……つまりは、不十分な触れ合いで終わった事に対して、責任者が詫びを入れに来たってことだな)

 終わり方は確かに唐突だったが、十分楽しませて貰ったので、気にしていないのだが。

「気にしないでください。俺は十分楽しめましたし」

「ありがとう。でもせっかくだから一杯おごらせてちょうだい? うちの子達を丁寧に扱ってくれたお礼よ」

「いやあ、あの二頭は丁寧に扱いますよ。他のヒトネコを軽んじるわけじゃないですが……あの二頭ほどヒトネコらしいヒトネコってそうはいませんし。下手な扱いして、ここに二度と来なくなったら愛好家全体の損失です」

「そういって貰えると、あの子達の引率者として鼻が高いわ」

 ふわりとした笑みを浮かべる美女。

 なんだろう、この絶妙な間合いというか、こちらの気分を良くする術を知っている感じ。

(この包容力……なんというか、見た目は若いけど……バーでいうママ、とか、女将さんって表現が合う感じ)

 美女が注文したカクテルが、俺の前に置かれる。それは俺が先に吞んでいたカクテルとは違うもので、しかし俺の好みに合ったチョイスだった。

(あの二頭と触れ合えただけでも十分幸運だったのに……これは、ちょっと今年の運を使い果たしたかな?)

「色々とお話しを聞かせてちょうだい?」

 カクテルのグラスを合わせながら、美女の囁きが耳に滑り込んでくる。

 俺は気分良く、思い掛けない美女との会話を楽しむのだった。


つづく


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