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夜空さくら
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姉好き妹はセクサロイド 2


 セクサロイド化。

 それは、性的行為を目的とした存在へと機械化されるということ。

 ゆえに、元になった人間の性質や性格、経歴も関係なく、ただ性交を行うのに必要な技術・知識を必ず持たされる。

 本来そういったことは全く知らず、実践なんて出来るわけがなかった花楓が、躊躇なく私の唇に、その唇を合わせてきた。

「かえっ、むぐっ、ふ、ぅ……っ」

 私の絞り出そうとした声は、作り物とは思えない柔らかな花楓の唇に塞がれて言葉にならない。

 合わさった口を通じて、熱の籠った息が入り込んでくる。それと同時に、どろりとした粘性のある液体――唾液が流れてきた。

 機械となった花楓に本来唾液というものは必要ないはずなのに。

 ただ、そもそもそれが本当の唾液に近いものなのか、私には判断できなかった。ほとんど寝たきりだった花楓ほどではなくとも、彼女を生かすために働きづめだった私も、恋愛経験には乏しい。

 誰かに体を許したこともなく、キスすら今日花楓としたこのキスが初めてなのだから。

 とにかく、合わさった花楓の口から、どろりとした液体がどんどん私の中に流れ込んでくる。

 それは私の口内を満たし、喉の奥へと自分以外の熱を伴って滑り落ちていった。熱いものを十分に冷まさないまま食べた時のように、熱が喉から胃に向けて落ちていくのが自覚出来た。

「んんぅ……ッ!?」

 異様な感覚に目を白黒させて悶えてしまう。

 実の妹とお遊びではなく、本気のキスをしているという背徳感が、私の胸を焦がす。

 ただ、全身を機械化した花楓と血縁関係にあると言って良いのだろうか。見た目は元の花楓と同じだから、その面影は私とよく似ている。

 しかし、見た目が似ているだけで、その体に血は流れていないのだから、遺伝子的には私と血縁関係とは言えない。

 でも、だ。精神は私の妹のものであるはずで、精神的な話をするなら確かに花楓と私は姉妹関係のままである。

 状況が複雑すぎて頭の中で整理が追い付かない。

 混乱している中、流し込まれた花楓の唾液が胃に届く。

「ん……っ、んぅっ!」

 すると、途端に身体が疼き始めた。

 いままでの熱い飲み物を飲まされた時の感覚とは比べ物にならない、お腹の中から直接熱が沸き上がってくる感覚。

 異常な熱の高まりように、流し込まれた唾液が、唾液を模した単なる疑似体液でないことを理解する。

(ま、まさか、媚薬……!?)

 口からそんなものが出せるようになっているなんて。

 花楓の身体は、本当に性交を目的としたものに作り変えられてしまったのだと知らされた気分だった。

 その事実を哀しむべきなのか、彼女が自分で選んだ道なのだから受け入れるべきなのか。私には答えが出せない。

『現在投入している疑似唾液には、媚薬とエナジードリンクを混ぜたものと、同様の効能があります』

 私の疑問を読み取ったのか、もしくは最初からタイミングを見て説明するようにプログラムされていたのか。花楓の声が機械的に告げてくる。

(うぅ……! 通り、で……!)

 流し込まれたものが媚薬だったのなら、身体が熱を持ち始めて当然だった。どれくらいの効果はわからないけど、一瞬で体に影響が出ているということは、相応に強力な薬なのだろう。

 性的に興奮させて気持ちよくするだけなら、媚薬だけの効果でいいのに、エナジードリンクの効果もあるということは、それだけ体力を消耗させることをするつもりなのだ。

 恐怖とは違う感情で、心臓がどくんと大きく鳴った。

『薬の効果が完全に出るまで、ディープ・キスによる口内愛撫を続けます』

 淡々とした宣言が成されると同時に、私の口内に花楓の舌が侵入してくる。

「んぐ、む、っ!」

 恐らく噛んでも無駄だろうけど、挿し込まれた舌を噛むわけにはいかない。

 花楓を傷つけるような行動なんて、私にできるわけがないのだから。

 私がどう対応すればいいのかわからずに硬直している間にも、花楓の舌は私の口内を激しく責め立ててくる。どろりとした唾液を纏った舌が、私の中を掻き回していく。

「んんっ……んぅっ!」

 びくん、と身体が跳ねる。下着姿に剥かれているから肌寒いはずなのに、身体がそれを上回る熱を発し始めていた。汗が滲む。

 口が塞がれ、呼吸が上手く出来ない。

「んあっ、ふぁ、んんんっ……!」

 花楓の舌が私の前歯の裏を擦りあげる。そんな場所は医者にも触られたことがない。

 そんな場所に、花楓の舌が直接触れているという事実が信じられず、酸欠もあって頭がぼうっとしていた。

 花楓ほどではないにせよ、私だって恋愛関係……特に性的関連のことには詳しいわけじゃない。

 花楓のために尽くしていたこともあるけど、それを言い訳に男性から言い寄られるのを逃れていたからだ。

 私にとって、花楓の存在が大きすぎて、他に大事なものを作ることは出来なかった。両親も早くに亡くしてしまって、私にとって大事な存在は花楓しかいなかった。

 そんな花楓が、セクサロイドとなって私をリードしてくれている。

 いままで彼女を背負って歩いてきた私が、花楓に導かれていた。

 その事実を受け入れたくない姉としての私と、受け入れて溺れてしまいたい弱い私が混在している。

 いっそ花楓に全てを委ねてしまえば――花楓に愛撫されるにつれ、そんな気持ちがむくむくと膨れあがっていっているのを感じる。

(だ、だめよ……わたし、は……お姉ちゃんなんだか、ら……っ)

 受け入れてしまえば楽になれることを悟りながら、私の理性はそれに抗う。

 そんな私の心境を感じているのかいないのか、花楓は激しい愛撫を続けていた。

 花楓の舌が伸びてきて、私が触れられないように縮ませた舌に絡みついてくる。

「んぐっ、ううぅっ!」

 舌と舌が絡み合う異様な感覚に目を見開く。花楓の顔が目の前に迫っていた。それがキスの時の作法だと言わんばかりに、瞼を閉じているので、セクサロイドらしさが少し薄らいでいた。

 花楓が眠っているのをベッドの脇でよく見詰めていたから、瞼を閉じた花楓の顔は見慣れたものだ。

 いま自分とキスをしているのが確かに花楓なのだと、認識させられてしまう。

 再び胸がドキリとするのを感じ、慌てて目を閉じる。

「んぅ……っ、ふぁ……、んん……っ」

 一度目を開けてから再度目を閉じると、さっきまでは特に気にならなかった感触がさらに際立ったように感じた。

 花楓の舌技は、明らかに花楓本来の経験値を遙かに超えた、まさに絶技というべきものだった。

(も、もう……だめ……っ)

 媚薬の効果か、身体の内から沸き上がる気持ちよさに我慢出来ず、自分から舌を伸ばして花楓にその身を委ねてしまった。

 唐突に伸ばした私の舌に、花楓の舌は躊躇いもなく即座に反応し、絡ませ合いながらずるりと舌を舐めあげる。

 無防備に晒してしまった舌の裏を、花楓の舌が擦りあげた。

 閉じた瞼の裏側で、光が瞬く。

「んぐぅ、んむあぁっっ!」

 口内の刺激だけで、絶頂に導かれた私の身体がびくんと跳ねる。

 腰の上に跨がっている花楓の身体を吹き飛ばしかねない勢いだったけど、そこは機械化された花楓の重量が勝った。

 微かに揺らいだくらいで、私の反応をどっしりと受けとめてくれた。

『対象の性的絶頂を確認――次の愛撫へと移行します』

 口を合わせたままの花楓がそう言い、ゆっくりと口を離した。

「ふあ……っ」

 花楓が離れていくことに、思わず切ない声が出た。

 花楓はそんな私を無機質なカメラアイで見詰めている。見た目はどう考えてもただのカメラなのに、なぜだか愛おしげな感情を感じた。

 汗一つかいておらず、息の一つも荒くならない。

 肌の色は一定で、興奮している様子は微塵もない。

 なのに、私の腰の上に乗っかった花楓のあそこ――秘部という割れ目からはどろりとした粘液が溢れ出していた。

 私のお腹の上に小さな水たまりが出来ているほどだ。

 それは冷静に考えれば単に疑似愛液を出す機能が動いているだけで、疑似唾液を出しているのと変わらない。

 その行動に本人の気持ちなんて関係ない、はずだった。

「かえ、で……気持ちいい、の……?」

 頭では理解していたけど、思わず私はそう聞いていた。

 その問いに、さらに私に愛撫を加えようとしていた花楓の動きがぴたりと止まる。

 そして、意外なことを口にした。

『――肯定します。当セクサロイドに搭載された固有人格・瀨木穂花楓は、現状に対して性的興奮状態にあります』

 やけに堅苦しい言葉で言われたけど、要するに花楓本人もこの状況に興奮しているということだ。

 そしてそれは、あることを示している。

「ま、待って、ということ、は……? もしかして、かえでの意識は、いまも、ある、の?」

 私はてっきり、セクサロイドモードになった時点で、花楓本人の意識が切り替わっているものと考えていたのだけど。

 機械的な応答で、花楓は私の考えを否定する。

『肯定します。セクサロイドモードは行動を自動操縦に切り替えるモードであり、瀨木穂花楓の精神活動はその範疇に含まれません』

 無機質な動きを見せるカメラアイが、私の目に焦点を合わせている。

 その瞳の奥から花楓に覗かれているような、そんな不思議な感じがした。

 覗かれている、というその感覚は、ある意味正しい感覚だった。

 というのも、このときの私は知らなかったけど、セクサロイド化してもらうための条件には、私と性的関係を持つということ以外に、その光景を記録して渡すというものがあったのだ。

 考えてみれば、人一人をセクサロイドするには多額の資金が必要だ。

 いくら金持ちの道楽のようなものとはいえ、まったくのノーリターンでやるようなことではない。

 映像を渡すくらいは、当然あってしかるべき代償だった。





 愛しい愛しいお姉ちゃんが、驚きと困惑を露わにして『こちら』を見ている。

 お姉ちゃんは半裸の格好になっているから、その身体に絶頂直後の印がわかりやすく表れていた。

 赤みを帯びた肌や頬が、とても色っぽくてカワイイ。

(お姉ちゃん、やっぱりキレイ……)

 子供の頃から、ずっと大好きなお姉ちゃん。

 病弱なあたしという存在に耐えかねて、いなくなってしまった両親と比べるべくもない、優しくて強くて、とても温かい人。

 子供の頃は純粋な家族愛だったと思う。

 けれど、時間が経つにつれ、お姉ちゃんがあたしにくれたものの大きさを感じられるようになるにつれ、あたしの感情は家族愛では済まなくなってしまった。

 お姉ちゃんにもっと愛されたい。

 お姉ちゃんと愛し合いたい。


 お姉ちゃんと――家族よりも深い関係になりたい。


 そんな想いばかりが募っていた。

 そういう想いを本人に向けるわけにはいかなかったから、ネットの隅で、誰にも見られないことを承知の上で吐き出していた。

 そんなあるとき、ネットを通じてその呟きを見た、とある富豪の人に声をかけられた。

 いくつかの条件はあったけど、その代わりに病気の身体を克服する、機械化の施術費用の全てを向こうが持ってくれるという話。

 最初は正直、悩んだ。

 お姉ちゃんと血を分けた自分の身体を捨ててしまうことになるからだ。

 けれど、その人に詳しく話を聞いているうちに、あたしは施術を受けることを選んでいた。

 病弱で医療費の負担をお姉ちゃんにかけることしかできない身体を捨て。


 愛し合うことが目的の――セクサロイドになった。


 そしていま、そうして得た身体を使って、お姉ちゃんとそういう行為をしている。

 自分の身体が勝手に動き、お姉ちゃんを気持ちよく導いていた。身体を自動的に動かされるというのは、普通の人にしてみれば恐ろしいことなのかもしれない。

 けれど、ずっとベッドに縛り付けられているような状態だったあたしにとって、身体が勝手に動いても大した問題には感じなかった。

(この方がお姉ちゃんを気持ちよくしてあげれるんだから、それでいい)

 ずっと、ずっと。

 お姉ちゃんに何かを返したかった。

 自然に病気が治れば一番良かったけど、病気を持たない身体になれたことに違いは無い。

 ちょっと厄介な条件もついてしまったけど、あたしはその条件をクリアできると確信していた。


 もしクリアできなければ――この身体に残されたあたしの人格は、この世から完全に消えることになるのだけれど。


 その事を、お姉ちゃんは知らない。

 何も知らないお姉ちゃんは、あたしの身体の下でセクサロイドのあたしに与えられる快楽に悶えている。

 お姉ちゃんをもっともっと気持ちよくしてあげなければ。

 あたしはセクサロイドとしての使命感に、元々あった自分の欲望を加えて、お姉ちゃんへの愛撫を再開した。


つづく

Comments

両方とも表現次第でハッピーエンドと思えると思います。 今後の展開も期待しています!

festo

ハッピーエンドにも色々ありますからねー。元に戻って普通の人間として普通に生きることを幸せと捉えるか、機械の身体を受け入れて実の姉妹と幸せな性生活を送るのが幸せと捉えるか……難しい問題です。

夜空さくら

ツイートの中身も含むと、さくらさんは普段取り返しのつかない変化よりは戻れる状態変化小説をたくさん書いており、ダークな設定ながらハッピーエンドという触れ込みがあったと覚えていたので条件をクリアして元気な自分の体に戻る展開を考えたのでそう思ったのです。

festo

たぶん人間の体に戻すことは出来なくはないのですが、元の体とは言えない、という感じでしょうか……遺伝子とか調べるならわかるでしょうが、目で見ても判別はつかないかもですね。

夜空さくら

人間を完全に機械化させる技術があればその逆も不可能ではないだろうという考えを少ししていたので取り返しのつかない変化だとは思えませんでした...。

festo

条件を知ったら、姉は間違いなく反対すると思います。 まあ、もう普通の人間には戻れないんですけどね! 私の書く作品の中では珍しく、このお話は不可逆変化となっています。 病弱な妹には「いままでずっと姉の脚を引っ張っていた」という自責の念があり、少しでも何かを返したいという想いがありました。ただ、それと同時に、姉に対して肉親以上の情を感じてもいました。その結果がセクサロイド化です。

夜空さくら

『ちょっと厄介な条件もついてしまったけど、あたしはその条件をクリアできると確信していた。』で条件というのは『実の姉である私を、花楓の『主人』として入力することを求めた。』なのかそれともお姉さんが知らない別の条件があるのだろうか? そしてもしクリアできない時彼女の人格が完全に消えてしまうという事実を知ったらお姉さんは機械化に反対するのではと想像もします。 それから、最初に読んだ時は病的な自分の体が姉に負担になったので、自分の体を機械化させたのかなと思いましたが、今回の作品を見ると、姉にもっと気持ちよくしてあげたいので、自分を機械化させたという気もしますね。

festo


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