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夜空さくら
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クリスマスプレゼントがあたし


 今年のクリスマスプレゼントは『あたし』にすることにした。


 リアルな造形のケーキを作るとか、自分の形を複製した人形を作るとかではなく、あたし自身そのものを彼にプレゼントする。

 裸にリボンをかけてベッドの上で待つ、なんていう古ぼけた『プレゼントは私♡』のイメージを思い浮かべた人はいないと思うけれど、そんな古めかしいプレゼントの渡し方はもちろんしない。

 あたしには文明の利器がある。

「というわけで、計画通りお願いね! オッケー? グレーサ?」

 部屋の中でふわふわ浮かんでいる球体のお助けロボット――グレーサに向かって、そういうと、グレーサは『ピコン』と反応した。

『ほんとにやるんですか? いまならまだ思い直せますが』

 最近のロボットは平気でこういうことを言う。AI技術が進歩するのも考えものだ。

 決心が揺らぐじゃないか。

「いいの! 去年の雪辱を晴らさないと!」

『去年は酷かったですからね。全裸のマスターをリボンでラッピング拘束するとかいう、お助けロボットの分を超えた命令をこなした私は褒められてしかるべきです』

 機械のくせに言葉の刃が鋭利だ。

 あたしの胸にグサグサ刺さる。

『肝心の相手からの反応も芳しくありませんでしたし』

「そ、そんなことないもん! 喜んでもらえたもん!」

『当時の音声記録を再生します。「……お前、また旧世紀のエロ漫画読んだろ」 私の感情学習能力に間違いがなければ、あれは98パーセントの確立で賞賛ではなく呆れの感情であったと――』

「あー、あー、きこえないー!」

 日常の細かいことまで覚えていてくれるお助けロボットは便利だけど、こういう時は的確に心の傷を抉ってくるから厄介だ。

『で、本当にやるんですか?』

 心の傷を抉るだけ抉って、さらっと元の話に戻すグレーサ。

 こんにゃろう。

「やるよ! やるさ! やるともさ! 今年のアイデアなら、あの人だってイチコロのはず!」

 たぶん。きっと。おそらく。

 正直自信はないけれど。女にはやらなければならないときがある。

 グレーサはあくまでお助けロボット。人間であるあたしの決定に逆らう権限はない。

『わかりました。では迅速に始めてください。この時期、人間輸送ドローンも多忙ですから、早くしないと今日中の配送が間に合いませんよ』

「わかってるわよ! ……もっかいシャワー浴びてきた方が良いかな?」

『五分二十八秒前に浴びたばかりですし、結果として汗まみれになるでしょうから、意味がないのでは?』

「情緒がない!」

『お助けロボットにその機能は搭載されていません。コミュニケーション専用のロボットにご用命ください』

 ぐうの音も出ない正論だった。

 あたしはひとつ息を吐く。

「うん……はじめるわ」

 身体に巻いていたバスタオルを床に落とす。素っ裸でゴロゴロするのが好きとはいえ、いまは全く別の目的でそうしている。

 緊張でドクンドクン、と心臓の鼓動が激しく鳴り響いていた。

 あたしの容姿は、悪くない方だと自負している。

 すらりと伸びた手足に、シミひとつ……くらいはあるけど、目立たない程度しかない白い肌。丸顔で童顔ではあるけど、可愛いと評判の顔立ち。腰回りはシュッと引き締まっているはずだし。風に靡くくらいさらさらの、背中に届く長さ髪の毛はちょっと毛先が痛んでいるけど、トリートメントでバッチリケアしているから問題なし。

 そして胸。自慢じゃないけど、ほとんどの知り合いより大きなバストサイズ。グラビアアイドルとかには負けるけど、巨乳と呼んで差し支えない大きさと、綺麗な形。

 完璧ではないにしても、あたしが取れる中では完璧な状態のはず。

「あたし、綺麗よね?」

『お助けロボットにその機能は搭載されておりません。コミュニケーション専用のロボットに――』

「もういいから!」

 なんだか体良く回答を避けられたような気がする。

 ほんとにこいつはお助けロボットなんだろうか。

 ふぅ、と一息吐いて気持ちを落ち着け、改めて今日の計画を思い出す。

「よーし、あたしをプレゼント作戦……開始!」

 まず手に取ったのは、今日この日のために用意した衣装だった。

 綺麗に折りたたまれていたそれを、ぺろりと広げる。

 人型をくりぬいたような、のっぺりとした黒色のスーツ。


 それは、人体圧縮スーツと呼ばれるものだった。


 それに足から順番に身体を通していく。

 スーツは、ラバーのような素材で出来たスーツだ。だから適正サイズは本来のあたしのサイズより少し小さめ。

 足を通していくと、ぴちぴちと音を立てる。

 覆われた足先がきゅっと締め上げられた。

「ん……っ」

 毎度のことながら、締め付けられる感触に妙な声が出てしまう。さすがにその声に反応するほど、グレーサも人間めいてはいない。

 最初は靴下を履くように、立った状態で片脚をあげて履いていたけど、膝の上くらいまで引きあげると、それ以上は片脚立ちじゃ難しい。

 あたしは床に座り込んで、もう片方の足にもスーツを通すことにした。

 フローリングのひんやりとした感触を、お尻で感じる。普段なら肌寒くなるところだけど、いまは心臓が激しく鳴り響いている関係で、身体が火照っているので寒くは感じなかった。

 もう片方の足にもスーツを身に付けていくと、身体が下の方から黒く染まっていくようにも見えた。

 スーツが少し伸びながら張り付いているので、ぴっちぴちもぴっちぴち。あたしの身体のラインがくっきり出てしまっていて、タイツを履いているのと変わらないはずなのに、なんだか無性に恥ずかしくなる。

 なんとなく、頭上に浮かぶグレーサをちらりと見る。特に顔とかが書いてあるわけじゃないけど、その球体そのものが目のようになってこちらを見ているような気がした。グレーサにはカメラ機能がついているから、それのせいかもしれない。

 さっさと着てしまおう。

 あたしは両膝の上くらいまでスーツを履いたあと、立ちあがってスーツを上に引っ張って持ち上げた。

 するとスーツは一気にあたしのお尻から下腹部の辺りまでを覆う。股間にぴちっと張り付く感触に、ぞくっとするものを感じた。

「んにっ……ぅ……ふぅ……」

 変な声がでそうになるのを堪えて、あたしはひとつ息を吐いた。

 下半身がすっかりスーツに覆われてしまっている。裸みたいな姿なのに、風を感じることはなく、均等に身体を締め付けてくる感触が常にあって、言葉では言い表しにくい感覚だった。

 再度息を吐き、装着を再開。両腕をスーツの袖に通す。指先までぴっちり覆われているので、なんだかもう一枚皮を着ているような気分だった。

 指を曲げたり開いたりしながら、スーツが撓まないようにひっぱりつつ、身体を覆っていく。

「よし……と、ひゃうっ!」

 両腕の肩口までスーツの袖を通すと、身体の前面、おっぱいにスーツの前面が触れるようになった。ひんやりとしたラバー独特の感触。このスーツがすごいのは、肌に張り付いてくるような動きを見せるため、少し触れただけでスーツが身体にフィットしてくるということだった。

 あたしの自慢のプロポーションがくっきりとスーツによって形作られる。おっぱいも一番理想的な形に整えられる。ただ、大きいせいか、凄く凹凸が目立ってしまう。全身タイツを着ているような見た目になるのが、難点だった。

「あぅ……ぐ、グレーサ、画像流出とかしないでよ……?」

『セキュリティは万全です。しかし、そもそもスーツを身に付けた女性の映像は珍しいものではありません』

「そりゃあ、そうかもだけど……勝手に見られるのは違うもの」

 人体圧縮技術はいまや生活に欠かせないもので、それがなくては生活が成り立たないくらいだ。だから、色んな人がスーツを着る映像はいくらでもあるし、むしろ人前でこのスーツのようなものを着ることだってよくある。

 けれど、やっぱり見られて恥ずかしい、という気持ちは旧時代から変わらない、のだと思う。ただ、その感情の機微をグレーサに理解しろというのは、それこそお助けロボットに求めることじゃない。うちのグレーサはやたらと人間っぽいけど、そこはちゃんと違うと認識しておかなければならなかった。

 ともかく、あたしはスーツの着用を再開する。

 しっかりスーツを引っ張り、身体に密着させながらスーツの背中に走るジッパーを引き揚げていく。身体が柔らかくて良かった。多少は苦労するとはいえ、ひとりで大部分のスーツの着用が出来るのは大きい。

「んん……、んぅ……っ」

 ジッパーを引きあげていくと、それに伴って下半身や身体の前面を覆っているスーツがあたしを締め付けてくる。

 股間にスーツが食い込んでくるような、そんな錯覚を覚えた。それを堪えながら、ジッパーを背中の中程くらいまで引き揚げる。

 ここから先は自分では難しい。

「グレーサ、お願い」

『了解いたしました』

 何度もお願いしたことだからだろう。あたしは特に詳細を言わなかったけど、グレーサはあたしが何を求めているのか正確に理解していた。その身体の中から一本のマジックハンドのようなものが飛びだしてくる。

 そして、あたしが途中まで引き上げたジッパーをさらに上に引きあげる。

 グレーサはふわふわ浮いている様子からは想像出来ないほどの力で、途中までになっていたジッパーをうなじのあたりまで引き揚げてくれた。

 ぎゅっ、と全身が締め上げられる。

「う……っ、くぅ……!」

 自分で自分の身体を撫でさすり、スーツをぴっちりさせていった。

 ふと鏡を見ると、そこには首から下の身体が真っ黒になったあたしが映っていた。

 少し身体を動かすだけで、連動して全体が動くから、全身を撫でられているような感覚に陥る。

 その身に付けたばかりの感覚を乗り越えれば、あとは自然と体に馴染んでいく。

 ふー、と深く息を吐いた。

 このままだと、全身真っ黒で地味なので、グレーサに向かって言う。

「グレーサ。人体圧縮スーツを赤色にして」

 そうすると、グレーサがあたしの身に付けたスーツの色を赤色に変更してくれる。クリスマスカラーといえば、やはり赤だろう。

 子供に夢を与えるサンタというには、少々体のラインが出過ぎた扇情的なサンタだったけど。

 あたしは白いチョーカーを、首に巻き付ける。これでほぼ着用は完成――と、思ったけど、机の上にどどんと鎮座する肝心の物を忘れていた。


 いわゆるバイブという――オナニーグッズのひとつだった。


 あたしの体にぴったり合うように作られたそれは、最新式のものなので、ローションを垂らす必要は無い。

 少し情けない格好だけど、がに股になって自分の股間に狙いを定める。

「グレーサ。人体圧縮スーツの股間に穴を開けて」

 そう命じると、あたしの秘部の穴に当たる部分のスーツが、まるで生きているように動いて穴を開く。

 外気に晒される前に、あたしはバイブの先端を穴に押しこんでいく。

「ふぃぁっ」

 体の中が押し広げられていく感触に、思わず背筋がぴんと伸びた。その際の勢いに釣られて、スーツに包まれたあたしのおっぱいがぶるんと揺れる。揺れはしたものの、それに伴う痛みはほとんどなかった。さすがは最新の技術の塊であるスーツというべきか。

 バイブは根元まであたしの体の中に入ると、ちょうどぴったり穴の縁を覆うような形になっている。根元まで挿し込むと、あたしの膣が勝手に収縮して締め付けてしまうので、バイブが落ちる心配はなかった。

 これで、準備は完了。

「ふぅ……ふぅ……グレーサ、それじゃあ、あとは頼むわ」

『指定された通りにいたします』

「うん。お願い」

 スーツに包まれた状態で、深呼吸。

 覚悟を決める。

「それじゃあ――圧縮、開始!」

 そう命じると同時に、視界が真っ赤に包まれた。

「んぐっ、ん……っ」

 首輪からラバーが飛びだして、頭部を覆ったのだ。

 昔は圧縮を開始する前に、頭部にもスーツを着用しなければならなかったらしいけど、技術の進歩によって、圧縮開始と同時に頭部も覆えるようになったのだった。

 顔に張り付いてくるラバーを、反射的に手で剥ぎ取ろうと動きかけたけど、スーツの圧縮はもう始まっている。腕はぴくりとも動かせなかった。

 全身を締め付けているスーツの感触がさらに強くなって、あたしの体がどんどん小さく押し込められていくのがわかる。

「んん……っ、んむ、ぅぅッ……っ」

 どれほど暴れても、圧縮は止まらない。

 あたしの体はみるみる内に小さくなっていく。

 そしてそれと同時に、体の中にあるバイブの輪郭が、どんどん大きくなるのを感じていた。あたしの身体ではない異物であるそれは、あたしの体と違って圧縮されない。

 だから圧縮されていくに連れ、あたしはそのバイブに体がフィットしていくような、そんな奇妙な感覚を覚えていた。

 手も足も頭もなくなり、体の感触もどんどんそのバイブの周りに集約されていく。


 まるで自分の身体が性器だけになってしまったような――そんな感覚を覚えるのだった。





 私のマスター・ハナは四角い箱になってしまいました。

 クリスマスカラーである赤が鮮やかで、白い線が一本通った、四角柱の箱。

 その芯をバイブが貫いており、小さな面のひとつをバイブの根元が覆っています。

 ネックレスやキーホルダーが入る程度の大きさと長さの箱に、マスターはなってしまいました。

 もちろんそれが人体圧縮技術によるものであることは認識出来ています。

 マスターが付き合っている男性に、自分をプレゼントするための行為であるということも十分理解しています。

 もっとも、いくら人体圧縮技術が一般的になった現代においても、こんなことをするのは物好きなマスターくらいです。相手の方に引かれてしまわないか、若干不安になります。

 とはいえ、マスターの決定したことを拒否する機能は私にはありません。

 事前にマスターに言われていた通り、最終的な仕上げをするのみです。

 私はマスターの近くに本体を下げると、箱になったマスターをアームで掴んで持ち上げます。

 アームで掴んだ瞬間、マスターはその刺激に反応して動こうとしたようですが、圧縮されているときに体の自由はほとんどありません。

 私のアームの中で、ぴくぴくと痙攣するのみです。

 物に物として扱われる感覚というのは、どういう感覚なのでしょうか。人間の感情を学習する機能は私にもありますが、あまりにも複雑で想像がつきません。

 ともあれ、作業を進めます。

 まず金色の紐を取りだし、箱になったマスターを綺麗に縛り上げていきます。本人の希望で、亀甲縛りという形式で紐を組み上げていきました。

 本来股間を通るはずの縄は、バイブの根元を縦断し、抜けないようにしっかり固定しています。

 そう、実は圧縮された状態でも、このバイブは抜けるのです。

 抜けば、その部分の空間は残ります。


 つまり、マスターはオナホに自ら成り下がっているということになります。


 その状態で交際相手に使って貰おうという試みなわけです。何を言っているのかわかりませんね。私には理解不能です。心が通じ合っているのですから、普通に交尾すれば良いと思うのですが違うのでしょうか。

 私に人間の――マスターの考えはよくわかりません。

 言われたことを実行するまでです。

 しっかり紐でマスターを縛りあげた後、今度は普通にクリスマスらしいラッピングを施します。サンタとトナカイが意匠された紙でマスターを包み、末端をテープで止め、リボンで装飾し、マスターが用意したメッセージカードをその隙間に挟みます。

 なお、メッセージカードにはマスターの直筆で『ハッピークリスマス! 今年はプレゼントがあたしだよ!』と書かれていました。マスターの交際相手が頭を抱えるであろうことが、高い確率で予測できます。

 マスターは去年の「プレゼントはあたし」作戦の失敗から何も学ばなかったようです。再三忠告はしたのですが、あいにくマスターには計画を修正するというAIにさえ備わっている基本的な能力が欠如しているようです。

 ともあれ、私はマスターに従うのみです。

 これで準備は完了しました。

 綺麗にラッピングされ、時折小さく痙攣するマスターを持って窓際に行きます。

 信号を発しながら窓を開くと、開いた窓から小型のドローンが入ってきました。輸送ドローンの一機です。

 機械同士に会話は必要ありません。

 ただお互いに必要な信号をやりとりし、私はマスターをそのドローンに差し出しました。

 ドローンがアームを伸ばしてきて、マスターを受けとり、その機体の中に収容します。

 そして、すばやく外に飛び出していきました。

 これでマスターは交際相手の家に運ばれました。交際相手は勤務中なはずなので、彼が帰宅するまで宅配ボックスの中で待つことになるのでしょう。

 マスターの計画が少しでも上手くいくよう、祈るしかありません。

 機械が祈るというのもおかしな話ですが。

 クリスマスプレゼントになったマスターが、ちゃんと交際相手を満足させられたのか――それは、情報共有が成されなかったのでわかりません。


 わかりませんが――翌年マスターは一児の母になったのでした。



クリスマスプレゼントがあたし おわり

Comments

ありがとうございます! 箱型オナホに成り下がっている自覚は、本人にはありませんが、オナホ以外の何物でもありませんね(笑) 実際に使用するシーンについては、いつか書きたいとは思っています。

夜空さくら

自分を箱型オナホに変形させてプレゼントを贈るという発想。 箱型オナホという発想がとてもよかったです そして、変化する過程が描写されたのも良かったですね。 個人的に(マスターはオナホに自ら成り下がっているということになります。)の部分でこの次にはオナホとして使われる場面があるのではと期待していましたが、残念ながらオナホとして使われたという話があるだけで、その後の話はないのが少し残念でした。

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