SamSuka
夜空さくら
夜空さくら

fanbox


学園島 その6


 学園島の出資者であり、様々な面での協力者でもある吹田が、島に滞在する最後の日。

 学長秘書に案内され、吹田は学園の地下へと再び降りていた。

「今日で終わりか……名残惜しいな」

 ぽつりと呟く吹田に対し、学長秘書はにこやかな笑みで応じる。

「またいつでもいらしてくださいませ。吹田様が所有なさっている者達も、吹田様がお越しになるのを待ち望んでおりますので」

「ふふ……まあ、そうだろうな。そうでなくては、『処置』をする甲斐もない……」

 ニヤリと笑う吹田。彼を乗せたエレベーターが、地下へと到達した。

 エレベーターを降りた吹田は、学長秘書の先導を待たずに、そのまま調教ルームへと向かう。勝手知ったる施設だからだ。案内役として学長秘書がついているのは、形式上の理由が大きい。

「指定通りの後処理と、下準備はしてくれているか?」

 歩きながら確認する吹田に、学長秘書は頷く。

「はい。昨日の責めの影響に関しては、治療を行いましたので、ほぼ通常状態に回復しているはずです。……彼女はまだ肉体的に若いですしね」

「君とてまだまだ若いだろうに」

「勿体ないお言葉です」

 吹田の世辞を、学長秘書はそう淡々と受ける。実際、彼女は決して年嵩の方ではないものの、この学園島には彼女よりずっと若い女子学生たちがたくさんいるため、吹田の言葉はお世辞とまでは言わずとも、正確ではなかった。

 客観的に見て、この島で彼女は若い方ではないのだから。

 とはいえ、彼女の年齢については今回あまり関係が無い。

「精神の方はどうだ?」

 吹田は話を次へと進める。

「元々反抗的な学生ではないので、反逆の危険性はほぼないかと思われます。いまだ自分の立場を受け入れられないところはあるようですが、それも今日の仕上げで受け入れざるを得ないでしょう」

 無論、学園島の真実を知る吹田にしてみれば、元から受け入れている彼女が自分の扱いを

受け入れないはずがない。

 あえて学長秘書に聞いて確認確認したのは、対象が――井塚葵がどういうスタンスでいるかという確認だった。

 この島での調教は、いわばプロレスだ。

 暗黙の了解で成り立っているが、相手がどういうムーブをするのかは、何かをする前に確認しておく必要がある。

「ふふ……そうか。そうなるように、気合いを入れてかからなければな」

 そしてついに、吹田はある部屋の前に辿り着いた。『調教ルーム003』とプレートがかかっている部屋だ。その中に、吹田の目的の学生がいるはずだった。

「では今日の調教を開始するか――おっと、そうだ。例の『あれ』にこの部屋に来るように伝えておいてくれ」

 部屋の中に入ろうとした吹田は、思い出したように足を止め、学長秘書へと命じる。

 学長秘書が了承し、頷くのを見てから、吹田は調教ルームに入っていった。

 部屋の中央にはふたりが話にあげていた奴隷候補のひとり――井塚葵が両腕に嵌められた枷を鎖に引かれ、全裸で吊されていた。

 意識がないのか、ぐったりと力無く吊されている。

 吹田はそんな彼女の姿を見て、ちろりと舌舐めずりをするのだった。





 私が目を覚ますと、そこは漆黒の闇の中だった。

 要するに目隠しのようなものが目を覆っていて、瞼を開けても何も見えない。目を開けても真っ暗闇というのは、本能的に恐ろしく感じる。

「んぅ、ん……ぅ?」

 口を開こうとしたものの、開けられなかった。どうやら口枷のようなものを噛まされているみたいだ。唇の端を割り割くような感覚があるところを考えると、馬の轡のようなものらしい。

 耳を澄ましてみたけど、何か詰め物がされているみたいで、身体から伝わってくる以外の音がしない。

 鼻は塞がれていなかったので、匂いは嗅げたけど、噛まされた口枷の金属臭が強く、よく利かなかった。ほんのかすかに、なんとなく甘い匂いがしているような気がしたけど、それが何なのかはっきりとはわからない。

 身体の感覚を探る。私はどうやら両腕を吊り下げられているようだった。むりやり引き起こされているような感じで、引っぱられている肩が痛い。力の抜けていた足に力を入れる。

 すると、両足に引っぱられるような感触が生まれた。どうやら足も地面に繋がれているようで、私は×の字に固定されているようだ。

 体には手足に繋がっている枷以外、何も身に付けていないようで、少しひんやりとした空気を全身に感じていた。

(もしかして……また全身鞭打ちとかされるのかしら)

 調教開始直後の責めを思い出す。

 あれはあれでかなりハードで良かったけど、正直もう一度となると「またなの?」という気はする。何度も繰り返すことに意味がある責めというわけでもないだろうし、拘束の形が似ているというだけで、恐らくは別の責めをされるのだろう。

(ん……体の痛みは……あんまりないわね)

 昨日はルームランナーで走らされながら鞭を打たれ、吹田という男を満足させられるまで、それを延々と繰り返された。結果、筋肉痛で酷い状態だったはずなのだ。

 けれどいま感じる限り、筋肉痛になっている様子はない。

(医療技術がものすごいわ……)

 人体改造を容易く行うような技術を持っているのだから、予想はしていたけど、一般的な医療より遙かに進んでいるんじゃ内だろうか。

 もっとも、私たちは最新鋭の、まだ臨床実験も済んでいないような技術の実験台にされている可能性が高い。

 実験動物並みの扱いというのは、なんともゾクゾクしてしまうものだった。

(まあ、それはさておき……ちょっと暴れておこうかしら)

 目が覚めたら全裸で拘束されている、という唐突な状況だけど、私はすでに今日の分の調教が開始されているのだと理解していたから内心は落ち着いていた。

 けれど、いきなりそんな状況になっていたら、普通は取り乱して暴れるものだ。

 私は「哀れにも上位者の目にとまってしまい、その性奴隷となるように意味もわからないまま調教されている女子学生」でなくてはならない。

 無駄とは悟りつつ、拘束された体を大きく暴れさせてみる。

「ンーッ、ンッ、ゥー!」

 少しわざとらしい呻き声をあげながら、体を揺する。

 両腕は鎖のようなもので引っぱられているらしく、動かそうと思えば少しは動かすことが出来た。鎖の長さに遊びがないから、ほとんど動かせないに等しいけど、金属の棒などで固定されているわけではなさそうだ。

 多少は動かせる腕に対し、足の方は全く動かせなかった。枷がぴくりとも動かない。そのせいで、私は足を閉じることも出来なかった。肩幅より少し開いた状態で固定されている。たぶん床から飛びだした棒などに括り付けられているみたいな感じだ。

 拘束されている四肢と違って、胴体は比較的自由だった。手足の四点は動かすことができなかったけど、胴体だけなら割と自由に、前後左右に動かせる。

 お尻を振ることが出来、その動きに合わせて胸が揺れる。

(結構、恥ずかしいわね、これ……)

 くねくねと体を動かしていると、裸なことを嫌でも実感してしまう。

「ウゥ……」

 少し恥ずかしくなってきたので、暴れることを止めた。

 傍目から見れば「目が覚めたらいきなり拘束されていて、思わず暴れたけど、無意味なことに気付いて大人しくなった」感じになったと思う。

 手で隠すことも出来ない以上、じっとしているくらいしか出来ない。

(たぶん、そろそろ何かしてくると思うのだけど……)

 暗闇の中、自分の呼吸音だけが響く。

 その時、いきなり後ろから胸を鷲掴みにされた。予兆が全く無かったから、心臓を鷲掴みにされたみたいに驚いた。

「んンっ……! ムゥーッ!」

 胸を鷲掴みにしてきた手は、ごつごつとした男の人の手だった。そんな手に、敏感な乳房を揉みしだかれる。私の乳房は、その手の動きに従ってぐにぐにと形を変えているだろう。

 普通、いきなり乳房を掴まれたら痛いだけだ。実際、無理矢理形を変えられた私の乳房は鋭い痛みを発している。

 けれど、この二日間、激痛を与えられながら容赦なく嬲られた私の身体は、早くもその状況に適応し始めていた。痛く感じるだけではなく、快感も覚えるようになって来てしまっていたのだ。

 あそこがキュンとなって、体の奥が熱を持ち始める。それは体の防衛反応なのかもしれないし、この二日で痛みと快楽とを条件付けされた結果かもしれない。

「はフッ、ンッ、ンウッ?」

 呼吸が荒くなるのと同時に、唇の端から唾液が溢れるのを感じた。顎を伝っていく感触。

 どうやら、今回噛まされた口枷は密閉度はさほどでもないみたいだ。隙間から涎がだらだらと流れていく。

 顎から垂れ落ちた涎が、体に当たってひんやりとしたものを感じさせてくる。すぐに体の熱に紛れてしまったけれど、どれほど自分が無様な姿をしているのか想像させられ、被虐心が燃え上がるのを感じた。

「アゥ、うぅ……」

『ククク……ずいぶんと、気持ちよさそうじゃないか。ええ?』

 いきなり耳の奥で、吹田という男の人の声がして、本気でびっくりした。耳栓の先にスピーカーがあるというか、耳栓だと感じていたのはイヤホンだったようだ。ずば抜けて効果の高いノイズキャンセルの機能があって、外の音は聞こえなくなっているわけだ。

「ウゥ、ッ……フウゥッ!」

 私は急いで首を左右に振る。

 実際には、その人の言うとおりで気持ちよくなってしまっていたのだけど、理不尽に調教を受けている私の設定では、否定するのが正しいと思ったからだ。

 その反応は正解だったらしく、吹田さんは楽しげに笑っている。

『否定している割りには、もうすっかりお前のここは準備万端のようだが?』

 胸を揉んでいる手とは別の手が、私の秘部に触れてくる。反射的に逃げようとした体が、背後に立っている吹田さんの体にぶつかる。

 吹田さんは恰幅のいい体格をしているけど、実際のところはかなり鍛えてあるようで、拘束された私がぶつかったところでびくともしなかった。

 逃げられなくなった私の秘部を、その人の指先が容赦なく抉る。

「ング、ッ、ウゥゥ……!」

 彼の言うとおり、私のそこはいつ挿入されてもいいように、愛液を分泌しまくっていた。ドロドロしたものが溢れ出しているのが、自分でもわかる。

 胸を揉み、秘部を弄りながら、話は続けられた。

『さて……まだまだ楽しみたいところなんだが、あいにく私も仕事があってな……島を離れなければならん。その上、次にくるのは暫く先になりそうなんだ』

 学長の秘書さんから聞いてはいたので、実際のところ私は驚くことではないけど、設定上の私はそんなことは知らないはずなので、少し驚く演技をしておいた。

「……っ!」

 調教する者がいなくなれば自分は解放される――そんな希望を持ったというつもりで、反応を見せる。

 そんな私の努力は、彼にも伝わったようだ。微かに笑う声が聞こえた。

『この島の学生は島を訪問してきた者が自由に所有して良いことになっている。だが、基本的には共有財産であり、島にいない間は各自が自由に出来てしまうのだ』

 その事に関しては、もちろん私も承知の上でこの島に来ている。私に決定権はないから、どのように扱われても文句は言えないのだけれど。

『私としては、島を離れる前にお前を完全に私の奴隷にして、キープしておきたいのだが……どうだ? 私に所有される性奴隷になる気はあるか?』

「う……」

 難しい問いだった。本来の私なら一も二もなく頷くけど、設定上の私はどうだろう。

 ひとまずここでは形だけでも認めておいて、彼が島から出ていくのを待ってから動けばいいと考えるだろうか。

 とはいえ、性奴隷になれと言われてあっさり受け入れるのも、抵抗がある気がする。

 どう応えたものか悩んでいると、吹田さんが話を続けた。

『ふふふ……思ったより強情だな。また昨日と同じ責めを受けたいか?』

 ルームランナーで延々走らされた記憶を思い出す。苦しくて苦しくて仕方なかった記憶。

 あれをまた味わうのは、素直に御免だった。気持ちよくなりすぎて苦しいとかじゃなく、純粋に体を追い詰める系の責めは本気で嫌だ。

「ウーッ! ウウゥッ」

 首を左右に振る。首を振る勢いが良すぎて、体までぶるぶると震えた。

 本当は、私に決定権などないのだ。設定上の私も、裏の私も。

 ただ島に訪れる上位者に翻弄されるだけの存在。

 そんな最底辺の身分に堕ちているのだと改めて実感し、マゾな私の体は歓喜に震えた。

『言っておくが、私など優しい方だぞ。人によっては、四肢を切断して雌犬とする者もいるし、人体改造を施して性欲処理のための道具にする者もいる。場合によっては、人とは呼べない化け物に変えられることもあるかもな?』

 夜に出会ったこの島の先輩たち――晶さんや胡桃さんに尚美さん。

 彼女達がその体に施された『処置』の数々を思い出す。ああいったものに憧れる気持ちもないではないのだけど、普通ならあんな姿には絶対なりたくないと思うだろう。

「フー……ッ、フー…」

 本当は興奮が原因なのだけど、恐怖のあまり息が荒くなったように演技する。

 その努力は吹田さんにも伝わったようだ。

『ふふ……良かろう。私は優しいからな。次の来訪まで返事は保留にしてやろう。これでも私はそれなりの立場にいるからな。キープ候補のキープが出来るのだよ』

 吹田さんの言葉に含まれた笑みには、にちゃりと粘ついた悪意が含まれていた。

『私がお前をキープするために、いくつかの道具は身に付けて貰わないといけないが、構わないかな?』

 選択肢を示しているようで、それ以外の選択は許さないという意図が伝わってくる。

 ここは私の表向きの立場から言っても、頷くしかないだろう。

 あまり勢いよく頷くのも変化と思い、恐る恐る頷いた。

『よし、ではさっそくだが道具を身につけてもらおう。と、その前に――』

 頭のあたりで吹田さんが何かを弄ると、私の視界を覆っていた目隠しが外された。

 急に眩しくなった視界に目が眩む。

『その道具をどうやって身につけるか――先輩に教えてもらうといい』

 部屋の中にいるのは、私と吹田さんだけではなかった。

 部屋の中央で拘束され、天井から伸びた鎖で吊されている私の前に、その人は立っていた。

 一見、極普通の学園の制服を着た彼女。

 彼女は、茫洋とした目でそこに立ち尽くしていた。見るからに頬が赤く火照っていて、ぱっと見は風邪を引いているようにも見える。

 だけど私は騙されなかった。彼女からは、濃密で甘い女の匂いが漂っている。鼻は塞がれていなかったので、感じ取ることが出来た。

 目覚めてすぐに仄かに感じた甘い香りは、彼女から漂っていたのだ。

『絵里。脱げ』

 吹田さんが彼女に命令すると、茫洋としている彼女だったが、その命令に機械的に従い、制服に手をかけた。

 その様子からして、恐らく吹田さんの所有する学生であり、完全に調教の済んだ性奴隷なのだろう。吹田さんの命令に従うのが当たり前で、いきなり脱衣を命じられても疑問にも思わないようだった。

 お風呂場の脱衣所にいるかのような自然さで、彼女は制服を脱いでいく。


 その下から現れた彼女の体には――ある意味、私が想像していた通りの道具が、取りつけられていた。


つづく

Comments

コメントありがとうございます。外見は普通によく見られるものです。外見は、ですが(笑)

夜空さくら

想像通りの道具とはいえどんな道具なのか想像がつきませんね。果たしてどんな道具なのか、次の話が楽しみです。

festo


More Creators