改変された世界の片隅で ~赤土政夫視点~ その2
Added 2020-02-13 14:37:42 +0000 UTCその「派遣肉便器の取り扱い方法」と書かれた説明書には、とても昨日までの一般常識では有り得ないような内容が平然と書かれていた。
「肉便器を派遣するっていう言葉自体が、パワーワードではあるが……」
昨日までの常識を前提にするのであれば、肉便器とは派遣されるようなものではない。
というか、そもそも肉便器などという存在自体、創作の中以外で実際に存在しうるものなのか、私の知る限りではわからなかった。
性犯罪のニュースなどでは、女性が男によって監禁されるような話もあり、全てが全てフィクションというわけでもないのだろうが、少なくとも一般的家庭に派遣されるような存在ではないことは確かだ。
(援助交際やデリヘルの中にはそういったプレイもあるのかもしれないが……いやいや。落ち着け。考えるべきはそうじゃない)
私はとりとめのない思考を一端放棄し、目の前の説明書の解読に意識を集中する。
説明書にはトイレに設置されていた肉便器のことに関して、細かく記されていた。
大半は日々のメンテナンスの仕方だ。栄養補給や排泄のさせ方が載っている。また不慮の事故などによって肉便器の状態が悪化した場合の緊急連絡先も記されていた。
(最悪はここに連絡して引き取ってもらうっていうのもありか)
それはまたあとで考慮するとして、私が特に注目したのはその肉便器に関する仕様――要は、肉便器とされている彼女の個人プロフィールだった。
身長体重スリーサイズなどの基本的なスペックの他に、そこには『派遣元』の記述があったのだ。
(この記述を信じるなら……あの肉便器は……あのお嬢さま学校から派遣されてるってことになる)
派遣元の欄には、このアパートからほど近いところにある、中高一貫のお嬢さま学校の校名が記されていた。
ここで暮らしている中で、登下校をしている姿を何度か見かけたことがある。そこに通う生徒たちは、いかにもお嬢さま学校の生徒であることが明らかな、白いワンピースタイプの特徴的な制服を着ているので目立つ存在だった。
同居人の光樹などは「エロくて可愛い、最高の制服だよな」などと露骨に最低な発言をしていたが、それはまあいいとして。
(生徒を肉便器として派遣する学校、か……いや、一定の年齢の女子は皆そう扱われるという可能性もあるのか?)
徴兵制のようなもので、一定の年齢に達した女子はどの学校であろうと肉便器として扱われる時期があるのかもしれない。
いずれにせよ、成人向け漫画の世界に迷い込んだような話だ。
説明書にはその生徒の顔写真まで載せられていた。
写真だけでは確実なことは言えないが、十分可愛らしい面立ちをしているように思えた。少なくとも、こんな男ふたりが住むボロアパートに肉便器として派遣されるには、あまりにも勿体なさすぎる存在だ。豚に真珠もいいところだろう。
どうして彼女がここに派遣されることになったのか。
その答えは、説明書の裏にあった。
説明書の裏面には普通の家電の説明書でいえば、購入した店で渡される保証書を張る空白があった。そのスペースに、保証書ではなく許可証と書かれたものが貼ってあったのだ。
私たちが買った家電の保証書を必ずそうしていたように、この許可証もきっちり貼ってあった。私にはそんなことをした記憶はないのに、私がするのと同じように事が起きているというのは不思議かつ不気味な話だったが、それは気にしても仕方ない。
その許可証は国が出しているもので『当該住居に二人以上の男性が暮らしていることを認め、肉便器の派遣を許可する』と書かれていた。
そこから読み取れるのは、男が複数住んでいる住居を選んで肉便器は派遣されるものであり、そしてそれを国が認めているということだ。
それが示しているのは、国単位で常識が改変されているということ。世界規模で常識が改変されている可能性まで出てきた。
(なんというか、途方もない話になってきたな……)
いまのところ実害はないとはいえ、いまの世界がどんな世界になっているのか、想像も付かない。
暫く説明書を精読していると、感じることがあった。
(元からこういう世界だった、というわけじゃなく、あくまで元の世界をベースに、改変者の都合のいいように変えた……という印象だな)
私にそう感じさせた理由は、肉便器の子のスペックに、身長体重といった基本的なデータだけではなく、学校の成績まで記されていたからだった。
最初から女性が肉便器として扱われるのが当たり前として歩んで来た世界なら――そんな世界が成立するわけもないが――女性を教育する必要などない。
家畜のように餌だけ与えて適度に運動させればそれで済む。肉体の成長だけ促せばいいからだ。
性欲処理の道具として消費するのであれば、学校の成績など何の意味も持たない。教育を受けさせるのは男に対する反逆の可能性を生むだけで、無意味な行為でしかないだろう。
色々なパターンは考えられるものの、やはり元々は普通に暮らしていた女性たちを超常的な何らかの方法で、強制的にそういう風にさせている、と考えられた。
(そんなことをして、何が楽しいのか判らないが……)
世界中全ての女子を操って自分に奉仕させるというのなら納得も出来るのだが、どうしてわざわざ世界全体の常識を改変するのか。
(それとも……世界が改変されたことを認識しているのは私たちだけではなく、男性全体かもしれない、のか?)
私は一瞬そうとも考えたが、それはないだろうと思い直した。
世の男性は、私のように特段親しい女性がいない独身ばかりではない。
例えばうちに派遣されている高校生の父親だっているはずなのだ。その父親がもし自分の娘が肉便器として派遣されている、なんてことを元の常識のまま認識したら怒り狂うだろうし、解放させようとするだろう。こんな世界が成り立つわけがない。
(やはり基本的には全体の常識が書き換えられていると考えるべきだろうな……となると、下手に動けば注目を浴びてしまう危険がある、か)
光樹に不要な言動は慎むように言っておかなければ。
そう思って私は一端説明書の精読を後回しにし、トイレにいる光樹の元へ向かった。
外から声をかけてみたところ少し慌てたような声をあげていたので、恐らくはただ用を足すだけでは収まらず、肉便器本来の用途である性欲処理も同時に行ったのだろう。
(まったく……人と同じ肉便器を使うというのは、正直御免被りたいところだが)
強制的に穴兄弟にされるようなものだ。私は光樹とそういう関係にはなりたくない。
服を整えてトイレから出てきた光樹に、私の危惧について説明したが、光樹はむしろ張り切ってしまった。
改変者のことはわからないのだが、恐らく光樹と同じような下半身に直結するような思考の持ち主だろう、と私の推測を伝えたのが良くなかった。
「男が損する世界なわけないじゃん!」
そう光樹は言い切り、「色んなところでエロいことが起きているはず!」と言い、意気揚々と外へ飛び出していった。
もっと慎重に行動して欲しかったのだが、強く止めたところでどうにもならないのは長い付き合いでよくわかっている。腐れ縁でも幼なじみなことに変わりは無い。
(あいつとは絶対国外旅行にいけないな……)
常識が全く違うのに思うがままに振る舞って、地雷を踏み抜いてトラブルに発展するのが目に見えるようだ。
(だがまあ、別に構わないか)
いつかは家の外にも出なくてはならない以上、光樹が率先して外での情報を集めてくれるのは悪くない。仮に捕まったりトラブルになったりしたとしても、私はそれを元に行動出来る。使い捨てのリトマス試験紙のような扱いだが、一応忠告はしたのだし義理は果たした。
(私はせいぜい、慎重に行動するさ……)
そのためにも、出来る限りの情報収集をしなければならない。
私はまず室内を細かく見て回った。
トイレの肉便器以外に変化がないかどうか、他に家に設置されている女性がいないかどうかを確認するためだ。
結果として、トイレ以外に変化は見られなかった。
(よし、とりあえずトイレの肉便器だけどうにか出来れば、普通に暮らしていくことは出来そうだな)
説明書を見る限り、肉便器にはメンテナンスの必要がある。
(説明書に書いてある内容を見ると……物理法則や人間の身体の構造自体が変わっているわけではなさそうだな)
飲まず食わずで永遠に活動し続けられるような、そういう超常的な現象はないようだ。
それはよく考えると少々恐ろしい話である。もしも光樹のような人間しかこの家にいなかったら、我が家で肉便器となっている彼女はメンテナンスを受けられないまま放置され、餓死もしくは衰弱死していたことだろう。
(肉便器にされた上で放置死とか……さすがにちょっと可哀想だからな)
スペックを見る限り、優秀な学生だったようだし、無意味な死を迎えさせるにはあまりに惜しい。私は改めてトイレに設置された肉便器の様子を眺めた。
規則正しく呼吸をして胸が上下している。光樹が便器の高さを下げたままにしていたから、M字開脚の体勢でじっとしていた。
その膝が微かに震えていた。寒さを堪えるというか、トイレに行きたがっているようだった。元からトイレにいるのでややこしいが。
私は説明書を開き、『メンテナンス:排泄の処理』の項目を読む。やはり尿も便も自動的に処理されるわけではなかった。定期的に処理してやる必要があるようだ。
「ええと……まず便座の高さをあげて……と」
説明書片手に、肉便器のメンテナンスを開始する。
壁に設置された便座のリモコンを操作し、まずは彼女の座っている便座の高さをあげた。 そして左右に割り開かれた彼女の両足の間――股間に装着されている金属の貞操帯に手を伸ばす。まさか初めて女性の股間に触れる機会が、こんな形で訪れるとは思っても見なかった。
さすがに少し緊張しつつ、指先で貞操帯を弄った。
「……ん、これか?」
貞操帯は多重構造になっており、その一番上の層であるカバーらしきものを開いた。すると、中から細い管の先端が飛び出し、ぷらりと垂れ下がる。その管は先端部分が弁で塞がれていて、管の中には黄色い液体が詰まっていた。
(ははぁ、カテーテルで膀胱まで貫いてあるのか。この弁を解放しない限り、排尿もできないというわけだ)
私はその管の先端を便器の中へ向け、弁を解放する。
すると、どんどん黄色い液体が便器の中へと流れていった。想像通り彼女の膀胱に溜まっていた尿らしく、アンモニアの強烈な臭いを感じる。
「んぅ……っ」
気持ちよさそうに肉便器が唸る。
結構な量が溜まっていたから、相当苦しかったのだろう。出せたことによる喜びの声がでるのも無理はない。
(このメンテを一日しないだけでも、この子は膀胱炎になってただろうな……)
そう考えると、ぞっとしない話だ。
完全に尿道が塞がっているようだったから、いくら出したくてもお漏らしも出来ない。苦しみだけが延々と募っていくことになっただろう。
出し切ったところでトイレットペーパーを使って管の先を拭い、元のように弁を嵌めてカバーの中に戻しておいた。
一端水を流して出した尿を処理する。
(……ついでに、肛門のメンテナンスもやっておくか)
余り気は進まないが、後の穴のメンテナンスだ。
こちらは尿のようにカバーを開いただけでは出て行かない。穴は開いているが、自然に滑り落ちるほど大きくはないからだ。つまり、外から相応の処理をする必要があるはずだ。
「手順は、と……んん?」
私は説明書を開いて確認し、その手順の内容を見て想像とかなり違う手順に驚いた。
まず前と同じように貞操帯のカバーを開くと、二本のチューブが飛びだしたチューブは肛門があるあたりから縦に二本並んで飛びだしていた。
「えーと、まずは……上のチューブにホースを接続する、と」
手洗い場のすぐ側にホースが準備されていた。
それを蛇口に繋いで、反対側を彼女のお尻から飛びだしているチューブの内、上の方に繋いだ。
「次に、ぬるま湯設定で三十秒注入……」
手洗い場の蛇口はボタンを押して十秒間水を出す仕組みになっている。冷水でもお湯でもなく、ぬるま湯、と書かれたボタンを三回押した。
ホースの中を液体が凄い勢いで流れ、肉便器の彼女のお尻へと吸いこまれていった。
「ふぐっ、んぅっ」
びくんと身体を震わせる。規則正しかった呼吸が乱れ、鼻フックに歪められた鼻穴で必死に呼吸を繰り返していた。
ラバースーツに被われ、ハーネスによって引き絞られた腹部が徐々に膨らみ、ミチミチと音を立て始める。苦しいのか、身体を捩って全身の拘束具を軋ませていた。
説明書で顔写真を見てしまったから、あれほど可愛らしい子がこんな風にされているという実感が急に湧いてきた。
成績の欄を見る限りでは、それなりに優秀な方の生徒だったようだし、もしもこんな改変が起きなければ、輝かしい未来が約束されていただろう。
そんな彼女が、いまこうして自分たちの家で、無残な肉便器姿で完全拘束されているという事実。
その事実は私を――高揚させた。ズボンの中で逸物が硬くなるのを自覚する。
そんな風に感じてしまう自分の感覚に、苦笑せざるを得ない。
(これでは、光樹のことを責められないな)
苦笑しながら、三十秒経って注入が終わるのを待ち、次の手順へと移行する。
(さらに三十秒待ったら、解放のボタンを押す……と。これか)
壁のリモコンの一角に『解放』と書かれたボタンがあった。
そうして私が確認している間、彼女は大量浣腸された上で我慢し続けなければならず、苦しげに唯一自由な呼吸を必死に繰り返していた。
「ウゥ……ウぅ……っ、ううう、うっ……!」
しかし苦しげな唸り声の中には、微かに快感の響きがあった。肉便器として扱われ、無理矢理浣腸されて排泄をさせられる。普通の感性の女性なら泣き叫んで呻くのみだろうが、どうもこの世界の女性にとっては違うようだ。
(まあ、そうでなければ可哀想すぎるし、その辺は良い改変というべきかな……)
私や光樹は男性の立場だからいいが、もし女性の立場で元の世界と同じ認識になったらと考えると恐ろしい。
私たちのように、改変から免れてしまった女性がいないことを願うばかりだ。
「さて……そろそろいいかな」
私はリモコンのボタンに指をかける。荒い呼吸でガタガタ震えだした彼女も、そろそろ限界だろう。
「思う存分、出すがいいさ」
彼女に聞こえていないのは承知の上で『解放』ボタンを押す。
すると彼女のお尻に繋がっている二本の管の内、下側についていた管の弁が開き、中から一気に液体が噴き出した。それは最初注がれたぬるま湯だけだったが、途中から茶色いものが混ざりだし、一気に便器の中へと排出されていく。
肛門が無理矢理開かされているだけにしては、かなり勢いが強かった。なにかポンプ的な機能が見えないところに仕込まれているのかもしれない。
暫くすると排泄物が出なくなった。まともな食事を摂っているわけではないからか、それは意外と臭くはなかった。とはいえ、排泄物らしい臭いはするので、管の先端をトイレットペーパーで拭いて、さっさと水で流してしまう。
「ふー……ふー……」
水が流れて落ち着くと、少し荒くなった彼女の呼吸音だけがトイレの中に木霊する。
私はそんな彼女の様子を見つつ、口を塞いでいる口枷の栓に指をかけた。
赤土政夫編 その3につづく