研究所に犬がいた日 後編
Added 2020-01-24 13:18:30 +0000 UTC俺はサヤと一緒に自宅に帰ってきた――それだけなら、普段と変わりない。
勤務地が同じだし、お互い伊好所長の直属で働いているため、帰宅する時間はほぼ同じになるからだ。
だが、その日はいつもと全く勝手が違った。それも当然で。
「サヤ、待て」
「わんっ」
俺が連れて帰ってきたサヤはサヤでも、犬のサヤだからだ。
玄関を入ったところで、一端サヤを待たせる。
言われなくとも「おすわり」の姿勢になり、大人しく待つ様子をみせたので、俺はサヤに巻いた首輪からリードを取り外した。
赤い首輪は犬にするものとしては極普通のものなのだが、このサヤのように特別な犬種だと、真っ白い体に赤い首輪が妙に目立った。
ドキリとしてしまうのはなぜなのか。脱走を危惧したのかといえばそうではない。サヤは俺に命じられるがまま、大人しくしている。
(最初に脱走しようとしていたとは思えないくらい、大人しい犬だなぁ)
こんなに大人しいのに、逃げだそうとするあたり、伊好所長はこの犬に相当恐れられているらしい。
本人に自覚はなくとも、このサヤにも相当無茶ぶりをしているんじゃないだろうか。
人間のサヤは忍耐強い奴だから文句一つ言わないが、俺とふたりで飲む時には伊好所長に対する愚痴を割りとよく聞く。ただ、あくまで破天荒な行動に対する愚痴であって、態度や性格とかへの文句ではないので、嫌ってはいないようだけど。
そんなことを考えつつ、俺は靴を脱いで家に上がった。勝手知ったる自分の家。洗面所からタオルを急いで取ってくる。
ちなみに、俺とサヤが暮らしているのは、少し大きめの社宅だ。
研究所からほど近い距離にあり、歩いて数十分、自転車なら十分もあれば移動出来る。今回は犬のサヤが一緒で、自転車を押しながらだったからか、いつもよりかなり時間がかかってしまったけれど。
通勤に使っている道は、落ち着いた住宅街で生活必需品が一通り揃う商店街もあり、暮らしやすい立地だった。
伊好所長という、会社にとっての超重要人物と近しい関係にあるからか、俺やサヤの年齢や立場では本来は分不相応なレベルの、豪華な社宅に住まわせてもらっている。というか、研究所勤務になることが決まった段階で引っ越すように言われた。警備態勢がしっかりしていて、広くて暮らしやすいから文句などいうつもりは微塵もない。
家主は俺で、傷や汚れに関して色々と融通は利く契約になってはいるが、外を歩いてきた犬のサヤの足をそのままで家にあげるわけにはいかない。
サヤの足をあげさせ、汚れているであろう足の裏を拭いていく。
しかし、予想に反してサヤの足の裏はずっと綺麗だった。
(どこかで拭いていた様子もなかった……よな? まあ、土の地面の上は歩いていないから、こんなもんかな……?)
なんとなく疑問に思ったが、汚れていないならそれに越したことはない。
汚れと言えば、ふと思い出した。
(そういえば、伊好所長の開発したものに、傷や汚れがつかない布、とかあったなぁ)
汚れないだけなら、いままでにも似たようなものはあったが、その上、傷がほとんど突かない布ということで、恐ろしいレベルの発明だった。原理は全くわからないが、本当に傷つかないのだ。
実験では、その布を何枚か重ねて作った靴を履いて、様々なシチュエーションを想定した場所を歩いたものだった。極普通のアスファルトの上や、小石がゴロゴロと転がった砂利道、泥水塗れの畦道なんかも歩いたものだ。
結果として、靴には傷も汚れもまったくなかった。ほつれすら見られなかったのは、すごいを通り越して怖かったけども。
さすがに一般で流通できるほどの低コストでは作れなかったようだけど、そういった布が役立つ特殊な職業などでは重宝されているらしい。
(伊好所長の発明で、色々世界に影響でてるんだろうなぁ……)
一体どんな頭をしていれば、様々な分野の人たちにも影響を与えていくような、多種多様な開発が出来るのだろうか。
真の天才というものは、一般人にはとても理解が出来ないものだと思う。
サヤの足を一通り綺麗にした俺は、リビングへと向かう。
「サヤ、ついておいで」
「わんっ!」
帰路で一緒に歩いたときにわかっていたが、サヤは物怖じしない性格らしい。
初めてあがる家にも関わらず、特に躊躇う様子はなく、周りの匂いをしきりに嗅ぐこともなく、まるで自分の家にあがるかのように、悠々と俺についてくる。
(そういえば、俺に対しても特に警戒する様子がなかったな……)
人間サイズの大型犬だからかもしれないが、それだけ大きい犬であっても、俺の方が大きいのは変わらない。タロウも大型犬で人懐っこい方であったが、初めて会う相手にはどこかぎこちなく、警戒している様子が窺えたものだ。
犬によって個性は異なるから、不思議だとまでは思わないけど。
俺はリビングの机の上に通勤鞄を置く。
「ふぅ……っと、と! サヤ! 待て!」
一息吐いて気を緩めかけた俺は、サヤが移動していく先を見て思わず止めた。
サヤは人間のサヤが気に入っているソファに飛び乗ろうとしていたのだ。
犬のサヤは不満そうに俺を見上げていたが俺の命令に従い、ソファの上に登りかけていた動きを止めた。
「ウゥ……」
サヤは実にわかりやすい不満顔で俺を見上げている。
あまりにわかりやすすぎて笑いそうになるが、それは我慢だ。
「そこはサヤの……いや、俺の彼女のお気に入りの場所だから、ダメだ」
毛があまり生えていない犬種だから、そんなに目立つほど毛は落ちないかもしれないが、自分の不在中にソファを苦手な犬が勝手に使っていたら良い気分はしないだろう。
俺は不満げな様子の犬のサヤの脇の下に手を入れて抱え上げ――といえるほど、体格に差がないから持ち上げられなかったのだが――そのまま、俺がいつも座っているソファに移動した。
俺が先に座って、サヤを膝の上に乗せる。
「こっちのソファなら自由にしてくれていいからな」
「くぅん……」
俺の言うことをちゃんと理解しているのか、サヤは不満そうにはしながらも、大人しく俺の命令に従ってくれた。
「よーしよし、良い子だ」
頭を撫でてやる。サヤは気持ちよさそうに目を細めつつ、俺の体にその体を擦り付けてきた。タロウもよくやる行為だったので、軽く受け流しながら撫で続けてやる。
サヤが思ったより大人しく従ってくれているので、安心した。脱走癖があったら困るところだったけど、帰り道も普通にしてくれていたし、少しは気を抜いても大丈夫そうだ。
(あ、そうだ……もう一回サヤに連絡しとこ)
携帯を取りだし、会社をでる前に出したメールに返信が来ていないかを確認する。
まだメールの返信は来ていなかった。伊好所長は夜には連絡が取れるようになるはずと言っていたが、珍しく残業でもしているのだろうか。移動先が遠方ならそういうこともあるのかもしれない。
まだ仕事中なら電話すると迷惑になってしまう。メール画面を開いた。
俺は犬を連れて帰っていることを、包み隠さずサヤに報告するつもりだった。伊好所長に押しつけられた仕事の内だし、変に隠して妙な誤解をされても困る。無論、元々分担はしているが、犬がいる間の部屋の掃除は自分がやることも添えておく。
黙々とメールを打っていると、ふと犬の方のサヤが静かなことに気付く。ごそごそ動いていたように思ったのだが。
疑問に思って目線を下に落とすと――サヤが、器用に俺のズボンのチャックを下ろし、そこから取り出した俺のペニスにその頬を擦り付けていた。
一瞬、心臓が大きく跳ねたが、『犬がペニスにじゃれついてくるのは普通のこと』だ。不自然に心臓が跳ねたのは、急なことで驚きが大きかったからだろう。
「こ、こらこら。いま遊んでやるから、ちょっと待てって」
「ウー……っ」
待て、と言うと不満げにサヤが啼く。耳がぺたんと悲しげに倒れるのを見てしまった。
俺は仕方ないなという気分にさせられ、人間のサヤへの連絡を一時保留する。すでに一度メールは送ってあるし、それに返信が来てからでも遅くはないだろう。
俺はサヤがじゃれつきやすくするために、下半身に着ていたズボンとパンツを脱ぎ、ペニスを完全に露出させる。すでに少し刺激を与えられていたからか、脱いでいる間にペニスがムクムクと大きくなった。
「わんっ」
すると、サヤはキラキラと目を輝かせた。
それも当たり前で『雌の犬はペニスを好む』ものだからだ。俺のペニスは別に人より目立って大きいわけじゃないが、小さいわけでもない。『それを使って犬と遊んで、犬を満足させることが出来る』普通程度の大きさはあった。
ソファに腰掛けた俺の前に、サヤがちょこんと座り込んでいる。俺は浅く座り直し、サヤが舐めやすいようにペニスの位置を調整した。
「よし、『遊んで』いいぞ」
「わんっ」
許可を出した途端、サヤはむしゃぶりつくように俺のペニスへと吸い付いた。
生暖かい感触がペニスを包む。
「ん……っ、上手いぞ、サヤ」
「むぁ……っ、はむっ……あむっ、はぅ……っ」
喘ぎ声を上げながらサヤは俺のペニスを執拗に舐める。
そういえば、人間のサヤはフェラチオがそんなに得意では無かった。俺がやって欲しいとお願いしたから一生懸命やってくれていたが、躊躇いがちだったからそんなに気持ちよくはなれなかった。そういう健気なサヤが可愛かったからその行為そのものは気持ちよくなれなくても気にしていなかったけれど。
その点、このサヤは積極的に舐めて来てくれていたから、かなり気持ちよくなれていた。
(……って、犬との『遊び』と、女性との行為を比べるのは、さすがにサヤに失礼だよな)
どうして同じ風に考えてしまったのか、自分で自分の思考に呆れてしまう。
犬の散歩と、恋人との散歩を一緒にするような、おかしなことだった。
心の中で人間のサヤに謝りつつ、俺は犬のサヤとの『遊び』に集中する。サヤはひとしきり俺のペニスを舐め尽くすと、俺の体によじ登るようにして、その腰を俺の上へと載せてきた。
「おっとと、ちょっと待ったちょっと待った」
俺は言いつつ、少し腰を下げてソファの座面の中央に腰を持ってくる。
サヤは座面の左右に足を乗せ、M字に大きく足を開いて、屹立する俺のペニスに自分の股間を擦り付け始めた。
サヤのすべすべした股間からはどろりとした熱い液体が滲み出している。俺はペニスを入れる前に、その股間の状態をしっかり確かめた。これだけ積極的なら心配はないと思うが、ちゃんと雌犬の状態を確認するのは、飼い主の務めだ。
「ん。これなら大丈夫そうだな」
これだけ濡れていれば、お互い痛みはないだろう。
俺はサヤの腰を掴み、位置を調整して割れ目にペニスの先端を持ってきた。
そして、腰を下ろさせる。
「く……っ、きっつ……っ」
サヤはそんなに『遊んだ』経験がないらしく、その部分はかなりキツかった。
俺のペニスがぎゅっと締め付けられる。
「んぁ……うっ、くぅんッ」
サヤも苦しげに声をあげていたが、その声にはどこか気持ちよさそうな感覚も混じっていた。
「っ、お、奥まで、はいっ……っ」
「くぅ、うん…………ッ!」
ズブズブと俺のペニスがサヤの性器の中へと潜り込み、そして。
俺の先端が、サヤの奥へと到達した。
その瞬間、サヤがびくんっ、と体を震わせる。
同時に俺も、心臓が飛び出そうなほどに驚いた。
「え……? さ、サヤ……?」
俺がペニスで貫いているのは犬のサヤ――ではなく。
俺が同棲している、人間のサヤだったからだ。
犬耳に首輪、手足の先端には犬の四肢を模したグローブとブーツのようなもの、そして犬の尻尾のようなものを身につけ。
それ以外は素っ裸で、むき出しのあそこに俺のペニスを咥え込んでいる。
俺も死ぬほど驚いたが、サヤの方もサヤの方で目を見開いて硬直していた。いままで自然な犬のように振る舞っていたのが嘘だったように――人の理性ある顔をしていた。
その首が、「ギ、ギ、ギ」という擬音が聞こえてきそうなほど、まるで壊れた人形のように動き、状況を把握した後に。
白くて綺麗な肌が真っ赤に染まっていく。いまのいままで羞恥心を忘れていたといわんばかりの、大きな変化だった。
「え、えっと……ま、まずは落ち着こう、な?」
俺はそう呼び掛けたが、その際、思わずサヤの体の中に挿入したペニスに力を入れてしまった。
性器がドロドロに濡れていたことからもわかるように、サヤの意志はともかく体は興奮状態にあったことは明らかで。
そんな状態で、体内を刺激されたサヤは。
「んあっ♡」
普段なら盛りあがった時にしかあげない、気持ちよさそうな喘ぎ声を上げた。
慌てて両手で口を押さえていたけど、その顔が限界を超えて真っ赤になる。
「あー……えーと、その……ああ、うん……伊好所長の研究、かぁ……」
俺は半分諦めつつ、そう呟いた。
サヤは真っ赤な顔で何度も頷く。
「み、みみ、を……着けてみて、っていわれて……そしたら、わたし、自分が、犬だとしか思えなくなって……」
途切れ途切れに言うサヤ。
どうやらサヤが着けさせられた犬耳は、いわゆる催眠、あるいは洗脳の効果を着用者や周囲の者に対して与えるデバイスだったみたいだ。本人が全く影響を受けているように見えなかったのは、開発者本人は外れるようになっているとか、影響を受けないようにするためのデバイスが他にあるとか。
いずれにしても俺が言えるのは。
「やべえなあの人」
という素の感想だった。
着用者や周りを催眠をかけて洗脳し、人を犬としか思わせなくする装置って。
あの人が本気を出したら、マジで世界征服くらいは余裕で出来てしまいそうだ。あの人がそういう危険思想を持っていないことに感謝しなければならない。
改めて伊好所長の開発力に戦慄していると、携帯が着信を告げた。
サヤと繋がったままなのに、思わず反射的に取ってしまった。
『やあ、そろそろ気付く頃かな、と思って』
「エスパーですか、あんた」
電話をかけてきたのは、伊好所長その人だった。
いや、まあ実際には装置に通知する機能があるんだろうけども。
悠々とした態度の伊好所長ゆえに、本気で勘でかけてきたような気にさせられてしまうのだから怖い。
『どうだい? 効果は抜群だっただろう?』
「抜群っていうか……人の彼女に何してくれてるんですか?」
いまのいままで俺がそうであったように、周りの人間にはサヤを犬と認識していたとはいえ。裸で街中を連れ回してしまった。犬耳の影響がないところから見られていたかもしれない。
サヤも帰り道のことを思い出したのか、赤くなりながら青ざめるという器用なことをしていた。
『ああ、ちゃんと周りには彼女の正体はわからないようにしてあるから大丈夫だよ』
「そういう問題じゃないんですが。写真とか、映像を関係ない人が後から見返したりしたら……」
『大丈夫大丈夫。研究所から君たちの住む社宅までの間の監視カメラは全部把握済みだからね。ちゃんと避けて帰ってたはずだよ』
帰りにやけに時間がかかったのは、四つん這いで移動するサヤがいたからだけではなかったようだ。言われてみれば妙に遠回りをしたような。
一応、そういう配慮はしてくれているみたいだけど、あんまりといえばあまりにもとんでもないことをやらされている。
街中で堂々とペットプレイをさせられたようなものだ。サヤに首輪を巻いて、そこにつけたリードを引いて歩いていたことを改めて思い返すと、とんでもない鬼畜外道野郎だ。
犬としか思えてなかったのだから仕方ないとはいえ、本当にとんでもない話だった。
『君たちはセックスしたら洗脳が解けるように設定しておいたから、いま気付けているけど、他の人たちは気付くことはないから安心していいよ』
無茶苦茶をいう伊好所長。
だけどまあ、確かに不意に洗脳が解けたとしても、目の前で解けでもしない限りは、自分の記憶間違いか何かだと思うのが精々だろう。どうしてそんな変な記憶があるのか不思議には思うかも知れないが。
つまりここで問題とするべきことはひとつ。
「こんなの作ってどうするつもりですか」
『もちろん、自分で使うんだよ?』
「何言ってんですか?」
いや、本当に何言ってるんだこの人は。
俺はいよいよ、伊好所長という人がわからなくなってきた。
『実は私の彼が犬を飼いたいそうでね。しかし彼の家では犬を飼うことはできない。そこで私が彼の犬になってあげようと』
「何言ってんですか?」
本当に、何を言っているのかわからない。
天才の思考はよくわからないものだが、今回の謎の思考は技術に直接関連するものじゃないから、余計にそう思えてしまう。
端的にいって、訳がわからないよ、って奴だ。
『せっかくだから性生活にも役立たせたいと思ってね。犬耳を着けた犬との遊びを、性的なものにしてみたんだ』
「うちのサヤをそれに巻きこまないでくださいよ……」
いくら伊好所長の研究開発に付き合うのが仕事とはいえ、可哀想すぎるだろう。
俺はそう思ったが、伊好所長は意外なことを口にする。
『君の彼女の悩みを聞いた結果でもあるんだよ?』
「サヤが?」
聞き捨てならない話である。
サヤの方を見ると、真っ赤な顔をしたまま、全力で首を横に振っている。
『君を性的に満足させられているのか、不安だって言うからさ』
「い、伊好所長!」
サヤが大きな声をあげて伊好所長の声を遮る。
その声の焦った感じからすると、どうやらそういう悩みを打ち明けたこと自体は事実なようだ。
サヤは恥ずかしさのあまりか、涙目になっていた。
『まあ、そんなわけで私はこの連休中、彼に可愛がってもらってくる。君たちもそれを使って楽しんでくれたまえ』
「いや、ちょ、まっ、犬耳の外し方を――」
電話は無慈悲に切られた。かけ直すが通じない。
俺は携帯を机の上に放り出す。
「ほんとめちゃくちゃな人だな!」
俺は思わずそう叫んでいた。
淡い期待を持ってサヤを見るが、サヤも首を横に振る。外し方はサヤも知らないようだ。ぱっと見、普通の犬耳のように見えるが、まるで接着でもされているようにサヤの頭にくっついていて、無理に引き剥がすのは躊躇われる。
伊好所長に外してもらうしかない。
サヤには暫くこのまま我慢して貰うしかないようだ。
「それにしても……セックスしたら洗脳が解けたのはわかったけど……これ、抜いたらまた洗脳が復活するとか、ないよな……?」
大丈夫だと信じたいが、わからない。
「……どうしよう」
不安そうな顔を浮かべるサヤ。
サヤの発言が招いた状況であるようだが、無茶苦茶なのは伊好所長だからサヤを責めるのは可哀想というものだ。
伊好所長もなんだかんだ最低限の配慮くらいは出来る人だし、最悪のことにはならないだろう。色々な安全策も打ってくれているはずだし。
「まあ、なるようにしかならないさ」
楽観的かもしれないが、伊好所長に関わる時はそれくらいの楽観的になった方がちょうど良いのだ。
俺はサヤの腰を掴み、浅くなっていたペニスを深く挿入し直す。
「ふあゃっ、えっ、ゆ、裕太くん!?」
不意を突いた形になったからか、サヤは気持ちよくなりながらも困惑していた。
「いや……ごめん。正直、その格好、すげえ興奮するんだよね」
別にペットプレイが特段好きなわけじゃないのだが、普段は真面目よりなサヤが変態的な格好をしているというだけで、俺は無性に興奮させられてしまうのだった。
直接刺激された上、それが普通だと認識を弄られていたとはいえ、さっきまでは犬だと思っていたサヤに対して激しく勃起してしまったのも、愛するサヤの痴態を見て無意識に興奮していたとすればつじつまが合う。
(伊好所長の思惑に乗るのは癪だけど……まあ、いいか)
これくらい図太くなければ、天上天下唯我独尊・傍若無人の天災――伊好港がトップの伊好研究所で働いてなどいられない。
どうしたってとんでもないことに巻きこまれるのなら、楽しまないと損なのである。
普通なら絶対に有り得ないことも出来るわけだし。
「このまま最後までやりたいんだけど……いいか?」
俺はそうサヤに確認する。
すでに挿入までしているとはいえ、最終的な許可はちゃんと本人に取るべきだからだ。
求められたサヤは、戸惑っているようにも見えたが、伊好所長のいうことが正しいのなら、この状況はサヤが望んだことでもある。
それに何より、正気に戻ってもなお、激しく濡れて挿入した俺のものを締め付けてくるサヤのあそこの反応を考えれば――サヤの応えはわかっているも同然だった。
研究所に犬がいた日 おわり